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【発明の名称】 無段変速機の変速制御装置
【発明者】 【氏名】高橋 宏

【要約】 【課題】無段変速機を備えた車両のエンジンブレーキ力の大きさを、道路状況や走行状態に加えて、運転者の期待に応じて設定する。

【解決手段】車両の走行状態に応じて無段変速機1の変速比を決定するCVTコントローラ2と、車両の走行環境、運転状態または道路状況を検出する各種センサと、アクセルペダルを解放したときのエンジンブレーキの特性を、各種センサの検出結果に応じて変更する減速力決定装置3とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両の走行状態に応じて無段変速機の変速比を決定する目標変速比設定手段と、車両の走行環境、運転状態または道路状況を検出する環境認識手段と、アクセルペダルを解放したときのエンジンブレーキの特性を、前記環境認識手段の検出結果に応じて変更するエンジンブレーキ補正手段とを備えたことを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
【請求項2】 前記エンジンブレーキ補正手段は、前記環境認識手段の検出結果に基づいてエンジンブレーキの特性を可変制御することを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項3】 前記エンジンブレーキ補正手段は、前記環境認識手段の検出結果に基づいてエンジンブレーキ力に加えて変速速度を可変制御することを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項4】 前記環境認識手段は、アクセルペダル開度の変化量の平均値または分散値を検出し、前記エンジンブレーキ補正手段は前記平均値または分散値が増大するにつれて、アクセルペダルを解放したときの変速比を増大することを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項5】 前記エンジンブレーキ補正手段は前記平均値または分散値が増大するにつれて、変速速度を増大することを特徴とする請求項4に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項6】 前記環境認識手段は、ブレーキペダル踏力の変化量の平均値または分散値を検出し、前記エンジンブレーキ補正手段は前記平均値または分散値が増大するにつれて、アクセルペダルを解放したときの変速比を増大することを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項7】 前記エンジンブレーキ補正手段は前記平均値または分散値が増大するにつれて、変速速度を増大することを特徴とする請求項6に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項8】 前記環境認識手段は、操舵角度の変化量の平均値または分散値を検出し、前記エンジンブレーキ補正手段は前記平均値または分散値が増大するにつれて、アクセルペダルを解放したときの変速比を増大することを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項9】 前記エンジンブレーキ補正手段は前記平均値または分散値が増大するにつれて、変速速度を増大することを特徴とする請求項8に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項10】 前記環境認識手段は、車外の照度を検出し、前記エンジンブレーキ補正手段は照度が減少するにつれて、アクセルペダルを解放したときの変速比を増大することを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項11】 前記エンジンブレーキ補正手段は前記照度が減少するにつれて、変速速度を増大することを特徴とする請求項10に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項12】 前記環境認識手段は、車外の照度の変化量を検出し、前記エンジンブレーキ補正手段は照度の変化量が増大するにつれて、アクセルペダルを解放したときの変速比を増大することを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項13】 前記エンジンブレーキ補正手段は前記照度の変化量が増大するにつれて、変速速度を増大することを特徴とする請求項12に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項14】 前記環境認識手段は、路面摩擦係数を推定または検出し、前記エンジンブレーキ補正手段は路面摩擦係数が増大するにつれて、アクセルペダルを解放したときの変速比を増大することを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項15】 前記エンジンブレーキ補正手段は路面摩擦係数が増大するにつれて、変速速度を増大することを特徴とする請求項14に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項16】 前記環境認識手段は、降雨または降雪を検出し、前記エンジンブレーキ補正手段は、降雨または降雪が検出された場合には、アクセルペダルを解放したときの変速比を低減することを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項17】 前記エンジンブレーキ補正手段は降雨または降雪が検出されたときには、変速速度を低減することを特徴とする請求項16に記載の無段変速機の変速制御装置。の変速制御装置。
【請求項18】 前記環境認識手段は、車両の搭乗者を検出し、前記エンジンブレーキ補正手段は、搭乗者数の増大につれて、アクセルペダルを解放したときの変速比を減少することを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項19】 前記エンジンブレーキ補正手段は、前記搭乗者数の増大につれて、変速速度を低減することを特徴とする請求項18に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項20】 前記環境認識手段は、車両の位置を検出するとともに経路誘導可能なナビゲーション装置を備え、前記エンジンブレーキ補正手段は、ナビゲーション装置が経路誘導中であれば、アクセルペダルを解放したときの変速比を増大することを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項21】 前記エンジンブレーキ補正手段は、前記ナビゲーション装置が経路誘導中であれば、変速速度を増大することを特徴とする請求項20に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項22】 前記環境認識手段は、車両の位置を検出するとともに走行中の道幅を検出するナビゲーション装置を備え、前記エンジンブレーキ補正手段は、走行中の道幅が減少するにつれて、アクセルペダルを解放したときの変速比を増大することを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項23】 