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【発明の名称】 デファレンシャル装置
【発明者】 【氏名】山崎 伸司

【要約】 【課題】モ−タで作動するカムによって差動制限用摩擦クラッチを締結するように構成されたデファレンシャル装置の組付けを簡単にする。

【解決手段】デフケ−ス3に入力するエンジンの駆動力を車輪側に分配する差動機構5と、その差動制限用摩擦クラッチ7を締結するカム13と、入力ギヤ59と出力ギヤ61とを有し、出力ギヤ61側からカム13にトルクを与えて作動させるギヤ組11と、入力ギヤ59を回転駆動するモ−タ9とを備え、出力ギヤ61の中空軸部65を車軸57の外周で支持した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 デフケ−スに入力するエンジンの駆動力を一対の出力部材から車軸を介して車輪側に分配する差動機構と、その差動を制限する摩擦クラッチと、カムスラスト力によってこの摩擦クラッチを締結するカムと、互いに噛み合った入力ギヤと出力ギヤとを有し、出力ギヤ側からトルクをカムに与えて作動させるギヤ組と、ギヤ組の入力ギヤを回転駆動するモ−タとを備え、前記出力ギヤに中空軸部を形成し、この中空軸部を前記車軸の外周で支持したことを特徴とするデファレンシャル装置。
【請求項2】 請求項1記載の発明であって、出力ギヤの中空軸部が、カムのカムスラスト力によって摩擦クラッチを押圧する押圧部材であることを特徴とするデファレンシャル装置。
【請求項3】 請求項1記載の発明であって、ギヤ組が、デフケ−スを収容する静止側ケ−シングの外部に配置されていることを特徴とするデファレンシャル装置。
【請求項4】 請求項1記載の発明であって、ギヤ組が、デフケ−スを収容する静止側ケ−シングの内部に配置されていることを特徴とするデファレンシャル装置。
【請求項5】 請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の発明であって、カムが、デフケ−スを収容する静止側のケ−シングと、モ−タのトルクを受ける部材との間に配置されていることを特徴とするデファレンシャル装置。
【請求項6】 請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の発明であって、カムが、デフケ−スの内部で、モ−タのトルクを受ける部材とデフケ−スとの間に配置されていることを特徴とするデファレンシャル装置。
【請求項7】 請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の発明であって、ギヤ組の入力ギヤが、モ−タの出力軸に取り付けられていることを特徴とするデファレンシャル装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、車両のデファレンシャル装置に関する。
【0002】
【従来の技術】EP 0 414 086 A2に図4のようなデファレンシャル装置201が配置されている。
【0003】このデファレンシャル装置201は、デフケ−ス203を回転させるエンジンの駆動力を左右の車軸205、207に分配するプラネタリ−ギヤ式の差動機構209と、その差動を制限する多板クラッチ211と、カム213と、電動モ−タ215などから構成されている。
【0004】電動モ−タ215はトルク伝達機構217を介してカム213にトルクを与え、カム213は押圧系219を介して多板クラッチ211を押圧し、差動機構209の差動を制限する。
【0005】トルク伝達機構217は、2組の減速ギヤ組221、223と中間軸225などから構成されている。
【0006】減速ギヤ組221は電動モ−タ215の出力軸227側に形成された小径のギヤ229と中間軸225に固定された大径のギヤ231から構成されており、減速ギヤ組223は中間軸225に形成された小径のギヤ233と、大径のギヤ235から構成されている。
【0007】この大径ギヤ235は円錐の一部を切り欠いた形状の連結部材237の外周に形成されている。
【0008】カム213は、デファレンシャル装置201を収容するケ−シング239に固定されたカム部材241とこの連結部材237との間に設けられており、電動モ−タ215のトルクは各減速ギヤ組221、223で増幅され、カム213を作動させる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかし、連結部材237の組付けは、外周の大径ギヤ235を中間軸225の小径ギヤ233と噛み合わせ、内周をデフケ−ス203のボス部243に嵌合し、更に、カム部材241との間でカム213を噛み合わせなければならず、極めて面倒である。
