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【発明の名称】 切換弁および樹脂製部品
【発明者】 【氏名】田中 満

【氏名】森田 紀幸

【要約】 【課題】耐熱性に優れ、かつ添加剤が含有された冷凍機油に対しても十分な耐性を有して強度やシール性を維持することができる。

【解決手段】スライド弁をヒートポンプシステムの流体圧で動作させる切換弁において、該スライド弁がポリフェニレンエーテル樹脂および熱可塑性エラストマーから選ばれた少なくとも一つの成分を含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を成形してなる樹脂体からなり、該樹脂体の曲げ弾性率が 1500 〜 4000 MPa である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 スライド弁をヒートポンプの流体圧で動作させる切換弁において、前記スライド弁はポリフェニレンエーテル樹脂および熱可塑性エラストマーから選ばれた少なくとも一つの成分を含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を成形してなる樹脂体からなり、該樹脂体の曲げ弾性率が 1500 〜 4000 MPaであることを特徴とする切換弁。
【請求項2】 前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が、さらにフッ素系樹脂を含むことを特徴とする請求項1記載の切換弁。
【請求項3】 前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、少なくともポリアリーレンスルフィド樹脂 100重量部に対して前記ポリフェニレンエーテル樹脂および熱可塑性エラストマーから選ばれた少なくとも一つの成分を 10 〜 60重量部含むことを特徴とする請求項1または請求項2記載の切換弁。
【請求項4】 前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、少なくともポリアリーレンスルフィド樹脂 100重量部に対して前記フッ素系樹脂を 1〜 70 重量部含むことを特徴とする請求項2または請求項3記載の切換弁。
【請求項5】 前記切換弁が二方向以上の多方向弁式の切換弁であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項記載の切換弁。
【請求項6】 冷凍サイクル内で使用され、かつ樹脂組成物を成形してなる樹脂製部品であって、前記樹脂組成物はポリフェニレンエーテル樹脂および熱可塑性エラストマーから選ばれた少なくとも一つの成分を含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物からなり、曲げ弾性率が 1500 〜 4000 MPa であることを特徴とする樹脂製部品。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、切換弁および樹脂製部品に関するものであり、さらに詳しくは、冷凍機、空調機等のヒートポンプシステムにおいて使用される流体の移動方向を切り換えるための多方向弁式の切換弁および樹脂製部品に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、ヒートポンプシステムはインバータやマイクロプロセッサによるサイクル制御により機能性が向上し、他の暖房機器に比べて安全性、清浄性に優れていることから冷暖房兼用機器としてその地位を確立しつつある。また、より一層の高機能化、高効率化が図られ、暖房機器としてはより高温での連続運転が行なわれるようになってきているため、このヒートポンプシステムでの切換弁は、シール性を長期間維持できるなどの耐久性が要求されるようになっている。
【0003】一般的なヒートポンプシステムにおける切換弁は、電磁的に駆動されるパイロットバルブによって、複数のポートにそれぞれ所要圧力の流体を導入し、その流体圧力によってスライド弁を有する切換弁を駆動し、複数の流体移送パイプの導通と遮断を行なうものであり、図1および図2を利用して以下にその構造を説明する。図1はヒートポンプシステムの概念図であり、図2は切換弁22の一部断面図である。冷房運転では、圧縮機21により圧縮された冷媒は切換弁22を介し室外熱交換器23に送られる。室外熱交換器23にて放熱した冷媒は、絞り機構24を通過することにより体積膨張とともに、さらに冷却される。この冷媒は室内熱交換器25で室内の冷房に使われた後切換弁22を介し圧縮機21に送られる。暖房運転では、圧縮機21より送り出された冷媒は切換弁22を介し室内熱交換器25に送られ、室内の暖房に使われた後、室外熱交換器23に送られる。上記のように切換弁22は冷房と暖房での圧縮機21より送り出された冷媒の流れ方向を切り換えるためのものである。なお、図1中の切換弁22は冷房運転を表している。図2に示す構造の切換弁におけるパイロットバルブBは、電磁コイル16と、その磁界により駆動されるプランジャ17および磁界が消失した場合にプランジャ17を元の位置に復帰させるためのスプリング18とから構成されている。