前記エンジンブレーキ補正手段は、前記道幅が減少するにつれて、変速速度を増大することを特徴とする請求項22に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項24】 前記環境認識手段は、車両の位置を検出するとともに走行中の道幅の種類を検出するナビゲーション装置を備え、前記エンジンブレーキ補正手段は、走行中の道路の種類が一般道路であれば、アクセルペダルを解放したときの変速比を増大する一方、道路の種類が高速道路であれば、アクセルペダルを解放したときの変速比を減少することを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項25】 前記エンジンブレーキ補正手段は、前記道路の種類が一般道路であれば変速速度を増大する一方、高速道路では変速速度を減少することを特徴とする請求項24に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項26】 前記環境認識手段は、車両の位置を検出するとともに、現在走行中の道路の走行回数を検出するナビゲーション装置を備え、前記エンジンブレーキ補正手段は、走行回数が減少するにつれて、アクセルペダルを解放したときの変速比を増大することを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項27】 前記エンジンブレーキ補正手段は、前記道路の走行回数が減少するにつれて、変速速度を増大することを特徴とする請求項26に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項28】 前記環境認識手段は、単位時間当たりの車速の平均値を検出し、車速の平均値が増大するにつれて、アクセルペダルを解放したときの変速比を減少することを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項29】 前記エンジンブレーキ補正手段は、前記車速の平均値が増大するにつれて、変速速度を減少することを特徴とする請求項28に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項30】 前記環境認識手段は、車両の位置を検出するとともに、現在走行中の道路の制限速度を検出するナビゲーション装置を備え、前記エンジンブレーキ補正手段は、制限速度に対する現在の車速の差が増大するにつれて、アクセルペダルを解放したときの変速比を増大することを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項31】 前記エンジンブレーキ補正手段は、前記制限速度に対する現在の車速の差が増大するにつれて、変速速度を増大することを特徴とする請求項30に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項32】 前記環境認識手段は、運転者の運転経験を検出し、前記エンジンブレーキ補正手段は、運転経験が増大するにつれて、アクセルペダルを解放したときの変速比を減少することを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項33】 前記エンジンブレーキ補正手段は、前記運転経験が増大するにつれて、変速速度を減少することを特徴とする請求項32に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項34】 前記環境認識手段は、運転者の覚醒度を検出し、前記エンジンブレーキ補正手段は、前記覚醒度が減少するにつれて、アクセルペダルを解放したときの変速比を増大することを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項35】 前記エンジンブレーキ補正手段は、前記覚醒度が減少するにつれて、変速速度を増大することを特徴とする請求項34に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項36】 前記環境認識手段は、運転開始からの経過時間を検出し、前記エンジンブレーキ補正手段は、前記経過時間が増大するにつれて、アクセルペダルを解放したときの変速比を増大することを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項37】 前記エンジンブレーキ補正手段は、前記経過時間が増大するにつれて、変速速度を増大することを特徴とする請求項36に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項38】 前記環境認識手段は、前方車両との車間距離を検出し、前記エンジンブレーキ補正手段は、前記車間距離が減少するにつれて、アクセルペダルを解放したときの変速比を増大することを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項39】 前記エンジンブレーキ補正手段は、前記車間距離が減少するにつれて、変速速度を増大することを特徴とする請求項38に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項40】 前記環境認識手段は、車両前方の画像から混雑度合いを検出し、前記エンジンブレーキ補正手段は、前記混雑度合いが増大するにつれて、アクセルペダルを解放したときの変速比を増大することを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項41】 前記エンジンブレーキ補正手段は、前記混雑度合いが増大するにつれて、変速速度を増大することを特徴とする請求項40に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項42】 前記環境認識手段は、車両前方の画像から輝度分布の標準偏差を検出し、輝度分布の標準偏差の増大に応じて混雑度合いが増大することを特徴とする請求項40に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項43】 前記環境認識手段は、車両前方の画像から輝度の平均値を検出し、輝度平均値の減少に応じて混雑度合いが増大することを特徴とする請求項40に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項44】 前記環境認識手段は、車両前方の画像から縦・横のエッジの長さまたは輪郭線の本数を検出し、エッジの長さまたは輪郭線の本数の増大に応じて混雑度合いが増大することを特徴とする請求項40に記載の無段変速機の変速制御装置。
【請求項45】 前記環境認識手段は、車両前方の赤外線画像から高輝度部分面積を検出し、この高輝度部分面積の増大に応じて混雑度合いが増大することを特徴とする請求項40に記載の無段変速機の変速制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両などに採用される無段変速機の変速制御装置の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から自動車などの車両に用いられる無段変速機としては、Vベルト式やトロイダル式(摩擦車式)などが知られており、このような無段変速機の変速制御装置では、アクセル開度ACS(またはスロットル開度TVO、以下同様)と、車速VSP等の運転状態に基づいて無段変速機に入力される回転数の目標値を設定し、この目標入力回転数に応じた変速比となるように連続的に制御するものが知られている。