【0010】又、トルク伝達機構217は、電動モ−タ215の出力軸227と、中間軸225と、連結部材237(車軸205、207)の3軸で構成された複雑な軸構造になっており、各軸上での組付け箇所や調整作業がそれだけ多く、組付け作業が面倒である。
【0011】又、ボス部243による連結部材237の支持はその端面245で行われているから不安定である。
【0012】その上、連結部材237の外周には小径ギヤ233との噛み合い反力が掛かり、しかも、支持部である端面245と小径ギヤ233とは軸方向に大きく離れているから、この噛み合い反力によって連結部材237に大きなモ−メントが生じ、カム213の機能が阻害される恐れがある。
【0013】そこで、この発明は、モ−タのトルクで作動するカムによって摩擦クラッチを締結し差動を制限するように構成され、組付けが簡単であると共に、部材に無理な力が掛からず正常な機能が保たれるデファレンシャル装置の提供を目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】請求項1のデファレンシャル装置は、デフケ−スに入力するエンジンの駆動力を一対の出力部材から車軸を介して車輪側に分配する差動機構と、その差動を制限する摩擦クラッチと、カムスラスト力によってこの摩擦クラッチを締結するカムと、互いに噛み合った入力ギヤと出力ギヤとを有し、出力ギヤ側からトルクをカムに与えて作動させるギヤ組と、ギヤ組の入力ギヤを回転駆動するモ−タとを備え、前記出力ギヤに中空軸部を形成し、この中空軸部を前記車軸の外周で支持したことを特徴とする。
【0015】このように、本発明のデファレンシャル装置では、ギヤ組の出力ギヤが一体の中空軸部によって車軸の外周に嵌裝され、支持されている。
【0016】従って、出力ギヤは、中空軸部を車軸に嵌裝した状態で、外部からデフケ−スに組付けることが可能になり、組付け作業が極めて容易になる。
【0017】又、出力ギヤは、中空軸部が車軸の外周で摺動支持されるから、支持状態が大幅に安定する。
【0018】又、このように中空軸部の支持状態が安定している上に、従来例の連結部材237と異なって、支持部である中空軸部と入力ギヤとが互いに径方向にあるから、出力ギヤに入力ギヤとの噛み合い反力が掛かってもモ−メントは生じない。
【0019】従って、例えば、出力ギヤにカムを設ける構成でも、カムは機能を阻害されることなく、正常に作動する。
【0020】請求項2の発明は、請求項1のデファレンシャル装置であって、出力ギヤの中空軸部が、カムのカムスラスト力によって摩擦クラッチを押圧する押圧部材であることを特徴とし、請求項1の構成と同等の効果を得る。
【0021】これに加えて、出力ギヤを摩擦クラッチの押圧部材に形成したから、部品点数が低減し、低コストになる。
【0022】又、このように、モ−タのトルクをカムに伝達するトルク伝達系の部材数が低減されたことによって、部材間の連結部が減り、トルク伝達系のガタがそれだけ小さくなるから、カムの作動と停止のレスポンスが改善され、差動制限力による車両の操縦性、安定性などの向上効果が更に大きくなる。
【0023】請求項3の発明は、請求項1記載のデファレンシャル装置であって、ギヤ組が、デフケ−スを収容する静止側ケ−シングの外部に配置されていることを特徴とし、請求項1の構成と同等の効果を得る。
【0024】これに加えて、デフケ−スを収容するケ−シングの外部にギヤ組を配置したことにより、ギヤ組は出力ギヤの組付けが容易になるだけでなく、入力ギヤの組付けも容易になる。
【0025】請求項4の発明は、請求項1記載のデファレンシャル装置であって、ギヤ組が、デフケ−スを収容する静止側ケ−シングの内部に配置されていることを特徴とし、請求項1の構成と同等の効果を得る。
【0026】これに加えて、デフケ−スを収容するケ−シングの内部にギヤ組を配置したことにより、ギヤ組の潤滑が容易になると共に、異物の噛み込みが防止され、耐久性が向上する。
【0027】又、ギヤ組と共に、モ−タもケ−シングの内部に配置することが可能になり、モ−タの出力軸が貫通する孔をケ−シングに形成する必要がなくなるから、構造が簡単になって低コストになると共に、シ−ル箇所が減少し、シ−ル性が向上する。
【0028】又、ギヤ組と共にモ−タとをケ−シングの内部に配置することによって、モ−タとギヤ組とのユニット性が向上し、ユニット化することによってこれらの取扱いが容易になる。
