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【発明の名称】 スプール
【発明者】 【氏名】秋 本 高 志

【氏名】田 島 正 道

【氏名】石 川 誠

【要約】 【課題】パッキン取付溝の溝底をシールするシールリップがなく、しかもパッキンの浮き上がりを防止できるスプールを提供する。

【解決手段】スプール本体のパッキン取付溝に嵌着されるパッキン12が、パッキン取付溝の溝底からその深さの1/2またはそれよりも溝底側の両側面に、パッキンの浮き上がり防止手段21を有し、この浮き上がり防止手段21は、パッキン取付溝の側壁に圧接するための、同心円上に配設した円弧状の複数の畝部22を半径方向に複数列配列した嵌着部23と、該嵌着部23に設けた半径方向の複数の切欠溝24とを備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】少なくとも1つの流体流路、該流体流路に隣接して形成した少なくとも1つのシールランド、及び該シールランドに形成した環状のパッキン取付溝を有するスプール本体と、上記パッキン取付溝に嵌着した環状のパッキンとを備え、上記パッキンが、上記パッキン取付溝の溝底からその深さの1/2またはそれよりも中心側の両側面に、該パッキン取付溝からの浮き上がりを防止する浮き上がり防止手段を備え、上記浮き上がり防止手段が、上記パッキン取付溝の側壁に圧接する、円弧状の複数の畝部を半径方向に複数列配列した嵌着部と、該嵌着部に設けた半径方向の切欠部とを備えている、ことを特徴とするスプール。
【請求項2】少なくとも1つの流体流路、該流体流路に隣接して形成した少なくとも1つのシールランド、及び該シールランドに形成した環状のパッキン取付溝を有するスプール本体と、上記パッキン取付溝に嵌着した環状のパッキンとを備え、上記パッキンが、上記パッキン取付溝の溝底からその深さの1/2またはそれよりも中心側の両側面に、該パッキン取付溝からの浮き上がりを防止する浮き上がり防止手段を備え、上記浮き上がり防止手段が、上記パッキン取付溝の側壁に圧接する、環状に配設した多数の突起を半径方向に複数列配列した嵌着部を備えている、ことを特徴とするスプール。
【請求項3】畝部の半径方向断面または突起の断面を、台形、三角形または正弦曲線のいずれかとした、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載したスプール。
【請求項4】嵌着部より半径方向外方のパッキン取付溝の幅を、該嵌着部の幅よりも広くした、ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載したスプール。
【請求項5】パッキンが、嵌着部の半径方向外方の両側壁に、環状の凹部または複数の円弧状の凹部を備えている、ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載したスプール。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スプール弁に使用するスプールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】流体流路、該流体流路に隣接して形成したシールランド、及び該シールランドに形成した環状のパッキン取付溝を有するスプール本体と、上記パッキン取付溝に嵌着した環状のパッキンとを備えたスプールは、特に例示するまでもなく周知である。しかしながら、上記周知のスプールは、パッキンがパッキン取付溝から浮き上がって摺動抵抗が増大したり、或いはパッキン取付溝から外れ易いという問題がある。これは、スプールによるポートの連通の切換えの時に、パッキンと弁孔との間の摺動抵抗や、パッキンに作用する流体圧によってパッキンが変形して外方に引っ張られたりすることによって、パッキンの内周面とパッキン取付溝の底壁との間に間隙ができ、この間隙に流入した圧力流体がパッキンをパッキン取付溝の外方に向けて押し上げるためである。
【0003】この問題を解決するために、本出願の出願人は、例えば実用新案登録第2521876号公報に開示されているように、パッキンの浮き上がり防止機能を有するスプールを提案した。この既提案のスプールに取付けたパッキンは、その両側面にシールリップを有し、これらのシールリップをパッキン取付溝に常時当接させて、パッキンの内周面とパッキン取付溝の底壁との空間への圧力流体の流入を阻止して密閉することにより、パッキンが浮き上がろうとすると上記空間が負圧になってその浮き上がりを阻止するものである。