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【発明の名称】 パイロット式圧力制御弁
【発明者】 【氏名】宇野 春彦

【氏名】安藤 元良

【氏名】酢谷 譲

【氏名】鈴木 文規

【要約】 【課題】パイロット式圧力制御弁の制御圧領域(ダイナミックレンジ)を拡大する。

【解決手段】背圧受圧部153の面積Soを制御受圧部142の面積Spより小さくすることにより(So<Sp)とする。これにより、Po=(Sp/So)×Pp−Fs/Soから明らかなように、制御弁の制御圧領域の拡大を図ることができる。なお、Poは制御圧(流出ポート112の圧力)を示し、Spは制御受圧部142の面積を示し、Ppはパイロット制御室141内の圧力を示し、Soは背圧受圧部153の面積を示し、Fsはコイルバネ151の弾性力を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポンプ(200)から吐出される高圧の流体圧力を調圧制御するパイロット式圧力制御弁であって、前記ポンプ(200)の吐出側に接続される流入ポート(111)、および調圧された流体が流出する流出ポート(112)が形成されたハウジング(110)と、前記ハウジング(110)内にて変位可能に配設され、前記流入ポート(111)から前記流出ポート(112)間の圧力損失を変化させる弁体(120)と、前記流入ポート(111)側の圧力を調圧し、その調圧したパイロット圧力(Pp)を前記弁体(120)の一方側に作用させるパイロット圧力制御機構(140)と、前記パイロット圧力(Pp)に対抗する弾性力を前記弁体(120)の他方側に作用させるバネ手段(151)とを備え、前記弁体(120)の他方側には、前記流出ポート(112)側の圧力が作用する第1受圧部(153)が形成されており、さらに、前記第1受圧部(153)の面積は、前記パイロット圧力(Pp)が作用する第2受圧部(142)の面積より小さいことを特徴とするパイロット式圧力制御弁。
【請求項2】 前記ハウジング(110)は略円筒状に形成され、前記弁体(120)は、前記ハウジング(110)内にて、その長手方向に延びるように摺動可能に配設され、さらに、前記パイロット圧力制御機構(140)は、前記ハウジングの長手方向一端側にて前記ハウジング(110)内に配設され、かつ、前記流入ポート(111)側の圧力は、前記弁体(120)内を経由して前記パイロット圧力制御機構(140)に導かれることを特徴とする請求項1に記載のパイロット式圧力制御弁。
【請求項3】 前記パイロット圧力制御機構(140)は、前記流入ポート(111)側の流体を前記第2受圧部(142)に導く場合と、前記流入ポート(111)側の流体を低圧側に接続されたドレンポート(145)に導く場合とを所定時間毎に切り換えるとともに、その所定時間を変化させることにより前記パイロット圧力(Pp)を調整しており、さらに、前記ドレンポート(145)は、上方側に向けて開口していることを特徴とする請求項1または2に記載のパイロット式圧力制御弁。
【請求項4】 前記ハウジング(110)の長手方向一端側は、略円筒状のステータ(130)内に圧入されており、さらに、前記ハウジング(110)と前記ステータ(130)との間に、前記流入ポート(111)から前記パイロット圧力制御機構(140)に至る流体通路(131)の一部が構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のパイロット式圧力制御弁。
【請求項5】 前記パイロット圧力制御機構(140)を駆動する電磁アクチュエータ(160)を有しており、前記電磁アクチュエータ(160)は、磁路を構成する固定鉄心(164)と、電磁力により前記固定鉄心(164)に吸引される可動鉄心(165)と、前記両鉄心(164、165)間に配設され、前記可動鉄心(165)が前記固定鉄心(164)に吸引されたときに、前記両鉄心(164、165)が直接に接触することを防止する非磁性材料製のプレート(167)とを有して構成され、さらに、前記プレート(167)と前記固定鉄心(164)との接触面積は、前記固定鉄心(164)のうち前記可動鉄心(165)と対向する面(164a)の面積の40〜70%であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のパイロット式圧力制御弁。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パイロット圧力により弁体を作動させるパイロット式圧力制御弁に関するもので、車両のオートマチックトランスミッション(AT)の油圧制御に用いて有効である。
【0002】
