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【発明の名称】 クラッド鋼管継ぎ手
【発明者】 【氏名】丸山 和士

【氏名】山本 修治

【氏名】坂本 俊治

【氏名】津留 英司

【要約】 【課題】腐食流体が流れる内部のその流体に接する部分全てを耐食性の金属材料のクラッド材で包囲する腐食性の高い油井管用管継ぎ手を提供する。

【解決手段】ピンの内面側には、ピンの金属接触シール部および先端部加工ができる程度の厚みを持つ耐食性の金属材料のクラッド部を持ち、ボックスの中央突起部の内面側表面部は、ピン側の金属接触シール部に対応する金属接触部が加工できる程度の厚みを持つ耐食性の金属材料のクラッド部を有する構造としたクラッド鋼管継ぎ手。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 内面に耐食金属材料をライニングした鋼管を用いた、内面に雌ネジを有するボックス2と、外面に雄ネジを有するピン1を螺合するネジ継ぎ手において、ネジなし先端部に階段状に配置した2ケ所の肩部とその中間部が金属接触面から構成されるピン側と、ピン側先端形状に対応する1ケ所の肩部とピン金属接触面と対になる金属接触面から構成されるボックス側とからなり、ピン先端の内面側耐食金属材料は少なくとも、その材料で金属接触面が加工できる程度の厚みを持ち、ボックス中央突起部の突起内表面に位置する金属接触面は、耐食金属材料で加工できる程度の厚みを持ち、両者の締め込みにより前記耐食金属材料でその内面、端面および金属接触面で囲まれたピン先端同士は中央部で隣接或いは衝接し、同時にこれらピン先端外周部は耐食金属材料のボックス中央突起部の内面金属接触面と緊密なシール部を構成し、締め込み後の鋼管内面は耐食金属材料で保護された態様となり、その繋ぎ目も表面が全て耐食金属材料で閉じ込められた気密部を持たせたことを特徴とするクラッド鋼管継ぎ手。
【請求項2】 前記ピンまたはボックス、或いはその両方の加工素材として、クラッド鋼管を使用せず耐食金属材料でできたインサートリング、または肉盛り溶接法を適用した素材を利用したことを特徴とする請求項1記載のクラッド鋼管継ぎ手。
【請求項3】 前記ネジ継ぎ手の締結時にピン先端部に隙間を設け、その隙間に耐食パッキンリングを挿入したことを特徴とする請求項1または2記載のクラッド鋼管継ぎ手。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、腐食性内部流体のシール性が要求されるクラッド油井管、クラッドラインパイプのネジ継ぎ手において、製造コスト削減を図りつつ、易製造性および高品質を実現したネジ継ぎ手に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より腐食性内部流体のシール性が要求されるクラッド鋼管のネジ継ぎ手においては、腐食流体をシールする部分を確保するために、図1に示す特開昭57−76383号公報に開示されたように、管端に雄ネジ加工したピンに対しては、その先端部にクラッド鋼管の内張り材質と同じか、もしくは同等の腐食特性を有する材料を肉盛り溶接するか、または、図2に示す特開昭57−76386号公報に開示されたように、内面に雌ネジ加工をしたボックスに対しては、その中央突起部に金属接触シール部を設けるため継ぎ手内面に耐食性インサートリングを挿入したり、中央突起部を肉盛り溶接したり、普通鋼突起を含むようにバタリング溶接等を施していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、クラッド鋼管のネジ継ぎ手において、ピンおよびボックスの管端肉盛り多パス溶接は著しく生産性が低く、コスト上昇の要因となっている。また、インサートリングの挿入もリング費用が余分にかかり、挿入部の加工と継ぎ手のネジ加工を分けて行うことになり、そのため製造工程も長くなる。このように、クラッド継ぎ手の気密部の処理には費用と時間がかかり、耐食材料一体物より安価にできるというクラッド鋼管の長所を十分に生かせていないのが現状である。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解決するために、ボックス素管にはクラッド素管を適用し、ピンにもクラッド鋼管またはその管端をアップセット加工して管端シール部を含む継ぎ手を加工することとし、継ぎ手構造にはクラッドの内張り耐食材料の厚さが薄くても金属接触シール部を確保できるよう工夫したものである。
