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【発明の名称】 電磁弁
【発明者】 【氏名】瀬木 正哉

【要約】 【課題】排出ポートを上向きに開口する必要があるので、車両搭載上制約を受け、しかも排出ポートに接続する特別なドレンポートを必要とするため、電磁弁の小形化が難しく、構成も複雑化する問題がある。

【解決手段】電磁部30の両端部にプランジャ38の変位によって作動油が行き来される2つの油溜り室42,43を形成し、この2つの油溜り室42,43の一方を取り囲むように環状溝45を形成し、この環状溝45と油溜り室42,43とを油溜り室の下方位置に開口した第1の通路46を介して連通し、前記環状溝45を環状溝の上方位置に開口する第2の通路47を介して上方に開口させた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 供給ポート、排出ポート、これら供給ポートと排出ポートの間に配置された制御ポートを備え、スプールを摺動可能に嵌挿したスプール弁部と、前記スプールの一端に係合するプランジャを電磁吸引力によって変位する電磁部とからなり、これらスプール弁部と電磁部の各端部を接合し、前記電磁吸引力によるプランジャの変位によってスプールを摺動させ、供給ポートと制御ポートおよび制御ポートと排出ポートの各間の流路を制御して制御ポートを流れる作動油の圧力を制御する電磁弁において、この電磁部の両端部に前記プランジャの変位によって作動油が行き来する油溜り室を形成し、この油溜り室の一方を取り囲むように環状溝を形成し、この環状溝と油溜り室とを円周上1個所に形成した第1の通路を介して連通し、前記環状溝を前記第1の通路と直径方向に対向する第2の通路を介して外部に開口させたことを特徴とする電磁弁。
【請求項2】 前記スプール弁部と電磁部とを、前記第1の通路が油溜り室の下方位置に開口し、かつ前記第2の通路が環状溝の上方位置に開口するように横向きに設置してなる請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】 前記環状溝を前記スプール弁部と電磁部との接合面間に形成し、この接合面間の上方より前記第2の通路を外部に開口させてなる請求項2に記載の電磁弁。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電磁部内にダンピング用の作動油を常時貯溜できるようにした電磁弁に関するものである。
【0002】
【従来の技術】電磁部のコイルに印加した電流値に応じてプランジャを電磁吸引し、スプール弁部のスプールを摺動して供給ポートと制御ポートおよび制御ポートと排出ポートとの各通路を制御して制御ポートに流れる作動油の圧力を変化させる電磁弁はよく知られている。この電磁弁を、例えば、オートトランスミッションの油圧制御に用いる場合には、多くの場合、図4に示すように、スプール弁部1および電磁部2が水平となる横向きの状態で、かつ作動油を貯蔵するタンクの油面よりも上方の位置において、電磁弁が車両のバルブボディ3に装着されるようになっている。
【0003】この種の電磁弁においては、電磁部のプランジャ4の動作にダンピングを付与するために、電磁部内に作動油を常時貯溜しておく必要があり、しかも作動油に混入した微細な異物が、プランジャ4の動作に伴うポンプ作用によってプランジャ4の摺動部に侵入しないようにする必要がある。このために、従来においては、電磁部2のプランジャ4の両側に油溜り室5(一方は図示省略)を設け、スプール弁部1側の油溜り室5の下方にドレンポート6を開口し、このドレンポート6をスプール弁部1の上方に開口させた排出ポート7の下方に連通路8を介して接続するようにしている。
【0004】これにより排出ポート7の開口部よりも下方に位置する油溜り室5に常時作動油が貯溜されるようにするとともに、作動油に混入した異物を油溜り室5よりも下方に位置する連通路8に堆積させ、プランジャ4の摺動部に入り込まないようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記した従来の電磁弁においては、油溜り室5内に作動油を貯溜するために、排出ポート7を上向きに設けなければならないので、車両搭載上制約を受ける場合があり、しかもその上向きの排出ポート7にドレンポート6を連通路8を介して接続する必要があるため、構成が複雑となるとともに、ドレンポート6を追加した分電磁弁の全長が大きくなって小形化の障害となる問題がある。
