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【発明の名称】 油圧弁のプラグ抜け止め構造
【発明者】 【氏名】岡野 宏

【要約】 【課題】キーを斜めに組み込んでも、キーが浮き上がるのを確実に防止でき、キーの耐久性の向上を図る油圧弁のプラグ抜け止め構造を提供する。

【解決手段】バルブボデー10に弁体11を摺動自在に案内するバルブ穴10aを設け、バルブ穴10aの一端部がプラグ12で封止する。プラグ12の中間部に周溝部12aを設け、バルブボデー10に外部からバルブ穴10aに対して直交方向にキー20を挿入するための開口部19を形成する。キー20には、プラグの周溝部12aに入り込みかつバルブ穴10aの内面に係止される係止部21と、プラグの軸部12bを跨ぐように弾性嵌合する一対の保持部22と、係止部21の後端側から折曲され、バルブボデーの開口部19の内面に当接する当接部23を設ける。保持部22後縁には先端が当接部23後端を越えない突出部24が設けられ、保持部22を軸部12bに嵌合させた状態で、キー20を傾けた時に保持部22が軸部12bの最大径部に乗り上げないように突出部24から係止部21前端までの距離Lを設定した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】バルブボデーに弁体を摺動自在に案内するバルブ穴が設けられ、このバルブ穴の一端部がプラグで封止されるとともに、プラグに対しバルブ穴から脱出方向への内圧が作用するように構成され、上記プラグの中間部には周溝部が設けられ、バルブボデーには外部からバルブ穴に対して直交方向にキーを挿入するための開口部が形成され、このキーには、上記プラグの周溝部に入り込みかつバルブ穴の内面に係止可能な係止部と、上記周溝部の溝底の軸部を跨ぐように弾性嵌合する一対の保持部と、上記係止部の後端側から折曲され、バルブボデーの開口部内面に当接する当接部とが設けられた油圧弁において、上記保持部後縁には先端が当接部後端を越えない突出部が設けられ、上記保持部を上記周溝部の溝底の軸部に嵌合させた状態で、キーを傾けた時に上記保持部が軸部の最大径部に乗り上げないように上記突出部から上記係止部前端までの距離Lを設定したことを特徴とする油圧弁のプラグ抜け止め構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は油圧弁のプラグ抜け止め構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】本出願人は、バルブスティックが発生してもキーの外れを防止してプラグの脱落を防止できる油圧弁のプラグ抜け止め構造を提案した(実開平4−97173号公報)。この構造は、図1のように、プラグ1の中間部に周溝部2を設け、バルブボデー3には外部からバルブ穴4に対して直交方向にキー6を挿入するための開口部5を形成する一方、キー6には、プラグ1の周溝部2に入り込みかつバルブ穴4の内面に係止可能な係止部6aと、周溝部2の溝底の軸部2aを跨ぐように弾性嵌合する一対の保持部6bと、係止部6aの後端側から折曲され、開口部5内面に当接する当接部6cとを形成したものである。
【0003】上記油圧弁の場合、バルブボデー3のバルブ穴4にスプリング7と弁体8とを挿入し、その端部にプラグ1を挿入する。そして、プラグ1を押し込んだ状態で直交方向からキー6をバルブボデー3の開口部5に差し込むと、キー6の保持部6bがプラグ1の軸部2aに節度感を持って弾性嵌合する。ここでプラグ1への押圧力を解除すると、スプリング力でプラグ1は押され、当接部6cの両面がバルブボデー3とプラグ1とで挟持されることによってキー6は保持され、プラグ1が抜け止めされる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記構造の油圧弁の場合、正常な組付状態では、図1のように内圧がかかった時のプラグ1の抜けを、キー6の当接部6cを開口部5の内縁に当てることにより防止している。ところが、図2のようにキー6が浮き上がった状態であれば、剪断力がキー6の係止部6aと当接部6cとの曲げ部Rにかかるため、キー6の耐久性低下を招くという問題があった。つまり、R部分を延ばす方向の繰り返し荷重がかかり、破断する可能性があるからである。
【0005】図2のように浮き上がった状態となるのは、図3のようにキー6を斜めに組み込んだり、あるいはキー6を正常に組み込んだ後、当接部6cに前方への荷重Fを作用させると、保持部6bが軸部2aの最大径部に乗り上げ、キー6が斜め状態で保持される。この状態でプラグ1に内圧がかかると、保持部6bの後端(C点)を支点としてキー6が右回り方向に回転するためであると考えられる。したがって、たとえキー6を斜めに組み込んでも、キー6が浮き上がらないように工夫する必要がある。
【0006】そこで、本発明の目的は、キーを斜めに組み込んでも、キーが浮き上がるのを確実に防止でき、キーの耐久性の向上を図る油圧弁のプラグ抜け止め構造を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的は請求項1に記載の発明によって達成される。すなわち、この発明は、バルブボデーに弁体を摺動自在に案内するバルブ穴が設けられ、このバルブ穴の一端部がプラグで封止されるとともに、プラグに対しバルブ穴から脱出方向への内圧が作用するように構成され、上記プラグの中間部には周溝部が設けられ、バルブボデーには外部からバルブ穴に対して直交方向にキーを挿入するための開口部が形成され、このキーには、上記プラグの周溝部に入り込みかつバルブ穴の内面に係止可能な係止部と、上記周溝部の溝底の軸部を跨ぐように弾性嵌合する一対の保持部と、上記係止部の後端側から折曲され、バルブボデーの開口部内面に当接する当接部とが設けられた油圧弁において、上記保持部後縁には先端が当接部後端を越えない突出部が設けられ、上記保持部を上記周溝部の溝底の軸部に嵌合させた状態で、キーを傾けた時に上記保持部が軸部の最大径部に乗り上げないように上記突出部から上記係止部前端までの距離Lを設定したことを特徴とする油圧弁のプラグ抜け止め構造である。
