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【発明の名称】 伸縮離脱防止継手
【発明者】 【氏名】赤石 ▲頼▼信

【氏名】山田 良樹

【氏名】槇 厚

【要約】 【課題】本来の伸縮自在性を発揮しつつ、継手部に大きな抜出し方向の外力が加わった場合でも、該掛止効果を失なうことなく安定して優れた離脱防止効果を発揮し得る様な合成樹脂製の継手を提供すること。

【解決手段】合成樹脂製管の受口と挿口を伸縮可能なシール接続構造とすると共に、受口内面に設けた掛止面と、該掛止面より奥深い位置の挿口外面に設けられた掛止突起の間に配置されたロックリングにより離脱防止構造とした伸縮離脱防止継手で、上記挿口内面側の上記掛止突起に対応する位置に、該挿口を構成する合成樹脂材よりも高剛性の難変形材からなる補強リングが、挿口管々肉内に埋設され、上記掛止突起の割れ誘発を防止する構造とした伸縮離脱防止継手を開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 合成樹脂製管の受口と挿口を伸縮可能なシール接続構造とすると共に、受口内面に設けた掛止面と、該掛止面より奥深い位置の挿口外面に設けられた掛止突起の間に配置されたロックリングにより離脱防止構造とした伸縮離脱防止継手であって、上記挿口の内面側であって上記掛止突起に対応する位置には、該挿口を構成する合成樹脂材よりも高剛性の難変形材からなる、上記掛止突起の変形防止用補強リングが、挿口管々肉内に埋設されていることを特徴とする伸縮離脱防止継手。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、伸縮自在性と離脱防止性を兼ね備えた合成樹脂製の伸縮離脱防止継手に関し、特に該継手部に大きな引き抜き方向の力が作用したときでも、離脱防止作用をより確実に発揮し得る様に改善された伸縮離脱防止継手に関するものである。
【0002】
【従来の技術】伸縮性と離脱防止性を兼ね備えた継手としては、例えば図4(A),(B)の要部断面図に示す様な構造の継手が知られている。即ち図4(A),(B)において1は挿口、2は受口を示し、挿口1の先端部外周には環状の掛止突起3が形成されると共に、最先端外周側には面取り状のテーパ面4が設けられている。一方受口2の開口部側内周面には、環状溝5が設けられこれにシール用パッキン6が装着されると共に、その奥側にはもう1つの環状溝7が形成され、これに金属等の剛性材からなる1つ割り構造で拡縮径可能なロックリング8が装着され、更にその奥側には、上記挿口1先端部の管軸方向(図の左右方向)移動を許す腔部10が適当な長さで形成されている。
【0003】そして上記環状溝7およびロックリング8の受口開口側には、同一勾配のテーパ面Tが夫々設けられており、挿口1が左方向(抜け方向)に移動して掛止突起3の左側垂直面(掛止面)がロックリング8に当接し、更に抜け方向へ移動しようとして該ロックリング8に受口開口側方向の力がかかった時には、ロックリング8がテーパ面Tに沿って僅かにスライドしつつ縮径できる様に構成されている。
【0004】従って、受口2の環状溝5にシール用パッキン6、環状溝7にロックリング8を夫々装着した状態で、挿口1先端外周のテーパ面4を利用して、該挿口1先端の掛止突起3をロックリング8の奥側まで突っ込んだ状態[図4(A)]では、挿口1と受口2はシール用パッキン6によりシール作用を受けて液密下に接続され、挿口1は、腔部10の軸方向長さ分だけ受口2奥方向への挿入が許される。他方挿口1は、図4(A)の状態から矢印方向に移動して管路全体の伸長に対応することができるが、その先端の掛止突起3がロックリング8に当接した時点で抜け方向の移動が阻止され[図4(B)]、ここで離脱防止が図られる。
