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【発明の名称】 車両用可変配光装置
【発明者】 【氏名】光本 直樹

【氏名】金子 卓

【氏名】川原 伸章

【氏名】石川 岳史

【氏名】奥地 弘章

【要約】 【課題】光利用率の低下を招くことなく、配光パターンの変更自由度が高く、装置の小型軽量化により車両前面の美観低下を回避でき、更にその上、狭小領域に光を照射する場合にはその照度向上が容易であるという各種利点を有する車両用可変配光装置を提供すること。

【解決手段】光源となるバルブ101から放射された光は導光手段102及びレンズ系104、J、105を通じて車両前方へ照射される。本発明では特に、レンズ系が液体封入式可変焦点レンズJを含む点をその特徴としている。この液体封入式可変焦点レンズJは、内部に充填された作動流体の圧力に応じてその焦点距離を変え、これによりバルブ101から放射され、導光手段102で導光された光の照射パターンすなわち配光パターンが変更される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】光源となるバルブと、前記バルブの光を車両前部に配設されたヘッドランプユニットまで伝送する導光手段と、内部に充填された光透過性液体の圧力により変形して焦点距離が変化する可変焦点レンズを有して前記導光手段と前記ヘッドランプユニットとの間又は前記ヘッドランプユニット内部に配設されるレンズ系と、入力信号に応じて前記可変焦点レンズに印加する圧力を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする車両用可変配光装置。
【請求項2】請求項1記載の車両用可変配光装置において、車速を検出する車速検出手段を備え、前記制御手段は、検出された前記車速に応じて前記圧力を制御することを特徴とする車両用可変配光装置。
【請求項3】請求項1記載の車両用可変配光装置において、前記可変焦点レンズは、弾性を有する輪板状の弾性板の表面に輪板状の圧電板を接合してそれぞれ構成されるとともに互いに軸方向に所定間隙を隔てて配列される複数の圧電変形素子と、各前記圧電変形素子の外周部を連結する外周連結部材と、各前記圧電変形素子の内周部を連結する内周連結部材と、中央部に形成されて光路をなす貫通孔とを有する積層型圧電アクチュエータと、透光性及び弾性を有するとともに外周部が前記内周連結部材及び外周連結部材の一方に直接または間接に接合されて略径方向に延在する円盤状の透明弾性膜と、透光性を有するとともに前記内周結部材及び外周連結部材の他方に直接または間接に接合されて前記透明弾性膜に対面する透明封止部材と、前記透明弾性膜および透明封止部材とともに密閉空間を形成する容器と、前記密閉空間に封入される透光性の作動流体と、を有することを特徴とする車両用可変配光装置。
【請求項4】請求項3記載の車両用可変配光装置において、前記外周連結部材および内周連結部材のうち少なくとも一方は前記各圧電変形素子の圧電板の電極に接続される導電部材からなることを特徴とする車両用可変配光装置【請求項5】前記請求項3記載の車両用可変配光装置において、前記透明封止部材は、前記内周連結部材に接合されて前記積層型圧電アクチュエータの軸方向へ駆動される円盤状の透明板からなり、前記容器は、外周部が前記外周連結部材に接合されレンズ孔が中央に形成されるリング部材と、可撓性を有して前記透明板及び前記リング部材を油密に接続する可撓性部材とを有し、前記透明弾性膜は、前記レンズ孔を覆って前記リング部材に接合されていることを特徴とする車両用可変配光装置【請求項6】請求項5記載の車両用可変配光装置において、前記透明弾性膜は、石英ガラスを含むガラス材料により形成されることを特徴とする車両用可変配光装置【請求項7】請求項5記載の車両用可変配光装置において、前記作動流体はシリコンオイルからなることを特徴とする車両用可変配光装置【請求項8】請求項5記載の車両用可変配光装置において、前記透明板及び透明弾性膜の非作動流体側表面に透光性の樹脂が貼付されていることを特徴とする車両用可変配光装置【請求項9】請求項5記載の車両用可変配光装置において、前記透明板及び透明弾性膜の非作動流体側表面は樹脂コーティングされていることを特徴とする車両用可変配光装置