【0003】上記のような無段変速機の変速制御装置では、アクセル開度ACSが小さいほど、変速比をHi側(目標入力回転数を小さく)に設定する一方、スロットル開度が大きいほど、変速比はLo側(目標入力回転数を大きく)に設定しているため、運転者が減速させるためにアクセルペダルを放すことによりアクセル開度ACSは小さくなり、変速比はHi側に設定されて目標入力回転が低下するので、エンジンブレーキ力が低下する方向に制御される。
【0004】このため、運転者はアクセルペダルを放したにも拘わらず、期待した減速感がなく、ブレーキ操作により減速することとなり、ブレーキ操作頻度が増大することとなる。
【0005】そこで、道路状況などに応じて駆動トルクを適切に制御するものとしては、特開平8−194893号公報などが知られている。
【0006】これは、ナビゲーション装置や横加速度検知手段などを利用した道路状況と走行状態から、エンジン出力や自動変速機の変速段の切り換え、または、制動装置の作動を行って、走行環境に応じた駆動力特性を得ようとするものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来例においては、変速比を連続的に変更可能な無段変速機を自動変速機に採用した場合、道路状況に対する変速比の設定、特に、エンジンブレーキ時の変速比の設定について考慮されていないため、上記したような無段変速比の特性によって、エンジンブレーキを効果的に作用させるのが難しいという問題があった。
【0008】さらに、上記従来例においては、道路状況と走行状態に基づいてのみ駆動力特性の制御が行われるだけで、運転者の感覚が加味されていないため、例えば、同一の曲率のブラインドカーブへ進入する際のエンジンブレーキでは、日常的に通過している道路と、初めて通過する道路では、運転者が期待するエンジンブレーキ力は異なり、同一のエンジンブレーキ力の場合、前者の場合では減速度が過大に感じて運転性を低下させる一方、後者の場合では減速度が不足して、制動装置を使用することになり、運転操作が煩雑にならざるを得ないという問題がある。
【0009】加えて、運転者が期待するエンジンブレーキ力は、上記のような走行経験だけではなく、天候や時刻、市街地と郊外の違い、路面状態などの走行環境の認識に応じて変化するため、上記のような道路状況と走行状態だけでは、運転者の期待に応じたエンジンブレーキ力を得ることができず、運転者に違和感を与える場合があった。
【0010】そこで本発明は上記問題点に鑑みなされたもので、無段変速機を備えた車両のエンジンブレーキ力の大きさを、道路状況や走行状態に加えて、運転者の期待に応じて設定することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、車両の走行状態に応じて無段変速機の変速比を決定する目標変速比設定手段と、車両の走行環境、運転状態または道路状況を検出する環境認識手段と、アクセルペダルを解放したときのエンジンブレーキの特性を、前記環境認識手段の検出結果に応じて変更するエンジンブレーキ補正手段とを備える。
【0012】また、第2の発明は、前記第1の発明において、前記エンジンブレーキ補正手段は、前記環境認識手段の検出結果に基づいてエンジンブレーキ力を可変制御する。
【0013】また、第3の発明は、前記第1の発明において、前記エンジンブレーキ補正手段は、前記環境認識手段の検出結果に基づいてエンジンブレーキ力に加えて変速速度を可変制御する。
【0014】また、第4の発明は、前記第1の発明において、前記環境認識手段は、アクセルペダル開度の変化量の平均値または分散値を検出し、前記エンジンブレーキ補正手段は前記平均値または分散値が増大するにつれて、アクセルペダルを解放したときの変速比を増大する。
【0015】また、第5の発明は、前記第4の発明において、前記エンジンブレーキ補正手段は前記平均値または分散値が増大するにつれて、変速速度を増大する。
【0016】また、第6の発明は、前記第1の発明において、前記環境認識手段は、ブレーキペダル踏力の変化量の平均値または分散値を検出し、前記エンジンブレーキ補正手段は前記平均値または分散値が増大するにつれて、アクセルペダルを解放したときの変速比を増大する。
【0017】また、第7の発明は、前記第6の発明において、前記エンジンブレーキ補正手段は前記平均値または分散値が増大するにつれて、変速速度を増大する。
【0018】また、第8の発明は、前記第1の発明において、前記環境認識手段は、操舵角度の変化量の平均値または分散値を検出し、前記エンジンブレーキ補正手段は前記平均値または分散値が増大するにつれて、アクセルペダルを解放したときの変速比を増大する。
【0019】また、第9の発明は、前記第8の発明において、前記エンジンブレーキ補正手段は前記平均値または分散値が増大するにつれて、変速速度を増大する。
【0020】また、第10の発明は、前記第1の発明において、前記環境認識手段は、車外の照度を検出し、前記エンジンブレーキ補正手段は照度が減少するにつれて、アクセルペダルを解放したときの変速比を増大する。
【0021】また、第11の発明は、前記第10の発明において、前記エンジンブレーキ補正手段は前記照度が減少するにつれて、変速速度を増大する。。
【0022】また、第12の発明は、前記第1の発明において、前記環境認識手段は、車外の照度の変化量を検出し、前記エンジンブレーキ補正手段は照度の変化量が増大するにつれて、アクセルペダルを解放したときの変速比を増大する。
【0023】また、第13の発明は、前記第12の発明において、前記エンジンブレーキ補正手段は前記照度の変化量が増大するにつれて、変速速度を増大する。
【0024】また、第14の発明は、前記第1の発明において、前記環境認識手段は、路面摩擦係数を推定または検出し、前記エンジンブレーキ補正手段は路面摩擦係数が増大するにつれて、アクセルペダルを解放したときの変速比を増大する。
【0025】また、第15の発明は、前記第14の発明において、前記エンジンブレーキ補正手段は路面摩擦係数が増大するにつれて、変速速度を増大する。
【0026】また、第16の発明は、前記第1の発明において、前記環境認識手段は、降雨または降雪を検出し、前記エンジンブレーキ補正手段は、降雨、または降雪が検出された場合には、アクセルペダルを解放したときの変速比を低減する。
【0027】また、第17の発明は、前記第16の発明において、前記エンジンブレーキ補正手段は降雨または降雪が検出されたときには、変速速度を低減する。
【0028】また、第18の発明は、前記第1の発明において、前記環境認識手段は、車両の搭乗者を検出し、前記エンジンブレーキ補正手段は、搭乗者数の増大につれて、アクセルペダルを解放したときの変速比を減少する。
【0029】また、第19の発明は、前記第18の発明において、前記エンジンブレーキ補正手段は、前記搭乗者数の増大につれて、変速速度を低減する。
【0030】また、第20の発明は、前記第1の発明において、前記環境認識手段は、車両の位置を検出するとともに経路誘導可能なナビゲーション装置を備え、前記エンジンブレーキ補正手段は、ナビゲーション装置が経路誘導中であれば、アクセルペダルを解放したときの変速比を増大する。
【0031】また、第21の発明は、前記第20の発明において、前記エンジンブレーキ補正手段は、前記ナビゲーション装置が経路誘導中であれば、変速速度を増大する。
