トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F16 機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段




【発明の名称】 逆止弁
【発明者】 【氏名】堀内 朝晴

【要約】 【課題】弁ハウジング1を穴部V2に圧入する際に、当該弁ハウジング1が傾くのを防止することができるとともに、弁ハウジング1の圧入時の変形を防止することができる逆止弁Xを提供する。

【解決手段】弁ハウジング1と弁座3とを旋削又は冷間鍛造により一体形成して、弁ハウジング1の外径の寸法精度を確保する。弁ハウジング1と弁座3の双方の端面に、圧入治具7を押し当てる環状の当たり面6を形成して、圧入治具7の当たり面6の面積を十分に確保する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】圧入によって穴部に装着される筒状の弁ハウジングと、この弁ハウジングの一端部に設けられた環状の弁座と、上記弁ハウジングの内部に挿入され、上記弁座に対して接離可能な略キャツプ形の可動弁と、上記弁ハウジングの他端部に設けられたばね受け部と、このばね受け部と上記可動弁との間に介在し、上記可動弁を付勢して前記弁座に密着させる弾性部材とを備え、上記可動弁を上記弁座に密着させた状態で弁座側から弁ハウジングの内部に導入した流体の逆流を阻止する逆止弁であって、上記弁ハウジングと弁座とを旋削又は冷間鍛造により一体形成し、当該弁ハウジングの一端部と弁座の双方の端面に、圧入治具を押し当てる環状の当たり面を形成していることを特徴とする逆止弁。
【請求項2】上記弁ハウジングの一端部側の内周と弁座との交差部分に、補強用の厚肉部を形成している請求項1記載の逆止弁。
【請求項3】上記可動弁の外周に、流体に対する流路抵抗を減少させる開口又は切欠を形成している請求項1記載の逆止弁。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば車両用の動力舵取装置に使用される逆止弁に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、車両用の舵取装置として、油圧によって操舵力を補助する動力舵取装置が多用されている。この動力舵取装置は、油圧ポンプから吐出される圧油を、油圧シリンダや油圧モータ等の油圧アクチュエータに供給することにより、操舵補助力を出力するものであり、上記油圧ポンプと油圧アクチュエータとの間には、操舵方向及び操舵抵抗に応じて油圧アクチュエータへの圧油の供給を制御する油圧コントロールバルブが介在されている。
【0003】この種の動力舵取装置においては、悪路走行時や縁石に乗り上げた際に車輪に加わる衝撃により、油圧アクチュエータに供給された圧油が油圧ポンプ側に逆流してハンドルを取られるいわゆるキックバック現象が生じる。そこで、油圧コントロールバルブの入力ポートに逆止弁を内蔵することにより、上記キックバック現象が生じるのを防止することが行われている。図2は、上記逆止弁の構造を示す断面図である。同図において、矢印Aは油圧ポンプからの圧油の供給方向、矢印Bは油圧コントロールバルブへの圧油の吐出方向を示す。上記逆止弁90は、弁ハウジング91と、この弁ハウジング91の内部に軸方向へ移動可能に挿入された可動弁92と、弁ハウジング91の一端部に嵌合された環状の弁座93と、上記可動弁92を弁座93側へ付勢するコイルばね94と、このコイルばね94の一端部を係止するばね受け部95とによって構成されている。
【0004】上記弁ハウジング91は、鈑金によって形成された筒状のものであり、油圧コントロールバルブの入力ポートの穴部に圧入される。また、上記可動弁92は、弁座93に密着可能な略キャップ形のものであり、その外周と弁ハウジング91の内周との間には、圧油の通過を許容する空間96が形成されている。上記弁座93は鈑金によって形成された環状のものであり、その内部が油圧ポンプから供給された圧油の導入口93aとして構成されている。この弁座93は、弁ハウジング91の一端部の内周に嵌合させた状態で、当該一端部をプレスによってかしめることにより、弁ハウジング91に一体化されている。上記ばね受け部95は、弁ハウジング91の他端部に連設された内向きフランジ状のものであり、このばね受け部95の内周が、圧油の吐出口95aとして構成されている。
