| 【発明の名称】 |
オーステナイトステンレス鋼バルブ |
| 【発明者】 |
【氏名】兼重 憲嗣
|
| 【要約】 |
【課題】100℃以上で使用される、バルブ本体の材質が、オーステナイトステンレス鋼バルブにおいて、使用開始時の取り扱いが容易なバルブを提供する。
【解決手段】100℃以上で使用される、バルブ本体1の材質がオーステナイトステンレス鋼のバルブであって、ステム4の往復動によって開閉操作を行う形式のものに対して、そのステム4の材質を、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼などのオーステナイトステンレス鋼に比べて熱膨張係数が1.3分の1以下の金属を使用し、ステム4にかかる圧縮応力をステム材料の許容応力に収め、シート3の破壊、ステム4の屈曲発生を防止し、バルブの取り扱いを簡略化する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ステムの往復動によって開閉操作を行う形式で、バルブ本体の材質がオーステナイトステンレス鋼であるバルブにおいて、ステムの材質に、オーステナイトステンレス鋼に比べて、熱膨張係数が1.3分の1以下の金属を使用したことを特徴とするオーステナイトステンレス鋼バルブ。 【請求項2】 ステムの材質が、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼等である請求項1記載のオーステナイトステンレス鋼バルブ。 【請求項3】 ジャケットによってバルブ本体を加熱するようになっている請求項1又は2記載のオーステナイトステンレス鋼バルブ。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、化学工業をはじめとする、高温下で使用されるオーステナイトステンレス鋼バルブ、特に使用開始時に要求されるバルブの取扱い方法を改良するためのバルブに関する。 【0002】 【従来の技術】図1と図2は、100℃以上の高温下で使用されるオーステナイトステンレス鋼バルブの代表例としてY型クローブ弁を示しており、バルブ本体1の貫通する通路2の途中にシート3を設け、バルブ本体1に軸方向へ可動となるよう装着したステム4とカバーフランジ5の間に設けたグランドパッキング6をグランドプレート7とグランドボルト8で圧縮保持し、ステム4と平行するようバルブ本体1に固定したヨーク9とステム4の端部に外嵌するヨークフランジ10を固定化し、ヨークフランジ10で回動自在に保持したスリーブ11の雌ねじ12とステム4の雄ねじ13を螺合し、スリーブ11に回転操作用のハンドル14を固定すると共に、ステム4にヨーク9へ外接する回り止め15が固定されている。 【0003】図1では、ステム4の先端に別体のディスク16を取り付け、図2では、ステム4の先端にディスク16を一体に設けたものを示している。 【0004】上記のようなバルブは、ハンドル14でスリーブ11を回転させると、回り止め状態のステム4は軸方向に往復運動し、ステム4の前進動時は、その先端のディスク16がシート3に圧着し、通路2を流れる流体を止めることになる。 【0005】従って、この形式のバルブでは、ステム4はシート3とヨークフランジ10のスリーブ11との間に挟まれてバルブが閉じている間、圧縮応力が発生することになる。 【0006】上記スリーブ11の雌ねじ12とステム4の雄ねじ13は、ステム4がシート3からの反力によって緩まないように、摩擦角よりも小さい角度のねじが切ってあり、スラストによって勝手に動かないように設計されている。 【0007】図1と図2に示したバルブは手動操作のものであるが、エアー駆動、電気モータ駆動などの自動式の場合も、ねじでステム4を往復動させるかぎり、機構はまったく同一である。 【0008】このような形式のバルブを高温下で使用する場合は、バルブ本体1の材料にオーステナイトステンレス鋼を用い、バルブ本体1の外周に加熱用のジャケット17を設けた構造が採用されている。 【0009】該バルブを高温下で使用する場合は、当然、最初にそのバルブを定常の温度に昇温しなければならない。 【0010】しかしながら、上記昇温操作をバルブを閉じた状態で行うと、バルブ本体1を形成するオーステナイトステンレス鋼は、熱膨張係数が大きく、その上、バルブ本体1、ステム4の各温度は、ヨーク9の温度よりも高くなることから、ステム4の熱膨張の程度が、バルブ本体1+ヨーク9より大きくなり、そのため、ステム4に過大な圧縮応力が掛かり、シート2を破壊したり、ステム4自身が圧縮応力に耐えきれずに屈曲したりすることがある。 