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【発明の名称】 スライド弁
【発明者】 【氏名】冨松 卓亮

【要約】 【課題】スライド弁体の先端部形状を工夫するといった簡単な改良を施すだけで、流体の偏流を少なくしてエロージョンに起因する摩耗や腐食を軽減し耐久性の向上を図れるようにする。

【解決手段】円筒形状の弁箱本体1内に、先端部5a側が半円状かつ後端部5b側が矩形状で弁箱本体1内の流路1Bを絞るように形成された流体通過用ポート5を有するシートリング3を固定保持させ、該シートリング3のシート面3aに添わせて流路軸線aに対して直交する方向にスライドすることでポート5を開閉するスライド弁体6の先端部6Aを、ポート5の先端部5a側と合同もしくは相似の半円形状に形成している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 円筒形状の弁箱本体と、先端部側が半円状かつ後端部側が矩形状で上記弁箱本体内の流路を絞るように形成された流体通過用ポートを有し、上記弁箱本体内に固定保持されたシートリングと、このシートリングのシート面に添わせて配設され、上記流路軸線に対して直交する方向にスライドすることで上記ポートを開閉するスライド弁体と、上記シートリングの下側で上記スライド弁体のスライド方向に沿って配置されて該スライド弁体の幅方向両側直線縁部を案内する一対のガイド部材とを備えたスライド弁において、上記スライド弁体の先端部を、上記ポートの先端部側と合同もしくは相似の半円形状に形成していることを特徴とするスライド弁。
【請求項2】 上記スライド弁体の半円形状先端部の両端には、略接線方向に延びて該スライド弁体の幅方向両側直線縁部に連なる傾斜縁部が形成されている請求項1に記載のスライド弁。
【請求項3】 円筒形状の弁箱本体と、先端部側が半円状かつ後端部側が矩形状で上記弁箱本体内の流路を絞るように形成された流体通過用ポートを有し、上記弁箱本体内に固定保持されたシートリングと、このシートリングのシート面に添わせて配設され、上記流路軸線に対して直交する方向にスライドすることで上記ポートを開閉するスライド弁体と、上記シートリングの下側で上記スライド弁体のスライド方向に沿って配置されて該スライド弁体の幅方向両側直線縁部を案内する一対のガイド部材とを備えたスライド弁において、上記スライド弁体の先端部を、その幅方向の中央部が最もスライド方向の後方に位置するほぼ山形に後退した形状に形成すると共に、その山形後退形状の先端部の幅方向両端部はポートの両側直線縁部に対して鈍角となるような曲線形状に形成していることを特徴とするスライド弁。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば石油プラントにおける高温化学触媒入りガスなど腐食性の強い流体の流量コントロール等に使用されるスライド弁に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図3は、この種の一般的なスライド弁の構成を示す一部破断斜視図であり、同図において、1は流路軸線aが略垂直な円筒形の弁箱本体で、その内周面には、パンチタブなどの耐食性、耐熱性、耐摩耗性に優れたライニング層2が設けられている。3は上記弁箱本体1内に一体突出させた鍔部1Aにアンカー4を介して固定保持されたシートリングで、このシートリング3には、上記弁箱本体1内の流路1Bを絞るように先端部5a側が半円状でかつ後端部5b側が矩形状に形成された流体通過用ポート5が設けられているとともに、このシートリング3の全表面にもパンチタブなどの耐食性、耐熱性、耐摩耗性に優れたライニング層2が設けられている。
【0003】6は上記シートリング3の下側シート面3aに添わせて配設されたスライド弁体で、このスライド弁体6は上記流路軸線aに対して直交する方向、つまり図面上の矢印b−b方向にスライドすることで、上記ポート5を開閉するように構成されている。上記シートリング3の下側には、上記スライド弁体6のスライド方向に沿って配置されて該スライド弁体6の幅方向両側直線縁部6b,6bを案内する正面視コ字形の一対のガイド部材7,7が接合されており、これら一対のガイド部材7,7は、該ガイド部材7、シートリング3および上記鍔部1Aを上記流路軸線aに沿った方向、すなわち、上下方向に貫通する長軸ボルト9およびナット10を介して上記弁箱本体1の鍔部1Aに固定支持されている。
【0004】11は上記スライド弁体6のスライド方向後端部に連結され上記弁箱本体1の後部に固定連結されたボンネットカバー12を貫通して外部に延出されたスライド用駆動杆であり、その端部は図示省略するスライド駆動用アクチュエータに連結されており、このアクチュエータを介し上記スライド弁体6をガイド部材7,7に沿って矢印b−b方向にスライド駆動することにより、ポート5を通して高温化学触媒入りガス等の流体の流量をコントロールするように構成されている。