【0005】上記逆止弁は、油圧ポンプから矢印Aの方向に圧油が供給されると、上記可動弁92に油圧が負荷されて、当該可動弁92がコイルばね94の付勢力に抗して図の右方に移動する。これにより可動弁92と弁座93との間に隙間ができ、この隙間及び上記空間96を通って圧油が吐出口95aから矢印B方向に吐出される。逆に、車輪に加わる衝撃により、動力舵取装置の油圧アクチュエータから油圧コントロールバルブを介して油圧が矢印Cに示す方向に負荷された場合は、可動弁92が図の左側に移動して弁座93に密着する。この結果、圧油の逆流が規制されて、キックバック現象が阻止される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記逆止弁は、弁ハウジング91の弁座93側の端面91aを、圧入治具によって押圧することにより、油圧コントロールバルブの入力ポートの穴部に圧入される。ところが、上記逆止弁は、弁ハウジング91の一端部をかしめることによって当該弁ハウジング91に弁座93を組み付けている構造上、弁ハウジング91の端面幅dを大きくすることができない。つまり、圧入治具の当たり面である上記端面91aの面積を十分に確保することができない。このため、上記弁ハウジング91を穴部に圧入する際に、穴部の軸線に対して弁ハウジング91の軸線が傾いて、圧入作業に困難をきたすという問題があった。また、上記当たり面の面圧が高くなるので、弁ハウジング91が変形して、シール性能が低下するおそれもあった。しかも、上記弁ハウジング91が鈑金製であるので、そのスプリングバックの影響によって、外径の寸法精度を確保し難い。このため、弁ハウジング91を穴部に確実に固定するためには、圧入締め代を大きくする必要があり、外径寸法の大きいものについては、外周が過度に締めつけられて変形し、そのシール性能が低下するという問題があった。さらに、上記逆止弁は、可動弁92の外周と弁ハウジング91の内周との間の空間96が狭いために、圧油に対する流路抵抗が大きく、圧油の供給遅れが生じるという問題もあった。
【0007】この発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、圧入治具の当たり面を十分に確保することができるとともに、外径寸法の精度を確保することができる逆止弁を提供することを目的とする。またこの発明は、圧油に対する流路抵抗を小さくすることができる逆止弁を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するためのこの発明の逆止弁は、圧入によって穴部に装着される筒状の弁ハウジングと、この弁ハウジングの一端部に設けられた環状の弁座と、上記弁ハウジングの内部に挿入され、上記弁座に対して接離可能な略キャツプ形の可動弁と、上記弁ハウジングの他端部に設けられたばね受け部と、このばね受け部と上記可動弁との間に介在し、上記可動弁を付勢して前記弁座に密着させる弾性部材とを備え、上記可動弁を上記弁座に密着させた状態で弁座側から弁ハウジングの内部に導入した流体の逆流を阻止する逆止弁であって、上記弁ハウジングと弁座とを旋削又は冷間鍛造により一体形成し、当該弁ハウジングの一端部と弁座の双方の端面に、圧入治具を押し当てる環状の当たり面を形成していることを特徴とするものである(請求項1)。
【0009】上記の構成の逆止弁によれば、弁ハウジングと弁座とを一体形成し、圧入治具を押し当てる環状の当たり面を、弁ハウジングと弁座の双方の端面に形成しているので、上記圧入治具と当たり面との接触面積を十分に確保することができる。このため、弁ハウジングを圧入する際に、穴部の軸線に対して弁ハウジングの軸線が傾くのを抑制することができるとともに、当たり面に作用する面圧を小さくすることができる。また、上記弁ハウジングが旋削又は冷間鍛造により形成されているので、外径の寸法精度を確保し易い。このため、圧入締め代を小さくすることができる。