【0032】また、第22の発明は、前記第1の発明において、前記環境認識手段は、車両の位置を検出するとともに走行中の道幅を検出するナビゲーション装置を備え、前記エンジンブレーキ補正手段は、走行中の道幅が減少するにつれて、アクセルペダルを解放したときの変速比を増大する。
【0033】また、第23の発明は、前記第22の発明において、前記エンジンブレーキ補正手段は、前記道幅が減少するにつれて、変速速度を増大する。
【0034】また、第24の発明は、前記第1の発明において、前記環境認識手段は、車両の位置を検出するとともに走行中の道幅の種類を検出するナビゲーション装置を備え、前記エンジンブレーキ補正手段は、走行中の道路の種類が一般道路であれば、アクセルペダルを解放したときの変速比を増大する一方、道路の種類が高速道路であれば、アクセルペダルを解放したときの変速比を減少する。
【0035】また、第25の発明は、前記第24の発明において、前記エンジンブレーキ補正手段は、前記道路の種類が一般道路であれば変速速度を増大する一方、高速道路では変速速度を減少する。
【0036】また、第26の発明は、前記第1の発明において、前記環境認識手段は、車両の位置を検出するとともに、現在走行中の道路の走行回数を検出するナビゲーション装置を備え、前記エンジンブレーキ補正手段は、走行回数が減少するにつれて、アクセルペダルを解放したときの変速比を増大する。
【0037】また、第27の発明は、前記第26の発明において、前記エンジンブレーキ補正手段は、前記道路の走行回数が減少するにつれて、変速速度を増大する。
【0038】また、第28の発明は、前記第1の発明において、前記環境認識手段は、単位時間当たりの車速の平均値を検出し、車速の平均値が増大するにつれて、アクセルペダルを解放したときの変速比を減少する。
【0039】また、第29の発明は、前記第28の発明において、前記エンジンブレーキ補正手段は、前記車速の平均値が増大するにつれて、変速速度を減少する。
【0040】また、第30の発明は、前記第1の発明において、前記環境認識手段は、車両の位置を検出するとともに、現在走行中の道路の制限速度を検出するナビゲーション装置を備え、前記エンジンブレーキ補正手段は、制限速度に対する現在の車速の差が増大するにつれて、アクセルペダルを解放したときの変速比を増大する。
【0041】また、第31の発明は、前記第30の発明において、前記エンジンブレーキ補正手段は、前記制限速度に対する現在の車速の差が増大するにつれて、変速速度を増大する。
【0042】また、第32の発明は、前記第1の発明において、前記環境認識手段は、運転者の運転経験を検出し、前記エンジンブレーキ補正手段は、運転経験が増大するにつれて、アクセルペダルを解放したときの変速比を減少する。
【0043】また、第33の発明は、前記第32の発明において、前記エンジンブレーキ補正手段は、前記運転経験が増大するにつれて、変速速度を減少する。
【0044】また、第34の発明は、前記第1の発明において、前記環境認識手段は、運転者の覚醒度を検出し、前記エンジンブレーキ補正手段は、前記覚醒度が減少するにつれて、アクセルペダルを解放したときの変速比を増大する。
【0045】また、第35の発明は、前記第34の発明において、前記エンジンブレーキ補正手段は、前記覚醒度が減少するにつれて、変速速度を増大する。
【0046】また、第36の発明は、前記第1の発明において、前記環境認識手段は、運転開始からの経過時間を検出し、前記エンジンブレーキ補正手段は、前記経過時間が増大するにつれて、アクセルペダルを解放したときの変速比を増大する。
【0047】また、第37の発明は、前記第36の発明において、前記エンジンブレーキ補正手段は、前記経過時間が増大するにつれて、変速速度を増大する。
【0048】また、第38の発明は、前記第1の発明において、前記環境認識手段は、前方車両との車間距離を検出し、前記エンジンブレーキ補正手段は、前記車間距離が減少するにつれて、アクセルペダルを解放したときの変速比を増大する。
【0049】また、第39の発明は、前記第38の発明において、前記エンジンブレーキ補正手段は、前記車間距離が減少するにつれて、変速速度を増大する。
【0050】また、第40の発明は、前記第1の発明において、前記環境認識手段は、車両前方の画像から混雑度合いを検出し、前記エンジンブレーキ補正手段は、前記混雑度合いが増大するにつれて、アクセルペダルを解放したときの変速比を増大する。
【0051】また、第41の発明は、前記第40の発明において、前記エンジンブレーキ補正手段は、前記混雑度合いが増大するにつれて、変速速度を増大する。
【0052】また、第42の発明は、前記第40の発明において、前記環境認識手段は、車両前方の画像から輝度分布の標準偏差を検出し、輝度分布の標準偏差の増大に応じて混雑度合いが増大する。
【0053】また、第43の発明は、前記第40の発明において、前記環境認識手段は、車両前方の画像から輝度の平均値を検出し、輝度平均値の減少に応じて混雑度合いが増大する。
【0054】また、第44の発明は、前記第40の発明において、前記環境認識手段は、車両前方の画像から縦・横のエッジの長さまたは輪郭線の本数を検出し、エッジの長さまたは輪郭線の本数の増大に応じて混雑度合いが増大する。
【0055】また、第45の発明は、前記第1の発明において、前記環境認識手段は、車両前方の赤外線画像から高輝度部分面積を検出し、この高輝度部分面積の増大に応じて混雑度合いが増大する。
【0056】
【発明の効果】したがって、本発明によれば、運転者が期待するエンジンブレーキ力(変速比、変速速度)は車両の走行状態だけでなく、走行環境、運転状態、道路状況などの要因に応じて常に変化しており、走行環境、運転状態または道路状況等の変化に応じてエンジンブレーキの特性を変更することによって、周囲の交通状況や道路状態あるいは運転者の心理状態に応じてエンジンブレーキ力を可変制御することで、運転者が期待する最適の値に設定することができ、前記従来例のように運転者へ違和感を与えることがなくなって、無駄変速機を備えた車両の運転性を大幅に向上させることが可能となるのである。また、環境の認識は、各状態を数値化することで、エンジンブレーキ力の制御、すなわち、変速比、変速速度の可変制御を行うため、円滑な制御特性を得ることができる。
【0057】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0058】図1は、無段変速機1の変速比を制御するCVTコントローラ2が、運転状態に基づいて自動的に変速比を設定する自動変速モードと、運転者の操作に応じて変速比を設定するマニュアルモードを備えたものに、本発明を適用した場合を示す。
【0059】無段変速機1は、Vベルトまたはトロイダルで構成されており、CVTコントローラ2は、シフトスイッチ12が自動変速モード(Dレンジ)であれば、車速センサ24が検出した車速VSPと、アクセル開度センサ21が検出したアクセルペダルの開度ACSの走行状態とに基づいて、目標変速比Rまたは目標入力軸回転数を決定しするとともに、減速力決定装置3が決定したエンジンブレーキ力となるように、目標変速比R及び変速速度等を決定する制御時定数Kの補正を行って、無段変速機1の変速比が目標変速比Rに一致するよう制御する。