【0005】上記のような基本構成を備えたスライド弁において、従来では、上記スライド弁体6の先端部6aが、それの通常使用態様の開度に関係なく、図3および図4に示すように、スライド方向b−bに対して直交する一直線形状に統一して形成されていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記したように先端部6aが一直線形状に形成されたスライド弁体6を備えた従来のスライド弁においては、図4の実線に示すように、スライド弁体6をポート5に対して少しだけ後退させた小開度が通常の使用態様である場合、スライド弁体6の一直線状先端部6aとポート5における半円状先端部5aとにより形成されるポート開口形状(斜線挿入部)が略半月形状で、幅方向中央部の開口面積に対し幅方向両端部の開口面積が極端に小さくなるために、流体の流れに偏りが生じやすくなり、その偏流によってスライド弁体6の先端部6aの幅方向両端部分などにエロージョン現象を発生し、たとえパンチタブなどのライニングが施されたものであっても、局部的な摩耗やエロージョン腐食により耐久性が大きく損なわれるという問題があった。
【0007】また、図4の仮想線に示すように、スライド弁体6をポート5に対して大きく後退させた大開度あるいは全開が通常の使用態様である場合でも、スライド弁体6の一直線状先端部6aとポート5における両側直線縁部5c,5cとのなす角度θが90°であって、その角部に流れが集中することで上記と同様なエロージョン現象を発生し、局部的な摩耗やエロージョン腐食による耐久性低下がみられるという同様な問題があった。
【0008】本発明は上記実情に鑑みてなされたもので、スライド弁体の先端部形状を工夫するといった簡単な改良を施すだけで、流体の偏流を少なくして摩耗やエロージョン腐食を軽減し耐久性の向上を図ることができるスライド弁を提供することを目的としている。
【0009】
【課題解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明に係るスライド弁は、円筒形状の弁箱本体と、先端部側が半円状かつ後端部側が矩形状で上記弁箱本体内の流路を絞るように形成された流体通過用ポートを有し、上記弁箱本体内に固定保持されたシートリングと、このシートリングのシート面に添わせて配設され、上記流路軸線に対して直交する方向にスライドすることで上記ポートを開閉するスライド弁体と、上記シートリングの下側で上記スライド弁体のスライド方向に沿って配置されて該スライド弁体の幅方向両側直線縁部を案内する一対のガイド部材とを備えたスライド弁において、上記スライド弁体の先端部を、上記ポートの先端部側と合同もしくは相似の半円形状に形成していることを特徴とするものであり、上記スライド弁体をポートに対して少しだけ後退させた小開度が通常の使用態様である場合であっても、スライド弁体の半円形状先端部とポートにおける半円状先端部とにより形成されるポート開口形状が略三日月形状で、その幅方向全域の開口面積がほぼ均一なものになるために、流体の流れの偏りが非常に少なくなり、エロージョン現象の発生に伴う局部的な摩耗やエロージョン腐食が抑制されるとともに、スライド弁体先端部の流体に対する接触長さも長くなって疲労が分散され、弁全体の耐久性の向上を図ることが可能となる。
【0010】また、請求項3に記載の発明に係るスライド弁は、円筒形状の弁箱本体と、先端部側が半円状かつ後端部側が矩形状で上記弁箱本体内の流路を絞るように形成された流体通過用ポートを有し、上記弁箱本体内に固定保持されたシートリングと、このシートリングのシート面に添わせて配設され、上記流路軸線に対して直交する方向にスライドすることで上記ポートを開閉するスライド弁体と、上記シートリングの下側で上記スライド弁体のスライド方向に沿って配置されて該スライド弁体の幅方向両側直線縁部を案内する一対のガイド部材とを備えたスライド弁において、上記スライド弁体の先端部を、その幅方向の中央部が最もスライド方向の後方に位置するほぼ山形に後退した形状に形成すると共に、その山形後退形状の先端部の幅方向両端部はポートの両側直線縁部に対して鈍角となるような曲線形状に形成していることを特徴とするものであり、上記スライド弁体をポートに対して大きく後退させた大開度あるいは全開が通常の使用態様である場合において、スライド弁体の先端部をポートの後端縁部に対して引き状態に位置させるとともに、ポートにおける両側縁部とのなす角度を鈍角にして、流体流れの集中化を避けることになるために、エロージョン現象に伴う局部的な摩耗やエロージョン腐食を抑え、弁全体の耐久性を向上することが可能となる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は請求項1および請求項2に記載の発明に係るスライド弁の要部の拡大平面図であり、同図において、図4に示す従来のスライド弁と同一の構成部材には同一の符号を付して、それらの詳しい説明を省略する。なお、スライド弁全体の構成は、図3に示すとおりであるため、その全体構成の説明も省略する。