【0029】請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のデファレンシャル装置であって、カムが、デフケ−スを収容する静止側のケ−シングと、モ−タのトルクを受ける部材との間に配置されていることを特徴とし、請求項1乃至請求項4の構成と同等の効果を得る。
【0030】これに加えて、デフケ−スを収容する静止側のケ−シングと、モ−タのトルクを受ける部材との間にカムを配置したことによって、モ−タは静止しているカムにトルクを与えることが可能になり、僅かなエネルギ−(電動モ−タの場合はモ−タ電流)で差動を制限することができる。
【0031】なお、カムと摩擦クラッチとの間にベアリングを配置すれば、摩擦クラッチが締結されたときのデフケ−ス側のトルクをカム及びギヤ組側から遮断することができる。
【0032】又、このようにデフケ−スの外部に配置されたカムは、例えば、ケ−シングのオイル溜りのオイルによって充分に潤滑されるから、動作が安定すると共に、焼き付きなどが防止される。
【0033】請求項6の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のデファレンシャル装置であって、カムが、デフケ−スの内部で、モ−タのトルクを受ける部材とデフケ−スとの間に配置されていることを特徴とし、請求項1乃至請求項4の構成と同等の効果を得る。
【0034】これに加えて、デフケ−スの内部に配置されたカムは、異物の噛み込みが防止され、正常な作動が保たれる。
【0035】請求項7の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のデファレンシャル装置であって、ギヤ組の入力ギヤが、モ−タの出力軸に取り付けられていることを特徴とし、請求項1乃至請求項5の構成と同等の効果を得る。
【0036】これに加えて、モ−タの出力軸にギヤ組の入力ギヤを取り付けたことにより、従来例と異なって、モ−タのトルク伝達系が2軸構成になり、各軸上での組付け箇所や調整作業がそれだけ低減され、組付け作業が容易になる。
【0037】
【発明の実施の形態】図1により本発明の第1実施形態を説明する。この実施形態は請求項1、3、5、7の特徴を備えている。図1はこの実施形態のデファレンシャル装置1を示しており、左右の方向はデファレンシャル装置1が用いられた車両及び図1での左右の方向である。
【0038】デファレンシャル装置1は、デフケ−ス3、ベベルギヤ式の差動機構5、多板クラッチ7(摩擦クラッチ)、電動モ−タ9、減速ギヤ組11(ギヤ組)、カム13、押圧部材15などから構成されている。
【0039】デファレンシャル装置1はデフキャリヤ17(静止側のケ−シング)の内部に収納されており、デフケ−ス3はベアリング19、21によってデフキャリヤ17に支承されている。
【0040】デフケ−ス3にはリングギヤ23がボルト25で固定されており、このリングギヤ23はドライブピニオンギヤ27と噛み合っている。ドライブピニオンギヤ27はドライブピニオンシャフト29の後端に一体形成されており、ベアリング31、33によってデフキャリヤ17に支承されている。
【0041】ドライブピニオンシャフト29の前端にはフランジ35がスプライン連結されナット37で固定されており、デフキャリヤ17とフランジ35との間にはシ−ル39が配置され、外部へのオイル洩れと、外部からの異物の侵入とを防止している。
【0042】ドライブピニオンシャフト29はフランジ35を介してプロペラシャフト側に連結されている。
【0043】こうして、エンジンの駆動力はトランスミッションからプロペラシャフトを介してデフケ−ス3を回転させる。
【0044】デフケ−ス3の内部にはボス41を中心にして複数本のピニオンシャフト43が放射状に配置されており、各ピニオンシャフト43の先端部はデフケ−ス3の貫通孔45に係合し、スプリングピン47で固定されている。
【0045】ピニオンシャフト43上にはピニオンギヤ49が回転自在に支承されており、ピニオンギヤ49には左右から出力側サイドギヤ51、53(出力部材)が噛み合って、ベベルギヤ式の差動機構5を構成している。
【0046】サイドギヤ51、53はピニオンギヤ49との噛み合いによって径方向外側から支持されており、デフケ−ス3にはピニオンギヤ49の遠心力と噛み合い反力を受ける球面ワッシャ部55が形成されている。
【0047】左のサイドギヤ51は左のドライブシャフト(車軸)にスプライン連結されており、右のサイドギヤ53は右のドライブシャフト57(車軸)にスプライン連結されている。各ドライブシャフトはそれぞれ継ぎ手と他のドライブシャフトとを介して左右の車輪に連結されている。