【0008】上記構造のキーを開口部からプラグの軸部に対して斜めに組み込もうとすると、突出部が周溝の内側面に当たり、係止部の前端が軸部に当たるので、キーが一定角度以上傾くのを防止できる。つまり、突出部の作用によってキーの傾きを保持部が軸部の最大径部に乗り上げない角度に規制するので、キーの浮き上がりを確実に防止できる。したがって、剪断力がキーの係止部と当接部との曲げ部にかかる恐れがなく、キーの耐久性低下を防止できる。
【0009】
【発明の実施の形態】図4は本発明を自動変速機のタイミング弁に適用した一例を示す。バルブボデー10にはバルブ穴10aが形成されており、このバルブ穴10aに弁体11が摺動自在に収容されている。バルブ穴10aの開放端部にはプラグ12が嵌合され、このプラグ12でバルブ穴10aの一端が封止されている。上記弁体11とプラグ12との間にはスプリング13が配置され、弁体11は右方へ、プラグ12は左方へそれぞれ付勢されている。バルブボデー10には4個のポート14〜17が形成され、右端の信号ポート14に油圧が入力されない状態では、弁体11はスプリング13によって右端位置にあり、ポート15,16を連通させ、ポート17を閉じている。一方、右端の信号ポート14に油圧が入力されると、弁体11はスプリング13に抗して左端位置に移動し、ポート16,17を連通させ、ポート15を閉じる。
【0010】弁体11には斜め方向の連通穴11aが形成されており、ポート16の油圧と同一油圧がスプリング13を収容した室18に導かれている。したがって、弁体11とプラグ12は、スプリング13のばね力とこの油圧との合力(内圧)によって相反方向に付勢される。
【0011】プラグ12は中間部に周溝部12aを有しており、この周溝部12aの溝底に軸部12bが形成されている。プラグ12の一端側には、弁体11の左端部11bを収容する凹部12cが形成されており、この凹部12cは軸心部に設けたドレーン穴12dを介して外部へ連通している。バルブボデー10のプラグ12と対応する部位には、外部とバルブ穴10aとを連通する開口部19が形成され、この開口部19から板金製のキー20がプラグ12の周溝部12aに対して直交方向より挿入されている。
【0012】図5に示すように、キー20の一端部にはバルブ穴10aの内面に係止される係止部21が設けられており、この係止部21の両側部には下方に向かって直角に折曲された一対の保持部22が形成されている。また、キー20の他端部には、係止部21の後端側から直角に折曲された当接部23が設けられ、この当接部23はバルブボデー10の開口部19から外部へ突出している。なお、当接部23の先端には、手で持ちやすいように内側へ2回折り曲げられた把手部25が設けられている。
【0013】保持部22は板厚方向にばね性を有しており、自由状態において先端部の間隔Sが軸部12bの最大径Dより幅狭になるように内側へ傾斜している。そのため、保持部22を軸部12bに嵌合させると、保持部22が軸部12bに節度感を持って弾性嵌合し、キー20がプラグ12から外れるのを防止できる。保持部22の先端部後縁には後端が当接部23の後面を越えない範囲の突出部24が設けられている。突出部24の後端と当接部23の後面との距離δはできるだけ小さい方が望ましい。突出部24から係止部21前端までの距離Lは、保持部22を軸部12bに嵌合させた状態で、キー20を傾けた時に保持部22が軸部12bの最大径部に乗り上げないように設定されている。なお、当然ながら、距離Lとδとの和は、周溝12aの溝幅Mより小さい。
【0014】ここで、上記構造のキー20の浮き上がり防止作用について説明する。上記キー20をプラグ12に斜めに嵌合したり、正常に嵌合した後でキー20に斜め方向の力Fを加えると、図6のようにキー20の突出部24が周溝12aの側面に当たり、係止部21の前端が軸部12bに当たる。そのため、キー20の傾きが抑制され、保持部22が軸部12bの最大径部に乗り上げない。この状態で内圧がプラグ12に作用しても、保持部22は軸部12bに深く嵌合した状態で安定し、キー20の浮き上がりが防止される。したがって、従来例(図2参照)のように剪断力がキー20の係止部21と当接部23との曲げ部にかかることがなく、当接部23で受けることができ、キー20の耐久性低下を防止できる。
【0015】なお、上記実施例ではタイミング弁に適用した例を示したが、これに限るものではなく、図1のようなリリーフ弁、レギュレータ弁,モジュレータ弁,スロットル弁,ガバナ弁等のあらゆる油圧弁に適用できる。また、プラグに対し作用する内圧は、スプリング力によって与えてもよいし、油圧によって与えてもよい。
【0016】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明によれば、キーの保持部後縁に突出部を形成し、保持部をプラグの軸部に嵌合させた状態で、キーを傾けた時に保持部が軸部の最大径部に乗り上げないように突出部から係止部前端までの距離Lを設定したので、キーの浮き上がりが防止される。したがって、プラグの抜け方向の力を当接部で受けることができ、キーの耐久性低下を防止できる。
【出願人】 【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
【出願日】 平成10年(1998)4月15日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 秀隆
【公開番号】 特開平11−304025
【公開日】 平成11年(1999)11月5日
【出願番号】 特願平10−105058