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【発明の名称】 船舶用推進軸の軸封装置
【発明者】 【氏名】松岡 巌

【氏名】山丈 政治

【氏名】碓井 和法

【要約】 【課題】船舶用推進軸の軸封装置において、シールリングの長寿命化を図りながら、構造を簡潔化し、確実なシール性能を得、また海水圧の変動に対する応答性を高めるようにする。

【解決手段】船外寄りとなる一次環状室14に対して空気を供給するための給気装置18として、海水圧とリング締付け圧とを一義的に加えた内圧が保持されるように空気の供給を行う、無制御連動型のユニット31を具備したものを用いる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 船尾管の船外側端部に設けられる船舶用推進軸の軸封装置において、推進軸(10)に少なくとも3つのシールリング(5,6,7)が軸方向に並設され、船外寄りの複数のシールリング(5,6)相互間で一次環状室(14)が形成され、船尾管寄りの複数のシールリング(6,7)相互間で二次環状室(15)が形成されており、前記一次環状室(14)には、海水圧にリング締付け圧を一義的に加えた内圧が保持されるように空気の供給を行う無制御連動型の給気装置(18)が接続されていることを特徴とする船舶用推進軸の軸封装置。
【請求項2】 前記二次環状室(15)には、前記一次環状室(14)に供給された空気を船外側へ吹き出させるのに必要な内圧にすべく潤滑油の供給を行う無制御連動型の給油装置(24)が接続されていることを特徴とする請求項1記載の船舶用推進軸の軸封装置。
【請求項3】 前記給気装置(18)は、二次側圧の変動とは無関係に流通空気圧力の上限を制限可能な減圧弁(32)と、二次側圧の変動とは無関係に流通空気流量の上限を制限可能な流量調整弁(33)とを有した空気制御ユニット(31)と、該空気制御ユニット(31)の一次側に接続された給気源(30)とを有していることを特徴とする請求項1又は2記載の船舶用推進軸の軸封装置。
【請求項4】 前記給油装置(24)は、給油管(21)を介して二次環状室(15)に接続された油溜タンク(60)と、前記給気装置(18)と一次環状室(14)とを接続する給気管(17)の中途部から上記油溜タンク(60)へ接続された内圧感知管(61)とを有しており、上記油溜タンク(60)は、二次環状室(15)へ供給する潤滑油に対して、海水圧よりも所定だけ高いヘッド圧を付加できる高さに設置されていることを特徴とする請求項2又は請求項3記載の船舶用推進軸の軸封装置。
【請求項5】 二次環状室(15)を形成するシールリング(6,7)のうち船尾管寄りに配されるシールリング(7)は、該二次環状室(15)内へ背面を向けて設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載された船舶用推進軸の軸封装置。
【請求項6】 一次環状室(14)よりも船外側に昇圧緩衝用の環状室(70)を形成すべく更にシールリング(71)が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の船舶用推進軸の軸封装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、船舶用推進軸の軸封装置に関するものである。なお、本明細書中において「海水」には淡水も含めるものとする。
【0002】
【従来の技術】船舶には、推進軸(スクリューを支持する軸)まわりを伝って潤滑油が船外へ漏洩したり反対に海水が船内へ浸水したりするのを防止するために、この推進軸を船外へ突出させる部分に設けられた船尾管の船外側端部に、軸封装置を採用してある。
【0003】この種、軸封装置は、推進軸の軸方向に並んで設けられた少なくとも3つのシールリングに対し、推進軸がこれらを串刺し状に貫通する構造になっている。一般に、船外寄りとされた複数のシールリング相互間で形成される一次環状室には、空気が供給され、また船尾管寄りとされた複数のシールリング相互間で形成される二次環状室には、潤滑油が供給される。
【0004】ところで、最近では、船舶の大型化に伴う吃水圧の増大のため、シールリングの早期損傷や、潤滑油の船外漏洩による環境汚染等が問題とされることが多く、そのため、実公平3−32478号公報(以下「第1従来例」と言う)や実公平5−35249号公報(以下「第2従来例」と言う)では、一次環状室の内圧を海水圧よりも高くして、一次環状室から船外側へ向けて空気を吹き出させるようにし、もって、シールリングのリップ部に作用する摺動負荷を低減させることが提案されている。
