トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F16 機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段




【発明の名称】 ドライガスシール
【発明者】 【氏名】佐藤 恒徳

【要約】 【課題】コンプレッサ等の回転機器における回転軸の軸端側等に設けられ、同機器の内外部間での流体の連通を遮断するようにしたドライガスシールにおいて、ドライガスシールスリーブ等のカートリッジの組込み、及び開放に際して小さな力でその作業が容易かつ迅速に行い得るようにしたものを提供することを課題とする。

【解決手段】回転軸とドライガススリーブとの境界面をそれぞれテーパ形状にすると共に前記ドライガススリーブの内径の左右両端部寄りにシール部材を配設し、各シール部材の間の境界面に流体通路を開口してドライガスシールを構成し、流体通路を経て境界面に流体圧力をかけることによりドライガススリーブの内径を膨らませてシール部材の摩擦抵抗を小さくしてドライガススリーブ等の回転軸への組み込み、及び開放を小さな力で可能とした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 回転軸とこれに嵌め合うドライガススリーブとの境界面をそれぞれテーパ形状に形成すると共に、前記ドライガススリーブの内径の左右両端部寄りにそれぞれシール部材を配設し、各シール部材の間の前記境界面に軸端部から連通する流体通路を開口したことを特徴とするドライガスシール。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コンプレッサ等の回転機器における回転軸の軸端側等に設けられ、同機器の内外部間での流体の連通を遮断するようにしたドライガスシールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】コンプレッサ等の機器内を軸封するために従来より種々の形式のシールが採用されている。
【0003】その中の1種であるドライガスシールは、油圧供給装置が不要であること、非接触タイプのものであるため動力損失が少ないこと、また、シールガスの漏れがほとんど無いこと等々の利点を有することから、実機に対する適用件数が近年急速に増加している。
【0004】しかし、このドライガスシールは精密機器であるために、塵等の固形物や液体が摺動部に混入することを嫌うものであり、通常は特定化した専門の工場、又は専門のメーカにおいてドライガスシールとして組立完了状態のカートリッジにしてからこれを組み込む機器の工場、又はメーカに納入するようになっている。
【0005】従って、たとえばコンプレッサの軸封としてドライガスシールを採用する場合にあっては、前記組立完了状態のカートリッジをコンプレッサ工場、又はコンプレッサメーカに納入し、納入を受けた側においてコンプレッサ機内にカートリッジで組み込み、一体化した装置として完成する様にしている。
【0006】この様なドライガスシールの従来のものの一例を図2に基づいて説明する。1はコンプレッサ等の回転機械の回転軸で、同回転軸1に対して以下に説明する部品番号2〜10を組み合わせて構成されるカートリッジが組み込まれて同回転機械のドライガスシールが完成されている。
【0007】即ち、同ドライガスシールのカートリッジについて見ると、まずその内周側にドライガスシールスリーブ2が配置され、その内径には一対のトレランスリング3、3が軸方向に間隔をおいて設置されている。
【0008】各トレランスリング3、3は、板バネをドライガスシールスリーブ2の内径に合わせて周状に形成し、接着剤で固定されたものであり、高速回転による高遠心力下の状態においても、アンバランスを生じない様に非常にバネ特性の高い板バネから成っている。
【0009】また、前記ドライガスシールスリーブ2の外周側には、シールハウジング6が配置され、同シールハウジング6から機内側に向けてバネ部材10で付勢されてリテーナ9が配置され、同リテーナ9側で支持されるシールリング8と前記ドライガスシールスリーブ2側で支持されるメイティングリング7が相対峙して配列され、前記カートリッジの主要部が構成されている。
【0010】なお、4及び5はそれぞれOリングで、Oリング4はドライガスシールスリーブ2と回転軸1との間にあって、同ドライガスシールスリーブ2と回転軸1との摺動面を機内側と遮断し、またOリング5はシールハウジング6とリテーナ9との間にあって機内側と機外側とを遮断する役割を負っている。
【0011】このように構成されたカートリッジが前記回転軸1に装着され、シールナット11で位置を固定されてドライガスシールが構成されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】従来のドライガスシールは、前記の様に非常にバネ特性の高い板バネよりなるトレランスリング3、3でドライガスシールスリーブ2を支持する構造であるために、その組込み、開放時に大きな力が必要な一方で接着部が外れ易く、組込み、開放に長時間と大きな労力を要している。
【0013】なお、図示省略するが従来の他の装置として、前記したトレランスリング3の代わりにOリングを用いたものもあったが、同Oリングは回転体となるメイティングリング7とドライガスシールスリーブ2を保持するものであるため、大きなつぶし代が必要であり、組込み、及び開放時に大きな力が必要であることに加え、Oリングが溝からはみ出したり表面がむしりとられたりするという不具合が多かった。
【0014】本発明は従来の装置におけるこれらの問題点を解消し、ドライガスシールスリーブ等のカートリッジの組込み、及び開放に際して小さな力ですみ、その作業が容易かつ迅速に行え、しかも安全性、信頼性を高め得るドライガスシールを提供することを課題とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記した課題を解決すべくなされたもので、回転軸とこれに嵌め合うドライガススリーブとの境界面をそれぞれテーパ形状に形成すると共に、前記ドライガススリーブの内径の左右両端部寄りにそれぞれシール部材を配設し、各シール部材の間の前記境界面に軸端部から連通する流体通路を開口したドライガスシールを提供するものである。