【0006】本発明は、上記した従来の問題点を解決するためになされたもので、電磁弁の小形化および簡素化を可能にでき、しかもプランジャの動作にダンピングを付与できるとともに、プランジャの摺動部に異物が侵入しない電磁弁を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に記載の発明は、供給ポート、排出ポート、これら供給ポートと排出ポートの間に配置された制御ポートを備え、スプールを摺動可能に嵌挿したスプール弁部と、前記スプールの一端に係合するプランジャを電磁吸引力によって変位する電磁部とからなり、これらスプール弁部と電磁部の各端部を接合し、前記電磁吸引力によるプランジャの変位によってスプールを摺動させ、供給ポートと制御ポートおよび制御ポートと排出ポートの各間の流路を制御して制御ポートを流れる作動油の圧力を制御する電磁弁において、この電磁部の両端部に前記プランジャの変位によって作動油が行き来される2つの油溜り室を形成し、この2つの油溜り室の一方を取り囲むように環状溝を形成し、この環状溝と前記油溜り室とを円周上1個所に形成した第1の通路を介して連通し、前記環状溝を前記第1の通路と直径方向に対向する第2の通路を介して外部に開口させたものである。
【0008】
【実施の形態】以下本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は電磁弁の全体構成を示し、図2は図1のA−A線断面を示す。電磁弁は、スプール弁部10と、電磁部30とによって構成され、スプール弁部10の弁スリーブ11と電磁部30のコア31の端面同士が、同一の軸線上において互いに結合され、スプール弁部10を電磁部30によって作動できるようにしている。
【0009】スプール弁部10の弁スリーブ11にはスプール孔12が形成され、このスプール孔12にスプール13が軸方向に摺動可能に嵌挿されている。弁スリーブ11の一端にはスプール孔12の開口端を閉塞する蓋栓14が螺着され、この蓋栓14とスプール13との間にスプール13を電磁部30方向に付勢するばね15が介挿されている。
【0010】前記スプール孔12は、大径孔12Aと小径孔12Bからなり、小径孔12Bは電磁部30側に形成されている。大径孔12Aには、3つの環状溝17Aが軸線方向に間隔を存して形成され、また大径孔12Aと小径孔12Bのつなぎ部には環状溝17Bが形成されている。前記3つの環状溝17Aには、電磁部30側から順に供給ポート21、制御ポート22および排出ポート23の各一端が開口され、これら供給ポート21、制御ポート22および排出ポート23の各他端は弁スリーブ11の外周部に開口されている。また前記環状溝17Bにはフィードバック圧導入孔24が開口され、このフィードバック圧導入孔24は弁スリーブ11の外周に形成された切欠き25からなる後述する連通路を介して前記制御ポート22に連通されるようになっている。
【0011】前記大径孔12Aにはスプール13に形成した2つの大径ランド部13A、13Bが、また小径孔12Bには小径ランド部13Cがそれぞれ摺動可能に嵌装されている。2つの大径ランド部13A、13Bの対向縁部は、前記供給ポート21および排出ポート23の開度を制御するようになっており、スプール13が変位した場合に、供給ポート21および排出ポート23の一方の開度が減少され、他方の開度が増大されて、それら供給ポート21および排出ポート23間に位置された制御ポート22の圧力を制御するようになっている。
【0012】前記電磁部30のコア31は円筒状の磁性体からなり、その軸心には前記スプール13と同心的に中空孔32が形成されている。コア31の外周にはボビン33が装着され、このボビン33にコイル34が巻回されている。このコイル34を覆うようにカップ形状のカバー35が設けられ、このカップ形カバー35のスプール弁部10側の一端はかしめられて、コア31の側端部に形成されたフランジ部と弁スリーブ11の側端部に形成されたフランジ部とを互いに接合した状態で一体的に結合している。