【0005】本発明によるクラッド鋼管継ぎ手構造の概要を説明すると、内面に耐食金属材料をライニングした鋼管を用い、内面に雌ネジを有するボックスと、外面に雄ネジを有するピンを螺合する鋼管のネジ継ぎ手において、ネジなし先端部に階段状に配置した2ケ所の肩部とその中間部が金属接触面から構成されるピン側と、ピン側先端形状に対応する1ケ所の肩部とピン金属接触構成面と対になる金属接触面から構成されるボックス側とからなり、ピン先端の内面側耐食金属材料の厚みは少なくとも金属接触構成面が加工できる程度確保され、ボックス中央突起部は金属接触構成面が加工できる程度にクラデイングされている。
【0006】両者の締め込みにより、耐食金属材料でその内面、端面および金属接触構成面で囲まれたピン先端同士は中央部で隣接或いは衝接し、同時にこれらピン先端外周部は耐食金属材料のボックス中央突起部の内面金属接触面と緊密なシール部を構成し、締め込み後の鋼管内面は耐食金属材料で保護された態様となり、その繋ぎ目も表面が全て耐食金属材料で閉じ込められた気密部となり、そのため腐食性内部流体に接触する箇所は全て耐食材料で保護された継ぎ手構造が可能になる。
【0007】また、当然のことながら、ピンまたはボックス、或いは両方にインサートリングまたは肉盛り溶接法を適用してもシール性および内面の耐食性が損なわれるものではないが、コスト低減、易製造性、熱影響による母材変質を回避できる等の目的を達成するためには、クラッド鋼管でピンおよびボックスを加工する本発明で最も上記メリットが享受できるものとなる。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。図3は、本発明によるクラッド鋼管のネジ継ぎ手の嵌合状態を示すもので、その主要部分を拡大した横断面図である。図3において、管本体1の一端にテーパ雄ネジが加工され、その先端部には2ケ所の肩部5、6、そしてそれらの間に金属接触部4が加工されている。ボックス2には、前記雄ネジ3に嵌合する雌ネジ3’が加工され、雄ネジ先端形状に対応するように1ケ所の肩部5’および金属接触部4’が加工されている。雄ネジ先端部の2ケ所の肩部は、ネジ側に近い5、5’が締め付け位置を制御することを目的に配置され、ピン先端肩部6、6’は軽微に衝接することによりパイプ内面を耐食材料で覆うことを目的とする。また、前記衝接部のシール性をより確実にするためには後述の防食リングをその中間に挟むことも有効である。
【0009】ピンの内面クラッド耐食材7の厚みは、外面との接触位置8が少なくとも金属接触シール部4、4’面においてシールに必要な部分が耐食材料同士の接触になるように設計する。前記耐食材料の厚みが厚すぎると外面の相対厚みが薄くなり、また、前記耐食材料をオーステナイト系ステンレス鋼、外面を焼き入れ、焼き戻し高強度鋼とする一般的使用法においては継ぎ手効率の低下に繋がるので好ましくない。また、反対に耐食材7の厚みが十分とれない場合には、図5に示すように管端アップセット加工を施し、クラッド耐食材7を増肉するなどの手段を採ることも有効である。
【0010】ボックスの内面クラッド耐食材8の厚みは、金属接触シール部4’面が耐食材料になっていれば良い。このように薄いクラッド厚みを効果的に利用してピン、ボックスを加工するためには素材のクラッド材とネジ加工後の関係は図4に示すようになる。ピンでは図4aに示すように破線より外側はネジ切削で除去され、ボックスでは図4bに示すように破線より内側がネジ切削により除去される。
【0011】図4に示すクラッド素管の製法は、界面がメカニカルボンデイングではなく、メタラジカルボンデイングであることが本発明の条件であり、そのための製法としては内管・外管の組立材を熱押し、またはプラグおよびマンドレル方式のシームレス圧延にてそのクラッド界面の接着強度を高めたもの、更に組立時に後工程での接着性を良くするために外殻内面にNiメッキを施したり、拡散接合、爆着などの前処理を施しておくなどの方法も適用できる。