【0005】すなわち、第1従来例では、図6に模式的に示すように、一次環状室100へ供給する空気を、この一次環状室100を形成している両側のシールリング101,102から室外へ吹き出させるようにしている。従って、このことから、二次環状室103の内圧は、一次環状室100の内圧よりも低くしてあることが明らかである。
【0006】なお、この第1従来例では、一次環状室100の内圧を海水圧よりも高くすることで、海水浸入を防止できるだけでなく、一次環状室100から二次環状室103へ吹き出した空気によって二次環状室103から船外へ向けた潤滑油の漏洩をも防止できる旨、説明されている。一方、第2従来例では、図7に模式的に示すように、一次環状室200へ供給する空気の供給圧を、海水圧の変動に応じて作動する定流量式圧力制御弁ユニット205により制御して、海水圧との間の差圧を所定に保持させると共に、二次環状室206へ供給する潤滑油の供給圧を、一次環状室200の内圧変動に応じて作動する圧力調整弁(図示略)により制御して、一次環状室200の内圧よりも更に高くなる差圧を保持させている。
【0007】ここで、定流量式圧力制御弁ユニット205は、海水圧の変動に伴って一次環状室200の圧力が変化するときに、この圧力変化をパイロット圧に利用して、ダイヤフラムの流通間隙を連動的に変更させるものとされている。一例として、パイロット圧が低下した場合にはダイヤフラムの流通間隙を小さくさせ、反対にパイロット圧が上昇したときには、ダイヤフラムの流通間隙を大きくさせると説明されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】第1従来例において、一次環状室100に供給された空気を、両側のシールリング101,102から吹き出させることは、実際上は非常に困難なものであると言わざるを得ない。なぜなら、実船では、載貨状態や波浪等により、海水圧は絶えず変動しているため、海水圧と二次環状室103の内圧との間に圧力バランスの崩れが頻繁に発生し、一次環状室100からは、その時その時で、圧力が低くなる一方側(船外側又は二次環状室103側)へ向けて空気が吹き出すようになるからである。
【0009】このような事態を回避させるには、一次環状室100からの空気の吹き出し方向を、船外へ向けるか又は二次環状室103へ向けるかの、いずれか一方に固定することが必要になってくるが、この場合には、前者、即ち、一次環状室100から船外への空気吹き出しにすることを選択することになる。この理由は、二次環状室103への空気吹き出しは、ただでさえ潤滑条件が過酷である最も船外寄りのシールリング101に対し、過負荷状態を課せることに繋がり、このシールリング101を早期損傷させことになるためである。
【0010】しかも、これを防止するには、二次環状室103の内圧を海水圧よりも高くする必要があるために、今度は一次環状室100と二次環状室103との間のシールリング102を過負荷状態にする原因となり、このシールリング102を早期損傷させることになるのである。以上のようなことから、この第1従来例は実用性に欠けるものであると言わざるを得ないのである。
【0011】一方、第2従来例では、定流量式圧力制御弁ユニット205の作動によって一次環状室200の内圧を制御し、また圧力調整弁の作動によって二次環状室206の内圧を制御しているので、装備関係に高コストがかかり、また使用機器の性能次第では、海水圧の変動に対する応答性が悪く、圧力バランスを適正に保持するのが困難になるということがあった。
【0012】殊に、二次環状室206を形成している両側のシールリング207,208が、いずれも背面向きの配置とされている関係上、これらが損傷でもしない限り、この二次環状室206へ供給される潤滑油の圧力は保持され続けることになる。従って、例えばこの二次環状室206へ必要十分量を越えた潤滑油が供給されるようなことがあると、この潤滑油の給油管209における管路抵抗等が影響して、この二次環状室206の内圧が設定圧よりもかなり高くなるおそれがでてくる。
