トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F16 機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段




【発明の名称】 油井管
【発明者】 【氏名】長谷川 佳代

【氏名】菅原 啓司

【氏名】西 正嗣

【氏名】和田 英之

【要約】 【課題】油井管本体の外部にすべり層を設け油井管に作用する摩擦力を軽減することにより、地盤沈下によっても破壊されにくい油井管を提供し、さらに、すべり層の物性値を規定することで施工時におけるすべり現象を低減し、さらに、すべり層と油井管本体との密着力の向上、すべり層上への保護層の導入により、油井管運搬時もしくは施工時の外部からの物理的衝撃ですべり層が破壊され、摩擦力低減効果が低くなることを防止できる油井管を提供する。

【解決手段】上記課題は、油井管の使用温度において、すべり層が、1年経過変形した後、残留負摩擦力が2×103N/m2以下となるような材料・厚みで構成され、あるいは、油井管の使用温度において、すべり層が、1年経過変形後のスチフネス係数S(t)が10-5N/m2から103N/m2の範囲内である材料からなり、管本体とすべり層との間に接着層を有することを特徴とするの油井管によって解決される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 管本体の外部に有機物を主成分とするすべり層を有することを特徴とする油井管【請求項2】 油井管の使用温度において、前記すべり層が、1年経過変形した後、残留負摩擦力が2×103N/m2以下となるような材料・厚みで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の油井管【請求項3】 油井管の使用温度において、前記すべり層が、1年経過変形後のスチフネス係数S(t)が10-5N/m2から103N/m2の範囲内である材料からなる請求項1または請求項2に記載の油井管【請求項4】 油井管の施工温度において、前記すべり層が、10日経過変形後のスチフネス係数S(t)が2×102N/m2以上となるような材料・厚みで構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の油井管【請求項5】 前記すべり層が、アスファルトを主とした材料からなる請求項1から請求項4のいずれかに記載の油井管【請求項6】 前記すべり層が、ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、無水マレイン酸変性エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン無水マレイン酸共重合樹脂、エチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂、エチレン無水マレイン酸アクリル酸エステル共重合樹脂、ポリプロピレン、ポリブテン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合樹脂を主とした材料、もしくはそれらを混合して得られた樹脂を主とした材料からなる請求項1から請求項4のいずれかに記載の油井管【請求項7】 管本体とすべり層との間に接着層を有することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の油井管【請求項8】 前記接着層が、無水マレイン酸変性ポリエチレン、もしくはエチレン無水マレイン酸共重合樹脂、もしくはエチレン無水マレイン酸アクリル酸エステル共重合樹脂、無水マレイン酸変性エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、無水マレイン酸変性ポリプロピレンを主とした材料からなる請求項7に記載の油井管【請求項9】 すべり層の外側に保護層を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の油井管【請求項10】 すべり層の外側に保護層を有することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の油井管【請求項11】 前記保護層が、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体を主とした材料からなる請求項9または請求項10に記載の油井管