【0060】一方、シフトスイッチ12がマニュアルモードであれば、運転者が操作したマニュアルスイッチ13(図中+または−)に基づいて、予め設定された複数の変速比(変速段)から目標変速比Rを設定し、無段変速機1の変速比が目標変速比Rに一致するよう制御する。
【0061】減速力決定装置3は、走行状態、道路状況、運転状態及び走行環境を検出して、運転者の期待するエンジンブレーキ力となるよう、目標変速比Rを補正する減速力補正指標Sと制御時定数Kを演算するものである。
【0062】ここで、減速力決定装置3へ入力あるいは演算される走行状態、道路状況、運転状態、走行環境の情報の一例について、それぞれ説明する。
【0063】[ 1.走行状態 ]車両の走行状態を示す情報としては、車速センサ24が検出した車速VSPと、アクセル開度センサ21が検出したアクセルペダルの開度ACSの現在値を用いる。
【0064】[ 2.道路状況 ]車両が走行中の道路状況としては、ナビゲーション装置7が検出した自車位置と、走行中の道路の幅2A、道路の種別2B(高速道路、一般道路等)等を用い、判定値としては、例えば、高速道路が0、一般道が1とする。
【0065】[ 3.運転状態 ]運転状態は、運転者の意図、すなわち運転操作や覚醒度を示し、例えば、以下に示すものを用いる。
【0066】3A:アクセル開度センサ21が検出した単位時間当たりのアクセル開度ACS変化量の平均値または分散値。
【0067】3B:操舵角センサ22が検出した単位時間当たりの操舵角の変化量の平均値または分散値。
【0068】3C:ブレーキ踏力センサ23が検出した単位時間当たりのブレーキの操作踏力の変化量の平均値または分散値。なお、ブレーキ踏力センサ23は、例えば、制動装置の液圧等から踏力相当値を検出するものであってもよい。
【0069】3D:覚醒度センサ9が検出した、運転者の覚醒度合い。なお、覚醒度センサ9としては、「自動車工学・1996年6月号」(鉄道日本社 発行)の第41、第42頁に開示されるように、運転者の瞼の開閉パターンから覚醒度を検出するもの等を用いればよく、判定値としては、例えば、覚醒状態が1、居眠り状態が0となる。
【0070】3E:ナビゲーション装置7が検出した走行中の道路の制限速度と、この制限速度に対する車速センサ24が検出した現在の車速VSPの差から検出した、運転者の急ぎ度合い。
【0071】3F:車速センサ24が検出した単位時間当たりの車速VSPの平均値。
【0072】3G:走行時間。例えば、図示しないイグニッションキーがONとなってからの経過時間で、時間の経過とともに増大する運転者の疲労を検出する。
【0073】[ 4.走行環境 ]走行環境は、ナビゲーション装置7が検出した自車位置及び道路状況以外に、運転者の操作に影響を与える周囲の環境を示し、例えば、以下に示すものを用いる。
【0074】4A:レーザービーム29を車両前方の路面へ照射して、その反射により路面の平滑度、すなわち、路面摩擦係数(または相当値)を検出する路面状態検出装置6からの路面摩擦係数。なお、路面状態検出装置6としては、例えば、「路面状況把握道路システムの開発」(平成8年度 走行支援道路システム技術研究開発 研究成果報告書 平成9年3月 発行 建設省土木研究所 高度道路交通システム研究室 技術研究組合 走行支援道路システム開発機構)の第5分冊第257頁〜第262頁に開示されるものが知られている。
【0075】4B:降雨、降雪センサ30からの降雨、降雪信号。降雨または降雪が検出されると、路面摩擦係数の低下を判定する。なお、降雨、降雪センサ30としては、例えば、図示しないワイパースイッチがONとなったときを降雨、さらに、外気温が所定値未満の場合には降雪と判定するもので、この他、水滴センサなどを用いてもよい。
【0076】4C:道路情報受信装置8が受信した、周囲の交通状況や路面状況で、例えば、走行予定経路上の渋滞や路面の凍結などを検出する。なお、道路情報受信装置8としては、VICSや「最先端の通信方式を利用した道路システムに関する研究」(平成8年度 走行支援道路システム技術研究開発 研究成果報告書 平成9年3月 発行 建設省土木研究所 高度道路交通システム研究室 技術研究組合 走行支援道路システム開発機構)の第9分冊第33頁に開示されるビーコン/LCX(漏洩同軸ケーブル)が知られている。
【0077】4D:照度センサ27が検出した車外の照度に基づいて、昼間、夜間の判定を行う。
【0078】4E:照度センサ27が検出した単位時間当たりの車外の照度の変化量から、トンネル等を検出する。
【0079】4F:車両前方を走査するレーダ28によって、距離測定装置5が検出した車間距離に基づいて、周囲の交通の混雑度合いを検出する。なお、レーダ28としては、ミリ波レーダやレーザレーダ等を用いればよい。
【0080】4G:撮像素子25が検出した車両前方の画像を、画像処理装置4にて線形1次空間微分フィルタ等の差分フィルタによって輪郭または線を検出し、輪郭の縦・横エッジの長さや検出した線の本数を演算する。減速力決定手段3は演算された線の本数、縦・横のエッジの長さに基づいて、走行中の道路の混雑度合いを判定する。なお、撮像素子25としては、CCD等を用いればよい。
【0081】4H:撮像素子25が検出した車両前方の画像を、画像処理装置4にて輝度分布の標準偏差を求め、減速力決定手段3では演算された輝度分布の標準偏差に基づいて、走行中の道路の混雑度合いを判定する。
【0082】4H’:撮像素子25が検出した車両前方の画像を、画像処理装置4にて輝度分布の輝度平均値を求め、減速力決定手段3では演算された輝度平均値に基づいて、走行中の道路の混雑度合いを判定する。
【0083】4I:赤外線センサ26が検出した車両前方の画像を、画像処理装置4にて高輝度部分(輝度が所定値を超える部分)の総面積を演算し、減速力決定手段3では演算された高輝度部分総面積の大小に基づいて、走行中の道路の混雑度合いを判定する。
【0084】ここで、上記4G〜4Iの画像処理では、車両前方道路上の物体の混雑度を検出するもので、例えば、道路前方の車両や自転車の数が増大すると、混雑度も増大し、また、車道と歩道が明確に区別されていない道路では、駐車車両、歩行者等の増大に応じて混雑度が増大する。加えて、交差点や多数の標識、あるいは屈曲路等では前方視界中に多くの物体が存在するため、これらも混雑度を増大させる要因となる。
【0085】そして、混雑要因が存在すると、上記4Gでは縦横エッジの長さが増大し、あるいは線数が増大し、上記4Hでは輝度の標準偏差が大きくなるとともに、輝度平均値は低下し、また、上記4Iでは赤外線による高輝度部分の面積が増大することから、減速力決定手段3ではこれらの値の増大に伴って混雑度の増大を判定することができるのである。
【0086】4J:個人情報入力装置10では、運転者のICカード40を読み込んで、運転者の運転経験(年数や累計走行距離)等の個人情報を検出する。なお、ICカード40を用いて制御特性を変更するものとしては、例えば、特開平7−108883号公報、特開平6−199191号公報、特開平5−3966号公報等が知られている。
【0087】4K:運転情報入力装置11は、タッチパネル等から運転者の操作により運転や車両状態に関する情報が入力され、例えば、乗車人数や、運転者の好みに応じた設定(エンジンブレーキの強弱等)が設定される。
【0088】4L:ナビゲーション装置7が経路誘導をしているか否かを判定し、経路誘導をしていれば、走行している道路の走行経験が少ないと推定できるため、例えば、判定値は、経路誘導ありのときに1、無しのときに0とする。
