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【発明の名称】 トロイダル型無段変速機のトラニオンセット
【発明者】 【氏名】石川 宏史

【氏名】後藤 伸夫

【氏名】今西 尚

【氏名】町田 尚

【要約】 【課題】リンク機構に係る構成を簡略化すると共に、トラニオンの傾転軸まわりの占有空間を減少させることができるトロイダル型無段変速機のトラニオンセットを提供する。

【解決手段】複数個のパワーローラと、前記パワーローラと同数のトラニオンと、前記パワーローラ及び前記トラニオンと同数のヨークとから構成されるトロイダル型無段変速機のトラニオンセットにおいて、ヨークとポストとの回転自在な結合により各トラニオンの変位量及び変位の方向を同期可能なリンク機構を構成すると共に、リンク機構のうちある1ヵ所のみを変位量及び変位の方向の同期を行わない開放端として、開放端を形成する2本の傾転軸に沿って各トラニオンを押す方向にのみ駆動力を生じさせることができる2個の単動式アクチュエータをこれら傾転軸の端部にそれぞれ接続し、リンク機構により等しく伝達されるアクチュエータの駆動力を受けて全てのトラニオンが双方向へと一体的に変位されるようにする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 入力ディスク及び出力ディスク間にトルク入力軸を中心として均等配置される複数個のパワーローラと、各パワーローラを回転自在に支持しつつそれぞれの傾転軸を中心として各パワーローラと一体に傾動回転する前記パワーローラと同数のトラニオンと、隣り合う2個のトラニオンの最も近接した傾転軸端部同士をそれぞれ連結する前記パワーローラ及び前記トラニオンと同数のヨークとから構成されるトロイダル型無段変速機のトラニオンセットにおいて、前記ヨークと各ヨークの位置決めを行うポストとの回転自在な結合により各トラニオンの変位量及び変位の方向を同期可能なリンク機構が構成されると共に、前記リンク機構のうち1ヵ所のみが変位量及び変位の方向の同期を行わない開放端となっていて、前記開放端を形成する2本の傾転軸に沿って各トラニオンを押す方向にのみ駆動力を生じさせることができる2個の単動式アクチュエータがこれら傾転軸の端部とそれぞれ駆動ロッドを介して接続され、前記リンク機構により等しく伝達される前記2個の単動式アクチュエータの駆動力を受けて全てのトラニオンが双方向へと一体的に変位されることを特徴とするトロイダル型無段変速機のトラニオンセット。
【請求項2】 入力ディスク及び出力ディスク間にトルク入力軸を中心として均等配置される複数個のパワーローラと、各パワーローラを回転自在に支持しつつそれぞれの傾転軸を中心として各パワーローラと一体に傾動回転する前記パワーローラと同数のトラニオンと、隣り合う2個のトラニオンの最も近接した傾転軸端部同士をそれぞれ連結する前記パワーローラ及び前記トラニオンと同数のヨークとから構成されるトロイダル型無段変速機のトラニオンセットにおいて、前記ヨークと各ヨークの位置決めを行うポストとの回転自在な結合により各トラニオンの変位量及び変位の方向を同期可能な第1のリンク機構が構成され、前記第1のリンク機構を構成する各傾転軸の側面と各ヨークの間にトラニオンの傾動回転運動を妨げることなく両者を駆動結合する第2のリンク機構が形成されていると共に、前記第1のリンク機構及び前記第2のリンク機構のうち1ヵ所のみが変位量及び変位の方向の同期ならびに駆動結合を行わない開放端となっていて、前記開放端を形成する2本の傾転軸のうちいずれか一方のみに沿ってトラニオンを押し引きする両方向に駆動力を生じさせることができる1個の復動式アクチュエータがこの傾転軸の端部と駆動ロッドを介して接続され、前記第1のリンク機構及び前記第2のリンク機構により等しく伝達される前記復動式アクチュエータの駆動力を受けて全てのトラニオンが双方向へと一体的に変位されることを特徴とするトロイダル型無段変速機のトラニオンセット。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば自動車の変速機として使用されるトロイダル型無段変速機において、複数個のパワーローラを支持する複数個のトラニオン同士の連結により構成されるトラニオンセットに関する。