【0013】このようになると、二次環状室206を形成している両側のシールリング207,208が過負荷状態となるため、それらの早期損傷を招来することになるのである。本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、構造の簡潔化を追求してその装備的コストの低減を図ると共に、空気や潤滑油の管路抵抗を低減させて海水圧の変動に対応させた迅速な応答性を得られるようにし、更にシールリングの長寿命化をも図れるようにした船舶用推進軸の軸封装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明では、上記目的を達成するために、次の技術的手段を講じた。即ち、本発明に係る船舶用推進軸の軸封装置では、推進軸がその軸方向に並設された少なくとも3つのシールリングを串刺し状に貫通して、船外寄りの複数のシールリング相互間で一次環状室が形成され、船尾管寄りの複数のシールリング相互間で二次環状室が形成されたものである。
【0015】そして、一次環状室には、海水圧にリング締付け圧を一義的に加えた内圧が保持されるように空気の供給を行う無制御連動型の給気装置が接続されている。また、二次環状室には、一次環状室に供給された空気を船外側へ吹き出させるのに必要な内圧にすべく潤滑油の供給を行う無制御連動型の給油装置が接続されている。
【0016】このように、一次環状室へ空気の供給を行う給気装置や二次環状室へ潤滑油の供給を行う給油装置には、いずれも、海水圧の変動時に自然現象として各供給量が変化することは拒まない(許容する)が、作動を伴った制御は行わない構成(即ち、無制御連動型)のものが用いられている。そのため、本発明では、徹底した構造の簡潔化が図れることになる。従って、装備コストの低減を可能になるだけでなく、空気や潤滑油における管路抵抗を低減させることに繋がり、その結果、海水圧の変動に対して応答性の早い対応がなされるものとなる。
【0017】給気装置において、無制御連動型とする具体的な構成は、二次側圧の変動とは無関係に、流通空気圧力の上限(最大吃水に伴う海水圧に相当)を制限可能な減圧弁と、二次側圧の変動とは無関係に、流通空気流量の上限(一次環状室で残圧を生じさせないための最大流量に相当)を制限可能な流量調整弁とを有した空気制御ユニットと、この空気制御ユニットの一次側に接続された給気源とを有したものとすればよい。
【0018】また、給油装置において、無制御連動型とする具体的な構成は、給油管を介して二次環状室に接続された油溜タンクと、前記給気装置と一次環状室とを接続する給気管の中途部から上記油溜タンクへ接続された内圧感知管とを有したものとする。また、油溜タンクは、二次環状室へ供給する潤滑油に対して、海水圧よりも所定だけ高いヘッド圧を付加できる高さに設置するものとする。
【0019】すなわち、このように油溜タンクを高位設置とすることで、一次環状室から空気を船外側へ吹き出させるのに必要な圧を、二次環状室の内圧に持たせるものである。しかもこのヘッド圧は、内圧感知管を通じて給気管内、即ち、一次環状室の内圧の変化と同調するものであり、この一次環状室の内圧は、給気装置における流通空気圧力の上限以内で、海水圧の変動に追従するものであるから、結果として、二次環状室の内圧は、常に海水圧よりも高くなる。
【0020】二次環状室を形成するシールリングのうち、船尾管寄りに配されるシールリングにおいて、その背面(流体圧を受けたときにリップ部を益々、被シール面へ押し付けるようになる側が正面であり、その反対面を「シールリングの背面」と言う)を二次環状室内へ向けるように設けておくと、万が一、二次環状室に必要十分量を越えた潤滑油等(一次環状室からの空気や海水を含む)が供給されたような場合に、この潤滑油等を船尾管側へ逃がすことができるようになる。
【0021】そのため、潤滑油が船外側へ漏洩するのを防止できるだけでなく、シールリングに対する過負荷を防止できると共に、このシールリングの潤滑性を保持できるためにその損傷を防止できる利点にも繋がる。一次環状室よりも船外側に昇圧緩衝用環状室を形成すべく、更にシールリングを設けるようにすると、一次環状室の内圧と海水圧との差圧を大きく取ることができるため、タンクの設置位置を極端に高くする必要がなくなり、構造の簡潔化を一層進めることができる等の利点に繋がる。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1乃至図4は、本発明に係る船舶用推進軸の軸封装置1における第1実施形態を示している。まず、この軸封装置1の概要を説明すると、図2に示すように船尾管軸受2に対して船外後方(図1左方)へ向けて複数のガイドリング3が取り付けられており、これらガイドリング3の各隣接間に1個の割合で、少なくとも3つのシールリング5,6,7が挟持されている。推進軸10にはスリーブ11が外挿されており、このスリーブ11ごと、上記した全てのシールリング5,6,7を串刺し状に貫通するようになっている。
