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【発明の名称】 電磁制御弁
【発明者】 【氏名】黒田 孝司

【氏名】村尾 善之

【氏名】喜田 義次

【要約】 【課題】ムービングコアの磁気吸引側端面に非磁性材を設けることなしに、構成部品点数を低減し、組付け作業を容易にした電磁制御弁を提供する。

【解決手段】磁気駆動部のコイル5への通電時にスプール15が最大ストロークの位置に移動したとき、ガイド棒28の自由端29とプレート29との間でスプール15の前進端が位置決めされる。このとき、通電時に発生する磁気吸引力により磁性材のムービングコア10が磁性材のボールベアリング8に直接吸着することなしに、ムービングコア10とボールベアリング8の外輪との間にクリアランスが保持されるため、通電を遮断したとき、磁性材からムービングコア10が容易に引き離される。このため、通電時の電流値とムービングコア10のストロークとの関係に安定してリニアな特性をもたせられる。従って、通電時の電流値を変化させることにより高精度の流量制御が行える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 筒状に形成され、流体の通路となる開口部を有するスリーブと、前記スリーブの内壁に摺動可能に支持され、大径部と小径部とを有するスプールと、筒状に形成され、前記スリーブの軸方向端部に固定され、周囲にコイルを巻回した磁性体を有する磁気駆動部と、筒状に形成され、磁気吸引側端部に磁気吸引側に進むに従い外径が減少するテーパ部を形成した磁性体からなるムービングコアと、前記ムービングコアを軸方向に貫通して固定され、前記スプールの軸方向端部に当接可能な非磁性体からなるシャフトと、前記スリーブの内部に収容され、前記スプールを反磁気吸引側に付勢する付勢手段と、前記スリーブの一部または該一部に係止される別部材であって、前記コイルへの供給通電量が所定値を超えると、前記スプールの一部が当接することにより該スプールの移動を規制する規制部とを備えたことを特徴とする電磁制御弁。
【請求項2】 前記スプールの一部は、反磁気駆動部側の先端部に該スプール軸方向に延びるガイド棒を有し、このガイド棒の先端が前記規制部と当接可能であることを特徴とする請求項1記載の電磁制御弁。
【請求項3】 前記スリーブの反磁気駆動部側端部は、前記スプールの一部または前記ガイド棒が当接可能な縮径段差部を有することを特徴とする請求項1または2記載の電磁制御弁。
【請求項4】 前記別部材は、小孔を有し、前記スプールが当接可能なプレートであることを特徴とする請求項1、2または3記載の電磁制御弁。
【請求項5】 前記スプールの反磁気駆動部側端部または前記ガイド棒の先端は、前記小孔よりも大径であって前記プレートに当接可能であることを特徴とする請求項4記載の電磁制御弁。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、流体の流量を制御する電磁制御弁に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の電磁制御弁は、ソレノイド部に発生する磁気吸引力によりムービングコアが駆動されると、スリーブに収容されたスプールがムービングコアとともに駆動され、この磁気吸引力と磁気吸引力の反対方向にスプールを付勢するスプリングの付勢力との合力がスプールを往復動させることにより流体流量を調整している。このとき、理想的には図7の(C)に示すように、電流値に略比例してムービングコアのストローク、すなわち軸方向位置が決定されることが望ましい。そのためには、■ 図7の(A)に示すように、ソレノイド部に入力する電流とソレノイド部に発生する磁束がムービングコアを駆動する磁気吸引力とが略比例し、■ 図7の(B)に示すように、この磁気吸引力がムービングコアのストロークに関係なく一定である必要がある。特に、ムービングコアが磁気吸引力により軸方向に移動するため、ムービングコアのストロークに関係なく磁気吸引力を一定にすることは工夫を要する。吸引力がスプールのストロークに関係なく一定になるように、下記の従来の電磁制御弁が知られている。
【0003】例えば特開平7−151257号公報に開示される電磁制御弁は、スプールと別体に形成された非磁性体のシャフトを有し、磁気吸引力を受ける磁性体のムービングコアの中心に両端が突出するようにこのシャフトを貫通圧入している。シャフトが受ける摩擦抵抗を減少し極めてスムーズに軸方向移動できるようにシャフトの突出部分の両端をボールベアリングで軸受支持し、ムービングコアの磁気吸引力を受ける側のシャフトの一方の端面をスプールに当接させている。ムービングコアの吸引方向側端面には非磁性材のリングを固定している。