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ヘッドライトの配光を変化させる車両用可変配光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】車両用可変配光装置の従来技術として、本出願人の出願になる特開平5ー266701号公報は、機械式シャッタを有する光学系により構成された配光装置を用いた車両用前照灯装置(以下、機械シャッタ式車両用可変配光装置ともいう)を提案している。この機械シャッタ式車両用可変配光装置は、光路を遮断可能なシェードと集光レンズとを有する集中光源方式を採用するとともに、走行状態によりシェードで調節して車両前照灯の配光を調節する。
【0003】この種類の車両用可変配光装置の別の従来技術として、日経メカニカル、1997.4.10、No.504,pp.27に、複数のバルブを切り替えることにより、配光パターンを可変にするマルチバルブ型ヘッドランプ装置(以下、バルブ切替式車両用可変配光装置ともいう)が記載されている。このバルブ切替式車両用可変配光装置では1つのヘッドランプユニットが複数のバルブ及びミラーのセットを内蔵しており、車両の走行状態に応じて点灯させるべきバルブが切り替えられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前者の機械シャッタ式車両用可変配光装置では、シェードの変位により遮光する機械式シャッタによりただ非照射領域へ向かう光を遮断するだけであるので、車両前方の照射領域を狭小化する場合において狭小化した照射領域に光を集中してその視認性を向上することができなかった。更に説明すると、たとえば歩行者やワインディングロードなどのように広い視野を必要とするような走行状況下で広い領域に光を分散させる以外に、雨や霧といった走行状況下で視認重要度の高い領域に光を集中してその視認性をできるだけ向上させたりする。
【0005】また、原理的に照射領域狭小化時の光利用率が低く、その分、シェードで反射された光はヘッドランプユニット内で反射を繰り返してその大部分が熱に転換し、ヘッドランプユニットの冷却負担が大きくなるという問題、バッテリーの利用効率も低下するという問題もあった。一方、後者のマルチバルブ型車両用可変配光装置では、バルブの点灯パターンを制御することにより配光を可変にする方式を採用するため、配光パターンを増やすにはヘッドランプユニット内に多数のバルブや反射鏡や配線やソケットなどを内蔵させねばならず、ヘッドランプユニットが通常のものより格段に大形化してしまい、経済性の低下の他、車両前面の美観を低下させるという問題があった。
【0006】また、機械シャッタ式車両用可変配光装置の場合と同じく原理的に、狭小化した照射領域に光を集中してその視認性を向上するということができないという不具合があった。本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、光利用率の低下を招くことなく、配光パターンの変更自由度が高く、装置の小型軽量化により車両前面の美観低下を回避でき、更にその上、狭小領域に光を照射する場合にはその照度向上が容易であるという各種利点を有する車両用可変配光装置を提供することを、その解決すべき課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】上記課題を解決するために、発明者らは以下の手段を発明した。本発明の第1の構成によれば、光源となるバルブから放射された光は導光手段及びレンズ系を通じてヘッドランプユニットから車両前方へ照射される。本発明では特に、レンズ系が液体封入式可変焦点レンズを含む点をその特徴としている。この液体封入式可変焦点レンズは、内部に充填された作動流体の圧力に応じてその焦点距離を変え、これによりバルブから放射され、導光手段で導光された光の照射パターンすなわち配光パターンが変更される。
