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【発明の名称】 冷媒輸送用ホース
【発明者】 【氏名】柴野 宏明

【要約】 【課題】柔軟性および耐冷媒透過性に優れるとともに、振動および音の吸収特性に優れる冷媒輸送用ホースの提供。

【解決手段】内管と、該内管の外側に補強層を介して配設された外管とを有する冷媒輸送用ホースであって、内管が、p−メチルスチレン単位の一部または全部が臭素化されてなるイソブチレン・p−メチルスチレン共重合体を主成分とするゴム組成物で形成されてなる冷媒輸送用ホース。
【特許請求の範囲】
【請求項1】内管と、該内管の外側に補強層を介して配設された外管とを有する冷媒輸送用ホースであって、内管が、p−メチルスチレン単位の一部または全部が臭素化されてなるイソブチレン・p−メチルスチレン共重合体を主成分とするゴム組成物で形成されてなる冷媒輸送用ホース。
【請求項2】前記外管が、エチレン・プロピレン系共重合体ゴムまたはハロゲン化ブチルゴムからなるものである請求項1に記載の冷媒輸送用ホース。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は冷媒輸送用ホースに関し、特に、柔軟性および耐冷媒透過性に優れるとともに、振動および音の吸収特性に優れる冷媒輸送用ホースに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車のエアコンディショナー等の冷媒として常用されてきたフロンガスCFC12は、オゾン層破壊の原因物質の一つと考えられ、地球環境保全の観点から、その使用が規制されるようになってきている。そのため、代替物質として、HFC134aが、冷媒として用いられるようになってきている。
【0003】ところで、CFC12を冷媒として用いる従来の自動車用エアコンディショナー等においては、冷媒を各機器に給送するための冷媒輸送用ホースとして、NBR系ゴムからなるホースが用いられてきた。しかし、NBR系ゴムからなるホースは、CFC12を冷媒として用いる場合の冷媒輸送用ホースとしては有用であるが、HFC134aを冷媒として用いる場合には、HFC134aの透過量が多いため、使用できない。そこで、従来、HFC134aを冷媒として用いる場合の冷媒輸送用ホースとして、冷媒と接触する最内層としてポリアミドからなる層を形成したものが用いられている。また、内管ゴム層を、ブチルゴムまたはハロゲン化ブチルゴムを主成分とするゴム組成物で形成したものが提案されている(特開平3−140688号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、一般に、ポリアミドは高ヤング率を有し、柔軟性に劣るものであるため、自動車のエアコンディショナー等における冷媒の給送ホースとして用いると、コンプレッサー等によって発生する振動および音を吸収する特性に乏しく、振動や音を他の機器に伝達したり、自らも振動して、静粛性を害する部材となるおそれがある。また、内管ゴム層を、ブチルゴムまたはハロゲン化ブチルゴムを主成分とするゴム組成物で形成したホースは、HFC134aに対する耐冷媒透過性が未だ十分なものではなかった。
【0005】そこで、本発明の目的は、柔軟性および耐冷媒透過性に優れるとともに、振動および音の吸収特性に優れる冷媒輸送用ホースを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記課題を解決するために、内管と、該内管の外側に補強層を介して配設された外管とを有する冷媒輸送用ホースであって、内管が、p−メチルスチレン単位の一部または全部が臭素化されてなるイソブチレン・p−メチルスチレン共重合体を主成分とするゴム組成物で形成されてなる冷媒輸送用ホースを提供するものである。
【0007】以下、本発明の冷媒輸送用ホース(以下、「本発明のホース」という)について詳細に説明する。
【0008】本発明のホースは、ホース内を流通する冷媒HFC134aと接触する内管と、該内管の外側に補強層を介して配設された外管との少なくとも3層を有するホースである。また、本発明のホースは、内管、補強層および外管以外に他の層を必要に応じて有するものでもよい。さらに、内管、補強層または外管は、それぞれ単一の層から構成されていてもよいし、複数の層から構成されていてもよい。例えば、内管が二層以上となっている構造、補強層が二層以上で、かつ、2つの補強層間に中間ゴム層を有する構造、あるいは外管が二層以上となっているホース等であってもよい。
【0009】本発明のホースは、内管が、p−メチルスチレン単位の一部または全部が臭素化されてなるイソブチレン・p−メチルスチレン共重合体を主成分とするゴム組成物で形成されてなるものである。本発明のホースにおいて、内管が複数の層から構成される場合は、冷媒と接触する最内層が、前記ゴム組成物で形成されるものである。
