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【発明の名称】 プーリユニット
【発明者】 【氏名】寺田 忠弘

【氏名】田積 一

【氏名】中川 義崇

【氏名】北村 昌之

【氏名】田仲 康人

【要約】 【課題】一方向クラッチを内蔵するプーリユニットにおいて、一方向クラッチのトルク容量を下げることなくプーリ幅の短縮化が可能な構造とすること。

【解決手段】一方向クラッチ3の内・外輪10,11の軸方向幅をころ13の有効軌道幅に対応して設定し、一方向クラッチ3において内・外輪10,11の軸方向両側からはみ出す保持器12の軸方向両端部分を一方向クラッチ3の両側の転がり軸受4,4の内部において転動体22群の近傍位置にまで挿入している。これにより、一方向クラッチ3のトルク容量を確保したうえで、プーリ幅を可及的に小さく設定できるようになる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 同心状に配設される内外2つの環体と、両環体の間の環状空間に介装される一方向クラッチと、前記環状空間において一方向クラッチの両側に設けられる転がり軸受とを含むプーリユニットであって、前記一方向クラッチに備えるころの転動案内部の軸方向幅が、該ころの有効軌道幅に対応して設定されているとともに、一方向クラッチに備えるころ保持用の保持器の軸方向両端部分が、前記転がり軸受内部において転動体群の近傍位置にまで挿入されている、ことを特徴とするプーリユニット。
【請求項2】 同心状に配設される内外2つの環体と、両環体の間の環状空間に介装される一方向クラッチと、前記環状空間において一方向クラッチの両側に設けられる転がり軸受とを含むプーリユニットであって、前記一方向クラッチが、内・外輪と、複数のころと、円周数カ所に径方向内外に貫通するころ収納用ポケットを有する環状の保持器と、各ころをロック側に弾発付勢する弾発付勢手段とを含み、前記両転がり軸受が、内・外輪と、複数の玉と、冠形保持器とを含み、前記環状空間に対して各冠形保持器の環状本体部を前記環状空間の外側に配置した状態で組み込まれており、前記一方向クラッチの内・外輪のころ転動案内部の軸方向幅が、一方向クラッチのころの有効軌道幅に対応して設定されているとともに、一方向クラッチの保持器の軸方向両端部分が、前記転がり軸受の内・外輪間において玉群の近傍位置にまで挿入されている、ことを特徴とするプーリユニット。
【請求項3】 請求項2に記載のプーリユニットにおいて、前記一方向クラッチの外輪と前記転がり軸受の外輪とが、一体に形成されている、ことを特徴とするプーリユニット。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、一方向クラッチおよび転がり軸受を内蔵したプーリユニットに関する。このプーリユニットは、例えば自動車などにおけるエンジンのクランクシャフトからベルトを介して駆動される補機に装備することができる。補機としては、例えば自動車のエアコンディショナ用コンプレッサ、ウォーターポンプ、オルタネータ、冷却ファンなどが挙げられる。
【0002】
【従来の技術】従来のこの種のプーリユニットの一例として、本願出願人は、図7に示すようなものを提案している。
【0003】このプーリユニットBは、ベルト36により回転駆動される外側環体31と、上記補機などの入力軸に連結される内側環体32とが同心状に配設され、両環体31,32の間の環状空間に、一方向クラッチ33と、2つの転がり軸受34とが配設されている。動作としては、外側環体31と内側環体32との回転差に応じて、一方向クラッチ33がフリー状態とロック状態とに切り換わり、外側環体31から内側環体32への回転動力を遮断したり伝達したりする。
【0004】前述の一方向クラッチ33は、複数のころ37と、各ころ37を収納するポケット39を円周数カ所に有する環状の保持器38と、保持器38の外周に配設される外輪40と、保持器38の内周に配設される内輪42と、各ころ37をロック側に弾発付勢する図示しないバネとを含む構造になっている。なお、外輪40の内周面あるいは内輪42の外周面の円周数カ所に、くさび状空間を形成するカム面(図示省略)が形成される。
【0005】また、転がり軸受34は、一般的な深溝型玉軸受が使用されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記従来のプーリユニットBは、外側環体31と内側環体32との径方向対向空間に、既存の独立した一方向クラッチ33と転がり軸受34,34とを組み込んだ単純な構造になっている。
【0007】ここで、例えばプーリユニットBの使用対象を自動車エンジンの補機とする場合だと、自動車のエンジンルーム内でのプーリユニットBの設置場所が自動車製作側の都合で決定されるため、プーリユニットBの特に軸方向の設置スペースが制約されることがある。そのような状況では、プーリユニットBを設置できなくなることがあるため、プーリユニットBの軸方向幅W2(プーリ幅)を短縮する必要がある。