【0048】デフケ−ス3を回転させるエンジンの駆動力は、ピニオンシャフト43からピニオンギヤ49を介してサイドギヤ51、53に分配され、各車輪側に伝達される。又、悪路などで車輪間に駆動抵抗差が生じると、エンジンの駆動力はピニオンギヤ49の自転によって各車輪側に差動分配される。
【0049】多板クラッチ7は、デフケ−ス3と右のサイドギヤ53との間に配置されており、その摩擦トルクによって差動機構5の差動を制限する。
【0050】電動モ−タ9はデフキャリヤ17の外部に配置されている。
【0051】減速ギヤ組11は、互いに噛み合った小径の入力ギヤ59と大径の出力ギヤ61から構成されている。
【0052】入力ギヤ59は電動モ−タ9の出力軸63に固定されており、出力ギヤ61には中空軸部65が形成されている。この中空軸部65は右のドライブシャフト57の外周に摺動回転自在に嵌裝され、支持されている。又、中空軸部65は開口67からデフキャリヤ17に貫入し、更に、右ボス部69の内側からデフケ−ス3の内部に貫入している。
【0053】中空軸部65とデフキャリヤ17及びドライブシャフト57との間にはそれぞれシ−ル71、73が配置され、外部へのオイル洩れと、外部からの異物の侵入とを防止している。
【0054】カム13は、押圧部材15の右端とデフキャリヤ17にそれぞれ形成されたカム溝75、77とこれらの間に配置されたボ−ル79とで構成されている。
【0055】押圧部材15は、中空軸部65の外周にスプライン連結されていると共に、右ボス部69の内側からデフケ−ス3の内部に貫入し、多板クラッチ7に対向している。
【0056】電動モ−タ9のトルクは減速ギヤ組11で増幅されてカム13を作動させ、カム13は押圧部材15を介して多板クラッチ7を押圧し、締結させる。多板クラッチ7は差動機構5の差動を制限し、この差動制限力によって車両の操縦性や安定性などが向上する。
【0057】こうして、デファレンシャル装置1が構成されている。
【0058】上記のように、デファレンシャル装置1では、出力ギヤ61の中空軸部65がドライブシャフト57の外周で支持されるから、出力ギヤ61は、このようにドライブシャフト57に嵌裝した状態で、外部からデフケ−ス3に組付けることが可能になり、従来例と異なって、組付け作業が極めて容易である。
【0059】又、出力ギヤ61は、このように中空軸部65の支持状態が安定していると共に、従来例の連結部材237と異なって、支持部である中空軸部65と入力ギヤ59とが互いに径方向にあるから、入力ギヤ59との噛み合い反力が掛かってもモ−メントが生じない。
【0060】従って、カム13は機能を阻害されることなく、正常に作動する。
【0061】又、ギヤ組11をデフキャリヤ17の外部に配置したことにより、上記のように出力ギヤ61の組付けが容易であるだけでなく、入力ギヤ59の組付けも容易になる。
【0062】又、カム13をデフキャリヤ17との間に設けたことによって、電動モ−タ9は静止しているカム13にトルクを与えることができ、僅かなモ−タ電流で差動を制限することができる。
【0063】なお、例えば、押圧部材15を矢印81の箇所で分断し、ここにベアリングを配置すれば、多板クラッチ7が締結されたときのデフケ−ス3側のトルクをカム13とギヤ組11と電動モ−タ9から遮断することができる。
【0064】又、デフケ−ス3の外部に配置されたカム13には、デフキャリヤ17に設けられたオイル溜りから充分なオイルが供給されて潤滑されるから、動作が安定すると共に、焼き付きなどが防止される。
【0065】又、電動モ−タ9の出力軸63にギヤ組11の入力ギヤ59を取り付けたことにより、従来例と異なって、電動モ−タ9のトルク伝達系が出力軸63とドライブシャフト57(中空軸部65)の2軸構成に簡略化されるから、各軸上での組付け箇所や調整作業がそれだけ低減され、組付け作業が容易になる。
【0066】次に、図2によって本発明の第2実施形態を説明する。この実施形態は請求項1、2、4、5、7の特徴を備えている。図2はこの実施形態のデファレンシャル装置83を示しており、左右の方向はデファレンシャル装置83を用いた車両及び図2での左右の方向である。
【0067】なお、図2と第2実施形態の説明のなかで、上記実施形態のデファレンシャル装置1と同機能の部材には同一の符号を与えて引用し、同機能部材の重複説明は省く。
【0068】デファレンシャル装置83は、デフケ−ス3、ベベルギヤ式の差動機構5、多板クラッチ7、電動モ−タ9、減速ギヤ組85(ギヤ組)、カム87、押圧部材89などから構成されている。