【0005】ところで上記の様な継手構造は、従来より鋳鉄等の金属材によって作製されており、上記の様な受・挿継手構造とすることによって、管軸方向に伸縮自在性を持たせると共に継手部の離脱を防止することができた。ところが最近、継手素材の軽量化や低コスト化、更には発錆による問題などが指摘されるにつれて、この様な継手を例えば高密度ポリエチレンの如き硬質合成樹脂材で作製しようとする動きが生じてきている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記の様な合成樹脂製の継手であっても、図示した様な構造とすれば継手部の伸縮自在性と離脱防止性は有効に発揮される。ところがこの様な合成樹脂製の継手では、金属材に比べて素材の強度不足に起因して新たな問題を生じることが確認された。
【0007】まず第1の問題は、挿口におけるシール用パッキン当接領域が、該シール用パッキンの締付力によって変形したり破損し、液密性を失うということである。即ち前述の様な構造の継手では、例えば図4に示した如く断面視で舌状に膨出したシール部を有するパッキンを使用することによって高度の液密性を確保できる様にしているが、その結果として、挿口1の該シール用パッキン6当接領域には該パッキン6による大きな締付力が作用し、挿口1が該締付力によって変形したり破損する恐れがある。
【0008】そこでこうした挿口1の変形や破損による液密性の低下を防止するため、本出願人は図5に示す如く該挿口1のシール用パッキン6当接領域の内面側にスリーブ15を装着して強化する方法を開発し、先に特許出願を済ませた。この場合、例えば図6に示す如く前記スリーブ15を挿口1の先端開口部まで延長すると共にその先端をフランジ状に加工し、該フランジ部で挿口1の先端面を強化する手段も有効であることを明らかにした。
【0009】第2の問題は、上記の様な合成樹脂製の管継手部に、地盤沈下や地震などによる地殻変動によって引き抜き方向に大きな力がかかった場合、該引き抜き方向の力あるいは更に曲げ方向や偏心方向の外力が前記掛止突起3の立上り部に集中的に作用し、例えば図7に示す如く挿口1の先端部が内側に変形したり或は掛止突起3が削り取られる様に脱落し、離脱防止効果が失われるということである。こうした問題は、前記図6に示した如くスリーブ15を挿口1の先端開口部まで延長して存在させることによりある程度改善することができる。しかしながらこのスリーブ15は、前述の如く元々シール用パッキン6の締付力に対する強化を目的として配置されるものであり、前記図7で示した様な掛止突起3の変形や脱落を防止する効果は十分といえない。
【0010】本発明は、合成樹脂製継手を実用化する際に見られる上記の様な問題点、とりわけ前記第2の問題に着目してなされたものであって、本来の伸縮自在性を発揮しつつ、掛止突起3に大きな抜出し方向の外力が加わった場合でも、該掛止突起3が変形したり脱落して離脱防止効果を喪失する様なことがなく、安定して優れた離脱防止効果を発揮し得る様な合成樹脂製の継手を提供しようとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決することのできた本発明に係る伸縮離脱防止継手とは、合成樹脂製管の受口と挿口を伸縮可能なシール接続構造とすると共に、受口内面に設けた掛止面と、該掛止面より奥深い位置の挿口外面に設けられた掛止突起の間に配置されたロックリングにより離脱防止構造とした伸縮離脱防止継手であって、上記挿口の内面側であって上記掛止突起に対応する位置には、該挿口を構成する合成樹脂材よりも高剛性の難変形材からなる、上記掛止突起の変形防止用補強リングが、挿口管々肉内に埋設された構造としたところに要旨を有している。
【0012】
【発明の実施の形態】上記の様に本発明では、合成樹脂製の受口と挿口とによって構成される離脱防止継手に見られる掛止突起の変形や脱落による離脱防止作用の喪失を阻止し、該管継手部に大きな抜け出し方向の外力が作用したときでも安定して優れた離脱防止効果を発揮し得る様、挿口の外面側に形成される掛止突起の内面側を高剛性の難変形材からなる補強リングによって強化した点に特徴を有しており、こうした補強構造とすることによって、該掛止突起の変形や脱落を阻止し、強い抜け出し方向の力を受けたときでも優れた離脱防止性能を確実に発揮し得る様にしたものである。
【0013】以下、一実施例を示す図面を参照しつつ本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0014】図1は本発明にかかる伸縮離脱防止継手を例示する断面説明図であり、図中1は挿口、2は受口を示し、これらは高密度ポリエチレンの如きポリオレフィン系樹脂等によって構成され、通常は射出成形法やインサート成形法等によって成形される。