【0012】本発明によるクラッド鋼管継ぎ手の内部流体に対する耐食性および気密性能は次の通りである。ネジ締め付けによって、最初にピン先端金属接触面4とこれに対応するボックス側金属接触面4’とが接触し第一の密封面を形成する。締め込みが進につれて接触面の面圧は増大し、密封効果は向上し継ぎ手の内部流体に対する耐食性も維持される。
【0013】締め込みの最終段階では、肩部5、5’を衝接させ、続くネジ締め付けによって前記肩部5、5’は第二のシール面を形成し締め込みを完了するか、または、肩部6、6’を先に衝接させ、続くネジ締め付けによって前記肩部6、6’に第二のシール面を形成する。前者の場合には、肩部5、5’をトルクショルダーとして十分に利用できるが、反面、肩部6、6’の接触、すなわち、シール機能は不完全である。それでもシールは金属接触部4、4’で保持しているので安全であるが、2重の安全を考えるなら図6のように締め込み完了時にピン先端部にシールリング11が入るように工夫する方法もある。前記肩部6、6’を先に接触させる時は過剰な締め込みにより金属接触部のシール機能が損なわれないように5−6、5’−6のスパン公差管理を厳密に行い、肩部5、5’にて過剰締め込みの防止を図る必要がある。締め込みが完了すると、左右のピン内面10、10’は一直線となり継ぎ手部の耐食材料ライニングは完成する。
【0014】以上述べたように、本発明によるクラッド鋼管継ぎ手は、肉厚の薄い耐食材料クラッド鋼管から直接クラッド鋼管用ネジ継ぎ手を加工し、耐食材料の肉盛り溶接、またはインサートリング挿入などの余分な工程を省略して、製造コストの削減、生産性向上、品質向上を図ったことを特徴とする継ぎ手である。
【0015】
【実施例】以上の説明は、本発明におけるネジ継ぎ手の機能に関する主要部分の説明であるが、実用例として以下に示す実施例および図7に基づいて説明する。熱押しクラッド素管を利用してピンは外管がAPI規格、L80グレード、内管がオーステナイト系高合金C276、外径:88.9mm、肉厚:12.7mm、内管厚み:4.5mmの鋼管を用い、それにAPI規格のバットレスを切ったネジ継ぎ手に、ピン先端ネジなし先端肩部5、6の肉厚をそれぞれ3mm、2mmとし、ピン先端密封面4のテーパ:1/10、長さ:10mmとし、ボックスも熱押しクラッド素管を利用し、外管、内管の素材はピン素材と同じで、外径:105mm、肉厚:15.5mm、内管厚み:4mmの鋼管を用い、それにピン同様のネジ加工を行い、締め付け完了時、耐食材料による密封箇所が前述したようにして、ボックス内面には締め込み時に焼き付きを起こさないように、Cuメッキを施してクラッド鋼管継ぎ手を試作した。
【0016】次に、前記クラッド鋼管継ぎ手の実用性能を確認するため、継ぎ手は5回の繰り返し締め込み試験に対してクラッド境界部、接触表面に異常のないことを確認し、その後、管本体の降伏内圧の80%に相当する窒素ガス圧:843気圧および管体の降伏強度の80%に相当する引っ張り荷重:107トンを同時に負荷して、更に163℃と67℃での温度内で熱サイクルを100回加えたが何ら気密性を損なうことなく使用上優れた気密性を有することが確認された。
【0017】
【発明の効果】上述したように、本発明によるクラッド鋼管継ぎ手は、ピンまたはボックス、或いは両方にインサートリングまたは肉盛り溶接法を適用してもシール性および内面の耐食性が損なわれず、コスト低減、易製造性、熱影響による母材変質を回避でき、腐食性内部流体のシール性が要求されるクラッド油井管、クラッドラインパイプのネジ継ぎ手の提供が可能である。
【出願人】 【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【出願日】 平成9年(1997)9月19日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬 (外3名)
【公開番号】 特開平11−94142
【公開日】 平成11年(1999)4月9日
【出願番号】 特願平9−255159