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、地盤沈下などにより歪を受ける環境において使用されても、破壊されることのないケーシング用油井管に関する。
【0002】
【従来の技術】原油を油層から地上まで汲み上げるための油井は、油井管で構成されているが、その油井管は、原油を汲み上げるためのチュービング用油井管と、チュービング用油井管を外側から保護するケーシング用油井管とから構成されている。
【0003】上述した油井は、垂直に掘られている場合が一般的であるので、特にケーシング用油井管(以下、単に油井管という。)には、地盤沈下が起きた場合下向きの摩擦力が作用する。
【0004】しかしながら、従来の大部分の油井においては、上述したような油井管に作用する摩擦力は必ずしも大きくなく、従って油井管が摩擦力により破壊される確率も低いので、従来は摩擦力を軽減しようとする方策は採られていない。
【0005】ところが、近年、原油の採掘条件の悪化に伴い、油井の深さは高深度化する傾向にあり、油井を構成している油井管の地盤沈下による破壊の問題が顕著になりはじめた。すなわち、高深度化により油井管には大きな圧力が加わり、その結果作用する摩擦力も大きくなり、油井管が破壊されるという事態を無視できない状態となっている。
【0006】この解決手段として、US−4483396には、2本の径の違うパイプを組み合わせ、それらが摺動し、互いに動く結果、全体の長さが変わり歪みを吸収して地盤沈下の影響を軽減するようにした油井管が開示されている。しかし、これは機械的な原理によるもので其の物自体、及びそれらを使用できるようにするための周辺の設備は非常にコストが高い。さらにこれはパイプ本体に歪みを軽減する効果はないため歪み軽減効果があるのはこのような設備を導入した部分のみであり、あまり現実的ではない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、油井管本体の外部にすべり層を設け油井管に作用する摩擦力を軽減することにより、地盤沈下によっても破壊されにくい油井管を提供することを目的としている。
【0008】さらに、油井管は、多くの場合、製造場所と実際に使用される場所とが遠距離であり、その運搬は容易ではないこと、また、施工時にも高深度までセッティングしなければならないこと等があり、実際に使用されるまでには、外部よりの様々な物理的衝撃にさらされる。本発明者らがその間のすべり層の損傷状態を調べた結果、すべり層の鋼板表面からの部分剥離が生じることもあり、使用時にすべり層本来の機能を果たさなくなるおそれがあることを見出した。
【0009】また、このような油井管を埋設する施工時にすべり層が損傷する可能性があることも発見した。
【0010】さらに、油井管のおかれる環境を考えると、施工時にすでに油井管の温度が操業時同様高温になり、油井管をセッティングする段階ですべり層がずれはじめてしまうことも見出した。
【0011】そこで、本発明はさらに、すべり層の物性値を規定することで施工時におけるすべり現象を低減し、さらに、すべり層と油井管本体との密着力の向上、すべり層上への保護層の導入により、油井管運搬時もしくは施工時の外部からの物理的衝撃ですべり層が破壊され、摩擦力低減効果が低くなることを防止できる油井管を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解決するべくなされたものであり、すべり層の物性値を規定することで、施工時にすべり層がずれることなく、操業時に地盤沈下とともに変形が起こり摩擦力を低減し油井管の破壊を防止できるようにしたものである。
【0013】また、さらに接着層を設けることですべり層と鋼管との接着が強固なものとすることと、すべり層上への保護層の導入により、セッティング時までの物理的衝撃による損傷を防止しうるようにしたものである。
【0014】油井管外部に被覆されたすべり層は操業時の温度で粘性を示すため、地中に垂直に埋設した油井管に、地盤沈下にともなう摩擦力が作用すると、油井管の外部に被覆した粘性を有するすべり層が、摩擦力により下方に引きずられながら変形する。油井管に作用する摩擦力の大部分は、このようにすべり層の変形に費やされるので、油井管本体に作用する摩擦力は軽減される。