【0089】4M:ナビゲーション装置7が検出した現在走行中の道路の走行経験、すなわち、現在走行中の道路の走行回数等を検出し、経路誘導が行われていない場合でも、現在走行中の道路の走行経験を判定する。なお、ナビゲーション装置7は、走行したことのある道路の情報を、走行の有無、走行回数または走行頻度などとして記憶している。
【0090】減速力決定装置3は、上記走行状態、道路状況、運転状態及び走行環境から、運転者の期待するエンジンブレーキ力となるよう、目標変速比Rを補正する減速力補正指標Sと制御時定数Kを演算する次に、減速力決定装置3及びCVTコントローラ2で行われる制御の一例について、図2のフローチャートを参照しながら詳述する。なお、このフローチャートは、アクセルペダルが解放されてエンジンブレーキが作用するときに実行されるものである。
【0091】まず、ステップS1では、マニュアルスイッチ13の状態から現在マニュアルモードであるか否かを判定し、マニュアルモードであれば、エンジンブレーキ力は運転者が決定するため、ステップS9へ進んで、マニュアルスイッチ13で設定された変速段に対応する目標変速比R及び時定数Kを予め設定されたマップから選択する。
【0092】一方、現在の変速モードがDレンジ等の自動変速モードである場合には、ステップS2へ進んで、路面状態検出装置6からの路面摩擦係数または相当値が所定値以下であれば、走行中の路面が低μ路であると判定してステップS6へ進む一方、そうでない場合には、ステップS3へ進む。なお、ステップS2の低μ路の判定は、上記4Cに示したように、道路情報受信装置8が受信した周囲の路面状況に基づいてもよい。
【0093】ステップS6では、通常の変速制御による目標変速比R=Rg及び時定数K=K1に設定し、エンジンブレーキ力及び変速速度を最小にして、低μ路での駆動輪のスリップを防いで車両の安定性を確保する。
【0094】ステップS3では、降雨、降雪センサ30の出力から、降雨、降雪が判定されると、路面摩擦係数がさらに低下するため、上記ステップS2と同様に、ステップS6へ進んでエンジンブレーキ力を抑制する一方、そうでない場合には、ステップS4へ進む。
【0095】次に、ステップS4では、上記4Lに示したように、ナビゲーション装置7が経路誘導をしているか否かを判定し、経路誘導をしていれば、走行している道路の走行経験が少ないと推定できるため、ステップS7へ進んで、現在の運転状態で設定可能な最Lo変速比に対応した目標変速比R=Rdと、変速速度が最大となるよう時定数K=K0に設定し、エンジンブレーキ力及び変速速度を増大して、アクセルペダルの変化に対して迅速にエンジンブレーキを作動させるように設定される。
【0096】ここで、ナビゲーション装置7が経路誘導を行っている場合には、よく知らない道路を走行していると推定でき、このような走行環境では、前方の道路状況を予見できないため、アクセルペダルを解放したときに迅速かつ確実にエンジンブレーキが効くことを運転者が期待するためである。
【0097】そして、目標変速比Rの補正量ΔRは、図6に示すように、アクセル開度ACS=0/8になったときの無段変速機1の入力軸回転数Ntを、通常の変速制御のライン(ΔR=0)から、所定の最大値ΔRmaxに対応した回転数Nt(ΔRmax)までの範囲Nt(ΔR)内で任意に設定されるもので、ここでは、車速VSPが所定の範囲のときに、所定の入力軸回転数Ntとなるように設定したものである。
【0098】また、目標変速比Rまでの変速速度を制御する時定数Kは最小値K0に設定されて、アクセルペダルが解放されたときの変速速度が最大となって、即座に目標変速比Rへ向けて変速が行われる。
【0099】一方、ステップS4の判定で、ナビゲーション装置7が経路誘導を行っていない場合には、ステップS5へ進んで、上記各種入力信号を読み込むとともに、平均値、分散値などの演算処理を行ってから各種入力信号の値に基づいて減速力補正指標Sと時定数Kを求める。
【0100】減速力補正指標Sは、S=1のときにエンジンブレーキ力の補正量ΔRを最大値ΔRmaxに設定して、目標変速比R=Rd、すなわち、図6において、目標入力軸回転数NtをNt(ΔRmax)に設定する一方、S=0のときには、エンジンブレーキ力を最小に設定するため、通常の変速制御に応じた目標変速比Rg、すなわち、図6において、アクセル開度ACS=0/8の線に沿った値に設定される。
【0101】また、時定数Kは、K0のときに変速速度を最大に設定する一方、K1のときには、通常の変速制御による所定の時定数に設定して、変速速度を最小に設定する。
【0102】ここで、減速力補正指標Sの演算は、図3に示すような、増加関数faまたは減少関数fbによって設定され、これら関数fa、fbと各入力信号の関係は、例えば、次のように設定されている。
【0103】[増加関数faを用いる信号]
2B:道路の種別3A:単位時間当たりのアクセル開度ACS変化量の平均値または分散値。
【0104】3B:単位時間当たりの操舵角の変化量の平均値または分散値。
【0105】3C:単位時間当たりのブレーキの操作踏力の変化量の平均値または分散値。
【0106】3E:道路の制限速度と、現在の車速VSPの差。
【0107】3G:走行時間。
【0108】4E:単位時間当たりの車外の照度の変化量。
【0109】4G:車両前方の画像の輪郭の縦・横エッジの長さ、または線の本数4H:車両前方の画像の、輝度分布の標準偏差または輝度平均値。
【0110】4I:赤外線センサによる車両前方画像の、高輝度部分総面積。
【0111】[減少関数fbを用いる信号]
2A:道路の幅3D:運転者の覚醒度合い3F:単位時間当たりの車速VSPの平均値。
【0112】4D:車外の照度。
【0113】4F:車両前方の車間距離4J:運転者の運転経験(年数や累計走行距離)。
【0114】4K:乗車人数。
【0115】4M:現在走行中の道路の走行回数。
【0116】なお、図3においては、説明を簡易にするため単一の増加関数fa、減少関数fbを示したが、実際には、各入力信号毎に減速力補正指標Sとの関係を定めた関数またはマップが設定されるのである。
【0117】次に、時定数Kの演算は、図4に示すような、増加関数taまたは減少関数tbによって設定され、これら関数ta、tbにより設定される入力信号と時定数Kの関係は、例えば、次のように設定されている。
【0118】[増加関数taを用いる信号]
2A:道路の幅3D:運転者の覚醒度合い4D:車外の照度。
【0119】3F:単位時間当たりの車速VSPの平均値。
【0120】4F:車両前方の車間距離4J:運転者の運転経験(年数や累計走行距離)。
【0121】4K:乗車人数。
【0122】4M:現在走行中の道路の走行回数。
【0123】[減少関数tbを用いる信号]
2B:道路の種別3A:単位時間当たりのアクセル開度ACS変化量の平均値または分散値。
【0124】3B:単位時間当たりの操舵角の変化量の平均値または分散値。
【0125】3C:単位時間当たりのブレーキの操作踏力の変化量の平均値または分散値。
【0126】3E:道路の制限速度と、現在の車速VSPの差。
【0127】3G:走行時間。
【0128】4E:単位時間当たりの車外の照度の変化量。
【0129】4G:車両前方の画像の輪郭の縦・横エッジの長さ、または線の本数4H:車両前方の画像の、輝度分布の標準偏差または輝度平均値。
【0130】4I:赤外線センサによる車両前方画像の、高輝度部分総面積。