【0011】そのため、かかる高温で使用されるバルブを昇温しようとする場合は、ステムに過大な圧縮応力が掛からないように、ハルブを予め少し開けておくことが、このようなバルブを取り扱う場合の一般的な操作方法である。 【0012】バルブ本体1の材質がオーステナイトステンレス鋼のバルブは、本来、耐蝕を目的としたものであるから、バルブ本体1、ステム4などの内部の流体に触れる部分の材質は同一にするのが一般的である。ヨーク9は内部の流体に触れないので価格の安い炭素鋼を使用するのが、これまた一般的である。 【0013】以下に、この材質の組み合わせで、バルブを閉じた状態で300℃に昇温しようとする場合の、ステム4に掛かる圧縮応力を計算してみる。 【0014】発明者らの測定結果によると、バルブ本体の温度が300℃に達した時のステム4、ヨーク9の各温度は、バルブ本体300℃、ステム(露出部)80℃、ヨーク(露出部)50℃であった。 【0015】このバルブが20℃の時に閉じられて、300℃に昇温されたとすると、本体の温度変化は、300−20=280℃、ステムの温度変化は、一応最高温度部と最低温度部の平均温度が全体の温度であるとみなして、(300+80)/2−20=170℃、ヨークの温度変化は、50−20=30℃、と計算される。 【0016】一方、この時の各部の長さの関係はバルブ本体のシートからヨークの取り付け部までの長さをLとすると、ヨークの長さは1.5L、ステムのシートから駆動ネジ部までの長さは2.5Lであった。この各長さの関係は本発明でカバーするバルブでは標準的なものである。各部の熱膨張量を計算すると ステム :170×1.7×10-5×2.5L =7.225×10-3×L 本体とヨークの合計:280×1.7×10-5×L+30×1.1×10-5 ×1.5L=4.810×10-3×Lなお、上式中1.7×10-5と1.1×10-5は各々オーステナイトステンレス鋼と炭素鋼の該温度における熱膨張係数である。上の計算からステムは本体とヨークの合計よりも2.415×10-3×L多く伸びることが分かる。オーステナイトステンレス鋼の縦弾性係数は約21,000kg/mm2 であるので、この時、ステムにはσ=21,000×2.415×10-3=50.7kg/mm2の圧縮応力が掛かっていることが分かる。一方、オーステナイトステンレス鋼の200℃から300℃における許容応力はせいぜい10kg/mm2 程度であるので、持ちこたえることはできない。 【0017】 【発明が解決しようとする課題】ところで、シートとステムの先端とはテーパになっているので、上記のような熱膨張差により、ステムの先端がシートに余分の熱膨張分だけ食い込んでシートを破壊するか、ステムが過大な圧縮応力に耐えきれずに屈曲するかのいずれかの現象が起こる。いずれにしても、バルブは故障する。そのため、かような環境で使用されるバルブは、昇温しようとする場合は、ステムに過大な圧縮応力が掛からないように、バルブを予め少し開けておくことがこのようなバルブを取り扱う場合の一般的な操作方法である。 【0018】そこで、この発明の課題は、上記のようなバルブにおいて、使用開始時に必要となる煩雑な操作を不要にすることができるオーステナイトステンレス鋼バルブを提供することにある。 【0019】 【課題を解決するための手段】上記のような課題を解決するため、請求項1の発明は、ステムの往復動によって開閉操作を行う形式で、バルブ本体の材質がオーステナイトステンレス鋼であるバルブにおいて、ステムの材質に、オーステナイトステンレス鋼に比べて、熱膨張係数が1.3分の1以下の金属を使用した構成を採用したものである。 【0020】ここで、ステムの具体的な材質は、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼などを使用でき、また、ジャケットによってバルブ本体を加熱するようにすることもできる。 【0021】 【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図示例と共に説明する。この発明のバルブは、構造的に図1と図2で示したものと同じであるが、バルブ本体1の材質がオーステナイトステンレス鋼であるのに対し、そのステム4の材質をフェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼などのオーステナイトステンレス鋼に比べて熱膨張係数が1.3分の1以下の金属を使用している。 