【0008】但し、プーリユニットBの一方向クラッチ33については、ころ37の有効軌道幅を短くすると、トルク容量が下がることになり、また、保持器38の軸方向幅を詰めると、強度が低下することになるなど、この一方向クラッチ33の軸方向幅を所要寸法以上短くすることはできない。一方、転がり軸受34についても、その軸方向外側にシール部材を装着する必要があるので、軸方向幅を短くすることは困難である。
【0009】したがって、本発明は、一方向クラッチを内蔵するプーリユニットにおいて、一方向クラッチのトルク容量を下げることなくプーリ幅の短縮化が可能な構造とすることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に係るプーリユニットは、同心状に配設される内外2つの環体と、両環体の間の環状空間に介装される一方向クラッチと、前記環状空間において一方向クラッチの両側に設けられる転がり軸受とを含むもので、前記一方向クラッチに備えるころの転動案内部の軸方向幅が、該ころの有効軌道幅に対応して設定されているとともに、一方向クラッチに備えるころ保持用の保持器の軸方向両端部分が、前記転がり軸受内部において転動体群の近傍位置にまで挿入されている。
【0011】本発明の請求項2に係るプーリユニットは、同心状に配設される内外2つの環体と、両環体の間の環状空間に介装される一方向クラッチと、前記環状空間において一方向クラッチの両側に設けられる転がり軸受とを含むもので、前記一方向クラッチが、内・外輪と、複数のころと、円周数カ所に径方向内外に貫通するころ収納用ポケットを有する環状の保持器と、各ころをロック側に弾発付勢する弾発付勢手段とを含み、前記両転がり軸受が、内・外輪と、複数の玉と、冠形保持器とを含み、前記環状空間に対して各冠形保持器の環状本体部を前記環状空間の外側に配置した状態で組み込まれており、前記一方向クラッチの内・外輪のころ転動案内部の軸方向幅が、一方向クラッチのころの有効軌道幅に対応して設定されているとともに、一方向クラッチの保持器の軸方向両端部分が、前記転がり軸受の内・外輪間において玉群の近傍位置にまで挿入されている。
【0012】本発明の請求項3に係るプーリユニットは、上記請求項2において、一方向クラッチの外輪と前記転がり軸受の外輪とが、一体に形成されているものとしている。
【0013】以上、本発明では、一方向クラッチのころ転動案内部の軸方向幅をころの有効軌道幅に対応して設定し、一方向クラッチにおいてころ転動案内部の軸方向両側からはみ出す保持器の軸方向両端部分を一方向クラッチの両側の転がり軸受の内部に挿入させている。このように、一方向クラッチと転がり軸受とを互いの機能を損なわない状態で合体させることにより、一方向クラッチのころの有効軌道幅を小さくすることなく、プーリ幅を可及的に短く設定できるようになる。
【0014】特に、請求項3のように、一方向クラッチと転がり軸受との間で構成要素を共用化すれば、使用部品点数および組立作業を減らすことができる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の詳細を図1ないし図6に示す実施形態に基づいて説明する。
【0016】図1ないし図4は本発明の一実施形態にかかり、図1は、プーリユニットの上半部を示す縦断側面図、図2は、図1の一方向クラッチの縦断正面図、図3は、図2に示す保持器のポケット部分の展開平面図、図4は、図2に示す保持器の斜視図である。
【0017】図例のプーリユニットAは、同心状に配設される内外2つの環体1,2と、両環体1,2の間の環状空間に介装される一方向クラッチ3と、前記環状空間において一方向クラッチ3の軸方向両側に配設される2つの転がり軸受4とを備えている。動作としては、外側環体1と内側環体2との回転差に応じて、一方向クラッチ3がフリー状態とロック状態とに切り換わり、外側環体1から内側環体2への回転動力を遮断したり伝達したりする。
【0018】以下、上記各構成要素を詳細に説明する。
【0019】外側環体1の外周にはベルト巻き掛け用の周溝が波状に形成されており、この外側環体1が、例えば自動車のクランクシャフトにより多連形のVベルト5を介して回転駆動されるようになっている。また、内側環体2は、スリーブ状の部材からなり、図示しないが自動車の補機の入力軸(例えばオルタネータのロータ)に外嵌固定される。
【0020】一方向クラッチ3は、外周面の円周数カ所に平坦なキー状のカム面10aが設けられた内輪10と、内輪10の外周に所要間隙を介して嵌合される外輪11と、カム面10aに対応する位置に径方向内外に貫通するポケット12aが設けられた保持器12と、保持器12の各ポケット12aに1つずつ収納される複数のころ13と、保持器12の各ポケット12aに1つずつ圧縮状態で収納されかつ伸張復元力でころ13をカム面10aと外輪11の内周面とで形成するくさび状空間の狭い側(ロック側)へ弾発付勢するコイルバネ14とを備えている。