【0008】本構成によれば、上述した従来の車両用可変配光装置に比べて、光利用率が高く、配光パターンを所定範囲で無段階に調節でき、装置の体格増大を必要としないので車両前面の美観低下を回避でき、更にその上、狭小領域に光を照射する場合にはその照度向上が容易であるという優れた利点をもつ車両用可変配光装置を実現することができる。
【0009】更に詳しく説明すると、本構成の装置では、配光パターン言い換えれば照射領域は可変焦点レンズの焦点距離の変更により調節され、具体的には液体封入式可変焦点レンズの液圧制御により調節される。たとえば液圧を増大すれば、そのレンズ面の曲率が縮小して焦点距離が短くなり、逆に液圧を減少すれば、そのレンズ面の曲率が増加して焦点距離が長くなり、これらの制御により光は広い照射領域に拡散したり、狭小な照射領域に集中したりする。したがって、雨や霧といった特定の走行条件下で視認重要度の高い領域に光を集中してその最低限の視認性をなんとか確保するといったことが可能となる。
【0010】また液圧制御により可変焦点レンズの厚さ、曲率、焦点距離を自由に制御できるため配光パターンを大きく変更することができる。請求項2記載の構成によれば請求項1記載の構成において更に、検出した車速に応じて圧力を制御し、可変焦点レンズの焦点距離を変え、配光パターンすなわち照射領域を変更する。
【0011】このようにすれば、車速に応じてその最適な照射領域を照射できるので、都合がよい。たとえば、高速走行時には運転者の視野は狭小かつ遠方となっているので、その部分に光を集中して視認領域の視認性を向上し、低速走行時には運転者の視野は広くかつ近くなっているので、その部分に光を広く拡散して視認領域の視認性を向上する。
【0012】このようにすれば、車速に応じて最適な配光パターンを得ることができる。本発明の第3の構成によれば、請求項1記載の車両用可変配光装置において更に、径方向中央部に貫通孔が形成されたリング状の圧電変形素子(バイモルフまたはユニモルフ)が積層され、外周連結材によりそれらの外周部が、内周連結部材によりそれらの内周部が互いに連結されて貫通孔付きの積層型圧電アクチュエータが形成される。このようにすれば、貫通孔により中央部に円筒状の光路用空間が確保できるので、単一の積層型圧電アクチュエータで可変焦点レンズを駆動することができる。また、外周連結部材および内周連結部材により、発生力は各圧電変形素子の総和になるので、発生力の必要に応じて圧電変形素子を積層すれば、十分な発生力が得られる。また、積層型圧電アクチュエータをレンズと同軸に配設することができるので、可変焦点レンズ全体をコンパクトに軽量にまとめることができる。また、単一の積層型圧電アクチュエータであるので、部品点数も少なくて済み、信頼性が向上する上にコストダウンにもなる。更に、積層された圧電変形素子のうちの一枚に不具合があっても、積層型圧電アクチュエータ全体の発生力は少し減少するだけで非対称性は生じないので、レンズにゆがみが生じることがない。
【0013】したがって、本構成の貫通孔付きの積層型圧電アクチュエータにより可変焦点レンズを駆動する構成を採用すれば、小型化、高信頼性化および低廉化することができ、小型軽量の可変焦点レンズ装置を実現することができる。請求項4記載の構成によれば請求項第3記載の車両用可変配光装置において更に、外周連結部材または内周連結部材が導電性の材料からなり、各圧電変形素子の圧電板の電極に給電する構成が採用される。この直接接続構成によればその分だけリ−ド線などによる配線を省略できるので、配線工数の低減の他、断線などによる導通不良の発生確率を低減できるので信頼性が向上する。
