トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F16 機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段




【発明の名称】 ドライガスシール装置
【発明者】 【氏名】堀場 潤一

【要約】 【課題】回転機械に発生する差圧荷重による振動特性の劣化を防止するとともに、回転体外周面へのシャフトスリーブの取付けを容易とする。

【解決手段】回転体4とシャフトスリーブ3との間に設置され、ドライガスの漏洩を防止するO−リングの一つを、大径回転体4bから小径回転体4aに径長が変る回転体4の段部と、段部に近接して配置されたシャフトスリーブ3の先端面との間に設け、差圧が生じないようにする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 産業用ガスからなるドライガスを取り扱う回転機械の回転体に設けられるシャフトスリーブに固着されたシール環の後端面と、回転機械のハウジングに固着されたリテーナ内でバネで押圧されるようにした静止シール環の前端面との間にシール隙間を設けて、前記回転体を可動にするとともに、前記ドライガスの漏洩を低減するようにしたドライガスシール装置において、前記回転体と前記シャフトスリーブとの間に設置され、前記ドライガスの漏洩を防止するO−リングの少なくとも一つが、大径回転体から小径回転体に径長を変化させて形成された前記回転体の段部と、前記段部に近接して配置された前記シャフトスリーブの先端との間に設けられていることを特徴とするドライガスシール装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、化学プラント等において炭化水素、二酸化炭素又はアンモニア等の産業用ガス(以下、本明細書ではドライガスという)を圧縮する産業用ガス圧縮機等、ドライガスを取り扱うための産業機械(以下、本明細書では回転機械という)において、回転機械における回転体の回動のために、回転機械の回転体である可動部と静止部との間に形成される隙間から、回転機械内で圧縮される等により大気圧との間に差圧が発生した、ドライガスが外部へ漏洩、若しくは回転機械内に大気が流入するのを防止するためのドライガスシール装置に関する。
【0002】
【従来の技術】大気中に漏洩すると種々の不具合が発生するドライガスを圧縮する圧縮機等の回転機械においては、回転機械の可動部と静止部との間の隙間からのドライガスの外部への漏洩を防止するとともに、回転機械内の圧力と大気圧との差圧によって発生する推力、若しくは高温によって発生する歪み変形等によって隙間の変動が生じる等の問題を解消するために、回転機械の可動部および静止部との間で、それぞれ軸方向の相対移動が許容されるようにしたシャフトスリーブを使用したドライガスシール装置を採用するようにしている。
【0003】図2は、このような回転機械の可動部と静止部との間に設けられる従来のドライガスシール装置の一例として、産業用ガス圧縮機に適用されているドライガスシール装置の縦断面図である。
【0004】図に示すように、回転機械において用いられる、従来のドライガスシール装置1の一例では、階段状の段部の後方に設けられた回転体4の直径D2 の小径回転体4aに設置され、前端面が回転体4の大径回転体4bより小径回転体4aに縮小する大径回転体4bの後背面である段部と微小間隔を設けて配設されるとともに、後端面が小径回転体4aの外周面に固着されたロックナット7によって、後方への移動が規制されたシャフトスリーブ3と、シャフトスリーブ3の外周面の切欠部に固定されて、回転体4の回転に伴い、シャフトスリーブ3と共に回転するとともに、後背面にシール面を形成した回転シール環2とからなる。
【0005】また、ドライガスシール装置1の他側は、シャフトスリーブ3が設けられた軸方向位置のハウジング14の内周面に固着され、横縦断面形状が前方に開口を設けたコの字形にされたリテーナ8と、リテーナ8のコの字区画の内部後方に配設されたバネ13と、リテーナ8のコの字区画の内部前方に配設され、後方からバネ13により押圧されるとともに、回転シール環2のシール面に対向するシール面を前面に形成した静止シール環9とからなる。
【0006】そして、静止シール環9の前面に形成されたシール面と回転シール環2の後面に形成されたシール面との間は、回転体4の停止時には、バネ13の付勢力により前方へ押圧される静止シール環9の前方への移動により、気密に密封されるとともに、回転体4の回動時には、この回動により高圧になる機内圧力P1 により、静止シール環9がバネ13の力に抗して後方に移動して、静止シール環9のシール面と回転シール環2のシール面との間には、径方向に微小のシール隙間10が形成され、回転体4が静止部と干渉なく回動できるとともに、回転体4の回動中に機内5と機外6との間に差圧が発生しても、機内5の高圧になったドライガスが機外6に流出するのを低減して、回転機械の高圧の機内5と大気圧機外6との間のシールを行うようにしている。
【0007】しかしながら、このような回転機械のドライガスシール装置1においては、回転機械の機内5圧力P1 と機外6圧力P2 による、ガス差圧(P1 −P2 )により、ドライガスシール装置1にはガス差圧荷重が働く。その結果、シャフトスリーブ3を介して、ドライガスシール装置1には軸方向の荷重F(スラスト荷重)が働き、回転体1に固着され、シャフトスリーブ3の軸方向後方への動きを規制している固定用のロックナット7を介して、回転体1に荷重Fが発生することになる。
【0008】すなわち、このような構成にされた従来のドライガスシール装置1では、シャフトスリーブ3とシャフトスリーブ3を外周面に嵌挿する小径回転体4aの外周面との間には、シャフトスリーブ3の軸方向の動きは許容するが、回転方向の動きは規制して、しかも、シャフトスリーブ3と小径回転体4aとの間からのドライガスの漏洩を防止して、シールを行う2個のO−リング11,12を設けるようにしている。
【0009】そのため、前述したように、シャフトスリーブ3の前端面と大径回転体4bの外径から小径回転体4aの外径に変化する大径回転体4b後端面、いわゆる段部の後面との間には、シャフトスリーブ3又は回転体4の熱変形を考慮して微小間隔が設けられており、シャフトスリーブ3の前端面には、この微小間隔が設けられた大径回転体4bの略外周面から、O−リング11,12の設置されたシャフトスリーブ部回転体径D2 の方向位置までの円環部に高圧の機内5の圧力P1 が作用する。一方、径方向に形成されるシール隙間10の内径端部と小径回転体4a外周面との間のシャフトスリーブ3の後端面、換言すれば静止シール環内径D1 と小径回転体外径D2 との間の円環状のシャフトスリーブ3の後端には、低圧の機外圧力P2 が作用する。
【0010】このように、O−リング11の設置位置まで高圧ガスである機内5の圧力P1が前面に分布し、大気等の低圧ガスである機外5の圧力P2 が後面に分布するシャフトスリーブ3に発生する差圧(P1 −P2 )により、このように回転体4には、シール隙間10部が設けられている径方向位置において、差圧荷重(スラスト荷重)が発生しないと仮定しても、ドライガスシール装置1を介して、数1に示す大きな差圧荷重が働くこととなる。
【0011】
【数1】