【0015】このような現象を図3に示す模式図で説明すると、次のようになる。すなわち、粘性挙動を示す厚さhのすべり層10の上面に、地盤沈下による剪断応力が作用すると、t秒後には図中に破線で示すようなずり変形(粘性挙動)が生じ、残留負摩擦力τが働く。
【0016】このt秒後のずり変形量d(t)と残留負摩擦力τとの関係は、すべり層のスチフネス係数S(t)とすべり層の厚みhを使って、(1)式のように表すことができる。
τ=S(t)・d(t)/3h ………… (1)【0017】(1)式からすべり層にスチフネス係数S(t)の小さい材料を使用すれば、残留負摩擦力τを小さくすることができるということが分かる。
【0018】モデル実験により、油井管が地盤沈下により破壊する可能性を低くするためには、摩擦力τを4×103N/m2以下、特に2×103N/m2以下にすれば完全に破壊を押さえられることが分かっている。
【0019】摩擦力τは、油井の温度、すべり層の厚み、地盤沈下量、時間に依存しているため、実際の使用条件下でのそれらの値を式(1)に代入すれば、摩擦力τを4×103N/m2以下にするための、すべり層の厚みと、すべり層の材料が持つべきスチフネスS(t)が求められ、このようにして設計されたすべり層を油井管に設けることにより、油井における地盤沈下に起因する油井管の破壊は防止される。
【0020】さらに、S(t)の値としては、動的粘弾性測定器や、せん断クリーブ試験機、スライディングプレートレオメーターなどの測定をもとに時間−スチフネス曲線を求め、そこから外挿法により求めた1年後のスチフネスを用いればよいことがわかった。
【0021】一般的には、すべり層の厚みは1mm以上、1年間のずれ量は5mm以上であり、1年後のスチフネス係数S(t)が、10-5N/m2〜103N/m2の範囲であれば、摩擦力τは2×103N/m2以内に留まり油井管は破壊されにくく油井管の破壊は実質的に起こらないといえる。
【0022】また10-5以下の場合溶融流出してしまう。
【0023】換言すれば、上記のような一般的な条件では、1年経過後のスチフネス係数S(t)が103N/m2を超える材料は、すべり層の変形能が十分でなく、摩擦力を軽減できずに、油井管が破壊する確率が高い。
【0024】すなわち、すべり層の厚みhが2mm、1年後のすべり層のずれ量d(t)が10mmの場合、1年後のスチフネス係数S(t)が103N/m2以下であれば、摩擦力τは2×103N/m2以内に留まり油井管は破壊されにくく、さらに1年経過後のスチフネス係数S(t)が102N/m2以下であれば、すべり層に作用する摩擦力が2×102N/m2以内に留まり油井管の破壊は実質的に起こらない。
【0025】また、油井管の施工時の温度は、操業時の温度より20℃前後低い場合が多く、やはり高温になるため、すべり層の自重や施工の際に生じる様々な応力によりすべり層の変形が始まってしまうことを見出した。そしてこれを防ぐためには、施工時の温度範囲における10日後の材料のスチフネスが2×102N/m2以上、特に103N/m2であれば実質的に上記のようなずれ変形は起こらないことを見出した。
【0026】以上に示したように、本発明による油井管は、すべり層の粘性挙動により、沈下した地盤と油井管本体との摩擦力を低減し、油井管の破壊を防止するためのものであり油井管が使用される温度、地盤沈下量に応じて、すべり層の材料・厚みが選定される。
【0027】
【発明の実施の形態】油井の温度は様々であるため、種々の温度範囲で、上述のような条件を満たす材料を種々調査した結果、すべり層としていくつかの材料が使用可能と分かった。
【0028】すなわち、上記したように、地盤沈下が問題になる油井の一般的な地盤沈下量、一般的なすべり層の厚みより、使用温度での1年後のすべり層のスチフネスS(t)は、10-5〜103N/m2の間の範囲にあれば良いが、いくつかの材料によりそれが達成され、油井管が破壊されない条件を満たすことができる。
【0029】まず、アスファルトは、ストレートアスファルトおよび、熱アスファルトを所定の割合で混合することにより40〜100℃の温度範囲において1年経過後のスチフネス係数が、10-5〜103N/m2の範囲に入る材料を得ることができる。これらのアスファルトには、樹脂、油脂、ゴム、顔料、およびフィラー等の添加剤を含有させることができる。
【0030】また、ポリエチレンも使用可能である。