【0014】請求項5記載の構成によれば請求項3記載の車両用可変配光装置において更に、以下の構成を採用する。透明封止部材は円盤状の透明板で、積層型圧電アクチュエータのパイプ状の内周連結部材に接合されており、内周連結部材を介して積層型圧電アクチュエータによりその軸方向へ駆動される。容器は、外周部が外周連結部材に接合され、円形のレンズ孔が中央を軸方向に貫通しているリング部材と、可撓性を有してこのリング部材と透明板とを油密に接続しているリング状の可撓性部材とを有している。そして、透明弾性膜は、レンズ孔の周囲のリング部分に全周にわたって接合されている。なお、透明封止部材を構成する透明板は、好ましくは透明弾性膜よりも大きな剛性をもつことが好ましいが、透明封止部材を上述した透明弾性膜と同じ構造の透明弾性膜で構成することも可能である。
【0015】積層型圧電アクチュエータが内周連結部材を介して透明封止部材すなわち透明板を軸方向に駆動すると、透明板とともにその周囲の可撓性部材も変位して作動流体に圧力変動が生じ、この作動流体の圧力変動により透明弾性膜は押し引きされてその曲率が変化する。その結果、透明板と透明弾性膜とこれら両者の間に介在している作動流体とによって形成されるレンズの焦点位置が変化する。すなわち、本構成では、積層型圧電アクチュエータにより駆動されるのは透明弾性膜よりも頑丈に形成できる透明板であり、この透明板はその曲率変化を必要としないので破損しにくい。一方、透明弾性膜は、静止しているリング部材に全周囲が接合されているので、積層型圧電アクチュエータからの衝撃や加速度が直接かかることがなく、ただ作動流体の圧力に応じて変形するだけであるから、破損しにくい。したがって、本構成によれば頑丈で信頼性に富む可変焦点レンズ装置を実現することができる。
【0016】請求項6記載の構成によれば請求項5記載の車両用可変配光装置において更に、可変焦点レンズの透明弾性膜に石英ガラスを含むガラス材料を用いる点をその特徴とする。このようにすれば、透明弾性膜を形成している材料は石英ガラス(SiO2 )を含む無機ガラスであるので、合成樹脂などを用いるのに比べて、本構成の透明弾性膜は、傷がつきにくく、光透過率に優れ、かつ、化学的、機械的に安定であり、更に熱及び湿度に対しても安定とすることができる。更に、封入液体の圧力に応じて曲率が変化する重要な構成要素であるこの透明弾性膜は、長期ストレスにより塑性変形しやすい樹脂材ではなく、長期ストレスに対して塑性変形しにくい無機ガラスで構成したので、装置特性の経時変化を減らすこともできる。
【0017】請求項7記載の構成によれば請求項5記載の車両用可変配光装置において更に、作動流体としてシリコ−ンオイルを採用している。このようにすれば、光透過性、化学的安定性に優れ、粘性などの特性の経年変化も少なく温度などの環境による変化も比較的少なくすることができる。また、透明弾性膜および透明封止材がガラス製であるとすると、シリコ−ンオイルの屈折率がガラスの屈折率に近いので、境界面での反射が少なくなり、より良い光学特性が得られる。さらにシリコ−ンオイルの成分を選定することにより、適正な粘性を作動流体に持たせることができる。
【0018】請求項8記載の構成によれば請求項5記載の車両用可変配光装置において更に、透明板及び透明弾性膜の非作動流体側表面に透光性の樹脂を貼付した点をその特徴としている。更に説明すると、本構成では透明板および透明弾性膜の表面に樹脂を張り合わせているので、走行中の振動により万が一、該透明板、透明弾性膜が破損しても、その破損片の飛散、および作動流体の漏洩を防止できる。また、樹脂は透明板、および、透明弾性膜の表面のうち、作動流体に触れない側の表面に張り合わせているので、作動流体が樹脂にとけ込むことを防止することができる。
【0019】したがって、本手段によれば、走行中の振動などにより透明板、透明弾性膜が破損しても、その破損片の飛散防止、および作動流体の漏洩防止が可能な可変焦点レンズ装置を提供できるという効果がある。請求項9記載の構成によれば請求項5記載の車両用可変配光装置において更に、透明板及び透明弾性膜の非作動流体側表面に透光性の樹脂をコーティングした点をその特徴としている。更に説明すると、本構成では透明板および透明弾性膜の表面に樹脂をコーティングしているので、上述した請求項8記載の構成と同じく、走行中の振動により万が一、透明板、透明弾性膜が破損しても、その破損片の飛散、および作動流体の漏洩を防止できる。また、樹脂は透明板、および、透明弾性膜の表面のうち、作動流体に触れない側の表面にコーティングしているので、作動流体が樹脂にとけ込むことを防止することができる。