【0012】しかしながら、産業用ガス圧縮機等のように、振動特性への影響を小さくする必要がある回転機械においては、この回転体1に働く不要なガス荷重を低減し、前述したスラスト荷重Fを低減することは重要である。
【0013】さらに、O−リング11,12は、上述したように、シャフトスリーブ3と回転体1との間のシールを行うためのものであるため、軟らかい素材で形成する必要があり、そのため、シャフトスリーブ3の内周面に挿入して、シャフトスリーブ3を回転体1へ装着する際には、このO−リング11,12が大きな抵抗となり、装着作業に時間を要するという不具合もある。
【0014】
【発明が解消しようとする課題】本発明は、上述した産業用ガス、いわゆる、ドライガスを取り扱う産業用ガス圧縮機等の回転機械の可動部と静止部との間に設置され、回転機械を作動させるために設ける必要のある隙間からのドライガスの流出を低減するようにした、従来のドライガスシール装置の不具合を解消するため、回転機械の作動により差圧が発生するドライガスによるガス荷重の回転体への作用を低減し、振動特性への影響を小さくする必要のある回転機械に作用するスラスト荷重を低減できるとともに、回転体への装着時に抵抗が大きくならず、装着を容易にできるようにしたドライガスシール装置を提供することを課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】このため、本発明のドライガスシール装置は、つぎの手段とした。
【0016】(1)産業用ガスからなるドライガスを取り扱う回転機械の可動部である、大径回転体と小径回転体とからなる回転体の径長が変化する段部近傍の、小径回転体の外周に設けられるシャフトスリーブと回転体との間に介装され、シャフトスリーブと回転体との間からのドライガスの漏洩を防止するようにした、O−リングの少なくとも一つが、大径回転体から小径回転体に径長が変化する回転体の段部と、ハウジングで支持された静止シール環の前端面との間にシール隙間を設けるようにしたシール環を固着して設ける、シャフトスリーブの段部に近接して配置される先端との間に設けられるものとした。
【0017】これにより、O−リングの設置位置までドライガス等の高圧ガスである機内の圧力が前面に分布するとともに、大気等の低圧ガスである機外の圧力が後面に分布するシャフトスリーブに発生する差圧により、回転体にドライガスシール装置を介して作用していた差圧荷重(スラスト荷重)が、回転体の段部とシャフトスリーブの先端との間にO−リングを設けたことにより、高圧ガスである機内の圧力が作用するシャフトスリーブ前面の面積を大幅に低減されることにより、回転体に働く不要なガス荷重が低減して、特に、振動特性への影響を小さくすることが必要である回転機械において重要なスラスト荷重の低減をすることができる。
【0018】さらに、シャフトスリーブと回転体の間からドライガスの漏洩を防止するシールを行うため、軟かな素材でO−リングが形成され、回転体外周面とシャフトスリーブの内周面との間に介装されているために、回転体の外周にシャフトスリーブを装着するとき抵抗が大きくなり、装着を困難にしていたO−リングの数を少くとも1つ低減することができるので、シャフトスリーブの回転体外周面への装着が容易になり、装着時間を短縮化することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明のドライガスシール装置の実施の一形態を図面にもとづき説明する。図1は、回転機械としての産業用ガス圧縮機に設けるようにした本発明のドライガスシール装置の実施の第1形態を示す縦断面図である。なお、図において、図2に示す部材と同一若しくは類似の部材には同一符号を符して、説明は省略する。
【0020】図に示すように、本実施の形態のドライガスシール装置15では、回転機械としての産業用ガス圧縮機の小径回転体4aの外周面と、小径回転体4aの外周面に設けられるシャフトスリーブ3の内周面との間に、軸方向に間隔を設けて2個設けられ、小径回転体4aとシャフトスリーブ3との間からのドライガスの漏洩を防止するようにしたO−リング11,12のうち、前方に設置するようにしたO−リング11に代えて、O−リング16をシャフトスリーブ3の前面と、大径回転体4bが小径回転体4aに縮径する大径回転体4bの後端に形成される段部の後面との間に設けるようにした。
【0021】このO−リング16は、大径回転体4bの外径よりも若干小径の直径D3 のものにして、前述したように、シャフトスリーブ3の前端面と大径回転体4bの外径から、小径回転体4aの外径に変化する大径回転体4b後端面との間に、シャフトスリーブ3又は回転体4の熱変形を考慮して設けられた微小間隔内に、機内5の高圧圧力P1 のドライガスが流入しないようにしている。
【0022】このように、本実施の形態のドライガスシール装置15では、上述の従来のシャフトスリーブ3の内周面に設けたO−リング11に代え、回転体4の段部とシャフトスリーブ3の前面との間に、直径D3 のO−リング16、あるいはO−リング16と同等材のものを設けることにより、その設置位置から内径側の微小間隙が設けられた段部とシャフトスリーブ3前面との間には、機内圧力P1 の高圧のドライガスが侵入せず、この微小間隙内は、低圧の機外圧力P1 と同圧に保たれ、この部分の差圧で発生するスラスト荷重は0となる。
【0023】これにより低減される、機内圧力P1 と機外圧力P2 との差圧により、回転体4に作用する差圧荷重は、数2で示す通りとなる。
【0024】
【数2】