【従来の技術】パイロット式圧力制御弁(以下、制御弁と略す。)は、例えば特開平3−199790号公報に記載のごとく、スプール(弁体)に作用させるパイロット圧力を調圧することによりスプールを可動させて流体圧(油圧)を制御するものである。
【0003】具体的には、流入ポート側の圧力(ポンプの吐出圧)を調圧し、この調圧されたパイロット圧力をスプールの一端側に作用させるとともに、他端側にスプールにて調圧した流出ポート側の圧力およびバネの弾性力を作用させるものである。したがって、上記公報に記載の制御弁では、パイロット圧力Ppによる力Fp(=Pp×Sp、Sp:パイロット圧力Ppの受圧面積)と、バネの弾性力Fsおよび流出ポート側の圧力Poによる力Fo(=Fs+Po×So、So:圧力Poの受圧面積)の和とのバランスによりスプールが可動するので、流出ポート側の圧力Poは、数式1に示すようになる。
【0004】
【数1】Po=(Sp/So)×Pp−Fs/So【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記公報に記載の制御弁では、パイロット圧力Ppの受圧面積Spと流出ポート側の圧力Poの受圧面積Soとが略等しいため、圧力Poは数式2に示すようになる。
【0006】
【数2】Po=Pp−Fs/Soこのため、上記公報に記載の制御弁の最大制御圧力は、ポンプの吐出圧より低くならざるを得なく、最大制御圧力を高めるにはポンプの吐出圧を上げざるを得ないので、制御弁の制御圧領域(ダイナミックレンジ)が縮小してしまう。
【0007】そして、最大制御圧力を高めるべくポンプの吐出圧を上げた場合には、その上げた吐出圧に対応するポンプの仕事量が増大するので、車両(エンジン)の燃費が悪化するという問題が発生する。本発明は、上記点に鑑み、制御弁の制御圧領域(ダイナミックレンジ)を拡大することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するために、以下の技術的手段を用いる。請求項1〜5に記載の発明では、流出ポート(112)側の圧力が作用する第1受圧部(153)の面積は、パイロット圧力(Pp)が作用する第2受圧部(142)の面積より小さいことを特徴とする。
【0009】これにより、数式1又は後述する数式3から明らかなように、制御弁の制御圧領域(ダイナミックレンジ)を拡大することができる。したがって、制御弁の製造コスト上昇を招くことなく、制御弁の制御圧領域の拡大を図ることができる。請求項2に記載の発明では、パイロット圧力制御機構(140)は、ハウジングの長手方向一端側にてハウジング(110)内に配設され、かつ、流入ポート(111)側の圧力は、弁体(120)内を経由してパイロット圧力制御機構(140)に導かれること特徴とする。
【0010】これにより、制御弁の長手方向寸法の小型化を図ることができる。また、制御弁の長手方向寸法の小型化を図ることができるので、流入ポート(111)からパイロット制御機構(140)に流体を導く通路の通路長さを縮小できるので、制御弁を作動させるに必要な流体量および流体が流通する際の圧力損失を小さくすることができる。延いては、低温時等の流体の粘度が上昇し、流体が流通する際の圧力損失が大きくなるときの制御弁の応答性を向上させることができる。
【0011】請求項3に記載の発明では、ドレンポート(145)は、上方側に向けて開口していることを特徴とする。これにより、制御弁内に、例えば空気が流入した場合であっても速やかに空気を制御弁外に排出することができる。したがって、パイロット制御機構(140)に流体を導く通路内を常に流体にて満たすことができるので、パイロット制御機構(140)が作動した時の作動音を低減することができる。
【0012】請求項4に記載の発明では、ハウジング(110)とステータ(130)との間に、流入ポート(111)からパイロット圧力制御機構(140)に至る流体通路(131)の一部が構成されていることを特徴とする。これにより、特殊な穴開け加工や新たな部品点数の増加を招くことなく、パイロット圧力制御機構(140)に流体を導く通路を構成することができるので、制御弁の製造コスト上昇を抑制することができる。
【0013】なお、両鉄心(154、165)間に配設されるプレート(167)と固定鉄心(164)との接触面積は、請求項5に記載に記載のごとく、固定鉄心(164)のうち可動鉄心(165)と対向する面(164a)の面積の40〜70%とすることが望ましい。因みに、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0014】