【0031】すべり層のポリエチレンは、融点は95℃以上、好ましくは95〜130℃程度、特に好ましくは100〜130℃程度、軟化点は50〜120℃程度、好ましくは90〜120℃程度である。その他の物性では、MIは20g/10分以下、好ましくは0.01〜20g/10分、特に0.1〜10g/10分、降伏点応力は200kgf/cm2以下、好ましくは80〜150kgf/cm2、特に80〜120kgf/cm2のものが好ましく、メルトテンションによる引き取り可能速度は10m/min以上であることが好ましい。
【0032】また、ポリエチレンに無水マレイン酸を反応させた無水マレイン酸変性ポリエチレンも使用可能である。
【0033】エチレン酢酸ビニル共重合体は、最適の組成を選択することにより目的とする温度範囲において上記のスチフネスの範囲を満足させる材料を得ることができる。例えば、40℃〜130℃の範囲において上記スチフネスの値を満足するためにはエチレン酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニルの割合を5〜60重量%にすればよい。
【0034】また、エチレン酢酸ビニル共重合体に無水マレイン酸を反応させて無水マレイン酸変性エチレン酢酸ビニル共重合樹脂としたものも使用可能である。
【0035】また、エチレン無水マレイン酸共重合樹脂、エチレンアクリル酸エステル共重合樹脂、エチレン無水マレイン酸アクリル酸共重合樹脂等も使用可能である。
【0036】さらに、油井の温度が高温の場合ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、ポリブテン、エチレンプロピレン共重合樹脂等が使用可能である。
【0037】上記のすべり層に用いられる樹脂には、必要に応じて酸化防止剤、熱安定化剤、光安定剤、顔料、無機充填材、難燃剤、可塑剤、核材、帯電防止剤等の添加剤を要求される性能を損なわない範囲で混合、添加することも可能である。
【0038】すべり層の厚みは予測される地盤の沈下量、材質などにより異なるが、0.5mm〜10mm程度、通常1〜5mm程度である。
【0039】また、油井管は、多くの場合、製造場所と実際に使用される場所とが遠距離であり、その運搬は容易ではなく、また、埋設施行時にも高深度までセッティングしなければならないこと等があり、実際に使用されるまでには、外部よりの様々な物理的衝撃にさらされる。この結果、ひどい場合には上述のすべり層が、物理的衝撃により破壊され、油井管本体より剥離もしくは脱落し、すべり層本来の機能を施工後果たすことができなくなる可能性がある。
【0040】しかし、本発明によれば、すべり層と油井管本体との間に接着層を設けることにより、油井管本体とすべり層との密着力を向上させ、物理的衝撃などによりすべり層がダメージを受けることを防止できる。
【0041】接着層は不飽和カルボン酸類変性ポリオレフィン樹脂又は不飽和カルボン酸類とオレフィンの共重合樹脂であってすべり層に接着性を有する樹脂で形成することが好ましい。不飽和カルボン酸類は不飽和カルボン酸と誘導体の総称であり、誘導体はエステル、アミド、無水物等である。不飽和カルボン酸類の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ナジック酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸グリシジル、マレイン酸ジメチル、アクリル酸アミド、マレイン酸モノアミド、N−ブチルマレイミド等であり、なかでもアクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、ナジック酸が好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。オレフィンはエチレン、プロピレン、エチレン/酢酸ビニル等であり、エチレンとプロピレンが特に好ましい。この接着性樹脂はNポリマー、アドマー、モディック等の商品名で各社から市販されている。本発明で好ましい接着層用の樹脂は無水マレイン酸変性ポリエチレン、エチレン無水マレイン酸共重合樹脂、エチレン無水マレイン酸アクリル酸エステル共重合樹脂、無水マレイン酸変性エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、無水マレイン酸変性ポリプロピレン等であり、接着層はこれらを主成分とする層であることが好ましい。