【0131】なお、図4においては、説明を簡易にするため単一の増加関数ta、減少関数tbを示したが、実際には、各入力信号毎に時定数Kとの関係を定めた関数またはマップが設定されるのである。
【0132】上記より、各入力信号のうちの少なくとも一つから減速力補正指標S及び時定数Kを求めてから、ステップS8へ進み、次式によって、運転者の期待に応じたエンジンブレーキ力となる目標変速比R1を演算する。
【0133】
【数1】

【0134】ただし、R0はアクセルペダルを解放したときの変速比である。
【0135】こうして、ステップS6〜S9で目標変速比R及び時定数Kを求めてから、ステップS10で、これら目標変速比R及び時定数Kによって無段変速機1の変速比を制御する。
【0136】上記ステップS1〜S10を所定時間毎、例えば、10msec毎に実行することにより、道路状況や走行状態に加えて、運転状態や走行環境によって変化するエンジンブレーキ力を、運転者の期待に応じて設定することができる。
【0137】すなわち、変速モードが自動変速モードのときには、アクセルペダルが解放されてアクセル開度ACS=0/8となったときに、低μ路または降雨、降雪が判定されると、目標変速比Rと時定数Kは通常変速制御の値Rg、K1に設定されて、このとき、目標変速比Rgに対応する無段変速機1の目標入力軸回転数Ntは、図6のACS=0/8に沿った最も低い値に設定されて、低μ路の走行に対応してエンジンブレーキ力が抑制され、過大なエンジンブレーキによる駆動輪の空転を防止することができ、車両の安定性を確保することができる。
【0138】一方、ナビゲーション装置7が経路誘導中であれば、走行している道路の走行経験が少ないと推定できるため、アクセルペダルが解放されてアクセル開度ACS=0/8となったときには、現在の運転状態で設定可能な最Lo変速比に対応した目標変速比R=Rdに設定するとともに、変速速度が最大となるよう時定数K=K0に設定し、このとき、目標変速比Rdに対応する無段変速機1の目標入力軸回転数Ntは、図6のNt(ΔRmax)に沿った最も高い値に設定されて、エンジンブレーキ力及び変速速度を最大として、アクセルペダルの変化に対して迅速にエンジンブレーキを作動させ、不慣れな道路での運転性を向上させることができる。
【0139】そして、経路誘導をしていない状態で、路面摩擦係数が所定値以上で降雨、降雪がない場合には、ステップS5以降で、前記従来例のような道路状況、走行状態に加えて、運転状態と走行環境を加味して、エンジンブレーキ力の補正が行われる。
【0140】ここで、運転状態として、上記3Aに示したように、アクセル開度センサ21が検出した単位時間当たりのアクセル開度ACS変化量の平均値(または分散値)3Aによって、エンジンブレーキ力の制御を行う場合について説明する。
【0141】まず、ステップS5で演算されたアクセルペダルが解放される直前の単位時間当たりのアクセル開度ACS変化量の平均値3Aによって、ステップS8では、図3の増加関数faによって、アクセル開度ACS変化量の平均値3Aが大きければ、減速力補正指標Sは大きく(1に近づく方向)設定される一方、平均値3Aが小さければ、減速力補正指標Sは小さく(0に近づく方向)設定され、目標変速比R1は、図6において、減速力補正指標Sが大きければ、目標入力軸回転数Nt(ΔRmax)に対応した値に設定される一方、減速力補正指標Sが小さければ、目標入力軸回転数NtはACS=0/8の線に対応した値に設定される。したがって、変化量の平均値3Aが大きければ減速力補正指標Sも大きく設定されて、目標変速比R1も大きく(Lo側)に補正される。
【0142】そして、アクセル開度の変化量平均値3Aが大きい場合には、混雑した道路や山岳路などのように加減速が大きい運転をしており、運転者は車両を迅速に制御しようとしており、運転者の運転操作に対する変速比変化は高いゲインが要求される。
【0143】そこで、図4の減少関数tbによって、時定数Kを設定すれば、変化量の平均値3Aが大きくなるほど、時定数Kは小さく(K=K0側)に設定される一方、平均値3Aが小さければ時定数Kは大きく(K=K1側)に設定される。
【0144】こうして、図5に示すように、目標変速比R1は、アクセル開度変化量の平均値3Aが大きいほどΔRmaxを上限としてエンジンブレーキ力が増大するとともに、時定数Kの減少によって変速速度も増大して、周囲の交通状況や道路状態によって変化する運転者の期待に応じたブレーキ力を最適の値に可変制御することができるのである。
【0145】以下、各入力信号と減速力補正指標S及び時定数Kの関係についてそれぞれ説明する。
【0146】2A:道幅ナビゲーション装置7が検出した走行中の道路の幅2Aが大きければ、視野が広く危険回避のための走行経路の変更を容易にできるため、減少関数fbによって減速力補正指標Sを小さく設定するとともに、増加関数taによって時定数Kを大きく設定する。
【0147】一方、道路の幅2Aが狭ければ、視野は狭くなって危険回避のための時間が減少するため、減速力補正指標Sを大きく設定してエンジンブレーキ力を増大させるとともに、時定数Kを小さくして変速速度を大きく設定する。
【0148】2B:道路の種別高速道路(2B=0)では、車速VSPが大きいため、増加関数fa、taによって、減速力補正指標Sを小さく設定してエンジンブレーキ力を低下させるとともに、時定数Kを大きくして変速速度を小さく設定する。一方、一般道(2B=1)では、減速力補正指標Sを大きく設定してエンジンブレーキ力を増大させるとともに、時定数Kを小さくして変速速度を大きく設定する。
【0149】3B:単位時間当たりの操舵角の変化量の平均値または分散値操舵角変化量3Bが大きい場合も、上記アクセル開度変化量の平均値3Aと同様に混雑した道路や山岳路などのように加減速が大きい運転をしており、増加関数faによって減速力補正指標Sを大きく設定するとともに、減少関数tbによって、時定数Kを小さくして変速速度を大きく設定する。
【0150】3C:単位時間当たりのブレーキの操作踏力の変化量の平均値または分散値ブレーキの操作踏力の変化量3Cが大きい場合は、上記アクセル開度変化量の平均値3Aと同様に混雑した道路や山岳路などのように加減速が大きい運転をしており、増加関数faによって減速力補正指標Sを大きく設定するとともに、減少関数tbによって、時定数Kを小さくして変速速度を大きく設定する。
【0151】3D:覚醒度運転者の覚醒度が低い場合(3D=0)には、居眠り状態と判定できるため、減少関数fbによって減速力補正指標Sを大きく設定するとともに、増加関数taによって、時定数Kを小さくして変速速度を大きく設定し、大きな減速力によって覚醒を促す。
【0152】3E:制限速度と車速VSPの差ナビゲーション装置7が検出した制限速度と、現在の車速VSPの差が大きい場合には、運転者が急いで運転をしている状態と判定できるため、増加関数faによって減速力補正指標Sを大きく設定するとともに、減少関数tbによって、時定数Kを小さくして変速速度を大きく設定する。一方、この差が0近傍または負の場合には、ゆっくり運転をしていると判定できるため、上記関数に基づいて、減速力補正指標Sを小さく設定するとともに、時定数Kを大きくして変速速度を小さく設定する。
【0153】3F:車速VSPの平均値車速VSPが大きい場合には、減少関数fbによって減速力補正指標Sを小さくしてエンジンブレーキ力を低く設定するとともに、増加関数taによって、時定数Kを大きくして変速速度を小さく設定する。