【0004】そして、コイルへの通電時、通電量が増大するにしたがいムービングコアが軸方向に移動し、さらに通電量が増大すると、やがてムービングコアに固定の非磁性材のリングが磁気吸引側のボールベアリングと当接するところでムービングコアが静止する構成となっている。これは、仮に、通電時に発生する磁気吸引力により非磁性材なしに磁性材のムービングコアが磁性材のボールベアリングに直接吸着したとすると、通電を遮断したとき、磁性材相互間の吸着力によりボールベアリングからムービングコアが引き離されずに初期位置に戻らないことが発生する。このため、当接時にムービングコアとボールベアリングとが直接吸着しない構成とし、通電時の電流値とムービングコアのストロークとの関係に安定してリニアな特性をもたせるためである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ムービングコアの磁気吸引側端面に非磁性材を設けることなしに、構成部品点数を低減し、組付け作業を容易にできるようにした電磁制御弁を提供することにある。本発明の別の目的は、スプールの一部をスリーブに直接的または間接的に当接することでスプールの最大ストローク位置を決定する電磁制御弁を提供することにある。
【0006】本発明のさらに別の目的は、開弁特性を調節するねじ調整機構なしの簡素な構成をもつ電磁制御弁を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1記載の電磁制御弁によると、磁気駆動部のコイルへの供給通電量が所定値を超えると、スリーブの一部または該一部に係止される別部材としての規制部にスプールの一部が当接する。すなわち、磁気駆動部のコイルへの通電時にスプールが最大ストロークの位置に移動したとき、スプールの軸方向端部とスリーブとの間でスプールの前進端が位置決めされる。
【0008】このとき、通電時に発生する磁気吸引力により磁性材のムービングコアが磁性材に直接吸着することなしに、磁性材のムービングコアと磁性材との間にクリアランスが保持されるため、通電を遮断したとき、磁性材からムービングコアが容易に引き離される。このため、通電時の電流値とムービングコアのストロークとの関係に安定してリニアな特性をもたせられる。従って、通電時の電流値を変化させることにより高精度の流量制御が行える。
【0009】本発明の請求項2記載の電磁制御弁によると、スプール反磁気駆動部側の先端部に該スプール軸方向に延びるガイド棒を有し、このガイド棒の先端が規制部と当接可能であるため、スプールの位置が安定する。本発明の請求項3記載の電磁制御弁によると、スリーブの反磁気駆動部側端部にスプールの一部またはガイド棒が当接可能な縮径段差部を有するため、簡単な構成で、スプールの位置決めを行える。
【0010】本発明の請求項4記載の電磁制御弁によると、スプールが当接可能なプレートを有し、このプレートが小孔を有するため、この小孔をプレート組付け位置をきめる時の芯出しに使うことができる。また、プレートを耐磨耗材として付勢手段の一端が当接するスプリング座に使用することができる。さらに、プレートの小孔をスプール先端の加工残りの逃がしにすることができるので、スプールの最大ストローク時にスプール当接部が面接触になるため、最大ストローク時にスプール位置が安定することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を示す実施例を図面に基づいて説明する。
(第1実施例)内燃機関のバルブタイミング調整装置の油圧制御弁に本発明の電磁制御弁を適用した一実施例を図1および図2に示す。図1は、ソレノイド部1に電流を流さないで磁気吸引力を発生させていない状態、図2は、ソレノイド部1に電流を流して磁気吸引力を発生させてムービングコアを作動させた状態を示す。
【0012】油圧制御弁は、電流を供給することにより磁気吸引力を発生するソレノイド部1、ソレノイド部1で発生する磁気吸引力により駆動され、制御室21および22に供給するオイル流量と制御室21および22から排出するオイルの流量とを調整するスプール制御弁2からなる。ソレノイド部1は、円筒状の磁性体であるヨーク3とステータ4とがかしめ固定で連結されて磁気回路が構成されており、ヨーク3の内径部3aおよびステータ4の中心部4aとヨーク3の外径部3bとの間に中空円筒状のコイル5が内蔵されている。コイル5は、巻端をターミナル7に接続し、樹脂部6と一体成形されている。
【0013】ヨーク3の内径部3aとステータ4の中心部4aとは軸方向において空間ギャップ9を介して対向している。ヨーク3の内径部3aの内壁とステータ4の中心部4aの内壁とにはそれぞれボールベアリング8が圧入固定されている。ボールベアリング8はボールと該ボールを保持する外輪とで構成されている。図1の矢印B側の外輪は磁性体で形成されている。