【0004】初期の状態におけるパイロットバルブBは、プランジャ17が左側に寄っていて、弁部17aはポート5を開放し、高圧流体を流入させるポート2と導通している。この場合、弁本体Aの右側の弁室9aが高圧となり、スライド弁1(バルブスライドとも称される)はその取付け部材と一体の隔壁19と20とともに左側に移動し、パイプ6とパイプ7とを導通する。なお、弁本体Aには、流体流入管10から高圧の熱媒体(流体)が流入する。ついで、電磁コイル16に通電し、プランジャ17が矢印の方向にスプリング18に抗して吸引されると、弁部17aがポート3を開放して高圧流体のポート2と導通され、またポート5と低圧側のポート4とが導通する。すると、弁本体Aの右側の弁室9aの高圧流体は低圧側ポート4から流出して低圧となり、ポート3がポート2と導通するので、高圧流体が弁室9b内に流入して高圧部を形成し、スライド弁1は隔壁19と20とともに右端に移動してパイプ7とパイプ8とを導通する。
【0005】ところで、弁室9cに対応する部分には、流体流入管10の流入口と複数本の流体移送パイプ6、7、8の流体流出入口が設けられている。そして、このような弁本体Aでは、スライド弁1の弁座に対する摺接面12と弁室9c内に開口している流体の出入口6a、7a、8aとを有する弁座11の表面と気密的に接触しながら図2に示す矢印の方向に左右に摺動する。このような切換弁Aは、高価な熱媒体をスライド弁1を摺動させながら所定の入口から所定の出口に流動するように切り換えて、エネルギーを制御するものであるから、熱媒体(冷媒或いは熱媒のいずれであってもよい)が当該システムから漏洩しないように構成される必要があり、そのためにスライド弁1の摺接面12と弁座11の表面とを極めて気密に接触させている。
【0006】従来、このスライド弁1は、ナイロン樹脂、セラミック、樹脂シートと金属製部品の複合材料などが使用されている。また、少なくとも摺動面がポリアリーレンスルフィド系樹脂とポリテトラフルオロエチレン樹脂および芳香族ポリエステル樹脂とが混合されて成形された樹脂体とから構成されるスライド弁が知られている(特開平 5-60254)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、冷凍サイクルにおける圧縮機の信頼性の向上、システム構成部品の耐熱性、耐久性の向上を図るために、スライド弁は、例えば 150〜200 ℃程度の高温でも十分な強度やシール性を維持する必要が生じた。
【0008】また、圧縮機では、冷凍機油に各種の添加剤を加えて回転部分の焼き付きを防止しており、切換弁の構成部品は添加剤(例えば、流動点調整、抗乳化性、熱安定性、電気絶縁性を高めるための周知の添加剤であり、特に極圧添加剤)に耐える素材で形成する必要性も生じた。特に、熱媒体における添加剤は、ヒートポンプ内の水分によって高温状態の運転中に加水分解し、フェノールまたはクレゾールを生成する。これらはナイロン樹脂などの合成樹脂製のスライド弁を溶解可能な有機溶剤であって、これに接したナイロン樹脂は膨張し、スライド弁の摺動面に凹凸または泡状面(発泡)を形成して気密性の摺動を困難にする。
【0009】従来の樹脂製スライド弁は、上述のような環境下において、耐熱耐久性に劣るという問題があった。例えば、表面に微小な発泡が生じるいわゆるブリスター現象などによりシール性を維持することが困難になったり、高温高圧下での強度の低下などが生じやすく耐久性が劣るなどの問題があった。
【0010】また、セラミック製スライド弁は、耐衝撃性に劣るため、切換え時の衝撃により割れたり欠けが生じたりするおそれがあり、しかも弾力性がないのでスライド弁および弁座の摺接面を精密に仕上加工する必要があり、製造コストの上昇を招くという問題があった。さらに、複合材料製スライド弁は、熱膨張係数の違いによる接合面での剥離などが生じる問題があった。
【0011】本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、耐熱性に優れ、冷媒および添加剤が含有された冷凍機油に対しても十分な耐性を有して強度やシール性を維持することのできるヒートポンプの切換弁および樹脂製部品を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明に係るヒートポンプの切換弁は、スライド弁をヒートポンプの流体圧で動作させる切換弁において、該スライド弁がポリフェニレンエーテル樹脂および熱可塑性エラストマーから選ばれた少なくとも一つの成分を含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を成形してなる樹脂体からなり、該樹脂体の曲げ弾性率が1500 〜 4000 MPa であることを特徴とする。ここで、曲げ弾性率とは、ASTM D638によって測定される曲げ弾性率をいい、測定温度は室温( 23 ℃)である。