【0154】3G:走行時間。
【0155】イグニッションキーがONとなってからの経過時間が大きくなると、時間の経過によって運転者の疲労も増大するため、増加関数faによって減速力補正指標Sを大きくしてエンジンブレーキ力を増大するとともに、減少関数tbによって、時定数Kを小さくして変速速度を大きく設定する。
【0156】4D:照度車外の照度が大きい場合には、昼間あるは照明の多い環境で運転していると判定できるため、減少関数fbによって、減速力補正指標Sを小さくしてエンジンブレーキ力を抑止するとともに、増加関数taによって、時定数Kを大きくして変速速度を小さく設定する。
【0157】一方、照度の低下する夜間などでは、同一の道路であっても視野が縮小するため慎重に運転する傾向があるので、減速力補正指標Sを大きくしてエンジンブレーキ力を増大するとともに、時定数Kを小さくして変速速度を大きく設定する。
【0158】4E:照度変化量単位時間当たりの車外の照度の変化量が大きい場合には、トンネル等を走行中と判定でき、トンネル内等では慎重に運転する傾向があるので、増加関数faによって、減速力補正指標Sを大きくしてエンジンブレーキ力を増大するとともに、減少関数tbによって、時定数Kを小さくして変速速度を大きく設定する。
【0159】4F:車間距離車間距離が小さい場合には混雑路や渋滞路等を走行していると判定でき、車間距離が小さい場合には、減少関数fbによって、減速力補正指標Sを大きくしてエンジンブレーキ力を増大するとともに、増加関数taによって、時定数Kを小さくして変速速度を大きく設定する。
【0160】4G:車両前方画像の縦・横エッジの長さまたは線の本数エッジの長さや輪郭線の本数が増大するということは、上記したように、前方道路の車両、自転車または歩行者や駐車車両、標識、建造物などの物体が多い状態で、混雑要因が増大することである。
【0161】したがって、車両前方画像の縦・横エッジの長さまたは線の本数が増大すると、前方道路が混雑していると判定できるため、増加関数faによって減速力補正指標Sを大きく設定してエンジンブレーキ力を大きくするとともに、減少関数tbによって、時定数Kを小さくして変速速度を大きく設定する。逆に、エッジの長さや輪郭線の本数が小さい場合では、前方道路の混雑要因が少ないと判定でき、減速力補正指標Sを小さくしてエンジンブレーキ力を低減するとともに、時定数Kを大きくして変速速度を小さく設定する。
【0162】4H:車両前方画像の輝度の標準偏差車両前方の画像から検出した輝度の標準偏差は、上記画像の縦・横エッジや輪郭線本数などと同様に、物体の数が増大すると輝度の標準偏差が増大する。物体の数の増大は上記と同様に、前方道路の混雑度合いの増大を意味するため、輝度の標準偏差を信号値とし、輝度標準偏差が大きい場合には、増加関数faによって減速力補正指標Sを大きく設定してエンジンブレーキ力を大きくするとともに、減少関数tbによって、時定数Kを小さくして変速速度を大きく設定する。逆に、輝度の標準偏差が小さい場合では、前方道路の混雑要因が少ないと判定でき、減速力補正指標Sを小さくなってエンジンブレーキ力が低減されるとともに、時定数Kを大きくして変速速度を小さく設定する。
【0163】4H’:車両前方画像の輝度平均値車両前方の画像から検出した輝度の平均値は、物体の数が増大すると輝度の平均値が低下する傾向がある。物体の数の増大は上記と同様に、前方道路の混雑度合いの増大を意味するため、輝度平均値を信号値とし、輝度平均値が小さい場合には混雑路を走行中と判定して、減少関数fbによって減速力補正指標Sを大きく設定してエンジンブレーキ力を大きくするとともに、増加関数taによって、時定数Kを小さくして変速速度を大きく設定する。
【0164】逆に、輝度平均値が大きい場合では、前方道路の混雑要因が少ないと判定でき、減速力補正指標Sは小さくなってエンジンブレーキ力が低減されるとともに、時定数Kが大きくなって変速速度が小さくなる。
【0165】4I:赤外線画像の高輝度部分の総面積赤外線画像の高輝度部分総面積は、物体の数が増大すると増大する傾向があるため、赤外線画像の高輝度部分総面積を信号値とし、高輝度部分総面積が大きい場合には、増加関数faによって減速力補正指標Sを大きく設定してエンジンブレーキ力を大きくするとともに、減少関数tbによって、時定数Kを小さくして変速速度を大きく設定する。逆に、高輝度部分総面積が小さい場合では、前方道路の混雑要因が少ないと判定でき、減速力補正指標Sは小さくなってエンジンブレーキ力が低減されるとともに、時定数Kを大きくして変速速度を小さく設定する。
【0166】4J:運転経験個人情報入力装置10から検出した運転者の運転経験(年数や累計走行距離)は、初心者ほどエンジンブレーキの強さを期待する傾向があるため、運転年数や累計走行距離を信号値として、減少関数fb及び増加関数taを用いれば、初心者ではエンジンブレーキ力が大きくかつ迅速に作用するようになり、経験者であればエンジンブレーキ力が低減され、かつ緩やかに作用することになる。
【0167】4K:乗車人数運転情報入力装置11で入力された乗車人数は、その数が大きくなるほど大きな加減速度によって、車両の挙動がぎくしゃくするのを防ぐため、運転年数や累計走行距離を信号値として、減少関数fb及び増加関数taを用いれば、搭乗者数が増大すると、エンジンブレーキ力及び変速速度が抑制される一方、搭乗者数が減少すると、エンジンブレーキ力及び変速速度が増大する。
【0168】4M:道路の走行経験ナビゲーション装置7が検出した、現在走行中の道路の走行回数(または頻度)を信号値として、減少関数fbと増加関数taを用いることで、走行回数の多い既知の道路では、エンジンブレーキ力及び変速速度が低く設定される一方、走行回数の少ない、あるいは初めて走行する道路では、エンジンブレーキ力及び変速速度が低く設定される。
【0169】以上のように、運転状態と走行環境を数値化して認識し、エンジンブレーキの際に変速比を補正する減速補正力指標Sと、変速速度を決定する時定数Kを演算することで、走行状態や道路状況に加えて、運転状態や走行環境を加味してエンジンブレーキ力と変速速度を決定することが可能となって、運転者の期待に応じたエンジンブレーキ力を得ることができ、無段変速機を備えた車両の運転性を大幅に向上させることができるのである。
【0170】なお、上記各信号をすべて、あるいは一部を利用する際には、減速力補正指標Sと時定数Kの平均値、分散値あるいは標準偏差等から、減速力補正指標S及び【0171】時定数Kを求め、上記【数1】から目標変速比R1を求めればよい。
【0172】また、エンジンブレーキ力の制御を、図6に示すように、ACS=0/8の変速線で決まる目標入力軸回転数Nt(ΔR=0)からNt(ΔRmax)の範囲ΔRないで設定したが、これに限定されることはなく、例えば、アクセルペダルを解放する直前の入力軸回転数の所定割合(例えば、60%)を、エンジンブレーキ制御で用いる最大の目標入力軸回転数Nt(ΔRmax)としてもよい。
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成10年(1998)2月9日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜 (外1名)
【公開番号】 特開平11−230322
【公開日】 平成11年(1999)8月27日
【出願番号】 特願平10−27514