【0016】すなわち、本発明によれば、ドライガススリーブの内径の左右両端部寄りに配設したシール部材の間において、同ドライガススリーブと回転軸との境界面に流体通路の出口を開口し、同流体通路を経て境界面に流体圧力をかけることにより、ドライガススリーブの内径を膨らませてシール部材である例えばOリング等の摩擦抵抗を小さくし、ドライガススリーブ等の回転軸への組み込み、及び開放を小さな力で可能とするものである。
【0017】しかもこの回転軸とこれに嵌め合うドライガススリーブとの境界面は、それぞれテーパ形状に形成されているので、前記開放時において境界面に開口する流体通路から流体圧力をかけることにより、ドライガススリーブは軸方向に移動し、開放が容易に行うことができるものである。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明の実施の一形態を図1及び図2に基づいて説明する。
【0019】なお前記した従来のものと同一の部位については、図中に同一の符号を付して示し、重複する説明は省略して本実施の形態の特徴ある部分について重点的に説明する。
【0020】すなわち本実施の形態は、ドライガスシールスリーブ22及びその外周側のシールハウジング6、Oリング5で機内外を遮断され、バネ部材10で軸方向で機内側に付勢されたリテーナ9、同リテーナ9側に支持されるシールリング8、及び同シールリング8に対峙し前記ドライガスシールスリーブ22側に支持されたメイティングリング7等が集合体としてドライガスシールカートリッジを構成し、これが別途専門工場、又は専門メーカで製造されることは前記した従来例のものと同様である。
【0021】しかし、本実施の形態においては、ドライガスシールスリーブ22と、これに嵌め合わされる回転軸21の各境界面がそれぞれテーパー形状に形成され、同境界面により嵌め合いがなされている。
【0022】そしてこのドライガスシールスリーブ22は、その左右両端側の端面近くでシール部材となる2つのOリング24、24によって回転軸21に対して保持され、かつシールナット11により軸方向に固定されている。
【0023】また、回転軸21内部には、軸端部から流体通路23を配設し、同流体通路23は前記2つのOリング24、24の間でドライガスシールスリーブ22と回転軸21の境界面に開口し、この境界面に外部に設けた流体ポンプ32より流体圧力がパイプ33、アダプタ34を経由して伝播できる構造となっている。
【0024】本実施の形態は、前記の様に回転軸21の内部に流体圧力を伝播するための流体通路23を設け、ドライガスシールスリーブ22内周部にシール部材として配した2つのOリング24、24の間に前記流体通路23を開口してここに外部に設けた流体ポンプ32よりの流体圧力がかかるようにしたことにより、ドライガスシールスリーブ22は内径が膨らみ、Oリング24、24の摩擦抵抗が小さくなり、組込み・開放が小さな力で済むことになる。
【0025】そしてドライガスシールの回転軸21に対する保持力の調整は、Oリング24、24のつぶし代の量の変化により得ることができ、これは従来の装置においてバネ特性の高い板バネにより構成したトレランスリング3で得た機能と同様のものとなる。
【0026】また、前記のように流体圧によりドライガスシールスリーブ22の内径を膨らませることによってOリング24、24のつぶし代が低減できるので、組込み・開放時の摩擦抵抗は大きく低減でき、従来の組込み・開放時にOリングが溝からはみ出したり、表面がむしれたりする問題は生じない。
【0027】そしてドライガスシールが規定の位置まで組込みができたところで流体圧力を抜くことによりOリング24、24のつぶし代が増し、必要な保持力を得ることができ、かつまた、開放の時には流体圧力をかけることにより、境界面のテーパ形状と相俟ってドライガスシールは軸方向に移動し、開放が容易になる。
【0028】以上、本発明を図示の実施の形態について説明したが、本発明はかかる実施の形態に限定されず、本発明の範囲内でその具体的構造に種々の変更を加えてよいことはいうまでもない。
【0029】例えば、適用するガスの腐食性、温度等のいわゆるガス条件により、ドライガスシールスリーブのシール部材としてOリングが採用できない場合には、これに替えて金属板バネをシール材でコーティングしたシールエレメント等を採用する構成としてもよい。
【0030】また、圧力伝播に採用する流体はドライガスシール面への悪影響を無くするため揮発性流体を採用するようにしてもよい。
【0031】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、回転軸とこれに嵌め合うドライガススリーブとの境界面をそれぞれテーパ形状に形成すると共に、前記ドライガススリーブの内径の左右両端部寄りにそれぞれシール部材を配設し、各シール部材の間の前記境界面に軸端部から連通する流体通路を開口してドライガスシールを構成しているので、ドライガススリーブの内径の左右両端部寄りに配設した例えばOリング等のシール部材の間で、同ドライガススリーブと回転軸との境界面に出口を開口した流体通路を経て同境界面に流体圧力をかけることにより、ドライガススリーブの内径を膨らませて前記Oリング等のようなシール部材の摩擦抵抗を小さくするので、ドライガススリーブ等の回転軸への組み込み、及び開放を小さな力で可能とすることができたものである。
【0032】そしてまた、前記回転軸とこれに嵌め合うドライガススリーブとの境界面は、それぞれテーパ形状に形成されているので、前記開放時において境界面に開口する流体通路から流体圧力をかけることにより、同圧力とテーパ形状とが相俟ってドライガススリーブは軸方向に移動し、開放を容易に行うことができるようにしたものである。
【出願人】 【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
【出願日】 平成10年(1998)4月16日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】石川 新 (外1名)
【公開番号】 特開平11−304007
【公開日】 平成11年(1999)11月5日
【出願番号】 特願平10−106317