【0015】この挿口1には、先端部外周に、後述するロックリング8により掛止されて離脱を防止する為の掛止突起3が形成されている。一方、受口2の開口端部側内周面には環状溝5が設けられ、これにシール用パッキン6が装着されると共に、その奥側にもう1つの環状溝7が形成され、これに剛性材からなる1つ割り構造(C型)で弾性的に拡縮径可能なロックリング8が装着されている。そして、更にその奥側には、上記挿口1先端部の管軸方向移動を許す腔部10が適当な長さで形成されている。図中11は内周面の複数箇所(通常4〜8箇所程度)に設けた補強用リブ、12は挿口1の挿し込み端を規制するストッパーを示している。
【0016】そして上記環状溝7およびロックリング8の受口1開口側には、それぞれテーパ面Tが設けられ、挿口1が左方向(抜け方向)に移動して掛止突起3の左側垂直面(掛止面)がロックリング8に当接し、更に抜け方向へ移動しようとして該ロックリング8に受口開口側方向の力がかかった時には、ロックリング8がテーパ面Tに沿ってスライドして縮径し得る様に構成されている。また環状溝7における開口部側の壁面7aは、ロックリング8の過剰な縮径を防止するための掛止面を構成している。従って挿口1は、腔部10の長さLに応じて図1の破線位置Bから破線位置Cの間で軸方向(図の左右方向)移動し、管路全体の伸縮に対応することができる。
【0017】また、上記挿口1の先端部外周に設けられる掛止突起3の内周面側には、挿口1の構成素材よりも高剛性の難変形材からなる補強リング14が設けられ、該補強リング14によって上記掛止突起3形成部を内面側から強化している。その結果、例えば図7で説明した様に継手伸長時にロックリング8による抱締力と引き抜き方向の力が加わって該掛止突起3に大きな力が作用したときでも、該掛止突起3は内面側から補強リング14によって強化されているので、該掛止突起3が変形したり脱落する様なことがなく、離脱防止性能がより確実に発揮される。ここで用いられる補強リング14の素材は、挿口1を構成する素材よりも高剛性の難変形材であれば特に制限されないが、通常はステンレス鋼や砲金などの金属や硬質塩化ビニル樹脂、ポリフェニレン系樹脂等の高剛性素材が使用される。
【0018】この様に本発明では、離脱防止機能を発揮する挿口1の掛止突起3の内面側を補強リング14によって内面側から強化し、該掛止突起3が変形したり脱落するのを阻止することによって離脱防止性能を確実に発揮せしめ得る様にしたところに特徴を有するものであり、従って補強リング14は、こうした強化効果を有効に発揮し得る限りその形状・構造等には一切制限がなく、例えば図1に示した様な単環状の他、例えば図2(A)に示す如く掛止突起3の立上り角部に対応する強化効果を更に高めるため段付き形状の補強リング14とするなど、必要に応じて形状・構造を任意に変更することが可能である。
【0019】また、図1に示した様な離脱防止継手においては、前述の如く挿口1のシール用パッキン6の当接位置にシール用パッキン6の抱接力が作用して破損を招く恐れがある。従ってこの様な局部的な破壊を防止するため、例えば図1に示した様に、挿口1のシール用パッキン6当接領域の内面側に、前述した様な高剛性素材からなるスリーブ15を配置し、内面側から補強しておくことは、本発明を実用化する際の好ましい態様として推奨される。
【0020】なお図1の例では、補強リング14とスリーブ15を別体として形成した例を示したが、これらは一体に形成したものであっても構わない。なお該補強リング14は、挿口1を成形する際に成形型内に予め装着しておいてインサート成形により埋め込んで一体化してもよく、或は埋込用の溝を予め形成しておいて事後的に埋設することも可能である。
【0021】尚スリーブ15は、前述の如くシール用パッキン6による抱締力に対して補強するものであるから、挿口1の内面全域に装着する必要はなく、シール用パッキン6の当接領域のみに装着するだけでその目的を十分に果たすことができる。