【0020】したがって、本構成によれば、前述の第7手段と同様に、走行中の振動などにより透明板、透明弾性膜が破損しても、その破損片の飛散防止、および作動流体の漏洩防止が可能な可変焦点レンズ装置を実現することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】本発明の可変焦点レンズを用いた車両用配光装置について、以下の実施例により更に詳細に説明する。
(実施例1)
(構成)この実施例の車両用可変配光装置の透視俯瞰図を図1に示す。
【0022】この車両用可変配光装置は、放電灯などからなる集中光源101、光ケーブル(本発明でいう導光手段)102、入射レンズ、可変焦点レンズ装置、出射レンズなどから構成されるレンズ系装置(本発明でいうレンズ系)103及びコントロ−ラ(制御手段)104から構成される。コントロ−ラ(制御手段)104は、マイコン構成を有し、入力指令に応じて後述する積層型圧電アクチュエータAに印加する電圧を制御する。
【0023】レンズ系装置103の横断面図を図2に示す。光ケーブル102の前方には、光ケーブル102からの出射光の光軸と同軸上に配設された入射レンズ104が配置されている。入射レンズ104の前方には、入射レンズ104の出射光の光軸と同軸上に配設された可変焦点レンズ装置Jが配置されている。可変焦点レンズ装置Jの焦点F1よりも更に前方に位置して、可変焦点レンズ装置Jからの出射光の光軸と同軸上に配設された、コリメータレンズなどからなる出射レンズ105が配設されている。
【0024】可変焦点レンズ装置Jの詳細を図3に示す。可変焦点レンズ装置Jは、積層型圧電アクチュエータAと、その一端に接合されている可変焦点レンズLとから構成されている。積層型圧電アクチュエータAは、図4(a)、(b)に示すように、4枚の積層された圧電バイモルフ(本発明でいう圧電変形素子)1と、各圧電バイモルフ1の外周部および内周をそれぞれ互いに連結している外周連結部材2および内周連結部材3とから構成されている。
【0025】すなわち、それぞれ中央部に貫通孔10を有する4枚のバイモルフ1がそれぞれ径方向に延設された姿勢で軸方向に一定間隙を隔てて配列されており、それらの各貫通孔10に面する内周には内周接続部材5を介してパイプ状の内周連結部材3が接合されている。また、6本の棒状の外周連結部材2が各圧電バイモルフ1の外周に隣接しつつ互いに60度ずつ離れて軸方向へ延設され、外周連結部材4を介して各圧電バイモルフ1の外周部に接合されている。
【0026】各圧電バイモルフ1は、図5に示すように、中央部に貫通孔10を有するリング状の弾性板11と、弾性板11の表裏両方の表面にそれぞれ接合されているリング状の圧電板12、13とからなる。弾性板11は、ばね弾性を有するステンレス薄板から形成されており、圧電板12、13の共通電極を兼ねている。圧電板12、13は圧電材料PZTからなる薄板であり、分極方向Pは軸方向とされている。圧電板12、13の表面には、銀の微細粉末を主成分とする導電ペーストが印刷された後、焼成されて形成された膜状の表面電極14、15が形成されている。
【0027】外周連結部材2は、図4(a)、(b)に示すように、ステンレス鋼からなる細い棒状部材である。外周連結部材2は、ステンレス鋼製のクリップ状の外周接続部材4を介して圧電バイモルフ1の弾性板11の外周部に銀鑞づけまたはレーザー溶接で接合され、その結果、外周連結部材2は弾性板11に電気的に導通している。