【0013】また、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が、さらにフッ素系樹脂を含むことを特徴とする。
【0014】また、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、少なくともポリアリーレンスルフィド樹脂 100重量部に対して前記ポリフェニレンエーテル樹脂および熱可塑性エラストマーから選ばれた少なくとも一つの成分を 10 〜 60 重量部含むことを特徴とする。
【0015】また、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、少なくともポリアリーレンスルフィド樹脂 100重量部に対して前記フッ素系樹脂を 1〜 70 重量部含むことを特徴とする。
【0016】本発明に係るヒートポンプの切換弁において、二方向以上の多方向切換弁であることを特徴とする。
【0017】本発明に係る樹脂製部品は、冷凍サイクル内で使用され、かつ樹脂組成物を成形してなる樹脂製部品であって、樹脂組成物がポリフェニレンエーテル樹脂および熱可塑性エラストマーから選ばれた少なくとも一つの成分を含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物からなり、曲げ弾性率が 1500 〜 4000 MPa であることを特徴とする。
【0018】本発明に係る切換弁は、ポリフェニレンエーテル樹脂や熱可塑性エラストマーにより補強されたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物から形成されるスライド弁を使用するので、 150〜200 ℃程度の高温でも十分な強度やシール性を維持することができるとともに、冷媒および添加剤が含有された冷凍機油に対しても十分な耐性を有することができる。また、本発明に係る樹脂製部品は、このスライド弁と同じ組成を有するので、上述のスライド弁や冷凍サイクル内の摺動部材や他の部品として使用することができる。ここで、冷凍サイクルとは、冷凍機油共存下において冷媒が圧縮、凝縮、膨張、蒸発を繰り返し、熱の移動を行う系をいう。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明に係るポリアリーレンスルフィド樹脂は、芳香族基がチオエーテル結合で連結された構造を有する樹脂をいい、その繰り返し単位を化1に示す。
【0020】
【化1】

【0021】ポリアリーレンスルフィド樹脂の代表例として挙げられるポリフェニレンスルフィド(以下PPSと略称する)樹脂は、化2で示される繰り返し単位からなる周知の重合体であり、本発明に好適な樹脂としては、このような繰り返し単位を70 モル%以上、好ましくは 90 〜100 モル%含む重合体である。
【0022】
【化2】

【0023】なお、このような重合体の結晶性に影響を与えない範囲で、化3で示される共重合成分を 30 モル%未満、好ましくは 1〜 10 モル%の割合で含んでいてもよい。
【0024】
【化3】

【0025】PPS樹脂は、周知の重合反応によって合成されるが、反応直後は未架橋品であり、このままでは低分子量で低粘度であるから、押出成形、射出成形に適するように、例えば空気中において融点以下に加熱し、酸化架橋させて分子量を高めて成形に適する溶融粘度にする。このような処理をして市販されているライトンP−4(フィリップスペトローリアム社製商品名)の測定温度 300℃での溶融粘度(オリフィス:直径 1mm、長さ 2mm、荷重 10 kg)は 150〜 500Pa・s である。
【0026】上述した架橋型PPS樹脂の溶融粘度は、150 〜2000Pa・s であり、好ましくは 160〜500 Pa・s 、より好ましくは 200〜400 Pa・s であればよい。その場合、溶融粘度が 150Pa・s より小さい架橋型PPS樹脂は、例えば冷凍サイクル内雰囲気や 150℃以上の高温域で耐クリープ特性などの機械的特性が低下し、変形しやすいので好ましくない。2000Pa・s より大きい架橋型PPS樹脂は成形性が劣り、また柔軟性が低下する。耐熱性や耐クリープ特性、バリの発生状態、またコスト等は直鎖型PPSに比べて架橋型PPSの方が優れている。