上記材料を接着層として用いた場合、接着層の外側にあるすべり層とは、成形時の熱により融着するため強固に密着し、接着層の内側の化成処理、プライマー処理もしくは鉄地とは、上記樹脂中の、無水マレイン酸基等が、下地の水酸基等の極性基と、水素結合、共有結合、静電結合などにより強い結合を形成する結果、すべり層と油井管本体とを強固に結合することができる。上記樹脂中の、無水マレイン酸成分、アクリル酸成分等は、それぞれ、必要な接着力が出る程度に含有されていれば良く、さらに成形しやすい粘度になるような含有率のものを選ぶことができる。一般的に不飽和カルボン酸類の含有率は0.01〜20重量%程度、好ましくは0.05〜5重量%程度である。接着層の厚さは0.05〜2mm程度、好ましくは0.1〜0.5mm程度である。
【0042】上記の接着層に用いられる樹脂にも、必要に応じて酸化防止剤、熱安定化剤、光安定剤、顔料、無機充填材、難燃剤、可塑剤、核材、帯電防止剤等の添加剤を、要求される性能を損なわない範囲で混合、添加することも可能である。
【0043】このような接着層およびすべり層は、油井管本体の外面に、例えば押出し被覆、ラミネートもしくは粉体コーティング等により形成させることができる。
【0044】また、接着層と下地の密着を良くするために、あるいは防錆力強化のためにクロメート処理等の化成処理及び又はエポキシ樹脂等からなるプライマー処理を施してもよい。
【0045】すべり層の上に保護層を設けることも可能である。保護層は、油井管の運搬時や埋設施工時に、すべり層および油井管本体の損傷を防止する働きを持つ。
【0046】保護層には油井管が使用される環境下において軟化しない材料を使用する。すなわち、使用温度の上限が130℃の場合は、軟化点が130℃をこえる材料を使用すればよい。
【0047】このような材料としては、ポリプロピレン、またはエチレンプロピレンブロックコポリマー等のポリオレフィン樹脂があり、特に、軟化温度が140〜170℃のポリプロピレン、またはエチレンプロピレンコポリマーが好ましい。
【0048】保護層にもすべり層と同様に、必要に応じて添加剤等を混合することができる。
【0049】保護層の厚みは0.1〜10mm程度、好ましくは0.5〜5mm程度が適当である。保護層はすべり層の外周面に、例えば押出被覆により成形することができる。一方、軟鋼等の金属も保護層とし有用である。たとえば、軟鋼の鋼帯をスパイラル状に巻き保護層とすることができる。この保護層の有無は油井管に働く摩擦力には影響を与えない。
【0050】本発明の油井管の製造方法としては、まず、必要により鋼管に前処理とさらには表面処理を施す。本発明でいう前処理は、常法に従った油分除去、酸洗浄、ショットブラスト、等である。表面処理は、鋼管表面に被膜が形成されるものであり、クロメート処理、リン酸亜鉛処理等のほか、エポキシ樹脂系のプライマー等を使用したプライマー処理が含まれる。
【0051】前処理、表面処理に次いで、油井管本体1の外周面に、融点以上で溶融加熱した接着層3およびすべり層4を二層ダイスでチューブ状、あるいはシート状に共押し出しで被覆し、さらにその上に保護層5を被覆することにより油井管を製造する。また、別の被覆方法として、単層ダイスで接着層、すべり層、保護層を順に被覆することも可能である。
【0052】この発明の一例である油井管を、図1および図2により説明する。図1はこの油井管の断面図で、1は油井管本体、2は化成処理、プライマー処理などの下地処理層(必要に応じて省くことも可能である。)、3は接着層、4はすべり層、5は保護層である。
【0053】また、図2は油井管の一製造方法を示す説明図である。この油井管は油井管本体1の外周面にプライマー塗布槽6によりプライマー層2を塗布、加熱炉7により硬化後、接着層押出し機8により接着層3を被覆するとともに、接着層の外周面にすべり層押出し機9によりすべり層4を、保護層押出し機10により保護層5をそれぞれ被覆する。
【0054】
【実施例】
[実施例1〜63]図2に示す装置を用い、外径177.8mm、肉厚23.8mm、長さ12,000mmの鋼管の外周面に表1〜4(実施例1〜63に示すすべり層、接着層(厚さ0.2mm)、保護層(厚さ3mm)を設けて油井管を製造した。
【0055】表中の引き取り可能速度は200℃で樹脂を3g/minでストランド状に押出した場合に一定速度で引き取り、ストランドがきれることなく引き取れる速度である。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