【0010】この内管を形成するゴム組成物の主成分であるイソブチレン・p−メチルスチレン共重合体(以下、「変性臭素化共重合ゴム」という)は、p−メチルスチレン単位の一部または全部が臭素化されてなるものである。この変性臭素化共重合ゴムは、イソブチレンに由来する下記式(a)で表される繰り返し構造単位(A)(以下、「イソブチレン単位」という)、p−メチルスチレンに由来する下記式(b)で表される繰り返し構造単位(B)(以下、「p−メチルスチレン単位」という)、およびp−メチルスチレン単位のメチル基が臭素化された下記式(c)で表される繰り返し構造単位(C)(以下、「p−臭素化メチルスチレン単位」という)を有する共重合体からなるものであり、イソブチレン・p−メチルスチレン共重合体のp−メチルスチレン単位のメチル基の一部または全部を臭素化することによって得られるものである。
【0011】
【化1】

【0012】この変性臭素化共重合ゴムにおいて、イソブチレンの含有割合は、73〜96重量%であるのが好ましく、特に好ましくは85〜93重量%である。また、p−メチルスチレン単位の含有割合は、3〜20重量%であるのが好ましく、特に好ましくは5〜10重量%である。p−メチルスチレン単位の含有割合が、3重量%未満であると、得られるゴム組成物の耐オゾン性が不十分であり、20重量%を超えると耐寒性が大幅に悪化し、冷媒輸送用ホースとして使用できない。さらに、p−臭素化メチルスチレン単位の含有割合は、1.2〜7.4重量%であるのが好ましく、特に好ましくは2.4〜4.9重量%である。
【0013】また、変性臭素化共重合ゴムは、臭素の含有量が、0.5〜3.0重量%であるものが好ましく、特に1.0〜2.0重量%であるものが好ましい。臭素の含有量が0.5重量%未満であると、ゴムの加硫速度が遅く、かつ冷媒の透過性が大きくなり、冷媒輸送用ホースの用途には不適であり、一方、3.0重量%を超えると、加硫速度を制御するのが難しく加工が困難となる。
【0014】この変性臭素化共重合ゴムの具体例として、エクソン化学(株)からEXXPRO MDX等の商品名で市販されているもの等が挙げられる。
【0015】本発明のホースの内管または内管が複数の層から構成される場合は、冷媒と接触する最内層を形成するゴム組成物は、ゴム成分の主成分として、前記変性臭素化共重合ゴムを含有するものであるが、さらに、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、他のゴム成分を含有していてもよい。例えば、ブチル系ゴム、エチレン・プロピレン共重合ゴム等の他のゴム成分を含有していてもよい。ゴム組成物が、他のゴム成分を含有する場合、その含有量は、通常、50PHR程度以下、特に20PHR程度以下であるのが好ましい。
【0016】また、このゴム組成物は、前記のゴム成分以外に、内管の形成時に、ゴム成分を加硫させるため、加硫剤を含有するものである。配合される加硫剤は、特に限定されず、ブチル系ゴムの加硫剤として常用されるものが使用可能であり、例えば、硫黄、キノンジオキシム、加硫用樹脂(変性アルキルフェノール樹脂)、亜鉛華、亜鉛華・ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛等のステアリン酸金属塩、ジチオカーバメイト等の亜鉛塩、あるいはチウラムとチアゾールとを併用するものなどが例示される。加硫剤の配合量は、特に限定されず、適宜選択することができる。
【0017】さらに、このゴム組成物は、この他、ゴムの分野で常用されている各種の充填剤、補強剤、可塑剤、老化防止剤、加工助剤、顔料等を含有していてもよい。
【0018】本発明のホースにおいて、前記ゴム組成物からなる内管の厚さは、通常の冷媒輸送用ホースにおけると同様でよく、特に限定されない。例えば、通常、1.0〜3.5mmの厚さ、好ましくは1.5〜2.5mmの厚さである。
【0019】また、本発明のホースにおいて、内管の外側に形成する補強層は、この種のホースにおける補強層として通常用いられる補強繊維によって形成されたものでよく、特に限定されない。例えば、レーヨン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリビニルアルコール繊維等の補強繊維を編組して形成することができる。この補強層の厚さは、この種のホースにおける通常の範囲でよく、特に制限されない。
【0020】さらに、本発明のホースにおいて、外管は、前記内管を形成するゴム組成物と同様の条件で加硫することができるゴム組成物であれば、いずれのゴム組成物の加硫物によっても形成することができ、特に制限されない。例えば、NBR、ハロゲン化ブチルゴム等のブチル系ゴム、EPR、EPDM等のエチレン・プロピレン系共重合体ゴム、あるいはクロロプレンゴム(CR)、SBR等をゴム成分として含むゴム組成物の加硫物で構成される。これらの中でも、ホースの耐水分透過性を向上させることができる点から、エチレン・プロピレン系共重合体ゴムまたはハロゲン化ブチルゴムをゴム成分として含むゴム組成物が好ましい。本発明のホースにおいて、外管の厚さは、この種のホースにおける通常の範囲でよく、特に制限されない。