【0023】そして、船外寄りの複数のシールリング5,6相互間において、推進軸10まわりに一次環状室14が形成されており、また船尾管(船尾管軸受2)寄りの複数のシールリング6,7相互間において、推進軸10まわりに二次環状室15が形成されたものとなっている。なお以下では、説明の便宜上、各シールリング5〜7のうち、最も船外寄りとされるものから船尾管側へ向けて順に、「1番シール5」「2番シール6」「3番シール7」と言うものとする。即ち、一次環状室14は1番シール5と2番シール6とで形成され、二次環状室15は2番シール6と3番シール7とで形成されていることになる。
【0024】1番シール5は、その正面(流体圧を受けたときにリップ部を益々、被シール面である推進軸10の外面へ押し付けるようになる側)を船外側へ向けるように配されており、反対に、2番シール6及び3番シール7は、それらの背面を船外側へ向けるように配されている。図1に示すように、上記一次環状室14には、給気管17を介して船内側に設置された給気装置18が接続されていると共に、ドレン回収管19を介して船内側に設置されたドレンタンク20が接続されている。
【0025】一方、上記二次環状室15には、給油管21が接続されている。この給油管21は、船尾管軸受2内と給油装置24との間を送給管23aと回収管23bとで接続した循環路23のうち、送給管23aの中途部から分岐して設けられたものである。従って、この二次環状室15は、結果として給油装置24に接続されていることになる。なお、循環路23の送給管23aには、潤滑油の送給用ポンプ26が設けられている。
【0026】上記給気装置18は、圧力空気タンク等より成る給気源30と、この給気源30と一次環状室14との間に設けられた空気制御ユニット31とを有している。また、この空気制御ユニット31は、減圧弁32と流量調節弁33とを有している。図3に示すように、減圧弁32は、一次ポート35と二次ポート36とを備えた弁本体37の内部に、両ポート35,36間を仕切るかたちで弁座38が設けられており、この弁座38には、バネ39によって付勢された弁体40が閉方向へ押圧されている。また、この弁体40には、連結棒42を介してダイヤフラム43が連結されており、このダイヤフラム43によって、二次ポート36と連通孔44のみで連通した二次圧力室45が区画形成されている。
【0027】更に、このダイヤフラム43は、バネ47によって背圧を受けるように保持されており、このバネ47のバネ力は、弁本体37の下部に対して螺合された下部操作体48の螺合度を調節することで、バネ座49を介して変更することが可能になっている。従って、この減圧弁32における二次側圧力は、二次ポート36から連通孔44を介して二次圧力室45内へ作用する圧力と、バネ47のバネ力とが、ダイヤフラム43を介してバランスしたときに、弁体40と弁座38との間に形成される流通間隙の広さによって決定されるものとなっている。
【0028】すなわち、例えば下部操作体48を、その螺合度合を増す方向へ回動操作すると、バネ47が圧縮してダイヤフラム43は二次圧力室45側へ湾曲し、弁座40が連結棒42を介して弁座38から所定だけ離れるから、これによって流通間隙を広げることができる。そのため、一次ポート35から二次ポート36へ流れる空気量を多くでき、二次側圧力を高く設定することができる。
【0029】反対に、下部操作体48を、その螺合度合を緩める方向へ回動操作すると、バネ47が弛緩してダイヤフラム43は二次圧力室45側への湾曲を減少乃至解消するものとなり、弁座40が連結棒42を介して弁座38へ近接するようになるから、これによって流通間隙を狭めることができる。そのため、一次ポート35から二次ポート36へ流れる空気量を少なくでき、二次側圧力を低く設定することができるというものである。
【0030】ところで、一般に減圧弁と呼ばれるものの基本動作は、二次ポートの下流側で圧力変動が生じた場合に、この変動する圧力(二次側圧力)を設定値に維持させようとするものである。しかし、減圧弁の二次側ポートを大気へ解放させると仮定すると、減圧弁の設定がどのようになっていようとも、この減圧弁から排出された直後に二次側圧力は大気圧に等しくなる。