【発明の実施の形態】(第1実施形態)図1は本実施形態に係るパイロット式圧力制御弁(以下、制御弁と略す。)100の断面図であり、110は、ポンプ200の吐出側(高圧側)に接続される流入ポート111、調圧された作動油(流体)が流出する流出ポート112、およびポンプ200の吸入側(低圧側)に接続される第1ドレンポート113が形成されたアルミニウム製のハウジング(ベース)である。
【0015】そして、このハウジング110は略円筒状に形成されており、その内部にはハウジング110の長手方向に延びるように摺動可能にスプール弁体(以下、弁体と略す。)120が配設されている。なお、このスプール120は、後述するように、流入ポート111から流出ポート112間の圧力損失を変化させることにより、流出ポート112から流出する作動油の圧力(制御圧)を調圧制御している。
【0016】因みに、ハウジング110の長手方向一端側(図1の右側)は、略円筒状のステータ130内に圧入されており、このステータ130を介してハウジング110(制御弁100)が車両(ATのケーシング)に固定されている。また、スプール120内には、その長手方向に延びる第1導入通路121が形成されており、この第1導入通路121、およびハウジング110とステータ130との間に形成された第2導入通路131を介して導入された流入ポート111側の圧力(作動油)は、パイロット圧力制御機構140により所定圧力に調圧された後に、スプール120の長手方向一端側に形成されたパイロット制御室141に導入される。なお、以下、パイロット制御室141内の圧力をパイロット圧力Ppと呼び、パイロット圧力が作用するスプール120の一端側を制御受圧部(第2受圧部)142と呼ぶ。
【0017】一方、スプール120の長手方向他端側(図1の左側)には、パイロット圧力Ppがスプール120に及ぼす力(以下、この力をパイロット力Fpと呼ぶ。)に対抗する弾性力をスプール120の他端側に作用させるコイルバネ(バネ手段)151、および制御圧(流出ポート112側の圧力)が導かれるとともにパイロット力Fpに対抗する力(圧力)をスプール120の他端側に作用させる背室152が形成されている。
【0018】なお、背室152内の圧力は制御圧Poと等しいので、以下、背室152内の圧力を制御圧Poと呼び、制御圧Poが作用するスプール120の他端を背圧受圧部(第1受圧部)153と呼ぶ。次に、パイロット圧力制御機構140について説明する。143はハウジング110の長手方向一端側(図1の右側)内に圧入された状態で配設された略立方形状の制御ブロックであり、この制御ブロック143には、第2導入通路131とパイロット制御室141とを連通させる第1連通路144a、およびパイロット制御室141とポンプ200の吸入側(低圧側)に接続される第2ドレンポート145と連通させる第2連通路144bが形成されている。
【0019】そして、制御ブロック143内には、第1連通路144aを開閉する鋼球(第1制御弁体)146、および第1連通路144aを閉じる向きの弾性力を鋼球146に作用させるコイルバネ147が配設されている。また、149は第2連通路144bを開閉するとともに、第1連通路144aを開く向きの力を鋼球146に作用させるプッシュロッド(第2制御弁体)であり、このプッシュロッド149は、後述する電磁アクチュエータ160により、スプール120の長手方向に往復運動させられる。
【0020】また、160はパイロット圧力制御機構140を駆動する電磁アクチュエータであり、161は通電により磁界を誘起するソレノイドコイル(以下、コイルと略す。)であり、162はコイル161の巻枠をなす樹脂製のボビンである。そして、163a、163b、164はコイル161により誘起された磁束の磁路を構成する第1、2ヨーク(継鉄)およびステータコア(固定鉄心)であり、ステータコア164は第1ヨーク163aに精密圧入した後に溶接固定されている。165はステータコア164に発生する電磁吸引力によりステータコア164に吸引されるムービングコア(可動鉄心)であり、このムービングコア165は、ステータコア164から離れる向きの弾性力をコイルバネ166により受けている。
【0021】ところで、両コア164、165間には、ムービングコア165がステータコア164に吸引されたときに、両コア164、165が直接に接触することを防止する非磁性材料(本実施形態ではステンレス)製のプレート167が配設されており、このプレート167は、プレート167とステータコア164との接触面積が、ステータコア164のうちムービングコア165と対向する面164aの面積の40〜70%となるように、図2に示すように、略星型に形成されている。
【0022】なお、図1中、168はムービングコア165に圧入固定されたプッシュロッド149の摺動(往復運動)を案内する非磁性体製のガイド部材であり、このガイド部材168は第2ヨーク163bに圧入固定されている。また、169はコイル161に電力を供給するための端子であり、この端子169を覆うカバーは、ボビン162と共に樹脂にて一体成形されている。