【0002】
【従来の技術】主に自動車用の変速機として従来より研究が進められているトロイダル型無段変速機は、互いに対向する面がそれぞれ円弧形状の凹断面を有する入力ディスク及び出力ディスクと、これら2枚のディスク間に挟持される回転自在なパワーローラとを組み合わせた構造のトロイダル変速機構を備えている。入力ディスクは、トルク入力軸方向への移動が可能なようにトルク入力軸に対して駆動結合され、一方出力ディスクは、トルク入力軸に対して相対的に回転可能かつ入力ディスクから離れる方向への移動が制限されるように入力ディスクと対向して取り付けられる。
【0003】上述のようなトロイダル型変速機構では、入力ディスクが回転するとパワーローラを介して出力ディスクが逆回転するため、トルク入力軸に入力される回転運動は、逆方向の回転運動として出力ディスクへと伝達され、出力ディスクと一体的に回転する出力ギアから取り出される。この際、パワーローラの周面が入力ディスクの外周付近と出力ディスクの中心付近とにそれぞれ当接するようにパワーローラの回転軸の傾斜角度を変化させることでトルク入力軸から出力ギアへの増速が行われ、これとは逆に、パワーローラの周面が入力ディスクの中心付近と出力ディスクの外周付近とにそれぞれ当接するようにパワーローラの回転軸の傾斜角度を変化させることでトルク入力軸から出力ギアへの減速が行われる。さらに両者の中間の変速比についても、パワーローラの回転軸の傾斜角度を適当に調節することにより、ほぼ無段階に得ることができる。
【0004】トロイダル型変速機構には、トルク入力軸と直交する平面上にトルク入力軸を中心として対称配置される少なくとも2個のパワーローラが備わっており、各パワーローラは、それぞれ1個のトラニオンにより軸受を介して回転自在に支持される。トラニオンは、パワーローラを収容するための凹部が中心に備わる略コの字型断面形状を持つ部材であり、両側面に突設されている傾転軸を中心として、凹部内に保持しているパワーローラと一体に傾動回転される。隣り合うトラニオンの傾転軸の端部同士がそれぞれ平板形状のヨークを介して相互連結されることにより、これらトラニオンは環状のトラニオンセットを形成する。
【0005】実際にトロイダル型変速機構の変速制御を行う場合には、トラニオン駆動装置を用いてそれぞれのトラニオンを傾転軸に沿った方向へと摺動させることで入力ディスク及び出力ディスクと各パワーローラとの接触部に生じる合成力により、各パワーローラの回転軸の傾斜角度を変化させる。このような変速原理では、変速制御を高い精度で行うために、複数個設けられているトラニオンそれぞれの傾動回転運動を完全に同期させる必要がある。そこで、ある1個のトラニオンの片側の傾転軸上にのみ押し引き両方向に駆動可能な復動式のアクチュエータを配置し、他のトラニオンの傾転軸には押し引き両方向の駆動力を伝達可能なリンク機構を接続することにより、トラニオンセットに含まれる全トラニオンの変位量及び変位の方向の同期性を保つようにした構成を用いることがある。
【0006】図10は、上記構成を有するトラニオンセットの一例を示している。この図では、トルク入力軸を中心に180度の間隔をあけて2個のトラニオン1a、1bが対向配置されており、各トラニオンの最も近接した傾転軸端部同士がそれぞれヨーク2a、2bを介して連結されることで、環状のトラニオンセットが形成されている。ヨーク2a、2bの両端部には、それぞれ傾転軸を挿通するための孔が備わっており、各トラニオンに加わるトラニオンセットの径を拡大させる方向の力を相殺する働きを有する。ヨーク2a、2bの位置はトラニオン1a、1bの傾動回転角度によらず常に固定されており、ヨーク2a、2bの孔とトラニオン1a、1bの傾転軸との間に配置された球面リング3a、3bにより、トラニオン1a、1bの傾転抵抗の軽減が図られている。また、一方のトラニオン1aの片側の傾転軸端部には傾転軸に沿って双方向に駆動力を発生させる復動式の油圧駆動部4が配置されており、油圧駆動部内のシリンダ室に供給される制御油の圧力に応じて傾転軸方向に押し引きする力がこのトラニオン1aに加えられる。