【0014】ステータ4の中心部4aの内壁と一対のボールベアリング8とで囲まれた空間に磁性体からなるムービングコア10が配置されている。ムービングコア10の図1の矢印Bで示す磁気吸引側の端部は磁気吸引側に向かって外径が細くなるようにテーパ部10aが形成されている。ムービングコア10の中心部にはムービングコア10を軸方向に貫通して非磁性体のシャフト11が圧入固定されている。
【0015】シャフト11は、基本的に一端から他端まで同一外径となっている。これは、組付け時シャフト11にシャフト11の一端側からムービングコア10を圧入し所定の位置まで相対移動し固定する。外力を解除したとき、その位置でシャフト11とムービングコア10との相対位置が圧入固定される。これに対し特開平7−151257号公報に開示される電磁制御弁では、シャフトの中央部に両端側の外径よりも外径の大きな部分を有していた。この実施例においては、このようなシャフトの段差部分は不要となり、シャフトの構成が単純な円柱状となるため構成が簡単となりコスト低減となる。そして、シャフト11はボールベアリング8に軸受支持されており、ムービングコア10はシャフト11と一体にスムーズに軸方向移動できる。非磁性体のリング13はシャフト11に圧入固定され、ムービングコア10の反吸引側端面に当接している。リング13は、圧入荷重を保持するため理想的には2mmの厚さが必要とされる。
【0016】スプール制御弁2のスリーブ14の一端はヨーク3にかしめ固定されている。スリーブ14は所定の壁面位置にオイルを通過させる複数の通路と連通する複数の開口部14a、14b、14c、14d、14eが形成されている。油圧解放路31は開口部14aとオイルタンク19とを連通し、油圧通路32は開口部14bと制御室21とを連通し、油圧供給路33は開口部14cとオイルポンプ18とを連通し、油圧通路34は開口部14dと制御室22とを連通し、油圧解放路35は開口部14eとオイルタンク19とを連通している。
【0017】スリーブ14の反ソレノイド部側の自由端は、縮径段差部21が形成される。この縮径段差部21は、スリーブ14の内径よりも小さい内径を有する部分で、スリーブ14の自由端側から径内方向に延びて形成されている。縮径段差部21の中央には内周壁22により穴23が形成されている。縮径段差部21が形成されることにより、このスプール15の自由端近傍には調整ねじ機構が設けられていない。
【0018】プレート26は、円環状の薄板で、中央に小孔27が形成されている。プレート26は金属製であって、非磁性材でもよいし磁性材でもよい。プレート26の外径は、穴23の径よりも大きく、小孔27の内径は穴23の内径よりも小さい。このプレート26は、圧縮コイルスプリング17のスプリング座の役割がある。またプレート26は、スプール15の一端に形成されるガイド棒28の自由端29が当接可能なストッパとしての役割がある。また小孔27があることにより、スプール15の先端の加工残り突起部分の逃し部分の作用を果たす。すなわち、スプール15のガイド棒28の自由端面に突起が加工上形成されるようなときであっても、この突起が小孔27の空間内に衝突なしに入り込むことから、スプール15のストロークの精密な制御を妨げない。仮に小孔がないとすると、前述したスプール15の自由端側の突起が当接すると、この当接した突起の浮き上がり部分だけスプール15による弁開口部の切替制御が妨げられてしまうからである。小孔27はプレート26の組付け時の中心軸合わせ(芯出し)に使用することができる。
【0019】圧縮コイルスプリング17は、一端がプレート26に当接し、他端がスプール15の一端と当接する。この圧縮コイルスプリング17の付勢力によりスプール15の他端はシャフト11に当接し、リング13は図1に示す矢印A側のボールベアリング8の外輪に押し付けられている。スプール15は、スリーブ14の内壁に軸方向に摺動可能に支持されている。スプール15は、スリーブ14の内径とほぼ同じ径を有するランド部である大径部15a、15b、15c、15dと、これら大径部を連結する小径部とから構成されている。スプール15の一端は、プレート26に当接可能な自由端29を有するガイド棒28が形成されている。
【0020】図1はコイル5に電流を供給していない状態を示し、ムービングコア10には磁気吸引力が作用しておらず、スプール15およびムービングコア10は圧縮コイルスプリング17により図1の矢印A方向に付勢されている。このとき、スプール制御弁2の開口部14cと開口部14d間が連通し、開口部14bと開口部14c間および開口部14dと開口部14e間が遮断されることによりポンプ18からのオイルが制御室22に圧送される。同時に、開口部14aと開口部14b間が連通し、制御室21のオイルがタンク19へ排出される。