【0028】内周連結部材3は、ステンレス鋼製の薄板からなるパイプ材であり、図6に示すように、内周接続部材5を介して圧電バイモルフ1の内周部に接合されている。更に説明すると、内周連結部材3の外周面は、各絶縁リング52を介して各圧電バイモルフ1の内周面に当接しており、圧電バイモルフ1の弾性板1と内周連結部材3とは互いに絶縁されている。キャップ型の導電スペーサ部材51が圧電バイモルフ1の内周近傍部位の表裏両側に個別に当接しており、各圧電バイモルフ1の内周部はそれぞれ2つの対向する導電スペーサ部材51によって挟持されている。導電スペーサ部材51の内周面は内周連結部材3の外周面に銀鑞付けまたはレーザー溶接で接合されている。導電スペーサ部材51は、それぞれ各圧電バイモルフ1の表面電極14、15に導通可能に当接している。それゆえ、内周連結部材3は、導電スペーサ部材51を通じて各圧電バイモルフ1の表面電極14、15に給電可能となっている。
【0029】可変焦点レンズLは、図3に示すように、その径方向中央部の軸方向一方側に配設されて径方向へ延在している円盤状の透明板(透明封止部材)6と、その径方向中央部の軸方向他方側に配設されて径方向へ延在している透明弾性膜7と、両者6、7とともに密閉された内部空間を形成する容器8と、この内部空間に隙間なく封入されているシリコ−ンオイルからなる作動流体9とから構成されている。容器8は、中空円筒状の外周部分を有し、中央にレンズ孔80が形成されているリング部材81と、可撓性を有してリング部材81と透明板6をそれぞれ油密に全周接続しているリング状の弾性膜(本発明でいう可撓性部材)82と、リング状の接合部材83から構成されている。
【0030】接合部材83は、弾性膜82の内周部表面に全周にわたって接着されており、積層型圧電アクチュエータAの内周連結部材3の一端と整合して連動する。透明板6は本発明でいう透明封止部材であって、その外周部はリング状の弾性膜82の内周部の裏側に全周にわたって接着されており、弾性膜82を介して接合部材83と接合している。
【0031】積層型圧電アクチュエータAの貫通孔10と、可変焦点レンズLの透明板6、透明弾性膜7、および容器8のレンズ孔80とは、いずれも互いに同軸に配設されている。透明板6および透明弾性膜7と、両者6、7の間に介在する透明な作動流体9とで、焦点距離が調節可能な光学レンズすなわち可変焦点レンズが構成されている。透明板6および透明弾性膜7はいずれも石英ガラス製であり、作動流体9は所定の成分のシリコ−ンオイルであって、上記三者6、7、9の屈折率はほぼ同一である。
【0032】容器8の外形は回転対称形をしており、容器8のリング部材81の外周部には60度毎に小さな貫通孔が6ケ所で形成されている。この貫通孔には、積層型圧電アクチュエータAの一端に突出している外周連結部材2の端部が挿入されていて接着固定されている。すなわち、可変焦点レンズLの外周側の部分をなす容器8のリング部材81の外周部には、積層型圧電アクチュエータAの外周連結部材2が接合されている。一方、可変焦点レンズLの内周側の部分をなす透明板6には、容器8の弾性膜82および接合部材83を介して、積層型圧電アクチュエータAの内周連結部材3の一端が接合されている。
(作動)以上のように構成されたこの実施例の車両用可変配光装置の動作を説明する。
【0033】容器8を固定して積層型圧電アクチュエータAに印加電圧を加えると、各圧電バイモルフ1の外周に対してその内周が軸方向に変位することにより透明板6が内周連結部材3と連動して、積層型圧電アクチュエータAの軸方向へ変位される。すると、透明板6、透明弾性膜7及び容器8で形成されている密閉空間の容積が変化するため、この密閉空間に封入されている作動流体9の圧力が変動し、この圧力変動によって透明弾性膜7の曲率が変化する。透明弾性膜7、透明板6および作動流体9は光学レンズを形成しているので、この透明弾性膜7が突出したり陥没したりするたびに、同レンズが形成する焦点位置は変動する。すなわち、本実施例の可変焦点レンズ装置によれば、積層型圧電アクチュエータAへの印加電圧の制御により、レンズの焦点位置が任意に調整される。
【0034】その結果、可変焦点レンズ装置Jからの出射光は、出射レンズ105を通して前方に照射される。そのため、車速あるいは走行状態などに応じて積層型圧電アクチュエータAの印加電圧を制御して可変焦点レンズLの焦点位置を調整することにより、車両ヘッドランプからの出射光の配光パターンを調整できる。
(作用効果)この実施例の車両用可変配光装置の作用効果を説明する。