【0007】各トラニオンの油圧駆動部が配置されない側の傾転軸端部には変位量及び変位の方向を同期可能なリンク機構5が接続され、2個のトラニオン1a、1bの各端部同士を連結する。リンク機構5は、各トラニオンの傾転軸端部と結合する2本の結合ロッド51a、51bと、各結合ロッドからの力を直交方向へと変換する2枚の伝達部材52a、52bと、これら2枚の伝達部材間を連結する1本の連結ロッド53とから構成される。2枚の伝達部材52a、52bは、90度の角度をなすよう一体的に接続された2本の腕を備えており、各腕にはそれぞれ結合ロッド51a、51bが接続される。各伝達部材は、角部に設けられている回転中心孔内に挿通されたボルト等により、ケーシングへと回転自在に固定される。
【0008】また、リンク機構5が備わる側の傾転軸同士を結合するヨーク2aの中間部には、ヨーク2aとケーシングの間を結合するポスト6が配置され、トラニオンセット全体の位置を規定している。ポスト6は略矩形状の部材であり、一方の先端部はネジ等を用いてヨーク2a中間部へと結合され、他端部はケーシングへと直接固定される。
【0009】以上のような押し引き両方向の力を伝達可能なリンク機構5では、トラニオン1a、1bの傾動回転運動を妨げず、同時にトラニオン1a、1bの摺動に伴う屈曲方向への応力をうまく逃がすことができるように、結合ロッド52a、52bの各先端と各傾転軸とを結合する必要がある。図11び図12は、この要件を備えた結合の例をトラニオン1bの傾転軸端部付近において示している。図11の例では、各結合ロッドの先端部を球形状に加工しておき、傾転軸端面に穿設されている球形状のリンク孔内に配置することでボールジョイントを形成して、回転及び屈曲自在な結合を実現している。また、図12の例では、傾転軸端面に円筒形状のリンク孔を穿設しておき、このリンク孔側面とリンク孔内に配置した各結合ロッドの一端の周面との間に軸受を配置して回転自在な結合を形成し、同時に、伝達部材の片腕に設けた溝内にピンを介して各結合ロッドの他端と結合することで、横方向への変位を逃がすようにして、屈曲を可能にしている。
【0010】図13は、3個のトラニオン1a、1b、1cを有するトラニオンセットの一例を示している。トルク入力軸を中心とした同一平面上にトラニオンが3個配置されている場合にも、図10の2個のトラニオン1a、1bによるトラニオンセットの例と同様に、各トラニオンの最も近接した傾転軸同士がヨーク2a、2b、2cにより連結されて、環状のトラニオンセットが形成される。ここでは、トラニオン1a、1b、1cはトルク入力軸を中心に120度の間隔をあけて均等配置されており、各傾転軸端部を結合するヨーク2a、2b、2cの2本の腕もまた120度の角度をなしている。また、図10の例と同様に、1個のトラニオン1aの傾転軸端部に配置された復動式の油圧駆動部4により、このトラニオン1aに対して傾転軸方向に押し引きする力が加えられる。
【0011】各ヨーク中間部の角部は、略三角形状を有するポスト6の各頂点とそれそれボルト等を用いて結合されており、ケーシングへと固定されるポスト6の中心部にはトルク入力軸を挿通するためのシャフト孔が穿設されている。また、3ヵ所のヨーク接続部のうち、油圧駆動装置が接続されない2ヵ所には、それぞれリンク機構5が設けられている。各リンク機構は、120度の角度をなす2本の腕を備えた伝達部材52a、52bと、各腕と接続される4本の結合ロッド51a、51b、51c、51cとを備えており、各角部において、ケーシングへと回転自在に固定される。先述の図11及び12と同様の構造を用いることで、トラニオンセットにトラニオンが3個あるいは4個以上備わる場合にも、結合ロッド先端と傾転軸との回転及び屈曲自在な結合を得ることができる。