【0021】図2は、図1に示す状態からコイル5に電流を供給しムービングコア10が移動した状態を示している。ヨーク3の内径部3aとムービングコア10間で磁気吸引力が発生し、ムービングコア10とスプール15がスプリング17の付勢力に抗し、図1に示される状態から図1の矢印B方向の磁気吸引側に移動し、図2に示す位置に移動する。ムービングコア10は、プレート26とスプール15のガイド棒28の自由端29とが当接したところで静止する。このとき、スプール制御弁2の開口部14bと開口部14c間が連通し、開口部14cと開口部14d間および開口部14bと開口部14a間が遮断されることにより制御圧室21へオイルが圧送される。同時に開口部14dと開口部14e間が連通し、制御圧室22のオイルがタンク19へ排出される。
【0022】次に、作動について説明する。通電時、図1に示すようにソレノイド部1への通電が遮断された状態である。この状態では、圧縮コイルスプリング17の付勢力によりシャフト11およびスプール15が図1で最も右側の位置にある。この位置で通電すると、電流値の増大に従いシャフト11が図1に示す位置から左方向に移動しシャフト11の端面がスプール15を図1で左方向に押す。最大電流値になったとき、スプール15の自由端29がプレート26に当接する。この当接した状態が図2に示す状態である。
【0023】本実施例によると、図3に示すように、ムービングコア10の軸方向位置の中央域において磁気吸引力を一定に保持できるため、コイル5に供給する電流値に略比例してムービングコア10の軸方向位置が決定される。したがって、電流値の大きさによってスプール15の位置が決まるため、電流値を制御することにより制御室21および22に供給、排出されるオイルの流量を高精度に制御可能である。
【0024】また本実施例によると、ムービングコア10は両端部がボールベアリング8で軸受支持されスムーズに軸方向移動し、規制部としてのプレート26とスプール15のガイド棒28の自由端29とが当接したとき、スプール15の位置が決まる。これにより、スリーブ3の内径部3aとステータ4の中心部4aのムービングコア10とボールベアリング8とが内蔵される空間がほぼ同径の1つの区間となるため、スリーブ3およびステータ4がそれぞれ簡単な形状で1つの物体として容易に形成できる。
【0025】さらに本実施例によると、図2に示すように、スプール15のガイド棒28の自由端29がプレート26に当接したとき、ムービングコア10の前進端42とボールベアリング8の外輪との間にクリアランスLが確保されるため、この図2に示す状態からコイル5の電流を遮断しても即時にムービングコア10がスプリング17の付勢力で引き離されないという問題を防止可能である。また、リング12はシャフト11に圧入固定されるため組付けが非常に容易である。
【0026】さらにまた、本実施例の電磁制御弁によると、簡単な構造でムービングコアの軸方向位置とソレノイド部に供給する電流との特性をリニアに近付け、ソレノイド部に供給する電流値に対応するムービングコアの正確な軸方向位置を把握できることにより高精度な流体の流量制御が可能である。
(第2実施例)本発明の第2実施例を図4、図5及び図6に示す。
【0027】第2実施例を図4、図5及び図6に示す電磁制御弁は、高精度の流量制御を行えるようにした。図4、5において、図1、2に示す実施例の構成と実質的に同一の構成部分については同一の符号を付す。ムービングコア10の吸引方向側端面に凹溝41を形成している。ムービングコア10とボールベアリング8の外輪とが近づいても、凹溝41の形状に依存して磁気回路が絞られることになり、ムービングコア10の接近時においても磁気吸引力の上昇を抑制することができる。すなわち、凹溝がない場合に比較し、より精密な流量制御が可能になる。
【0028】この第2実施例によるムービングコア10の軸方向位置と磁気吸引力との関係は、図6に示すように、ムービングコア10の軸方向位置に関わらず磁気吸引力を一定に保持できるため、コイル5に供給する電流値に略比例してムービングコア10の軸方向位置が決定される。したがって、電流値の大きさによってスプール15の位置が決まるため、電流値を制御することにより制御室21および22に供給、排出されるオイルの流量を高精度に制御可能である。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成9年(1997)10月13日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
【公開番号】 特開平11−118063
【公開日】 平成11年(1999)4月30日
【出願番号】 特願平9−278786