【0010】上記弁ハウジングは、その一端部側の内周と弁座との交差部分に、補強用の厚肉部を形成しているのが好ましく(請求項2)、この場合には、上記当たり面付近の剛性を高めることができるので、弁ハウジングを穴部に対して強圧で圧入した場合でも、当該弁ハウジングが変形するのを防止することができる。
【0011】上記逆止弁は、可動弁の外周に、流体に対する流路抵抗を減少させる開口又は切欠を形成しているのが好ましく(請求項3)、この場合には、上記弁座側から弁ハウジングの内部に導入した圧油を、上記可動弁の外周の開口又は切欠を通してばね受け部側から効率よく吐出することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。図1はこの発明の逆止弁Xの一つの実施の形態を示す断面図である。この逆止弁Xは、車両のキックバック現象を防止するためのものであり、動力舵取装置の油圧コントロールバルブVの入力ポートV1に設けられている。上記逆止弁Xは、筒状の弁ハウジング1と、この弁ハウジング1の内部に軸方向への移動が許容された状態で挿入された可動弁2と、弁ハウジング1の一端部1aに形成された弁座3と、上記可動弁2を弁座3側へ付勢するコイルばね4と、このコイルばね4の一端部を受け止めるばね受け部5とによって構成されている。
【0013】上記弁ハウジング1は、旋削又は冷間鍛造によって形成された円筒状のものであり、その一端部1a側の外周には、段部11が突設されており、この段部11は、上記油圧コントロールバルブVの入力ポートV1の穴部V2に圧入されている。このように、上記弁ハウジング1を旋削又は冷間鍛造により形成することに、その外径の寸法精度を確保し易くなる。このため、圧入締め代を小さくすることができ、圧入時に外周が過度に締めつけられて変形し、そのシール性能が低下するという従来の不都合が生じるのを回避することができる。
【0014】可動弁2は、鈑金によって形成された略キャップ形のものであり、油圧ポンプPから供給された圧油を受け止める受圧部21と、この受圧部21の外方に設けられ、弁座3に密着する円すい筒状のシール部22と、このシール部22からばね受け部5側へ突出する周壁部23とを備えている。上記周壁部23と弁ハウジング1の内周との間には、圧油の通過を許容する空間Sが設けられている。また、上記周壁部23には、切欠24が周方向に沿って所定間隔毎に形成されている。この切欠24により、上記空間Sを通過する圧油に対する流路抵抗を減少させることができる。なお、上記可動弁2の受圧部21には、少量の圧油が油圧ポンプP側へリークするのを許容する小孔25が形成されており、このリークにより、車輪に衝撃が作用した場合に、動力舵取装置の油圧アクチュエータの内圧が過度に上昇するのを防止して、上記衝撃によりボールジョイント等へ悪影響が及ぶのを防止している。
【0015】弁座3は、環状のものであり、旋削又は冷間鍛造によって弁ハウジング1と一体に形成されている。この弁座3の内側面には、上記可動弁2のシール部22が着座する円すい状の着座面31が形成されている。また、弁座3の内周開口部は、油圧ポンプPから供給された圧油を弁ハウジング1に導入する導入口32として構成されている。上記弁ハウジング1の一端部1a側の端面と、弁座3の端面の外周側とは、面一に形成されており、これら端面は、弁ハウジング1を入力ポートV1の穴部V2に圧入する際に、先端が円筒状の圧入治具7を押し当てるための当たり面6として構成されている。この当たり面6は、弁ハウジング1の軸線に対して直交する環状の平坦面である。
【0016】このように、上記当たり面6を、弁ハウジング1と弁座の双方の端面に形成することにより、上記圧入治具7との接触面積を十分に確保することができる。このため、弁ハウジング1を圧入する際に、穴部V2の軸線に対して弁ハウジング1の軸線が傾くのを抑制することができ、その圧入作業を容易且つ迅速に行なうことができる。また、上記圧入時に当たり面6に作用する面圧を小さくすることができるので、弁ハウジング1及び弁座3が変形するのを防止することができ、当該変形によってシール性能が低下するのを防止することができる。