【0012】以上の構成を有する各トラニオンセットでは、変速制御のために油圧駆動部から1個のトラニオン1aへと加えられる駆動力が、リンク機構5を介して他のトラニオンへと等しく伝達され、その結果、トラニオンセットに属するトラニオン全体が、同一の方向へと一体的に回転する。この際に、各ヨーク2a、2b…はトラニオンセットの径が変化しないように各トラニオンの傾転軸を把持する役割を、またリンク機構5は各トラニオンへと加えられる駆動力を等しく伝達してトラニオンセット全体の変位量及び変位の方向を同期させる役割をそれぞれ担う。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】以上のような構成では、傾転軸端面に複雑な内部形状を有するリンク孔を形成したり、形成したリンク孔内に軸受を配置したりする必要があるため、加工工程が増加して加工時間の増大を招く。また、上記リンク機構は複数個の関節を備えているため、装置全体の構成が複雑化して、故障等の不具合の発生率や組立てに要するコストを上昇させる。さらに、リンク機構が傾転軸の端面よりも外側に突出して配置されるために、トラニオン周辺の空間の利用効率が悪化することから、装置の大型化や重量増加が避けられない。
【0014】本発明は上述の事情によりなされたものであり、各トラニオンの変位量及び変位の方向を同期させるためのリンク機構に係る構成を簡略化すると共に、トラニオンの傾転軸まわりの占有空間を減少させることができるトロイダル型無段変速機のトラニオンセットを提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明は、入力ディスク及び出力ディスク間にトルク入力軸を中心として均等配置される複数個のパワーローラと、各パワーローラを回転自在に支持しつつそれぞれの傾転軸を中心として各パワーローラと一体に傾動回転する前記パワーローラと同数のトラニオンと、隣り合う2個のトラニオンの最も近接した傾転軸端部同士をそれぞれ連結する前記パワーローラ及び前記トラニオンと同数のヨークとから構成されるトロイダル型無段変速機のトラニオンセットに関するものであり、本発明の上記目的は、前記ヨークと各ヨークの位置決めを行うポストとの回転自在な結合により各トラニオンの変位量及び変位の方向を同期可能なリンク機構を構成すると共に、前記リンク機構のうちある1ヵ所のみを変位量及び変位の方向の同期を行わない開放端として、前記開放端を形成する2本の傾転軸に沿って各トラニオンを押す方向にのみ駆動力を生じさせることができる2個の単動式アクチュエータをこれら傾転軸の端部にそれぞれ駆動ロッドを介して接続し、前記リンク機構により等しく伝達される前記2個の単動式アクチュエータの駆動力を受けて全てのトラニオンが双方向へと一体的に変位されるようにすることで達成される。
【0016】また、本発明の上記目的は、前記ヨークと各ヨークの位置決めを行うポストとの回転自在な結合により各トラニオンの変位量及び変位の方向を同期可能な第1のリンク機構が構成され、前記第1のリンク機構を構成する各傾転軸の側面と各ヨークの間にトラニオンの傾動回転運動を妨げることなく両者を駆動結合する第2のリンク機構が形成されていると共に、前記第1のリンク機構及び前記第2のリンク機構のうちある1ヵ所のみが変位量及び変位の方向の同期ならびに駆動結合を行わない開放端となっていて、前記開放端を形成する2本の傾転軸のうちいずれか一方のみに沿ってトラニオンを押し引きする両方向に駆動力を生じさせることができる1個の復動式アクチュエータがこの傾転軸の端部と駆動ロッドを介して接続され、前記第1のリンク機構及び前記第2のリンク機構により等しく伝達される前記復動式アクチュエータの駆動力を受けて全てのトラニオンが双方向へと一体的に変位されるようにすることでも、同様に達成される。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明のトラニオンセットでは、トラニオンセットの径が変化しないように各トラニオンに加わる力を相殺して傾転軸の位置を固定する機能を備えているヨークに、トラニオンへの駆動力をトラニオンセット全体に等しく伝達して各トラニオンの変位量及び変位の方向を同期させるリンク機構としての役割を持たせるようにしている。なお、ヨーク及びリンク機構以外の各部分については、従来のトラニオンセットと同様に構成することができるため、以下ではその詳細な説明を省略する。