【0031】このことからも明らかなように、本発明で用いられた減圧弁32は、その二次側ポート36が給気管17を介して一次環状室14に解放されていることになるため、この減圧弁32の二次側圧力は、一義的に、海水圧にリング締付け圧を加えた合計値に等しくなる。すなわち、この減圧弁32において、下部操作体48の回動操作は、二次側圧力(=一次環状室14の内圧)の上限を、最大吃水に伴う海水圧に合わせて設定するためだけのものであり、これを一度設定してしまえば、減圧弁32は海水圧が変動することを起因としては何ら機械的な作動を伴うものではなく、制御は一切、行わないものである。
【0032】図4に示すように、流量調節弁33は、一次ポート50と二次ポート51とを備えた弁本体52の内部に、両ポート50,51間を仕切るかたちで弁座54が設けられており、この弁座54には、調節ネジ軸55を介して弁体56が開閉進退可能に設けられている。従って、一次ポート50から二次ポート51へと流れ出る空気流量は、調節ネジ軸55を操作したときに弁座54と弁体56との間で形成させる流通間隙の大きさによって決定されるものであり、このとき二次ポート51からの空気流量は一定に保持されることになる。
【0033】なお、本実施形態で用いた流量調節弁33には、各種の使用目的に合わせて接続向きを変えられるように、弁本体52の内部に、弁座54を回避するかたちで一方向弁57が設けられたものとしてある。この一方向弁57は、二次ポート51から一次ポート50へ向かう逆方向流れは通すが、その反対向きとなる順方向流れは阻止するものである。
【0034】そのため、この流量調節弁33の接続を上記とは反対に、二次ポート51から一次ポート50への空気流れが生じるようにした場合には、一次ポート50から流れ出る流量を制御することができなくなり、その流量は、一次側と二次側との圧力差で決まってしまうことになる。従って、このような接続は不都合であるため、注意を要する。
【0035】このように、流量調節弁33についても、二次ポート51の下流側圧力(=一次環状室14の内圧)の上限を、一次環状室14内で残圧を生じさせないための流量に設定するためだけのものであり、これを一度設定してしまえば、流量調節弁33は海水圧が変動することを起因としては何ら機械的な作動を伴うものではなく、制御は一切、行わないものである。
【0036】このようなことから、これら減圧弁32及び流量調節弁33を具備して成る空気制御ユニット31として、即ち、この空気制御ユニット31と給気源30とを有して構成される給気装置18としては、海水圧の変動時に、自然現象として空気供給量が変化することは拒まない(許容する)ものの、海水圧の変動に基づいた機械的作動は行わない無制御連動型となっている。
【0037】一方、図1に示したように、前記した給油装置24は、船内において所定高さに設置された油溜タンク60と、上記給気装置18と一次環状室14とを接続する給気管17の中途部から油溜タンク60へ接続された内圧感知管61とを有している。油溜タンク60が設置される高さは、二次環状室15へ供給する潤滑油に対して、海水圧よりも所定だけ高いヘッド圧を付加できるような高さとする。すなわち、このように油溜タンク60を高位設置とすることで、一次環状室14から空気を船外側へ吹き出させるのに必要な圧を、二次環状室15の内圧に持たせるものである。
【0038】本実施形態では、推進軸10の中心から油溜タンク60内の油面レベルまでの高さhが約3mとなるようにした。この油溜タンク60内の油面には、油溜タンク60が内圧感知管61を通じて給気管17内、即ち、一次環状室14と連通されていることにより、一次環状室14の内圧の変化と時間遅れもなく同調変化する圧力が作用するため、結果として、二次環状室15の内圧は、常に海水圧よりも高くなる。
【0039】なお、一次環状室14にドレン回収管19を介して接続されたドレンタンク20は、タンク構造としては密封式とされたものであるが、そのタンク上部にはニードル弁等の空気用流量調節弁65が設けられている。そのため、ドレンタンク20内は微量ながら大気に向けて解放された状態にある。このように大気解放となっていることは、一次環状室14からドレンタンク20への回収流れを円滑化するうえで有益となっている。
【0040】このような構成の軸封装置1では、次のように作用する。すなわち、一次環状室14には、給気装置18により、空気制御ユニット31における減圧弁32の設定値及び流量調節弁33の設定値の範囲内において、海水圧にリング締付け圧を一義的に加えた内圧が保持されるように空気が供給されることになる。
