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【発明の名称】 車両用前照灯
【発明者】 【氏名】大塚 靖史

【氏名】帖地 雅隆

【要約】 【課題】電球から出射される光を遮光するためのシェードをメッキ処理した場合でも、シェード内面で反射した光によるグレアを防止する。

【解決手段】光源としての電球6と、前記電球6から出射された光を前方に向けて反射する反射鏡4と、前記電球6から前方に向けて出射される光を遮光するシェード7とを備えており、このシェード7は内面に多数個の微小凹凸、例えば微小凹部77が形成される。シェード7の内面の微小凹部77で反射される光は拡散状態で反射されるため、シェード7をメッキ処理し、かつ内面に反射防止膜を形成しない場合でも、電球6からの光がシェード内面において特定の方向に集中して反射されることが防止でき、グレア光を抑制する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 光源と、前記光源から出射された光を前方に向けて反射する反射鏡と、前記光源から前方に向けて出射される光を遮光するシェードとを備える車両用前照灯において、前記シェードは内面に多数個の微小凹凸が形成されていることを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】 前記微小凹凸は、前記光源から出射された光が前記シェード内面で反射され、かつ前記反射鏡で反射されたときにグレア光となる前記シェード内面領域に形成されている請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】 前記シェードは、前記反射鏡と同系統の色彩のメッキ処理が施されている請求項1または2に記載の車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は車両用前照灯に関し、特に光源から出射された光を遮光するためのシェードを備える前照灯に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車の前照灯として、光源から出射された光のうち、前方に向けて出射された光をシェードにより遮蔽し、後方に向けて出射された光を反射鏡において前方に向けてほぼ平行な光束として反射し、レンズを通して所要の配光特性を得るようにした前照灯が提供されている。従来、この種の前照灯では、所要の配光特性を得るためのレンズステップが形成されており、このレンズステップによる光屈折効果によって前照灯をレンズ外部から見たときにもシェードの輪郭が明確に見えることがなく、前照灯の外観についてとくに注意を向ける必要は少ないものである。しかしながら、近年では反射鏡の反射面形状によって所要の配光特性を得る一方で、レンズは透明な素通しレンズとして構成し、反射鏡の反射面を積極的にレンズ外部から見えるようにすることで、光沢のある金属色の外観の前照灯が提案されている。このため、シェードがレンズを通してレンズ外部に露見されることになり、シェード自体の見栄えに工夫が要求されている。
【0003】このため、シェードの表面を反射鏡の反射面と同様にシルバ色に表面処理し、シェードが反射面と渾然一体化することでシェードを目立たないようにしたものが提案されている。例えば、従来ではシェードにクロム(Cr)メッキを施している。しかしながら、このクロムメッキを行うと、シェードの内面までメッキされてしまい、結果として光源から出射されてシェードで遮光されるべき光がシェードの内面で反射して反射鏡にまで至り、さらに反射鏡で反射されて前方に出射される光が顕著なものとなる。特に、シェードの上側の内面で反射された光は反射鏡の下部に向けて反射されるため、この反射鏡の下部で反射された光は前照灯の光軸よりも上方に向けて前照灯の前方に出射されることになり、この光が対向車を眩惑するグレア光として発生するという、好ましくない配光特性になるおそれがある。
【0004】そこで、従来では、メッキ処理したシェードの内面に、光反射を抑制するための黒色塗料を塗布し、前記したグレア光の抑制を図っている。しかしながら、この黒色塗料を塗布するための作業工程が必要であり、しかもこの工程は組立て形成されたシェードに対しての作業であるために、作業の自動化が困難であるとともに、黒色塗料によるコスト高が生じる原因となる。また、黒色塗料による光反射の抑制、すなわち光吸収作用によってシェードが高温に加熱され、この熱によってクロムメッキの表面に変色が生じ、シェードの外観が経時的に劣化されるおそれがある。本発明者の実験によれば、350℃以上に加熱され、比較的に短い時間でシェードのメッキ表面が黒色に変色することが確認されている。