【0018】図1は、本発明のトラニオンセットの第1実施例を示している。この図では、2個のトラニオン1a、1bがトルク入力軸を中心に180度の間隔をあけて対向配置され、各トラニオンの傾転軸同士がそれぞれヨーク2a、2bにより連結されて環状のトラニオンセットを形成している。また、各トラニオンの片側の傾転軸端部には、それぞれ傾転軸に沿って押す方向にのみ駆動力を生じさせることができる単動式の油圧駆動部4a、4bが1個ずつ配置されており、各トラニオンを傾転軸方向へと押して変位させる。
【0019】各トラニオンの油圧駆動部が配置されない側の傾転軸と結合するヨーク2aは、中間部に接続されている略矩形状のポスト6によりケーシングへと固定されており、ヨーク2aとポスト6の間はボルト・ナット等を用いて回転自在に結合される。また、図2に拡大して示すように、このヨーク2aの側面とヨーク2aに隣接する各トラニオン側面との間には、トラニオン傾動回転時の摩擦抵抗を減少させるためのスラスト軸受7a、7bが配置されている。これらヨーク2aとポスト6の回転自在な結合及びヨーク2aとトラニオン1a、1b側面の軸受7a、7bを介した接触により、各トラニオンの変位量及び変位の方向を同期可能なリンク機構が構成される。一方、油圧駆動部が配置されている側のヨーク2bは、各トラニオン側面との間に隙間を備えているため駆動力の伝達を行わず、したがってリンク機構として機能しない。なお、この図のようにトラニオン側面との間に隙間を設ける以外にも、例えば、ポスト6先端との結合部において各腕が二分割されているヨークを使用しても同様の効果が得られる。
【0020】図3は、同様にして3個のトラニオン1a、1b、1cからトラニオンセットが構成されている場合の第1実施例である。3個のトラニオン1a、1b、1cは、トルク入力軸を中心に120度の間隔をあけて均等配置されており、各トラニオンの最も近接した傾転軸端部同士を結ぶヨーク2a、2b、2cは、各々の中間部において、ケーシングに固定されたポスト6が備える3本の腕の各先端とそれぞれ回転自在に結合している。ポスト6は、従来のトラニオンセットと同様に、略三角形状を有する部材であり、ポスト中央には、トルク入力軸を挿通させるためのシャフト孔が穿設されている。3個のうち1個のヨーク2cと結合している2個のトラニオン1a、1bの各傾転軸端部には、それぞれ傾転軸に沿って押す方向にのみ駆動力を生じさせることができる単動式の油圧駆動部4a、4bが1個ずつ配置されており、各トラニオンを傾転軸に沿って押して変位させることで傾動回転運動を生じさせる。
【0021】油圧駆動部4a、4bが配置されていない傾転軸と結合する2個のヨーク2a、2bは、軸受7a、7b、7cを介した各トラニオン側面との接触及びポスト6との回転自在な結合により、各トラニオンの変位量及び変位の方向を同期可能なリンク機構をそれぞれ構成する。一方で、油圧駆動部4a、4bが接続されている残り1個のヨーク2cは、トラニオン1a、1b側面との間に隙間を有しているため駆動力の伝達を行わない、すなわちリンク機構としての機能を備えていない。
【0022】図4は、4個のトラニオン1a、1b、1c、1dから成るトラニオンセットの第1実施例である。この図においても、図1及び図3の例と全く同様に、各傾転軸端部同士がヨーク2a、2b、2c、2dにより結合され、各ヨークは、ポスト6との回転自在な結合を介してケーシングと結合する。また、4個のうち1個のヨーク2aと結合しているトラニオン1a、1bの各傾転軸端部には、それぞれ単動式の油圧駆動部4a、4bが1個ずつ配置されているが、このヨーク2aは、トラニオン1a、1b側面との間に隙間を保持しているため、リンク機構としての機能を備えていない。一方、油圧駆動部が配置されていない3個のヨーク2b、2c、2dは、各トラニオン側面との間の軸受7a〜7dを介した接触及びポスト6との回転自在な結合により、各トラニオンの変位量及び変位の方向を同期可能なリンク機構を各々構成する。