【0027】しかしこのような架橋型PPSは、前述したように低分子量のものを酸化架橋させたものであるから、組成によっては脆弱となり、衝撃強度が低く、摺動部に異物が混入した際にも摺動面の一部が欠落して摺動面の摩耗を促進する可能性がある。これらの脆弱性を改良するために、直鎖状のPPSを使用することができる。このような直鎖型PPSは、特開昭 61-7332号公報、特開昭 61-66720 号公報等に記載された周知の方法で製造され、重合後の高温下の熱処理および架橋剤の添加などを行なうことなしに、重合段階で直鎖状に分子鎖を高分子量まで成長させたものであり、市販品として呉羽化学工業社製商品名のKPS一W214が挙げられる。直鎖型PPSは、架橋型PPSが硬質であり若干脆いという特性であることに比較して、白色であって特定の方向における引張り強さ、曲げ強さ、曲げ弾性率、伸び等に優れている。
【0028】直鎖型PPS樹脂の溶融粘度は、 20 〜1000Pa・s であり、好ましくは 30 〜300 Pa・s 、より好ましくは 30 〜150 Pa・s であればよい。その場合、溶融粘度が 30 Pa・s より小さい直鎖型PPS樹脂は、例えば冷凍サイクル内雰囲気や150℃以上の高温域で耐クリープ特性などの機械的特性が低下し、変形しやすいので好ましくない。300 Pa・s より大きい直鎖型PPS樹脂は、充填材を添加すると成形性が劣り、また柔軟性が低下する。この場合の溶融粘度の測定条件は、測定温度: 300℃、オリフィス:穴径直径 1mm、長さ 10mm 、荷重20kgf/cm2 、測定機:高化式フローテスタ、予熱時間 6分である。なお、溶融粘度のせん断速度は、102 〜104 (sec-1) の条件で評価するのが一般的である。
【0029】なお、本発明に係るPPS樹脂は、架橋型PPS、直鎖型PPSのいずれも使用することができる。
【0030】本発明に係るポリフェニレンエーテル樹脂は、芳香族基がエーテル結合で連結された構造を有する樹脂をいい、その繰り返し単位を化4に示す。
【0031】
【化4】

【0032】具体的には、ポリ(2,6- ジメチル-1,4- フェニレン) エーテルである。また、上述の繰り返し単位にスチレン系化合物をグラフト重合したポリフェニレンエーテルグラフト共重合体、あるいはスチレン系重合体をブレンドした変性ポリフェニレンエーテル樹脂等、およびそれらの改質物等がある。具体的には、例えばノリル(日本ジーイープラスチックス社製商品名)、ザイロン(旭化成社製商品名)、ユピエース(三菱ガス化学社製商品名)などの各品種グレードを挙げることができる。
【0033】本発明に係る熱可塑性エラストマーは、熱可塑性樹脂と同様に高温で容易に成形加工することができ、常温付近の使用温度ではゴム弾性を示すものを使用することができる。このような物性を実現するため、高温では可塑化し低温では網目の架橋点の働きをする拘束相(ハードセグメント)と、網目鎖に相当しエントロピー弾性を示すゴム相(ソフトセグメント)とから構成されている熱可塑性ゴムとも称されている熱可塑性エラストマーを好適に使用することができる。そのような熱可塑性エラストマーの具体例としては、ポリオレフィン系ゴム、アクリル系ゴム、スチレン系ゴム、ポリアミド系ゴム、ポリエステル系ゴム、フッ素系ゴム等を挙げることができる。また、シリコーン系ゴムも熱可塑性エラストマー成分として使用することができる。
【0034】本発明に好適な熱可塑性エラストマー(熱可塑性ゴム)等について説明する。ポリオレフィン系ゴムとは、モノマー単位としてα−オレフィンを用いたα−オレフィン共重合体であり、その幹ポリマーとしては、エチレン、プロピレン、ブテン-1、イソブテン、ペンテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1等の重合体、あるいはこれらの共重合体をいい、さらに 1種以上の他の共重合性単量体が共重合されているものでもよい。また、このα−オレフィン共重合体に、さらに側鎖としてグラフト共重合する不飽和カルボン酸またはその無水物、あるいはそれらの誘導体としては、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等が挙げられる。本発明には、不飽和カルボン酸およびその酸無水物や、不飽和酸のグリシジルエステルとの共重合体が好ましい。
【0035】アクリル系ゴムとは、アクリル酸エステル共重合体、またはメタアクリル酸エステル共重合体であり、化5で示される一般式を有する。
【0036】
【化5】

【0037】式中、Rは炭素数 1〜 12 のアルキル基を示す。具体的には、アクリル酸メチル、メタアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等の共重合体を好適に使用できる。