【0035】第1に、作動流体9が透明液体であるためレンズを通過する光の損失が低い。また、装置を従来より格段に小型軽量化でき、バッテリーの利用効率も高くできる。更に液圧制御により可変焦点レンズLの厚さ、曲率、焦点距離を自由に制御できるため配光パターンを無段階かつ大きく変更することができる。第2に、従来装置に比べて相対的に体格増大が格段に少ないので車両前面の美観低下を回避することができる。
【0036】第3に、狭小領域に光を照射する場合にはその照度向上を実現することができ、このため、雨や霧といった特定の走行条件下で視認重要度の高い領域に光を集中してその視認性を向上するといった重要な効果を奏する。第4に、図2に示すように出射レンズ10が可変焦点レンズLの焦点よりも遠い位置に配置されているので、可変焦点レンズLを通過する光ケーブル102からの出射光は、焦点位置F1で一度絞られ、出射レンズ105を介して焦点位置F1の光像が出射される。そのため、可変焦点レンズLの焦点位置F1を積層型圧電アクチュエータLの印加電圧制御を通して制御することにより、前述の効果に加えて、さらに多様な配光パターンを作ることができる。すなわち、本実施例のレンズ系装置を用いることにより多様な配光パターンを作成することができる。
【0037】第5に、可変焦点レンズLの透明弾性膜7を形成している材料は石英ガラスであるので、合成樹脂などにくらべて比較的硬度が高く、光学的な特性も良好なうえ、化学的により安定であり、弾性率などの特性の経年変化などの環境による変化も少ない。また、石英ガラスは、優れた透明度(光線の透過性)と、適度な弾性係数を、良好な加工性を備えているので、透明弾性膜の材料として好適である。すなわち、本実施例の可変焦点レンズ装置を用いることにより、光損失が低く、かつ良好な光学特性を持つ車両用可変配光装置を実現することができる。
【0038】第6に、可変焦点レンズLの作動流体9がシリコ−ンオイルであるので、作動流体9の透明度が高く、また化学的により安定であり、粘性などの特性の経年変化も少なく、温度などの環境により変化も比較的少ない。また、透明板6および透明弾性膜7が石英ガラス製であり、シリコ−ンオイルの屈折率がガラスの屈折率に近いので、両者6、7と作動流体9との各界面での反射が少なくなり、より良好な光学特性が得られる。すなわち、本実施例の可変焦点レンズ装置を用いることにより、前述の第5の効果に加えて、より光損失が少なく、より良好な光学特性を持つ車両用可変配光装置を実現することができる。
【0039】第7に、貫通孔10が光路をなす単一の積層型圧電アクチュエータAを可変焦点レンズLと一体化しているので可変焦点レンズ装置全体の小型化が可能になると同時に、信頼性の向上、コストダウンも可能になる。第8に、単一の積層型圧電アクチュエータAを可変焦点レンズLと同軸に配設しているので、可変焦点レンズ装置全体をコンパクトにまとめることができる。これにより圧電バイモルフ1と同程度の直径に可変焦点レンズ装置をまとめることができ、一層の小型化を実現することができる。
【0040】第9に、単一の積層型圧電アクチュエータAだけで可変焦点レンズLを駆動できるので部品点数も少なくて済み、信頼性が向上するうえに、コストダウンにもなる。また、積層された圧電変形素子のうち一枚に不具合であっても、積層型圧電アクチュエータ全体の発生力は少し減少するだけで非対称は生じないので、レンズに歪が生じることなく、使用し続けることができる。それゆえ、本実施例の積層型圧電アクチュエータAによれば、信頼性に優れる車両用可変配光装置を実現することができる。
【0041】第10に、積層型圧電アクチュエータAの内周連結部材3はパイプ材で構成されているので、最も単純な鋼製で部品点数が少なく組立が容易であり、破損しにくい。また、圧電バイモルフ1上に埃などが溜まりにくい。すなわち、本実施例の積層型圧電アクチュエータAによれば、組立が容易で工数が少なく低価格であるうえ、頑丈で歪にくく、埃も溜まりにくい光路をもつ車両用可変配光装置を実現することができる。