【0023】以上の各第1実施例では、単動式油圧駆動部4aからトラニオン1aへと加えられた傾転軸に沿って押す方向の駆動力が、トラニオン側面上の軸受を介してリンク機構のヨークの一端部へと入力される。トラニオン側面によって一端部を押されたヨークは、ポスト6との結合部をリンク中心として回転するため、入力された駆動力は、このヨークの他端部に接触している別のトラニオンの傾転軸へと伝えられる。以上のような駆動力の伝達が複数のトラニオン間で順次行われる結果、トラニオンセットの全トラニオンの変位量及び変位の方向が同期される。また、押す方向の駆動力を発生させる単動式油圧駆動部を4bに切り替えることで、トラニオンセットを逆方向へと回転させることができる。
【0024】図5は、本発明のトラニオンセットの第2実施例である。この図では、図1の第1実施例と同様に、2個のトラニオン1a、1bがトルク入力軸を中心として180度の間隔をあけて対向配置されており、各トラニオンの傾転軸端部同士がヨーク2a、2bを介して連結されることで、環状のトラニオンセットが形成されている。また、トラニオン1aの片側の傾転軸端部には、傾転軸に沿って押し引き両方向の駆動力を発生させることができる復動式の油圧駆動装置4が配置されており、一方、各トラニオンの油圧駆動部が配置されない側の傾転軸と結合するヨーク2bは、中央部に回転自在に結合しているポスト6によりケーシングへと固定される。ヨーク2aの側面とヨーク2aに隣接する各トラニオン側面との間には、本発明の第1実施例と同様にトラニオン傾動回転時の摩擦抵抗を減少させるためのスラスト軸受7a、7bが配置されている。
【0025】図5の第2実施例は、上述のようなヨーク2aとトラニオン1a、1b側面の軸受7a、7bを介した接触及びヨーク2aとポスト6の回転自在な結合により、各トラニオンの変位量及び変位の方向を同期可能な第1のリンク機構を構成する。また、ヨーク2aと傾転軸との接合部には、図6に示すような、傾転軸周面上に設けられたガイドピン8とヨーク2a側面に形成されたガイド溝9とにより各トラニオンの傾動回転運動を妨げることなく両者間を駆動結合する第2のリンク機構が配置されている。この図では、ガイド溝9の内壁面との間の摩擦抵抗を軽減するために、ガイドピン8の周面に転がり軸受10が配置されているが、代わりに滑り軸受を用いるようにしても良い。一方、油圧駆動部4が配置されている側のヨーク2bは、第1のリンク機構及び第2のリンク機構のいずれをも構成しない。図7は、トラニオン1bの傾転軸とヨーク2aとの結合部を端面方向から示している。第2のリンク機構を構成するガイドピン8は、通常はAのような直立状態にあるが、トラニオン1bの傾動回転運動が生じると、ガイド溝9の内壁面に沿って回転しながら、トラニオンの最大傾転角度に相当するBの位置まで移動することができる。
【0026】図8は、同様にして3個のトラニオン1a、1b、1cによりトラニオンセットが構成されている場合の第2実施例である。3個のトラニオン1a、1b、1cは、図3の第1実施例と同様に、トルク入力軸を中心に120度の間隔をあけて均等配置されており、各トラニオンの最も近接した傾転軸端部同士を結ぶヨーク2a、2b、2cは、各々の中間部において、ケーシングに固定されたポスト6が備える3本の腕の各先端とそれぞれ回転自在に結合している。3個のうち1個のヨーク2cと結合している2個のトラニオン1a、1bのうちトラニオン1aの片側の傾転軸端部には、傾転軸に沿って押し引き両方向の駆動力を発生させることができる復動式の油圧駆動部4が配置されている。
【0027】復動式油圧駆動部4が配置されていない2個のヨーク2a、2bは、スラスト軸受7a、7b、7cを介した各トラニオン側面との接触及びポスト6との回転自在な結合により、各トラニオンの変位量及び変位の方向を同期可能な第1のリンク機構をそれぞれ構成する。さらに、これら2個のヨーク2a、2bと各傾転軸との各接合部には、図5の例と同様に、傾転軸周面上に設けられているガイドピン8とヨーク側面に形成されているガイド溝9(図示せず)とにより各トラニオンの傾動回転運動を妨げることなくこれらを駆動結合する第2のリンク機構が構成されている。一方、油圧駆動部4が接続されている残り1個のヨーク2cは、駆動力の伝達を一切行わない、すなわち第1のリンク機構及び第2のリンク機構としての機能をいずれも備えていない。