しかしながら、上記パッキンは、パッキン取付溝に嵌合する際に、シールリップがパッキン取付溝の側壁に当接した状態で溝底側に移動するために、シールリップによってパッキン取付溝内の空気が圧縮され、空気抵抗によってパッキンの嵌着作業に支障を来したり、圧縮された空気が上記空間に閉じ込められることなどがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとする課題は、パッキン取付溝の溝底をシールするためのシールリップがなく、しかもパッキンの浮き上がりを防止できるスプールを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明のスプールは、少なくとも1つの流体流路、該流体流路に隣接して形成した少なくとも1つのシールランド、及び該シールランドに形成した環状のパッキン取付溝を有するスプール本体と、上記パッキン取付溝に嵌着した環状のパッキンとを備え、上記パッキンが、上記パッキン取付溝の溝底からその深さの1/2またはそれよりも中心側の両側面に、該パッキン取付溝からの浮き上がりを防止する浮き上がり防止手段を備え、上記浮き上がり防止手段が、上記パッキン取付溝の側壁に圧接する、円弧状の複数の畝部を半径方向に複数列配列した嵌着部と、該嵌着部に設けた半径方向の切欠部とを備えていることを特徴としている。
【0006】また、同様の課題を解決するため、浮き上がり防止手段が、パッキン取付溝の側壁に圧接する、環状に配設した多数の突起を半径方向に複数列配列した嵌着部を備えていることを特徴としている。
【0007】さらに、同様の課題を解決するため、これらのスプールにおける畝部の半径方向断面または突起の断面を、台形、三角形または正弦曲線のいずれかとしたことを特徴としている。
【0008】また、パッキンの取付を容易にするために、これらのスプールにおいて、パッキンの嵌着部より半径方向外方のパッキン取付溝の幅を、該嵌着部の幅よりも広くしたことを特徴としている。
【0009】さらに、スプールの摺動抵抗を低減させるために、これらのパッキンが、嵌着部の半径方向外方の両側壁に、環状の凹部または複数の円弧状の凹部を備えていることを特徴としている。
【0010】
【作用及び発明の効果】請求項1に記載したスプールは、パッキンの両側面に設けた、パッキン取付溝の側壁に圧接する円周方向の畝部を半径方向に複数列配列した嵌着部によって、パッキン取付溝に強固に取付けられる。この場合、畝部を半径方向に複数列設けたことによって、これらの畝部がそれぞれパッキン取付溝の側壁に圧接されるので、一列の畝部によってパッキン取付溝に取付けるものに比べて、個々の畝部の幅や高さを小さくてもパッキン取付溝に強固に取付けることができる。
【0011】また、パッキンの内周面とパッキン取付溝の底壁間の空間や複数列の畝部の間は、嵌着部に設けた半径方向の切欠部によってパッキン取付溝の外部に連通しているために、これらの空間への圧力流体の封じ込めがないので、封じ込め流体圧によってパッキンがパッキン取付溝から浮き上がって抜け出すことがない。さらに、上記嵌着部をパッキン取付溝の深さの1/2またはそれよりも中心側に設けたことによって、パッキンの先端部分の柔軟性が大きくなるので、スプールの摺動抵抗を小さくすることができる。
【0012】請求項2に記載したスプールは、上記浮き上がり防止手段を、パッキン取付溝の側壁に圧接する、環状に配設した多数の突起を半径方向に複数列配列した嵌着部としたことにより、半径方向の切欠部を設ける必要がなく、しかもパッキン取付溝への嵌着力が請求項1に記載のパッキンとほぼ同じで、かつ畝部を有する嵌着部に比べてパッキン取付溝への取付けが一層容易である。
【0013】請求項4に記載したスプールは、パッキン取付溝の開口側の幅をパッキンの嵌着部の幅より広くしたことによって、パッキンをパッキン取付溝に容易に挿入できるので、パッキン取付溝へのパッキンの取付けが一層容易になる。また、請求項5に記載したスプールは、パッキンの嵌着部の半径方向外方の両側壁に設けた環状の凹部または複数の円弧状の凹部によって、パッキンの先端部分の柔軟性が一層大きくなるので、スプールの摺動抵抗をさらに小さくすることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】図3は、本発明の第1実施例のスプール10を使用するスプール弁の一例を示し、このスプール弁1の弁本体2は、圧力流体の供給ポートP、出力ポートA,B、及び排出ポートEA,EBと、これらのポートが開口する軸方向の弁孔3とを備えている。そして、上記弁孔3に気密に摺動可能に挿入されたスプール10は、図示を省略している適宜の駆動手段で駆動されて、弁孔3を気密に往復動することにより、出力ポートAとBを、供給ポートPと排出ポートEAまたはEBとに切り換えて連通させる。しかしながら、本発明のスプールが使用されるスプール弁は、図示の弁に限定されるものではない。
【0015】上記スプール10は、スプール本体11と、該スプール本体11の後記する環状のパッキン取付溝16に嵌着された環状のパッキン12とを備えている。上記スプール本体11は、縮径部によって形成された複数(図示の例は3個)の流体流路14と、これに隣接する複数(図示の例は4個)のシールランド15とを備え、これらのシールランド15に、環状のパッキン取付溝16がそれぞれ形成されている(図2も参照)。また、上記スプール本体11は、軸方向の両端近くに形成した溝に、弁孔3の軸方向両端をシールする環状のシール部材17が嵌着されている。