【0042】以上をまとめると、本実施例によれば、小型軽量、高信頼性、かつ、低光損失で多様な配光パターンを持つ車両用可変配光装置を実現することができる。
(実施例2)他の実施例を図8を参照して説明する。この実施例は、上述した実施例1の車両用可変配光装置において、可変焦点レンズ装置Jの焦点F1よりも近い位置に可変焦点レンズ装置Jからの出射光の光軸と同軸にコリメータレンズなどからなる出射レンズ105を配設したものである。
【0043】この実施例では、出射レンズ105が可変焦点レンズLの焦点F1よりも近い位置に配置されているので、可変焦点レンズLを通過する光ケーブル102からの出射光は、焦点F1で絞られる前に、出射レンズ105を通過する。これにより、出射レンズ105と可変焦点レンズLとの距離を実施例1より短くすることができ、体格を小型化することができる。
(実施例3)他の実施例を図9を参照して説明する。
【0044】この実施例は、上述した実施例1の車両用可変配光装置において、透明板6及び透明弾性膜7の表面のうちシリコ−ンオイル9に接しない側の表面にそれぞれ樹脂フィルム16、樹脂フィルム17を貼付したものである。この実施例によれば、透明板6及び透明弾性膜7の耐振性を向上してそれらが走行中の振動などにより破損するのを防止できるとともに、それらが破損しても破損片が飛散したり、透明作動流体が漏洩したりするのを防止することができる。
【0045】なお、透明板6及び透明弾性膜7の表面のうち、シリコ−ンオイル9に接しない側の表面に樹脂層をコーティングしても同様の効果を奏する。
(実施例4)他の実施例を図10を参照して説明する。この実施例は、上述した実施例1の車両用可変配光装置において、車速センサ105を追加し、この車速センサ105から出力される車速信号をコントロ−ラ(制御手段)104に入力し、コントロ−ラ104が車速信号に応じて圧電バイモルフ1へ印加する電圧を変更する構成を採用したものである。
【0046】コントロ−ラ104の制御動作の一例を図11のフロ−チャ−トを参照して説明する。まず、運転者からの配光パターン手動選択信号が入力されているかどうかを調べ(S100)、入力されていればそれに応じて配光パターンを選択し、選択された配光パターンに対応する電圧を圧電バイモルフ1に印加する(S101)。配光パターン手動選択信号が入力されていなければ、車速Vを読み込み(S102)、車速Vとしきい値V1、V2とを比較する(S103、S105)。車速Vが所定値V1未満であれば圧電バイモルフ1への印加電圧Voを最低電圧VLとし(S104)、車速Vが所定値V1〜V2であれば圧電バイモルフ1への印加電圧Voを中間電圧VMとし(S106)、車速Vが所定値V2以上であれば圧電バイモルフ1への印加電圧Voを最高電圧VHとする(S107)。
【0047】このようにすれば、車速に応じて、最適な配光パターンを実現することができる。たとえば、本実施例の可変焦点レンズ装置によれば、走行状態に応じて、図7(a)に示すように低速、中速、高速に対して出射光の配光パターン(P低:低速パターン、P中:中速パターン、P高:高速パターン)を調整することができる。なお、中速時の配光パターン「P中」は、図7(b)に示すようにレンズの曲率を全く変化させない状態で得られる。このときの焦点位置を「F中」とする。次に、低速時の配光パターン「P低」は、作動流体の圧力を中速時よりも低下させ、図7(c)のようにレンズの曲率を凹状態にし、焦点位置を「F中」よりも出射レンズよりに設定することにより得られる。また、高速時の配光パターン「P高」は、作動流体の圧力を中速時よりも高くし、図7(d)のようにレンズの曲率を凸状態にし、焦点位置を「F中」よりも可変焦点レンズよりに設定することで得られる。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成9年(1997)8月26日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
【公開番号】 特開平11−66911
【公開日】 平成11年(1999)3月9日
【出願番号】 特願平9−229967