【0017】上記弁ハウジング1の一端部1a側の内周と弁座3との交差部分には、補強用の厚肉部8が形成されている。この厚肉部8によって、弁座3の着座面31と弁ハウジング1の内周面とがテーパ面81で連続している。この厚肉部8により、上記当たり面6付近の剛性を高めることができるので、弁ハウジング1を穴部V2に対して強圧で圧入した場合でも、当該弁ハウジング1が変形するのを効果的に防止することができる。
【0018】コイルばね4は、円すい形状に巻回されており、その大径側をばね受け部5に突き当てた状態で、当該ばね受け板5と弁座3との間に介在してある。このコイルばね4の付勢力により、油圧ポンプPから圧油が供給されていない状態で、可動弁2が弁座3に着座する。ばね受け板5は、鈑金製の環状体からなり、その内部が圧油の吐出口51として構成されている。このばね受け部5の内周縁には、コイルばね4の端部を遊嵌するための切り起こし片52が、周方向に沿って所定間隔毎に設けられている。
【0019】上記の構成の逆止弁Xは、油圧ポンプPから矢印A方向に圧油が供給されると、可動弁2の受圧部21に油圧が負荷されて、可動弁2がコイルばね4の付勢力に抗して図1の右方に移動する。これにより可動弁2のシール部22と弁座3の着座面31との間に隙間ができ、この隙間と上記空間S及び切欠24を通して弁ハウジング1から矢印B方向に圧油が吐出される。この際、上記切欠24により、上記空間Sを通過する圧油に対する流路抵抗を減少させることができるので、圧油を応答性よく吐出させることができる。また、車輪に加わる衝撃により、油圧コントロールバルブVを介して油圧が矢印Cに示す方向に負荷された場合には、可動弁2が図1の左方に移動して上記隙間が閉塞される。したがって、圧油の逆流が阻止されて、キックバック現象が防止される。
【0020】この発明の逆止弁は、上記実施例に限定されるものでなく、例えば、可動弁2の切欠24に代えて丸穴等の開口部を形成することにより、流路抵抗を減少させること等、種々の設計変更を施すことができる。
【0021】
【発明の効果】以上のように、請求項1記載の逆止弁によれば、圧入治具を押し当てる当たり面の面積を十分に確保することができるので、弁ハウジングを圧入する際に、穴部の軸線に対して弁ハウジングの軸線が傾くのを抑制することができる。このため、弁ハウジングの圧入作業が容易となる。また、圧入時に当たり面に作用する面圧を小さくすることができるので、弁ハウジングが変形するのを防止することができ、当該変形によってシール性能が低下するのを防止することができる。しかも、上記弁ハウジングが旋削又は冷間鍛造により形成されているので、外径の寸法精度を確保し易く、圧入締め代を小さくすることができる。このため、圧入によって弁ハウジングの外周が過度に締めつけられて変形し、そのシール性能が低下するという不都合が生じるのを回避することができる。
【0022】請求項2記載の逆止弁によれば、厚肉部によって当たり面付近の剛性を高めることができるので、弁ハウジングを穴部に対して強圧で圧入した場合でも、当該弁ハウジングが変形するのを防止することができ、当該変形によってシール性能が低下するのを防止することができる。
【0023】請求項3記載の逆止弁によれば、可動弁の外周に形成した開口又は切欠によって、流体に対する流路抵抗を減少させることができるので、ハウジング内部に導入した圧油を、可動弁の外周の開口又は切欠を通して効率よく吐出することができる。このため、圧油の供給遅れを防止することができる。
【出願人】 【識別番号】000001247
【氏名又は名称】光洋精工株式会社
【出願日】 平成9年(1997)10月30日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆文
【公開番号】 特開平11−132342
【公開日】 平成11年(1999)5月21日
【出願番号】 特願平9−315893