【0012】図1において、スライド弁体6の先端部6Aは、上記弁箱本体1内に固定保持されたシートリング3に形成された流体通過用ポート5の先端部5aと相似形で該先端部5aより少し曲率半径の大きい半円形状に形成されているとともに、この半円形状先端部6Aの両端には、略接線方向に延びて全閉時に上記ポート5両側のシートリング3のシート面3aにラップするような幅に設定されているスライド弁体6の幅方向両側直線縁部6B,6Bに連なる傾斜縁部6C,6Cが形成されている。
【0013】このような先端形状を持つスライド弁体6を備えたスライド弁においては、通常、上記スライド弁体6を図1の実線に示すように、ポート5に対して少しだけ後退させた小開度にして使用されるのが一般的であり、このような通常の小開度使用態様では、スライド弁体6の半円形状先端部6Aとポート5における半円状先端部5aとにより形成されるポート開口形状(斜線挿入部)が略三日月形状で、その幅方向全域の開口面積がほぼ均一なものになる。これによって、流体の流れに偏りがほとんど発生しないために、エロージョン現象の発生に伴う局部的な摩耗やエロージョン腐食が抑制されるとともに、スライド弁体6の先端部6Aの流体に対する接触長さも長くなって疲労が分散されることになり、弁全体の耐久性が向上する。
【0014】図2は請求項3に記載の発明に係るスライド弁の要部の拡大平面図であり、同図において、図4に示す従来のスライド弁と同一の構成部材には同一の符号を付して、それらの詳しい説明を省略する。また、スライド弁全体の構成は、図3に示すとおりであるため、その全体構成の説明も省略する。
【0015】図2において、スライド弁体6の先端部6Aは、その幅方向の中央部がスライド方向b−bの最も後方に位置し両側に至るほど漸次スライド方向b−bの前方に位置するように傾斜して、全体がほぼ山形に後退した形状に形成されているとともに、この山形後退形状の先端部6Aの幅方向両端部6D,6Dは上記ポート5の両側直線縁部5c,5cに対して鈍角θとなるような曲線形状に形成されている。
【0016】このような先端形状を持つスライド弁体6を備えたスライド弁においては、通常、上記スライド弁体6を図2の実線に示すように、ポート5に対して大きく後退させた大開度あるいは図2の仮想線に示すように、ポート5を全開させて使用されるのが一般的であり、このような大開度あるいは全開使用態様において、スライド弁体6の先端部6Aがポート5の後端縁部に対して引き状態に位置されるとともに、ポート5における両側直線縁部5c,5cとのなす角度θが鈍角になり、流体流れが局所に集中することを避けることになるために、エロージョン現象に伴う局部的な摩耗やエロージョン腐食を抑え、この場合も弁全体の耐久性が向上する。
【0017】なお、上記図1に示した実施の形態では、スライド弁体6の先端部6Aを、ポート5の先端部5aと相似形で該先端部5aより少し曲率半径の大きい半円形状に形成したものについて説明したが、スライド弁体6の先端部6Aを、ポート5の先端部5aと合同形に形成してもよい。
【0018】
【発明の効果】以上のように、請求項1および請求項3に記載の発明によれば、スライド弁の先端部形状を工夫するだけの簡単な改良によって、流体の偏流によるエロージョン現象の発生に伴う局部的な摩耗やエロージョン腐食を抑制して、弁全体の耐久性を大幅に向上することができるという共通の効果を奏する。
【0019】特に、請求項1に記載の発明によるときは、従来と同一の小開度のもとで、スライド弁体先端部と流体との接触長さを長くとれるために、その先端部の疲労を分散して耐久性を一層向上でき、また、請求項3に記載の発明によるときは、大開度あるいは全開時におけるエロージョン現象の発生までも抑えて弁体腐食を効果的に防止することができる。
【出願人】 【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
【出願日】 平成10年(1998)1月7日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】森本 義弘
【公開番号】 特開平11−201296
【公開日】 平成11年(1999)7月27日
【出願番号】 特願平10−1186