【0059】
【表4】

【0060】上記の実施例1〜63の油井管について、接着力、耐熱衝撃性、耐水性の評価を行った。結果を表5、6に示す。
【0061】また、実施例1〜63の各サンプルを様々な温度の炉に入れ最外層の上に1kgの力を1mm2の面積に負荷し1時間放置した。その後最外層の安定性の評価を外観(割れ、剥離、変形)により行った結果を表7、8に示す。
【0062】接着力;管長方向に幅1cmの切り込みを入れ、一部をつかみ代とし、引っ張り速度50mm/min、剥離角度90°で剥離時の強度を測定した。測定温度は23℃であった。
耐熱衝撃性;80℃⇔23℃⇔45℃(各1時間)のサイクルの雰囲気中に油井管を入れ、20サイクル後の接着力を測定した。
耐水試験;水(23℃)に油井管を浸漬し、30日後の剥離状態を観察した。
○:剥離なし△:1mm以下の剥離×:1mm以上の剥離【0063】さらに、実施例1〜63、比較例1の油井管について表に示す温度での1年経過後のすべり層のスチフネス係数S(t)を測定し、ずれ量200mmの時の残留負摩擦力τを求めた。また、そのような環境で使用可能かの試験を行い、結果を表9〜14に示した。
【0064】さらに、実施例1〜63の油井管について表に示す温度での10日経過後のすべり層のスチフネス係数S(t)を測定した結果と、その温度ですべり層が変形するかの評価を表15〜20に示す。
【0065】表21、22に実施例1〜63、比較例1の接着層、保護層の評価結果、およびすべり層の施工可能温度、操業可能温度範囲をまとめて示す。
【0066】
【表5】

【0067】
【表6】

【0068】
【表7】

【0069】
【表8】

【0070】
【表9】

【0071】
【表10】

【0072】
【表11】

【0073】
【表12】

【0074】
【表13】

【0075】
【表14】

【0076】
【表15】

【0077】
【表16】

【0078】
【表17】

【0079】
【表18】

【0080】
【表19】

【0081】
【表20】

【0082】
【表21】

【0083】
【表22】

【0084】表21、22よりわかるように接着層を設けた油井管は、すべり層と鋼管が強固に接着しており、また、耐熱衝撃性、耐水性などの結果も良好であることより、油井管運搬時、施工時の物理的衝撃に十分耐えうる接着力を有しており、過酷な条件でもすべり層が剥離することがないため、施工後もすべり層本来の性能を発揮し、油井管が地盤沈下により破壊されることがない。また、すべり層として接着性の樹脂を使用した場合も同様の結果である。
【0085】また、保護層を設けた油井管は広い温度範囲において異常が無く油井管運搬時、施工、操業時にわたって油井管の損傷を防止することができる。
【0086】さらに、実施例1〜63の油井管は、1年経過後の残留負摩擦力が2×103N/m2以下で、1年経過後のスチフネス係数S(t)が10-5〜103の範囲にある温度範囲において使用可能であり油井管が地盤沈下により破壊される可能性は少ない。また、10日後のスチフネス係数S(t)が2×102以上の温度範囲で施工可能である。
【0087】
【発明の効果】この発明により、油井管の地盤沈下による破壊が防止できるとともに、油井管運搬時はもとより、油井管埋設施工時にもすべり層および油井管本体の損傷を防止することができる。
【出願人】 【識別番号】000004123
【氏名又は名称】日本鋼管株式会社
【出願日】 平成10年(1998)7月17日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】田中 政浩
【公開番号】 特開平11−94137
【公開日】 平成11年(1999)4月9日
【出願番号】 特願平10−203847