【0041】また、二次環状室15には、給油装置24により、油溜タンク60の設置高さに応じたヘッド圧を受けて、海水圧よりも所定だけ高くなる状態で潤滑油が供給されることになる。勿論、これら一次環状室14及び二次環状室15の内圧は、海水圧の変動に応じて、常に、その変動量だけ海水圧よりも高くなるものとされる。従って、一次環状室14に供給された空気は、常に船外側へ吹き出る状態となる。
【0042】通常時において、一次環状室14に対する空気の供給圧は、海水圧の2倍程度に設定すればよく、また空気流量は20〜60Nl/min程度に調整すればよい。但し、使用条件等によっては、これらの値は変更できる。なお、万が一、一次環状室14への空気供給量が過剰になる等して、この一次環状室14内で船外側へ漏れる空気消費量との流量バランスが崩れて、残圧が発生することがあったとしても、海水圧と一次環状室14の内圧との圧力差は拡大するものの、二次環状室15の内圧は一次環状室14の内圧より高い状態を維持されることになる。従って、結果として、二次環状室15の内圧は、海水圧の変動に完全に追従できるものである。
【0043】すなわち、(海水圧)<(一次環状室14の内圧)<(二次環状室15の内圧)の関係が固定されることになる。また、一次環状室14よりも二次環状室15の方が内圧が高くなる関係上、2番シール6に対しては一定負荷が作用することになる。ここで、2番シール6及び3番シール7は、前記したようにそれらの正面が船尾管寄りを向いており、その結果、二次環状室15と船尾管の内圧とは同圧に保たれることになり、3番シール7はアイドル状態となる。
【0044】殊に、3番シール7は、その背面を二次環状室15内へ向けていることになり、その結果、仮令、二次環状室15に必要十分量を越えた潤滑油等が供給されたような場合であっても、この潤滑油等を船尾管側へ逃がすことができるようになる。そのため、潤滑油が船外側へ漏洩するのを防止できるだけでなく、2番シール6に対して過大負荷が作用するといったことは、自動的に回避されることになる。
【0045】また、万が一、1番シール5や2番シール6が損傷し、一次環状室14に海水や潤滑油等が浸入するようなことがあれば、これら海水や潤滑油はドレン回収管19を介してドレンタンク20へと容易且つ確実に回収されることになるため、何ら問題は生じないものである。図5は、本発明に係る船舶用推進軸の軸封装置1における第2実施形態である。
【0046】この第2実施形態では、一次環状室14よりも船外側に昇圧緩衝用の環状室70を形成すべく、1番シール5よりも更に船外側に、シールリング71が設けられている。そのため、海水圧と一次環状室14の内圧との差圧を大きくとることができ、油溜タンク60の設置位置を下げることが可能になる。
【0047】なお、この第2実施形態の場合には、昇圧緩衝用の環状室70に対し、グリース等の潤滑材を封入しておき、潤滑性の向上を図るのが望ましい。ところで、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、その他、細部にわたる構造等に関して、適宜変更可能である。
【0048】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明に係る船舶用推進軸の軸封装置では、一次環状室に空気を供給する給気装置及び二次環状室に対して潤滑油の供給を行う給油装置に、いずれも機械的作動を伴った制御はせず、自然現象として海水圧の変動に連動させる構成(即ち、無制御連動型)のものを用い、これにより(海水圧)<(一次環状室14の内圧)<(二次環状室15の内圧)の関係が得られるようにしているので、構造の簡潔化が図れ、装備コストの低減をはじめ、空気や潤滑油の管路抵抗の低減が可能になり、また海水圧の変動に対する一次環状室や二次環状室の内圧変化として、迅速な応答性が得られるようになった。
【0049】また、シールリングに対する過負荷状態の発生を防止できるために、シールリングの損傷防止も図れ、その長寿命化が可能になる等の利点もある。
【出願人】 【識別番号】593159051
【氏名又は名称】株式会社コベルコ・マリンエンジニアリング
【出願日】 平成10年(1998)4月22日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】安田 敏雄
【公開番号】 特開平11−304005
【公開日】 平成11年(1999)11月5日
【出願番号】 特願平10−112131