【0022】幸い、ステンレス鋼はオーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系と、各々合金組成が異なることから、それぞれ異なる熱膨張係数を有するものがある。発明者はこの事実に注目した。つまり、オーステナイトステンレス鋼の熱膨張係数は先に示したように、1.7×10-5/℃であるのに対し、フェライト系、マルテンサイト系ステンレス鋼のそれは、炭素鋼に近く、1.1×10-5/℃にしか過ぎない。そこで、本体材質をオーステナイトステンレス鋼としたままで、ステムの材質をオーステナイトステンレス鋼からフェライト系またはマルテンサイト系ステンレス鋼に変えて再度、ステムと、本体+ヨークの熱膨張量を計算すると ステム :170×1.1×10-5×2.5L =4.675×10-3×L 本体とヨークの合計:280×1.7×10-5×L+30×1.1×10-5 ×1.5L=4.810×10-3×Lとほぼ同一となり、ステム4とバルブ本体1とヨーク9の合計との間には熱膨張差はなくなり、昇温に伴うステムへの過大な負荷は解消できることが分かった。 【0023】しかしながら、フェライト系及びマルテンサイト系ステンレス鋼はオーステナイトステンレス鋼に比べて耐蝕性に劣ることから、バルブ内部の流体によっては使用できないことがある。これらフェライト系またはマルテンサイト系ステンレス鋼がステム4の材料として使用できない場合は、SUS630、SUS329J1などの高耐蝕性、低熱膨張のステンレス鋼を使用すればよい。これらの熱膨張係数はフェライト系及びマルテンサイト系ステンレス鋼の1.1×10-5/℃よりは若干大きいが1.2×10-5/℃に過ぎず、これらを使用した場合の熱膨張量は ステム :170×1.2×10-5×2.5L =5.100×10-3×L バルブ本体とヨークの合計:280×1.7×10-5×L+30×1.1× 10-5×1.5L=4.810×10-3×Lであり、伸び差からステム4にかかる圧縮応力は σ=21,000×(5.1000−4.810)×10-3 =6.09kg/mm2 と、これらのステンレス鋼の許容応力に収まる。 【0024】発明者はステム4の材質をバルブ本体1の材質の熱膨張係数に比べて、1.3分の1よりも小さいものを使用すれば本件の目標を達することができることを経験により突き止めた。 【0025】更に好ましいことに、これらオーステナイトステンレス鋼よりも炭素鋼に近い熱膨張係数を有するステンレス鋼はオーステナイトステンレス鋼よりも許容応力が大きいので、この事実もこれらの材質はステムに採用するのに有利である。 【0026】ここで、バルブ本体1の材料はオーステナイトステンレス鋼、ヨーク9は炭素鋼、ステム4のフェライト系またはマルテンサイト系ステンレス鋼は、SUS304並みの耐蝕性が要求される場合はSUS630を当てるか、SUS316並みの耐蝕性が要求される場合はSUS329J1を当てる。また、ヨーク9をオーステナイトステンレス鋼にすると、この部分の熱膨張量が多くなるので、更に安全になる。 【0027】図3乃至図6は、この発明のバルブにおける形式の異なった例を示し、図3と図4はフラッシュバルブ、図5はサンプリングバルブ、図6は三方切り換え弁であり、図示以外には、ゲート弁、タンク弁、ピストン弁等がある。 【0028】 【発明の効果】以上のように、この発明によると、バルブ本体の材質がオーステナイトステンレス鋼であるバルブにおいて、ステムの材質に、オーステナイトステンレス鋼に比べて、熱膨張係数が1.3分の1以下の金属を使用したので、高温で使用されるバルブを昇温しようとする場合に、ステムにかかる圧縮応力をステム材料の許容応力に収めることができ、これにより、シートの破壊やステムの屈曲発生を防止し、昇温時にバルブを予め少し開けておくという操作が一切不要となり、バルブの取り扱いが簡単になる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】391026162 【氏名又は名称】アスカ工業株式会社
|
| 【出願日】 |
平成9年(1997)11月7日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】鎌田 文二 (外2名)
|
| 【公開番号】 |
特開平11−141693 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)5月25日 |
| 【出願番号】 |
特願平9−305874 |
|