【0038】スチレン系ゴムとは、スチレンと共役ジエン化合物との共重合体でありスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、さらには酸またはエポキシ基変性共重合体が好適である。
【0039】シリコーン系ゴムとは、ポリオルガノシロキサンであり、線状オルガノシロキサン成分と架橋性成分とをその構成成分として含有するものである。線状オルガノシロキサンを与えるモノマーとしては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等を例示できる。また、架橋性成分を与えるモノマーとしては、3官能性または4官能性のシロキサン系モノマー、例えば、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン等を例示できる。
【0040】フッ素系ゴムとは、ハードセグメントとして分子量 2,000〜500,000 のフッ素樹脂(A)のブロック 1ヶ以上と、ソフトセグメントとして分子量 20,000 〜1,500,000 のフッ素ゴム(B)のブロックを 1ヶ以上有する、直鎖状あるいは分岐状、放射状のブロック共重合体である。ここで例えば(A)としては、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体樹脂を、(B)としては、フッ化ビニリデン−トリフルオロモノクロロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等を挙げることができる。
【0041】ポリアミド系ゴムとは、ナイロン11およびナイロン12のハードセグメントとポリエーテル成分もしくはポリエステル成分のソフトセグメントを含有するブロック共重合体等を好適に使用することができる。
【0042】ポリエステル系ゴムとは、アルキレンテレフタレート単位を主体とする高融点ハードセグメントと脂肪族ポリエステルもしくはポリエーテルからなる低融点ソフトセグメントとのブロック共重合体等を好適に使用することができる。
【0043】上述の熱可塑性エラストマー等に、ポリアリーレンスルフィド樹脂との相溶性を高める目的でエポキシ基、酸基、グリシジル基等の各種反応性官能基を分子構造中に導入することや、これらの官能基を有するモノマーと共重合することもできる。
【0044】本発明に係るポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を成形してなる樹脂体からなるスライド弁は、該樹脂体の曲げ弾性率が 1500 〜 4000 MPa であることが好ましい。曲げ弾性率が 1500 MPa 未満であると、スライド弁の摺動面がクリープ変形し、切換え動作が困難になる。また 4000 MPa を越えると、気密的シール性が保てずヒートポンプシステムの能力が低下する。
【0045】本発明に係るポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の配合割合は、少なくともポリアリーレンスルフィド樹脂 100重量部に対してポリフェニレンエーテル樹脂および熱可塑性エラストマーから選ばれた少なくとも一つの成分を 10 〜 60 重量部であることが好ましい。すなわち、ポリアリーレンスルフィド樹脂 100重量部に対してポリフェニレンエーテル樹脂等を 10 〜 60 重量部配合してあればよく、さらにこのような樹脂組成物に他の成分を配合することもできる。ポリフェニレンエーテル樹脂等が 10 〜 60 重量部の範囲で配合されていると、上述の範囲に曲げ弾性率を維持することができる。また、ポリフェニレンエーテル樹脂等が 10 重量部以下では十分なシール性が得られず、 60 重量部を越える配合では冷凍機油中の添加剤や冷媒の分解生成物などの影響でスライド弁の強度低下が起きる。
【0046】本発明に係るポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、さらにフッ素系樹脂を含むことが好ましい。フッ素系樹脂は、とくに限定されることなく射出成形可能なフッ素樹脂を含めて、以下に示す種々のフッ素系樹脂を使用することができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(以下PTFEと略称する)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(以下PFAと略称する)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体樹脂(以下FEPと略称する)、ポリクロロトリフルオロエチレン共重合体樹脂、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体樹脂、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体樹脂、ポリビニリデンフルオライド樹脂、ポリビニルフルオライド樹脂、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂等を挙げることができる。また、上述のフッ素系樹脂を構成するモノマーを、例えば 1: 10 〜 10 :1のモル比で共重合させた共重合体や 3元共重合体などの固体潤滑特性を示すフッ素化ポリオレフィン樹脂であってもよい。