【0016】図2に詳細を示すように、上記パッキン取付溝16は互いに平行な側壁を有し、溝の底壁からその深さaの1/2またはそれより溝底側の部分bの幅は、その半径方向外方の幅よりも狭くされており、これによって上記パッキン12の取付部18が形成されている。
【0017】図1及び図2に詳細を示す上記パッキン12は、両側面に、上記取付部18とほぼ同じ半径方向の長さを有する浮き上がり防止手段21を備え、浮き上がり防止手段21より半径方向外方の幅は、上記取付部18の幅より若干狭くされている。この浮き上がり防止手段21は、同心円に配設した複数の円弧状の畝部22を半径方向に複数列(図示の例は4列)配列した嵌着部23と、該嵌着部23の円周方向に等間隔に形成された半径方向の複数(図示の例は4つ)の切欠部24とを備えている。そして、これらの畝部22の半径方向の断面は、台形、三角形、または正弦曲線のいずれかにされており、これらの畝部22はパッキン取付溝16の上記取付部18への嵌着によってその側壁に圧接され、これによってパッキン取付溝16に強固に取付けられる。また、パッキン12の外径は、シールランド15の外径より若干大きくされ、弁孔3をシールする先端は円弧面にされている。
【0018】上記嵌着部23は複数列の畝部22を備えているために、一列の畝部でパッキン取付溝16の取付部18に嵌着するものに比べて、個々の畝部22の取付部18への圧接力を小さくすることができ、しかもこれによって嵌着部23の取付部18への圧接力が低下しないので、パッキン12をパッキン取付溝16に強固に取付けることができる。また、浮き上がり防止手段21が半径方向の複数の切欠部24を備えているので、パッキン12をパッキン取付溝16に嵌着する際に、パッキン12の内周面とパッキン取付溝16の底壁との間や複数列の畝部22間の空気は、切欠部24を通ってパッキン取付溝16の外に排出されて空気が封じ込められないので、これらの間に流入した圧縮空気の空気圧の蓄積によって、パッキン12がパッキン取付溝16から浮き上がって外れることがない。
【0019】上記浮き上がり防止手段21は、一列の畝部22のみによって取付部18に嵌着するものに比べて、各畝部の取付部18への嵌着力を小さくすることができるので、パッキン取付溝16の底部や畝部22相互間の空気が外部に排出されることと相まって、パッキン12をパッキン取付溝16に強固に嵌着することができるものでありながら、その取付けが容易である。また、取付部18より半径方向外方のパッキン取付溝16の幅を、上記取付部18の幅より若干広くしたので、複数列の畝部22が取付部18の側壁に圧接されるものでありながら、パッキン取付溝16へのパッキン12の嵌着が一層容易である。さらに、浮き上がり防止手段21を、パッキン取付溝16の溝底からその深さの1/2またはそれよりも中心側に設けたことによって、パッキン12の先端部分の柔軟性が大きくなるので、スプール10の摺動抵抗を小さくすることができる。
【0020】図4は本発明の第2実施例を示し、第2実施例におけるパッキン27の浮き上がり防止手段28は、上記パッキン取付溝16の側壁に圧接する、環状に配設された多数の突起29を、半径方向に複数列配列した嵌着部30によって構成されている。そして、これらの突起29の断面は、台形、三角形、または正弦曲線のいずれかとされており、取付部18への嵌着によってその側壁に圧接される。第2実施例のパッキン27の他の構成は第1実施例のパッキン12と同じであるから、詳細な説明は省略する。上記第2実施例は、浮き上がり防止手段28を多数の突起29で構成したことによって、切欠溝24がなくてもパッキン取付溝16の溝底に空気が封じ込められることはなく、しかも多数の突起29が個別に圧縮されるので、パッキン取付溝16への取付けが第1実施例のパッキン12より一層容易である。
【0021】図5は本発明の第3実施例を示し、第3実施例におけるパッキン32は、第1実施例におけるパッキン12の嵌着部23の半径方向外方に、適宜の深さの環状の凹部33が形成されている。しかしながら、この凹部33は上記畝部22と同様に、同心円上に配設された複数の円弧状の凹部とすることもできる。また、図示を省略しているが、これらの凹部は、第2実施例におけるパッキン27の嵌着部30の半径方向外方に設けることもできる。
【0022】上記第3実施例は、環状または円弧状の複数の凹部33により、パッキン32の先端部分の柔軟性が一層大きくなってスプールの摺動抵抗がさらに小さくなるために、スプールの摺動抵抗を小さくすることができ、しかもパッキン32の摩耗を少なくすることができる。第3実施例の他の構成及び構成は第1実施例と同じであるから、説明は省略する。
【出願人】 【識別番号】000102511
【氏名又は名称】エスエムシー株式会社
【出願日】 平成9年(1997)11月11日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】林 宏 (外1名)
【公開番号】 特開平11−141697
【公開日】 平成11年(1999)5月25日
【出願番号】 特願平9−325331