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【発明の名称】 耐圧厚肉容器の配管貫通構造
【発明者】 【氏名】山下 鐵生

【要約】 【課題】加圧水型原子炉の原子炉容器底部を貫く計装用導管のように、耐圧厚肉容器を貫通して溶接される配管の内面の引張残留応力を低減して、応力腐食割れを防止する。

【解決手段】貫通穴13を有する原子炉容器の下部鏡板11と貫通穴13内を延びる配管15とを円周溶接17により連結する配管貫通部において、円周溶接17に近接する貫通穴13の内面に拡径部19を形成している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 貫通穴を有する容器壁と前記貫通穴を延びる配管とを円周溶接により連結する耐圧厚肉容器の配管貫通部において、溶接部に近接する前記貫通穴の内面に拡径部を形成していることを特徴とする耐圧厚肉容器の配管貫通構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高温高圧流体を内部に収容する耐圧厚肉容器の構造に関し、特にその半球殻状鏡板を配管が貫通する部分の接合構造に関する。
【0002】
【従来の技術】高温高圧流体を内部に収容する耐圧厚肉容器の厚い容器壁には、種々の目的で配管が貫通されて溶接される場合がある。例えば、加圧水型原子炉においては、図3に概念的に示すように、原子炉容器1の底部の球殻状鏡板3の貫通孔5に計装用導管7が貫通され、溶接9によって液密に取り付けられている。そして、このような構造においては、鏡板3の内面は導管7に対し傾斜しているから、溶接9も傾斜して楕円形になっている。而して、そのような傾斜楕円形の溶接を行うに際し、貫通穴5の内面と導管7の外面との間の隙間が大きいと溶接収縮などの関係で導管3が正規姿勢に対し傾斜する(倒れる)虞れがあると共に両者の中心位置がずれる虞れもある。このような事情から、溶接される導管7の位置及び姿勢乃至角度を常に一定に保持するため、貫通穴5の内面と導管7の外面との間の隙間を非常に小さくして両者を嵌合し、その後円周溶接により固定することとしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】然るに、前述のような嵌合、溶接による貫通配管と容器との接合構造においては、次のような問題がある。即ち、溶接入力により高温領域が溶融部の近傍に発生すると共に溶融金属の冷却、凝固により配管の内面に高い引張残留応力が発生し易い。このような製作による引張残留応力は、使用時の発生応力と重なって応力腐食割れを誘起し易く、ついには損傷による内部液体の漏洩といった大きな事故を招来し易い。従って、本発明の課題は、配管の取付け位置の精度及び姿勢等の形状精度がよく、且つ引張残留応力が小さく保持されて漏洩損傷等の発生が無い、耐圧厚肉容器の配管貫通構造を提供するにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】如上の課題を解決するため、本発明によれば、貫通穴を有する容器壁とその貫通穴を延びる配管とを円周溶接により連結する耐圧厚肉容器の配管貫通部において、溶接部に近接する貫通穴の内面に拡径部を形成している。拡径部の内径寸法は、配管に非常に狭い間隔で近接する貫通穴の主内面の内径よりも僅かに大きい程度が好適である。
【0005】
【発明の実施の形態】以下添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1を参照するに、原子炉容器の下部鏡板11には貫通穴13が穿設されていて、その中に配管15が貫通されている。貫通穴13の内面と配管15の外面との隙間は、説明の都合上誇張して図示されているが、0.013〜0.038mm程度であり両者は実質的に同心である下部鏡板11の内面部において、配管15は円周溶接17により下部鏡板11に溶接されているが、それに隣接して貫通穴13に拡径部19が形成されている。拡径部19の内面と配管15の外面との間の隙間は、0.5mm程度であるから、貫通穴13の内径と拡径部19の内径との差は、0.924〜0.974mm程度の値になる。そして、配管15の構成材料の線膨張係数は、下部鏡板11のそれよりも大きい。
【0006】上述の構成の接合部における残留応力の発生について検討するに、溶接入力によって円周溶接17に隣接する配管5の領域は膨張するが、拡径部19があるため配管15の外面は拡径部19の内面即ち下部鏡板11に接触せず、配管15の外面には圧縮塑性変形が生じない。このため円周溶接17の溶融金属の凝固に伴う収縮によって配管15は外側に引っ張られるが、その圧縮塑性変形が生じていないからその引張歪みも小さいものとなる。よって、配管15の内面に生ずる引張残留応力が従来のものに比し小さくなる。
【0007】図3に本発明の接合構造における配管15の内面の残留応力と従来構造の配管7の内面の残留応力の差を定性的に示す。尚符号lによって表される長さは7mm程度であり、拡径部19の有無が唯一の構造的な差である。図において左側の断面における配管15の内面の周方向残留応力は曲線A、軸方向残留応力は曲線Bで示される。従来構造の対応する配管7の内面の周方向残留応力は曲線a、軸方向残留応力は曲線bで示される。又、右側の断面において、配管15の内面の周方向残留応力は曲線C、軸方向残留応力は曲線Dで示される。同様に、対応する配管7の内面の周方向残留応力は曲線c、軸方向残留応力は曲線dで示される。なお、(+)は引張応力、(−)は圧縮応力を示す。図から分かるように、円周溶接17の下端部に対応する位置の配管15内面の残留応力は、減少している。このように残留応力は減少している上に、拡径部19の隙間は0.5mmであるので、配管15の上端部における倒れは実用上問題にならないことが判明している。尚、拡径部19の長さをあまり短くすると、従来構造に変わらず残留応力に変化がなく、又隙間を余り大きくとると溶接部の強度に問題が出るので、実際の値の決定に際しては、それらを十分考慮する必要がある。
【0008】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば貫通配管を厚肉容器壁に円周溶接するに際し、円周溶接に隣接して貫通穴に拡径部を形成したので、溶接時に貫通配管を拘束せず、最終的に配管内面における発生残留応力を低減することができる。
【出願人】 【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
【出願日】 平成10年(1998)1月19日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道照 (外4名)
【公開番号】 特開平11−201334
【公開日】 平成11年(1999)7月30日
【出願番号】 特願平10−7760