【0047】フッ素系樹脂の中でも、熱分解開始温度が高く、耐熱特性に優れているパーフルオロ系のPTFE、PFA、FEP等が、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物よりスライド弁などを製造する過程での熱に耐えるため好ましい。例えば、PFA、FEPの溶融粘度は、約 380℃においてそれぞれ103 〜104 Pa・s 、約 4×104 〜105 Pa・s であり、またPTFEの溶融粘度は、約 340〜 380℃において約1010〜1011Pa・s であり、このような高温度下において約103 〜1011Pa・s程度の溶融粘度を有するフッ素系樹脂が好ましい。
【0048】とくにPTFEは、PPS樹脂の融点( 280〜290 ℃)よりも 100〜200 ℃以上熱分解点が高いので好ましい。このPTFEは、テトラフルオロエチレンの重合体であり成形用の粉末であっても、また、いわゆる固体潤滑用の微粉末であってもよい。PTFEは、再生PTFE粉末も使用することができる。再生PTFE粉末とは、バージン材を一度焼成した後、粉砕して得られる粉末であり、このものは繊維状になり難い性質を有しており、配合した樹脂組成物を良好な溶融粘度に維持するので、成形性を改善する優れた添加剤である。フッ素系樹脂としては、例えばテフロン7J、340J(いずれも三井デュポンフロロケミカル社製商品名)、テフゼル200(三井フロロケミカル社製商品名)、フルオンG163、L169、PFA−P63(いずれも旭硝子社製商品名)、ポリフロンM12、ルブロンL5(いずれもダイキン工業社製商品名)、KTL610、KT400H(いずれも喜多村社製商品名)などを例示することができる。
【0049】フッ素系樹脂は、その形状と大きさとをとくに限定することなく用いることができるが、粒状で粒径が 70 μm 以下、好ましくは 1〜 50 μm の粒径が樹脂組成を均一にするため好ましい。
【0050】フッ素系樹脂の配合割合は、少なくともポリアリーレンスルフィド樹脂 100重量部に対して 1〜 70 重量部であることが好ましい。フッ素系樹脂をこの範囲内で配合することにより、スライド弁の駆動が低トルクとなり、良好な切換え動作が得られる。フッ素系樹脂が 70 重量部を越えると、スライド弁の強度不足により使用時の高圧のため変形が生じ、シール性を保てなくなるおそれがある。
【0051】また本発明には必要に応じて、以下に示す強化材または充填材を配合することができる。これら強化材または充填材としては、粉粒状、平板状、鱗片状、針状、球状または中空状および繊維状が挙げられる。具体的には硫酸カルシウム、珪酸カルシウム、クレー、タルク、アルミナ、珪砂、ガラス粉、金属粉、グラファイト、炭化珪素、チッ化珪素、シリカ、チッ化ホウ素、チッ化アルミニウム、カーボンブラックなどの粉粒状充填材、雲母、ガラス板、セリサイト、アルミフレークなどの金属箔、黒鉛などの平板状もしくは鱗片状充填材、シラスバルーン、金属バルーン、ガラスバルーンなどの中空状充填材、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、ウィスカー、金属繊維、アスベスト、ウォラストナイト等の繊維状充填材、芳香族ポリアミド繊維等の有機繊維状充填材を挙げることができる。充填材または繊維強化材の含有量としては、樹脂成分の合計量 100重量部に対して 0〜 60 重量部の範囲が好適である。
【0052】さらにこの発明においては、ポリフェニレンスルフィド樹脂と、ポリフェニレンエーテル樹脂または熱可塑性エラストマーとの相溶性を向上させる目的でビスオキサゾリン化合物、エポキシ樹脂化合物、エポキシ基含有熱可塑性ポリマー、オキサゾリン基含有熱可塑性ポリマー等の熱可塑性ポリマーの 1種以上、あるいはエポキシ基、アミノ基、メルカプト基、ビニル基、イソシアネート基等の有機官能基を 1種以上含むシランカップリング剤またはチタンカップリング剤を配合することができる。
【0053】本発明では、さらにまた本発明の要旨を逸脱しない範囲において水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン等の無機難燃剤、ハロゲン系、リン系等の有機難燃剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、滑剤、分散剤、カップリング剤、発泡剤、架橋剤、着色剤、可塑剤等の添加剤を添加することができる。