【0028】図9は、4個のトラニオン1a、1b、1c、1dから成るトラニオンセットの第2実施例である。この図においても、図5及び図7の例と全く同様に、各傾転軸端部同士がヨーク2a、2b、2c、2dにより結合され、各ヨークは、ポスト6との回転自在な結合を介してケーシングと結合する。また、4個のうち1個のヨーク2aと結合している2個のトラニオン1a、1bのうちトラニオン1aの片側の傾転軸端部には、傾転軸に沿って押し引き両方向の駆動力を発生させることができる復動式の油圧駆動装置4が配置されているが、このヨーク2aは、第1のリンク機構及び第2のリンク機構としての機能を一切備えていない。一方、油圧駆動部4が配置されていない3個のヨーク2b、2c、2dは、トラニオン側面との間のスラスト軸受7a〜7dを介した接触及びポスト6との回転自在な結合により、各トラニオンの変位量及び変位の方向を同期可能な第1のリンク機構を各々構成する。また同時に、これら3個のヨーク2b、2c、2dと傾転軸との各接合部には、傾転軸周面上に設けられているガイドピン8と各ヨーク側面に形成されているガイド溝9(図示せず)とにより各トラニオンの傾動回転運動を妨げることなくこれらを駆動結合する第2のリンク機構が構成されている。
【0029】以上で説明した各第2実施例では、押し引き両方向へ駆動可能な復動式油圧駆動部4からトラニオン1aへと加えられた傾転軸に沿って押す方向の駆動力が、トラニオン側面上の軸受を介して第1のリンク機構のヨークの一端部へと入力される。トラニオン側面によって一端部を押されたヨークは、ポスト6との結合部をリンク中心として回転するため、入力された駆動力は、このヨークの他端部に軸受を介して接触している別のトラニオンの傾転軸へと伝えられる。一方、復動式油圧駆動部4により傾転軸に沿って引く方向の駆動力がトラニオン1aへと加えられた場合には、第2のリンク機構のガイドピン8とガイド溝9の結合を介して一端部を引かれたヨークがポスト6との結合部をリンク中心として回転するため、入力された駆動力は、このヨークの他端部に第2のリンク機構を介して結合している別のトラニオンの傾転軸へと伝えられる。このようにして押し引き双方向の駆動力の伝達が複数のトラニオン間で順次行われる結果、トラニオンセットの全トラニオンについて変位量及び変位の方向の同期性が保たれる。
【0030】なお、復動式油圧駆動部4で生じた傾転軸に沿って押す方向の駆動力を他のトラニオンへと伝達する際には、上述のようにトラニオン側面上の軸受を介する代わりに、第2のリンク機構のガイドピンとガイド溝との接触を利用することもできる。このようにした場合、ヨークとポストの回転自在な結合及び第2のリンク機構によって各トラニオンの変位量及び変位の方向を同期させることができるため、第1のリンク機構の軸受が不要となる。また、これらの発明はシングルキャビティに適用する場合について説明したが、ダブルキャビティの場合にも適用可能である。
【0031】
【発明の効果】以上のように、本発明のトロイダル型無段変速機のトラニオンセットでは、傾転軸を接続するヨークがリンク機構としての機能を併せ持っているため、傾転軸端面の外側にリンク機構を収めるための空間を設ける必要がなくなり、機器配置上の自由度が向上する。また、リンク機構の構造が簡略化されることにより、構成部品点数が減少し、加工時間や組立てに要するコストを削減することができる。
【出願人】 【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
【出願日】 平成10年(1998)4月23日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】安形 雄三 (外1名)
【公開番号】 特開平11−303963
【公開日】 平成11年(1999)11月2日
【出願番号】 特願平10−113617