【0013】前記コア31の中空孔32には、非磁性体からなるシャフト部36が軸受ブッシュ37を介して摺動可能に挿通されている。シャフト部36は磁性体からなるプランジャ38に取付けられ、このプランジャ38は前記カバー35に形成した貫通孔に微少な隙間39を有して遊嵌され、その端部はカバー35に外周を固着されたディスクスプリング40の中心部に軸方向変位自在に支持されている。プランジャ38には前記コア31の一端に形成されたヨーク部41が対応され、このヨーク部41によってプランジャ38をスプール弁部10側に電磁吸引するようになっている。なお、プランジャ38とディスクスプリング40と間には油溜り室42が形成されている。
【0014】前記プランジャ38のシャフト部36の他端は、弁スリーブ11のスプール孔12(小径孔12B)内に突入され、前記スプール13の一端に形成された小径端部に接触係合するようになっている。そしてスプール孔12とスプール13の小径端部およびシャフト部36との間に油溜り室43を形成している。しかして油溜り室43は前記軸受ブッシュ37の切欠き部および隙間39を介して前記油溜り室42に連通され、プランジャ38の変位によるポンプ作用によって両油溜り室42,43間を作動油が行き来してプランジャ38の動作にダンピング作用を付与するようになっている。
【0015】前記コイル34には図略の電源制御部から励磁電流が印加されるようになっている。コイル34に励磁電流が通電されると、コイル34は磁力線を発生し、磁性体からなるコア31、カバー35およびプランジャ38を磁路として磁気回路を形成する。これにより、プランジャ38がヨーク部41に電磁吸引され、スプール弁部10の方向に移動する。
【0016】前記コア31のフランジ部の端面に接合される弁スリーブ11のフランジ部の端面には、図2に詳細図示するように、前記油溜り室43を取り囲むように環状溝45が形成されている。環状溝45の円周上1個所には第1の通路46が半径方向内方に向けて形成され、この第1の通路46を介して前記油溜り室43と環状溝45が互いに連通されている。また、環状溝45には前記第1の通路46と直径方向に対向する位置に第2の通路47が半径方向外方に向けて形成され、この第2の通路47は前記弁スリーブ11のフランジ部外周近傍に開口されている。上記した環状溝45ならびに第1および第2の通路46,47は、弁スリーブ11のダイキャスト成形によって形成される。
【0017】上記した構成の電磁弁は、油面の上方位置に水平穴が形成された車両のバルブボディ50に、スプール弁部10の弁スリーブ11が嵌合されることにより、横向き設置される。この際、電磁弁は、第1の通路46が下方、第2の通路47が上方に位置するように取付けられる。この際、排出ポート23は下向きとなる。かかるバルブボディ50への弁スリーブ11の嵌合により、バルブボディ50の水平穴内周面と弁スリーブ11に形成した切欠き25との間で、前記フィードバック圧導入孔24と制御ポート22とを連通する連通路51が形成される。
【0018】前記バルブボディ50には弁スリーブ11に形成された供給ポート21、制御ポート22および排出ポート23にそれぞれ接続する供給通路52、制御通路53および排出通路54が形成され、供給通路52は作動油供給源に、制御通路53は油圧制御機器にそれぞれ接続され、排出通路54は図略のタンクの油面上に開口される。
【0019】なお、図1中60はばね15が収納されたばね室をドレンするドレン通路、61はカバー35の一端を閉塞する閉塞プレートである。次に上記した構成における動作について説明する。電磁部30のコイル34に励磁電流が通電されていない状態においては、ばね15のばね力によりスプール13およびプランジャ38が電磁部30側(図の左側)に位置され、これによってスプール13の2つの大径ランド部13A、13Bの対向縁部は、供給ポート21の開度を増大させ、排出ポート23の開度を減少させている。従って、制御ポート22の圧力は最も高い制御圧に保持されている。