【0054】本発明に係るヒートポンプの切換弁においては、上述のスライド弁を使用することにより、少なくとも二方向以上の多方向切換弁として応用することができる。また、本発明に係る樹脂製部品は、上述のスライド弁として使用することができる。また耐熱耐冷媒性に優れているためスライド弁以外にも冷凍サイクル内での部品に使用することができる。
【0055】
【実施例】実施例1〜実施例4、比較例1〜比較例5実施例および比較例に用いたスライド弁の原材料を以下に説明する。
1)ポリフェニレンスルフィド樹脂:DSP C一115(大日本インキ化学工業社製商品名)
2)ポリフェニレンエーテル樹脂:ユピエースAH60(三菱ガス化学社製商品名)
3)熱可塑性エラストマー−1(エチレン/グリシジルメタクリレートエラストマー):レクスパールRA3150(日本石油社製商品名)
4)熱可塑性エラストマー−2(スチレンブタジエンスチレンエラストマー):タフプレン912(旭化成工業社製商品名)
5)テトラフルオロエチレン樹脂:KTL610(喜多村社製商品名)
6)炭酸カルシウム:NA600(白石カルシウム社製商品名)
これらの材料を表1に示した割合で配合し、二軸押出機を用いてペレット状に造粒し、射出成形で図3および図4に示したスライド弁(家庭用エアコン 7kw相当品)を形成した。図3および図4に示すように、スライド弁1は、弁座に対する摺接面12を有する本体13より構成されている。なお、14は流体通路を、15は溝をそれぞれ示す。
【0056】得られたスライド弁を用いて、曲げ弾性率(ASTM D638)を測定するとともに、以下に示す実機耐久試験を行なった。
【0057】[実機耐久試験]図1および図2に示したヒートポンプを使用し、高温・高圧の条件のもとで切換弁にスライド弁を取り付け、初期および耐久運転( 10,000 回往復運動)後のスライド弁のシール性、外観調査として変形の有無、発泡およびクラックの有無を調査した。
【0058】
【表1】

【0059】表1より明らかなように、実施例1〜実施例4は、いずれも外観に異常は認められず、シール性に問題はなかった。一方、ポリフェニレンスルフィド樹脂のみで作製した比較例1は、初期からリークが多かった。またポリフェニレンスルフィド樹脂にポリフェニレンエーテル樹脂を多量に配合し、曲げ弾性率が 5000MPaとなった比較例2は外観が変形した。またフッ素系樹脂や充填材を多量に添加して曲げ弾性率が 4000MPaより大きくなった比較例3および比較例4は、シール性が劣った。またポリフェニレンスルフィド樹脂とフッ素系樹脂とからなる比較例5もシール性が劣った。
【0060】
【発明の効果】本発明に係るヒートポンプシステムの切換弁は、ポリフェニレンエーテル樹脂および熱可塑性エラストマーから選ばれた少なくとも一つの成分を含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を成形し、曲げ弾性率が 1500 〜 4000 MPa であるスライド弁を使用するので、耐熱性に優れ、かつ冷凍機油に各種の添加剤に対して耐久性を有する。その結果、長期間高温下で連続運転が可能となる。また、フッ素系樹脂を含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を用いるので、特に摺動性が向上し、切換弁の耐久性がより向上する。ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の配合を請求項3または請求項4とするので、上述の特性がより最適なものとなる。
【0061】本発明に係るヒートポンプシステムの切換弁は上述のスライド弁を用いた二方向以上の多方向切換弁であるので、冷暖房能力に優れた家庭用空調機が得られる。
【0062】本発明に係る樹脂製部品は、ポリフェニレンエーテル樹脂および熱可塑性エラストマーから選ばれた少なくとも一つの成分を含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を成形し、曲げ弾性率が 1500 〜 4000 MPa であるので、冷凍サイクル内で使用されても耐熱耐久性を有する。
【出願人】 【識別番号】000102692
【氏名又は名称】エヌティエヌ株式会社
【識別番号】000230412
【氏名又は名称】日本ランコ株式会社
【出願日】 平成10年(1998)1月12日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
【公開番号】 特開平11−201304
【公開日】 平成11年(1999)7月30日
【出願番号】 特願平10−3873