【0005】本発明の目的は、作業工数を増加することなく、しかも加熱による変色が生じることなくグレア光を防止した外観上の見栄えの良い車両用前照灯を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、光源から出射された光が前照灯の前方に向けて出射される光を遮光するシェードの内面に多数個の微小凹凸が形成されていることを特徴とする。この微小凹凸は、少なくとも前記光源から出射された光がシェード内面で反射され、かつ反射鏡で反射されたときにグレア光となるシェード内面の領域に形成される。また、シェードは、反射鏡と同系統の色彩のメッキ処理が施される。
【0007】シェード内面の微小凹凸が形成されている領域で反射される光は、この微小凹凸によって拡散状態で反射されるため、シェードをメッキ処理し、かつ内面に反射防止膜を形成しない場合でも、シェード内面において特定の方向に集中して反射されることが防止でき、グレア光を抑制する。
【0008】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は本発明を自動車の前照灯に適用した実施形態の一部を破断した正面図、図2はそのAA線拡大断面図である。樹脂製の灯具ボディ1の前面開口11にはシール溝12が形成され、このシール溝12には前記前面開口11を覆うように取着された透明素通しのレンズ2の周縁部に設けられたシール脚部21がシール剤22によって取着されており、前照灯の灯室3が画成されている。この灯室3内には放物面断面形状の反射鏡4が内装されており、図示されないエイミング機構によって上下方向、左右方向の光軸位置が調整可能とされている。また、前記反射鏡4の背面に開口されたソケット取付穴41には電球ソケット5が取着され、この電球ソケット5により光源としての電球6が前記反射鏡4の焦点位置に保持されている。前記電球6及び電球ソケット5は、前記灯具ボディ1の背面に開口された電球挿通穴13を通して着脱可能とされる。さらに、前記反射鏡4のソケット取付穴41には、前記電球6の前方を遮蔽するためのシェード7が取り付けられている。
【0009】ここで、前記反射鏡4は、所要の配光特性を得るとともに、前記レンズ2を通して外部に露見される際の外観上の見栄えを高めるために、上下方向及び左右方向にそれぞれ複数の矩形あるいはこれに近い形状の領域42に区画され、各区画面を連ねて反射鏡全体として略放物面となるような設計が成されている。そして、その反射面となる内面には、アルミニウムを蒸着あるいはメッキした反射膜が形成され、シルバー色を呈するように構成されている。また、前記シェード7は、鋼板をプレス加工して形成しているが、その表面にはクロムメッキを施しており、これにより前記反射鏡4の反射面と同じシルバー色として形成されており、灯具をレンズを通して見たときに、シェード7と反射鏡4の反射面とが渾然一体の外観を呈し、シェード7が前照灯内で浮き上がって見えないように形成されている。
【0010】図3(a)は前記シェード7を前方から見た斜視図、図3(b)はその後方から見た部分分解斜視図であり、この実施形態では前記シェード7は前面遮光部71と、側面遮光部72との2つの部品で構成されている。前記前面遮光部71は、鋼板をキャップ状にプレス加工しており、前記電球6の前方のほぼ光軸上に配置され、電球6から出射された光のうち前方に出射される光を遮光するように構成される。そして、この前面遮光部71の前面及び周面は、前記反射鏡に形成した区画面と同一、ないしは近似する形状の複数の区画面73を組み合わせた形状とされ、前記電球6の前側に配置して灯具を前方から見たときに前面遮蔽部71と反射鏡4の反射面とが渾然一体の外観を呈するように意匠的な構成とされている。
【0011】また、前記側面遮光部72は、所要形状に打抜いた鋼板を前記前面遮光部71の周辺に沿うように円筒状に曲げた上でその両端部をかしめ溶接したものであり、前記電球6から出射される光のうち、主に上方側ないし自動車の車体センター側に向けて出射される光を遮光するように構成される。また、前記側面遮蔽部72の下辺位置には、前記電球6の光軸方向に沿って延長されるステム74が一体に形成されており、このステム74の他端にはネジ穴75が形成され、前記反射鏡4の前記ソケット取付穴41の一部にネジ8により固定される。また、この実施形態では、このステム74の他端にはフック76が一体に形成されており、前記電球ソケット5に接続される図外のケーブルを掛止するために利用される。