【0023】次に、本実施形態の作動および特徴を述べる。本実施形態に係る制御弁100では、パイロット圧力制御機構140は、流入ポート111側の作動油をパイロット制御室141に導く場合と、流入ポート111側の作動油を第2ドレンポート145側に戻す場合とを所定時間毎に切り換えるとともに、その所定時間を変化させることによりパイロット圧力を調整している。具体的には、コイル161への通電をデューティ制御するとともに、そのデューティ比(通電時間と非通電時間との比)を変化させるものである。
【0024】つまり、非通電状態では、図1、3に示すように、第1連通路144aは開くので、パイロット圧力Ppはポンプ200の吐出圧と略等しい圧力となる。一方、通電状態では、図4、5に示すように、第1連通路144aが閉じるとともに第2連通路155bが開くので、パイロット圧力Ppはポンプ200の吸入側圧力と等しくなる。
【0025】そして、通電状態と非通電状態とを短時間に切り換え制御(デューティ制御)すると、制御受圧部142は、デューティ比に略比例した圧力をパイロット圧力Ppとして受ける。したがって、制御圧Poは、従来の技術の欄で述べたように、数式3となる。
【0026】
【数3】Po=(Sp/So)×Pp−Fs/SoSp:制御受圧部142の面積So:背圧受圧部153の面積Fs:コイルバネ151の弾性力ここで、仮に上記公報と同様に、背圧受圧部153の面積Soと制御受圧部142の面積Spと等しくすると、前述のごとく、制御弁100の制御圧領域(ダイナミックレンジ)が縮小する。
【0027】そこで、本実施形態では、背圧受圧部153の面積Soを制御受圧部142の面積Spより小さくすることにより(So<Sp)とすることにより、制御弁100の制御圧領域の拡大を図っている。以上に述べたように、本実施形態では、背圧受圧部153の面積Soを制御受圧部142の面積Spより小さくするといった簡便な手段で、制御弁100の製造コスト上昇を招くことなく、制御弁100の制御圧領域の拡大を図ることができる。
【0028】また、パイロット圧力制御機構140(制御ブロック143)が、ハウジングの長手方向一端側にてハウジング110内に配設されているので、制御弁100の長手方向寸法の小型化を図ることができる。また、制御弁100の長手方向寸法の小型化を図ることができるので、第2導入通路131および第1連通路144a等のパイロット制御室141に作動油を導く通路の通路長さを縮小できるので、制御弁100を作動させるに必要な作動油量および作動油が流通する際の圧力損失を小さくすることができる。延いては、低温時等の作動油の粘度が上昇し、作動油が流通する際の圧力損失が大きくなるときの、制御弁100の応答性を向上させることができる。
【0029】また、ハウジング110とステータ130との間に第2導入通路131が構成されているので、特殊な穴開け加工や新たな部品点数の増加を招くことなく、パイロット制御室141に作動油を導く通路を構成することができる。延いては、制御弁100の製造コスト上昇を抑制することができる。ところで、第2ドレンポート145は、ポンプ200の吸入側に接続されるので、第1連通路144aや第2連通路144b内に空気が流入する可能性がある。
【0030】しかし、本実施形態では、図1に示すように、第2ドレンポート145は上方側に向けて開口しているので、例えば空気が流入した場合であっても速やかに空気を制御弁100外に排出することができる。したがって、第1連通路144aや第2連通路144b内を常に作動油にて満たすことができるので、パイロット圧力制御機構140が作動した時の作動音(鋼球146およびプッシュロッド149の衝突に伴う衝突音)を低減することができる。
【0031】なお、発明者等の試験検討によれば、プレート167とステータコア164との接触面積が、ステータコア164のうちムービングコア165と対向する面164aの面積の40〜70%となるようにすれば、両コア164、165の耐摩耗を向上させつつ、両コア164、165の残留磁気による電磁アクチュエータ160の応答遅れを縮小することができるのを確認している(図6参照)。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成10年(1998)4月14日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 洋二 (外1名)
【公開番号】 特開平11−304036
【公開日】 平成11年(1999)11月5日
【出願番号】 特願平10−102946