【0021】なお、保持器12は、内輪10に対して周方向ならびに軸方向への動きが封じられた状態で固定されている。つまり、内輪10の周方向一端面の180度対向する2カ所には、軸端に向けて開放されるとともに径方向内外に開放するスリット状の凹部10bが、また、保持器12の周方向で隣り合うポケット12a間の柱部の内周には、前記凹部10bに軸方向から圧入嵌合される一対の凸部12bがそれぞれ設けられており、これらの嵌合によって保持器12が内輪10に固定されている。
【0022】また、コイルバネ14は、バネ線材を長方形に巻回した角巻きバネが用いられ、保持器12のポケット12aの内面に一体形成される突起12cに対して外嵌装着されることによって、内輪10のカム面10aに対して略平行な姿勢とされている。コイルバネ14の一端は突起12cの基部に形成された周溝12dに係止嵌合されている。
【0023】2つの転がり軸受4,4は、いずれも、内輪20,外輪21、複数の玉からなる転動体22、冠形保持器23を有する一般的な深溝型玉軸受からなり、内・外輪20,21間の軸方向外端側にのみオイルシール24が装着されている。この2つの転がり軸受4,4のオイルシール24,24でもって当該軸受内部および一方向クラッチ3の内部を密封するようになっていて、それらを共通の潤滑剤で潤滑させるようにしている。
【0024】次に、本発明の特徴について説明する。つまり、一方向クラッチ3の内・外輪10,11の軸方向幅を、ころ13の有効軌道幅(両端の面取り部分を除いた領域の幅)とほぼ同じかあるいは若干大きい寸法にと、一般的なものに比べて大幅に短く設定し、それによって内・外輪10,11の軸方向両側からはみ出す保持器12の軸方向両端部分を、転がり軸受4,4の内・外輪20,21間において転動体22群の近傍位置にまで挿入している。転がり軸受4,4は、内外環体1,2間の環状空間に対して、各冠形保持器23の環状本体部を軸方向外端側に配置した状態で組み込まれている。
【0025】このように、一方向クラッチ3と転がり軸受4,4とを互いの機能を損なわない状態で合体させるようにして、一方向クラッチ3のころ13の有効軌道幅を小さくすることなく、プーリ幅W1の短縮化を実現できるようになった。
【0026】このようなプーリユニットAであれば、特に軸方向での占有スペースを小さくできるので、例えば自動車のエンジンの補機に用いる場合のように設置スペースが制約されるような場合に有利となる。
【0027】なお、本発明は上記実施形態にのみ限定されるものではなく、種々な応用や変形が考えられる。
【0028】(1) 例えば図5に示すように、一方向クラッチ3の外輪11の軸方向両側に薄肉の延長部分11a,11bを設け、この延長部分11a,11bの内周に両転がり軸受4,4を圧入嵌合させるように構成し、一方向クラッチ3と2つの転がり軸受4,4とを一体的に取り扱えるようにしてもよい。
【0029】(2) 上記実施形態において、一方向クラッチ3の外輪11と転がり軸受4,4の外輪21,21とを一体に形成することができる。この場合には、使用部品点数および組立作業を減らせるようになり、生産性向上ならびにコスト低減に貢献できるようになる。
【0030】(3) 上記実施形態において、一方向クラッチ3の保持器12の素材としては、ガラス繊維を充填させたナイロンなどの合成樹脂、潤滑性を有するフッ素系樹脂などで形成することができる。特に後者の場合では、万一、転がり軸受4の転動体22に対して当接したときでも、接触抵抗を少なくして転動体22を良好に案内できるようになり、負荷トルクの減少を図る上で有効となる。
【0031】(4) 例えば図6に示すように、一方向クラッチ3の保持器12の軸方向両端面に、転がり軸受4,4の転動体22を転動案内可能とする断面ほぼ部分円弧状の軌道溝12eを形成してもよい。この場合、保持器12を転動体22に対してより接近させることが可能になり、プーリ幅のさらなる縮小化に貢献できる。しかも、万一、転動体22が保持器12の端面の軌道溝12eに対して当接したときでも、転動体22が軌道溝12eに対する接触面積が広いので、局部的に大きい接触圧をもたらすことなく円滑に転動案内させるようになる。
【0032】(5) 上記実施形態において、転がり軸受4,4は、玉軸受の他、ころ軸受などとすることができる。
【0033】
【発明の効果】請求項1ないし3に係る発明では、一方向クラッチの特にころの有効軌道幅を小さくすることなく、つまり、一方向クラッチのトルク容量を下げることなくプーリユニットの軸方向幅を短縮できるようになった。
【0034】特に、請求項2に係る発明では、転がり軸受を玉軸受とすることにより、ころ軸受を用いる場合に比べてプーリ幅の短縮化に有効となる。
【0035】また、請求項3に係る発明では、一方向クラッチと転がり軸受との間で構成要素を共用化することにより、使用部品点数および組立作業を減らせるようになり、生産性向上ならびにコスト低減に貢献できるようになる。
【出願人】 【識別番号】000001247
【氏名又は名称】光洋精工株式会社
【出願日】 平成10年(1998)2月16日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
【公開番号】 特開平11−230315
【公開日】 平成11年(1999)8月27日
【出願番号】 特願平10−32695