【0012】さらに、図4に拡大断面図を示すように、前記シェード7の側面遮光部72の内面の一部領域、ここでは上面から車体センタ側に向けての領域には、微小な凹部77が形成されている。この微小な凹部77は、例えば前記した鋼板を打抜き加工するためのプレス金型面に多数個の微小な突起を設けておくことで、鋼板を打ち抜き加工する際に該当部分に前記突起による微小凹部を転写することによって形成できる。この微小な凹部77は、ランダム配列、格子配列、メッシュ配列等、種々の配列パターンが採用できる。また、微小凹部77の寸法については特に限定されるものではないが、微小凹部77を形成した後に鋼板の表面に前記Crメッキ処理を行った場合でも、その凹部がメッキ膜によって埋められることがないような寸法に形成される。
【0013】この構成によれば、図2に示すように、電球6から出射された光のうち、前方に出射された光はシェード7の前面遮光部71によって遮光され、側方に出射された光のうち、上方ないし車体センタ側に出射された光は側面遮光部72によって遮光される。そして、各遮光部71,72で遮光される光は、各遮光部の内面がCrメッキ処理されているために、各遮光部71,72の内面で反射される。前記前面遮光部71の内面において反射された光は、電球6から後方に向けて出射される光と一体化され、反射鏡4において反射され、その反射面で決定される所定の配光特性の光として前方に向けて照射される。
【0014】一方、前記側面遮光部72の内面で反射された光は、電球6の光軸に対して比較的に大きな角度で後方に向けられて反射鏡4に投射されることになるため、この光が反射鏡4で反射されたときにはグレア光となるおそれがある。しかしながら、図4に示されるように、側面遮光部72の内面には微小凹部77が形成されているため、この内面で反射される光は乱反射されることになり、その反射光は拡散状態とされるため、前記したような特定の方向に集中した状態となることはない。したがって、この拡散状態の光が反射鏡4において反射されても、グレア光として反射される光の光量は低減されることになり、前記したグレア光の発生が抑制されることになる。
【0015】このように、シェード7の側面遮光部72の内面に微小凹部77を形成するだけで、シェード7の表面ないし内面がCrメッキ処理されていても、グレア光の発生を抑制することが可能となる。これにより、シェード7と反射鏡4とによる意匠上の要求を満たす一方で、シェード7がいたずらに加熱されて表面のメッキ膜が変色されることが防止される。また、これにより、シェード7の内面を黒色塗料で塗布する作業も不要となり、低価格化が可能となる。さらに、前記微小凹部77は側面遮光部72の内面の全領域に形成されてもよいが、この微小凹部77を形成する際のプレス力によっては微小凹部77による鋼板の塑性変形が側面遮光部72の表面側に現れて見栄えを低下するおそれがあるため、前記したようにグレア光の原因となる領域にのみ形成することで、その見栄え低下が抑制される。
【0016】ここで、前記微小凹部77は、複数の線状の凹部を面状に配列した構成であってもよい。あるいは、微小凸部で構成してもよい。さらに、シボ加工やショットピーニング加工等の粗面加工技術を利用した構成としてもよい。ただし、これらの粗面加工を行う場合には、鋼板の打ち抜き加工とは別工程で加工を行う必要があるため、本発明の製造工程数及びコストの削減効果が低減されることは否めない。また、微小な凸部を配列することで微小凹凸を形成することも可能である。
【0017】なお、前記実施形態では、シェードを前面遮光部と側面遮光部とで2部品で構成しているが、技術的に可能であれば一枚の鋼板で一体に形成してもよい。この場合でも、打抜きと同時に微小凹凸を形成すれば、作業工数を削減する上で有効なものとなる。
【0018】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、光源から出射された光を遮光するシェードの内面に多数個の微小凹凸が形成されていることにより、この微小凹凸が形成されている領域で反射される光は、この微小凹凸によって拡散状態で反射されるため、シェード内面において特定の方向に集中して反射されることが防止でき、グレア光を抑制する。この場合、シェードをメッキ処理し、かつ内面に反射防止膜を形成しない場合でも前記したグレア光を抑制することが可能であるため、シェードの外観上の見栄えを確保する一方で、シェードの加熱を防止して変色による見栄えの低下を防止することができる。また、微小凹凸をシェードのプレス加工と同時に形成することにより、製造工数をさらに削減することができ、低コスト化が可能となる。
【出願人】 【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
【出願日】 平成9年(1997)10月3日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
【公開番号】 特開平11−111007
【公開日】 平成11年(1999)4月23日
【出願番号】 特願平9−270873