【0025】一例として、以下の圧力条件と形状の場合について、回転体4に働くスラスト荷重の低減量を算出すると、数2のようになる。
【0026】
【数3】

【0027】すなわち、上述した一例で算出されたように、O−リング16あるいはO−リング同等材を設けることにより、スラスト荷重が79%程度低減される。さらに、静止シール環内径D1 とO−リング16外径D3 を等しくなるようにすれば、ドライガスシール装置15からロックナット7を介して回転体4に働くスラスト荷重を0とすることもできる。
【0028】また、シャフトスリーブ3の前面と回転体4の段部後面間に、シールを行うO−リングに代るO−リング16を設けるようにすれば、小径回転体4aの外周面にシャフトスリーブ3を嵌入するときの、O−リングによる抵抗が少くとも、O−リング11の抵抗分は小さくなるために、シャフトスリーブ3装着時の抵抗は大きく低減され、シャフトスリーブ3の小径回転体4aへの嵌入が容易になって、装着作業時間を低減することができる。
【0029】
【発明の効果】以上、説明したように、本発明のドライガスシール装置は、産業用ガスからなるドライガスを取り扱う回転機械の大径回転体と小径回転体とからなる回転体の径長が変化する、段部近傍の小径回転体の外周に設けられるシャフトスリーブと小径回転体との間に介装され、シャフトスリーブと小径回転体との間からのドライガスの漏洩を防止するようにしたO−リングの少なくとも一つが、大径回転体から小径回転体に変る回転体の段部と、ハウジングで支持された静止シール環の前端面との間にシール隙間を設けるシール環を固着して設けた、シャフトスリーブの段部に近接して配置される先端との間に設けるものとした。
【0030】これにより、O−リングの設置位置までドライガス等の高圧ガスである機内の圧力が前面に分布するとともに、大気等の低圧ガスである機外の圧力が後面に分布するシャフトスリーブに発生する差圧により、回転体にドライガスシール装置を介して作用していた差圧荷重(スラスト荷重)が、回転体の段部とシャフトスリーブの先端との間にO−リングを設けたことにより、高圧ガスである機内の圧力が作用するシャフトスリーブ前面の面積を大幅に低減されることにより、回転体に働くガス荷重が低減して、特に、振動特性への影響を小さくする必要がある回転機械において重要なスラスト荷重の低減を図ることができるようになる。
【0031】さらに、シャフトスリーブと回転体間の間からドライガスの漏洩を防止し、シールを行う軟かな素材で形成され、回転体外周面とシャフトスリーブの内周面との間に介装されるO−リングの数を減らすことができるため、回転体の外周にシャフトスリーブを装着する際の抵抗を低減することができ、シャフトスリーブの回転体外周面への装着が容易になり、装着時間を短縮化することができる。
【出願人】 【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
【出願日】 平成10年(1998)4月15日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】石川 新 (外1名)
【公開番号】 特開平11−304006
【公開日】 平成11年(1999)11月5日
【出願番号】 特願平10−104643