【0020】電磁部30のコイル34に励磁電流が通電されると、励磁電流の大きさに応じた電磁吸引力がヨーク部41とプランジャ38との間に作用し、プランジャ38とともにスプール13をばね15のばね力に抗して変位させる。これにより供給ポート21の開度が減少されるとともに、排出ポート23の開度が増大されるため、制御ポート22の圧力は図3に示すようにコイル34に通電される励磁電流に応じた制御圧まで下降される。制御圧は制御ポート22から連通路51およびフィードバック圧導入孔24を介して環状溝17Bに導入され、スプール13の大径ランド部33Aと小径ランド部33Cの各端面に作用される。これにより、スプール13には大径ランド部33Aと小径ランド部33Cとの面積差の油圧推力がばね15に対抗する側に作用され、制御圧をコイル34に通電された励磁電流に応じた圧力となるようにフィードバック制御する。
【0021】ところで、電磁吸引力によるプランジャ38の動作時およびばね15によるプランジャ38の復帰時に、プランジャ38は油溜り室42、43に充満された作動油によるダンピング作用により、安定して変位される。すなわち、油溜り室42、43に充満された作動油は、プランジャ38の変位によるポンプ作用により軸受ブッシュ37および隙間39を介して2つの油溜り室42,43間を行き来し、その際の作動油の粘性作用により、プランジャ38の動作にダンピングが付与される。
【0022】また、フィードバック圧導入孔24から環状溝17Bに導入された作動油は、弁スリーブ11の小径孔12Bと小径ランド部13Cとの嵌合隙間から洩れて油溜り室43内に補給される。油溜り室43内に充満された作動油は、油溜り室43の下方に開口された第1の通路46より環状溝45に達し、この環状溝45の上方に開口された第2の通路47を介して弁スリーブ11のフランジ部上方よりドレンされる。また、作動油に混入した異物は、環状溝45の底部に滞留されるため、プランジャ38の動作に伴うポンプ作用によってもプランジャ38の摺動部に侵入することがない。
【0023】上記した実施の形態によれば、油溜り室43が弁スリーブ11とコア31との接合面に形成した第1の通路46、環状溝45および第2の通路47を介して外部上方に開口されているので、電磁弁の全長を大きくすることなく、かつ構成も簡素化できるとともに、排出ポート23の向きも上向き、下向きに限定されることがないため、車両搭載上制約を受けることがない。
【0024】しかも、電磁弁への作動油の供給が停止された状態においても、油溜り室42、43内に作動油を保持し続けることができるので、プランジャ38のダンピング効果を遺憾無く発揮させることができるとともに、作動油に混入した異物をプランジャ38の摺動部に確実に侵入しないようにすることができる。
【0025】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、電磁部の両端部にプランジャの変位によって作動油が行き来される2つの油溜り室を形成し、この2つの油溜り室の一方を取り囲むように環状溝を形成し、この環状溝と油溜り室とを円周上1個所に形成した第1の通路を介して連通し、環状溝を第1の通路と直径方向に対向する第2の通路を介して外部に開口させた構成であるので、スプール弁部と電磁部とを、第1の通路が油溜り室の下方位置に開口し、かつ第2の通路が環状溝の上方位置に開口するように横向きに配置することにより、油溜り室内に作動油を保持し続けることができるとともに、作動油に混入した異物をプランジャの摺動部に入り込まないようにすることができるようになる。
【0026】従って、従来のように排出ポートの向きを上方にする必要がないので、車両搭載上の制約を受けることがなく、また構成も簡素化できる効果がある。
【出願人】 【識別番号】000003470
【氏名又は名称】豊田工機株式会社
【出願日】 平成9年(1997)11月12日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−141714
【公開日】 平成11年(1999)5月28日
【出願番号】 特願平9−310149