【0022】また図1では、掛止突起3を挿口1の先端部外周に環状に形成した例を示したが、該掛止突起3は必ずしも全周に設けなければならない訳ではなく、周方向に断続的な突起として形成することも可能であり、更には、例えば図2(B)に示す如く挿口1よりもやや奥側に掛止突起3を形成し、該掛止突起3形成位置の内面側に補強リング14を埋設して強化することも有効である。また、例えば図2(C)に示す如く挿口1の先端側外周に環状溝16を形成することによってその先端部側を掛止突起3とすることも可能である。
【0023】図3は本発明にかかる離脱防止継手の更に他の実施例を示す断面説明図であり、受口2に設けられるシール用パッキン6とロックリング8の装着位置を変更すると共に、掛止突起3を挿口1の先端開口部よりもかなり奥側に形成している。即ち本例では、受口2の最先端部内周にロックリング装着用の環状溝7を形成してこれにロックリング8を装着すると共に、その奥側にシール用パッキン装着用の環状溝5を形成してそれにシール用パッキン6を装着し、該環状溝5の更に奥側に所定長さの腔部10を形成する一方、挿口1の先端部には、前記腔部10に対応する長さを残してその奥側に掛止突起3が形成されると共に、その内面側に補強リング14を埋設固定して強化している。そして、該補強リング14埋設部よりも挿口1開口側の内面は補強用のスリーブ15によって強化している。
【0024】この継手では、上記掛止突起3形成部よりも挿口1先端側の外周面に密着するシール用パッキン6によって伸縮自在性と液密性が確保され、また挿口1が抜け出し方向に移動して掛止突起3が図面左側に移動し、該掛止突起3がロックリング8に当接すると、その位置で挿口1の抜出しが掛止され、離脱防止が図られる。そしてこの場合も、掛止突起3の内面は補強リング14により強化されているので、該掛止突起3に抜出し方向の大きな力が作用したときでも、該掛止突起3の破損が抑えられ、より確実な離脱防止機能が発揮されることになる。
【0025】この様な離脱防止構造であれば、該継手内の流体はシール用パッキン6の部分で確実にシールされ、流体がロックリング8方向へ漏出することがなく、例えば金属によって形成される該ロックリング8の発錆による劣化も阻止されるので、ロックリングの材質が制限されることもない。
【0026】上記の様に本発明では、ロックリングを掛止するための掛止突起3を補強リング14によって内面側から強化することによって離脱防止性能を高めたところに特徴を有しており、こうした構成を有している限りその他の構成は特に制限的でなく、例えば、受口2に設けられるシール用パッキン掛合用の環状溝5やロックリング掛合用の環状溝7の形成位置や形状など、あるいはシール用パッキン6やロックリング8の形状等は必要に応じて任意に変えることができ、また腔部10の長さも必要とされる伸縮許容長さに応じて任意に変更することができる。尚、ロックリング8は金属等の剛性材からなる1つ割り構造の締り勝手もしくは開き勝手のリングによって構成し、その外周には、図示する如く環状溝7に形成されるテーパ面に対応して受口開口側に縮径するテーパ面を形成し、受口2本体部に局部的な力を作用させることなくテーパ面に沿ってスムーズに拡縮径できる様にすることが望ましい。
【0027】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、挿口1の先端側に設けられてロックリングとの掛合により離脱防止を図る掛止突起3を補強リング14によって内面側から強化することによって、該掛止突起3の破壊や脱落を防止することができ、地盤沈下や地震等で抜け出し方向に大きな外力を受けたときでも、高度の離脱防止性能を発揮する合成樹脂製の継手を提供し得ることができ、例えば上水用の管継手などとして極めて有効に活用できる。
【出願人】 【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
【出願日】 平成9年(1997)9月19日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司 (外2名)
【公開番号】 特開平11−94153
【公開日】 平成11年(1999)4月9日
【出願番号】 特願平9−255038