【0021】本発明のホースの製造は、特に制限されず、常法にしたがって行うことができる。例えば、予め離型剤を塗布したマンドレルの外周に、押出機により内管の前記ゴム組成物を押出して、内管となるゴム層を形成する。次に、そのゴム層の上に編組機を使用して、適宜、補強繊維を編組して補強層を形成し、さらに、その上に、外管を構成するゴム組成物を押出してゴム層を形成する。その後、130℃〜170℃、好ましくは140℃〜160℃の温度範囲内で、加圧下で加硫した後、冷却し、最後にマンドレルを引き抜く方法にしたがって、行うことができる。
【0022】
【実施例】以下、本発明の実施例および比較例により、本発明を具体的に説明する。
【0023】(実施例1)押出機に下記に示す組成の成分を供給し、このゴム組成物を、90〜110℃に加熱し、直径14mmφのマンドレルの外周に肉厚2.2mmとなるように押出して、内管となるゴム層(1)を成形した。
【0024】
内管の成分組成 変性臭素化共重合ゴム*1 100重量部
HAF級カーボンブラック*2 60重量部 軟化剤*3 10重量部 亜鉛華 2重量部 ステアリン酸 1重量部 ステアリン酸亜鉛 1重量部 注 *1:変性臭素化共重合ゴム エクソン化学社製、EXXPRO MDX90−10 *2:HAF級カーボンブラック 東海カーボン社製、シーストN *3:軟化剤 昭和シェル石油社製、マシン油22【0025】次に、ゴム層(1)の上に、ポリエステル繊維補強材を編組して、厚さ1.0mmの補強層を形成した。さらに、押出機によって、補強層の上に、表1に示すゴム組成物を押出し、厚さ1.2mmの外管となるゴム層を形成した。次いで、外管となるゴム層の上に、被鉛機で被鉛し、154℃で60分間、スチーム加硫した。その後、剥鉛機で剥鉛し、マンドレルを抜取り、3層構造のホースを得た。得られたホースについて、下記の方法にしたがって、HFC134a透過量とよび曲げ力を測定した。結果を表1に示す。
【0026】HFC134a透過量の測定ホース部露出長0.5mの長さのホース4本を試料とする。このうち、3本は冷媒(HFC134a)をホース内容積1cm3 当たり0.7±0.1g封入し、他の1本は未封入のまま密栓する。これら4本の試料を、80±2℃の恒温槽内に30分間放置した後、ホース重量とホース部露出長を測定する。その後、80±2℃の恒温槽内に96時間保持して、その間、24時間毎に重量を測定する。このとき、冷媒を封入したホース試料の96時間後の内圧は、試験温度における飽和蒸気圧が保持されていることを確認する。冷媒透過量は、24時間以降96時間までのホース自重変化分を除く重量損失分として、下記式(1)によって求める。
A=〔(B/S1)−(C/S2)〕×100 (1)
ただし、A:冷媒透過量(g/m/72hr)
B:冷媒封入ホースの24〜96時間の間の損失重量(g)
C:冷媒未封入ホースの24〜96時間の間の損失重量(g)
S1:冷媒封入ホースのホース露出長(m)
S2:冷媒未封入ホースのホース露出長(m)
【0027】曲げ力の測定ホースを、その外径の3倍の半径を有する円弧状(180度)に曲げたときの力をバネ秤によって測定する。
【0028】(比較例1)変性臭素化共重合ゴムの代わりにNBRを用いて、厚さ2.5mmの内管を形成し、クロロプレンゴム(CR)からなる厚さ1.2mmの外管を形成した以外は、実施例1と同様にしてホースを製造し、得られたホースについて、HFC134a透過量および曲げ力を測定した。結果を表1に示す。
【0029】(比較例2)押出機により、直径14mmφのマンドレルの外周上に、ポリアミド系樹脂を肉厚0.15mmの寸法で押出して最内層を形成した。次に、押出機によって、該最内層の上に、下記成分組成のゴム組成物を用い、肉厚2.0mmとなるように押出して、内管となるゴム層を形成した。
【0030】次に、内管となるゴム層の上に、ポリエステル繊維補強材を編組して、厚さ1.0mmの補強層を形成した。さらに、押出機によって、補強層の上に、下記組成のゴム組成物を押出し、厚さ1.2mmの外管となるゴム層を形成した。
【0031】次いで、外管となるゴム層の上に、被鉛機で被鉛し、154℃で60分間、スチーム加硫した。その後、剥鉛機で剥鉛し、マンドレルを抜取り、3層構造のホースを得た。得られたホースについて、下記の方法にしたがって、HFC134a透過量とよび曲げ力を測定した。結果を表1に示す。
【0032】

【0033】
【発明の効果】本発明の冷媒輸送用ホースは、柔軟性およびHFC134aに対する耐冷媒透過性に優れるとともに、振動および音の吸収特性に優れるものである。そのため、本発明の冷媒輸送用ホースは、例えば、自動車のエアコンディショナーにおける冷媒HFC134aの給送ホースとして用いて、HFC134aに対する耐冷媒透過性に優れるとともに、エアコンディショナーにおけるコンプレッサー等から発生する振動および音を吸収して、自動車の静粛性を向上させる部材として有用である。
【出願人】 【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
【出願日】 平成9年(1997)6月30日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔 (外1名)
【公開番号】 特開平11−13948
【公開日】 平成11年(1999)1月22日
【出願番号】 特願平9−174076