【0069】減速ギヤ組85は、互いに噛み合った小径の入力ギヤ91と大径の出力ギヤ93から構成されており、デフキャリヤ17の内部に配置されている。
【0070】電動モ−タ9はデフキャリヤ17の外部に配置されており、その出力軸63はデフキャリヤ17を貫通して入力ギヤ91に固定されている。又、出力ギヤ93は押圧部材89の右端に形成されている。
【0071】押圧部材89は中空に形成されており、右のドライブシャフト57の外周に摺動回転自在に嵌裝され、支持されている。又、ドライブシャフト57は開口95からデフキャリヤ17に貫入し、押圧部材89は右ボス部69の内側からデフケ−ス3の内部に貫入し、多板クラッチ7に対向している。
【0072】ドライブシャフト57とデフキャリヤ17との間にはシ−ル97が配置され、外部へのオイル洩れと、外部からの異物の侵入とを防止している。
【0073】カム87は、押圧部材89の右端とデフキャリヤ17にそれぞれ形成されたカム溝99、101とこれらの間に配置されたボ−ル103とで構成されている。
【0074】電動モ−タ9のトルクは減速ギヤ組85で増幅されてカム87を作動させ、カム87は押圧部材89を介して多板クラッチ7を押圧し、多板クラッチ7の差動制限力によって車両の操縦性や安定性などが向上する。
【0075】こうして、デファレンシャル装置83が構成されている。
【0076】上記のように、デファレンシャル装置83では、出力ギヤ93が形成された中空の押圧部材89がドライブシャフト57の外周で支持されているから、出力ギヤ93は、このようにドライブシャフト57に嵌裝した状態で、外部からデフケ−ス3に組付けることが可能であり、従来例と異なって、組付け作業が極めて容易になる。
【0077】又、出力ギヤ93は、押圧部材89の支持状態が安定していると共に、従来例の連結部材237と異なって、支持部である押圧部材89と入力ギヤ91とが互いに径方向にあるから、入力ギヤ91との噛み合い反力が掛かってもモ−メントが生じない。
【0078】従って、カム87は機能を阻害されることなく、正常に作動する。
【0079】又、デフキャリヤ17の内部に配置されたギヤ組85は、上記のように、オイル溜りのオイルによって潤滑が容易になると共に、異物の噛み込みが防止され、耐久性が向上する。
【0080】又、ギヤ組85をデフキャリヤ17の内部に配置したことにより、電動モ−タ9もデフキャリヤ17の内部に配置することも可能になる。
【0081】電動モ−タ9を内部に配置すれば、電動モ−タ9の出力軸63が貫通する孔をデフキャリヤ17に形成する必要がなくなり、構造が簡単になって低コストになると共に、シ−ル箇所が減少し、シ−ル性が向上する。
【0082】又、カム87をデフキャリヤ17との間に設けたことによって、電動モ−タ9は静止しているカム87にトルクを与えることができ、僅かなモ−タ電流で差動を制限することができる。
【0083】なお、例えば、押圧部材89を矢印104の箇所で分断し、ここにベアリングを配置すれば、多板クラッチ7が締結されたときのデフケ−ス3側のトルクをカム87とギヤ組85と電動モ−タ9から遮断することができる。
【0084】又、デフケ−ス3の外部に配置されたカム87には、デフキャリヤ17に設けられたオイル溜りから充分なオイルが供給されて潤滑されるから、動作が安定すると共に、焼き付きなどが防止される。
【0085】又、電動モ−タ9の出力軸63にギヤ組85の入力ギヤ91を取り付けたことにより、従来例と異なって、電動モ−タ9のトルク伝達系が出力軸63とドライブシャフト57(押圧部材89)の2軸構成に簡略化されるから、各軸上での組付け箇所や調整作業がそれだけ低減され、組付け作業が容易になる。
【0086】又、出力ギヤ93を押圧部材89に一体形成したから、部品点数が低減し、それだけ低コストになる。
【0087】又、このように、電動モ−タ9のトルクをカム87に伝達するトルク伝達系の部材数が低減されたことによって、部材間の連結部が減り、トルク伝達系のガタがそれだけ小さくなるから、カム87の作動と停止のレスポンスが改善され、差動制限力による車両の操縦性、安定性などの向上効果が更に大きくなる。
【0088】次に、図3によって本発明の第3実施形態を説明する。この実施形態は請求項1、3、6、7の特徴を備えている。図3はこの実施形態のデファレンシャル装置105を示しており、左右の方向はデファレンシャル装置105を用いた車両及び図3での左右の方向である。
【0089】なお、図3と第3実施形態の説明のなかで、上記実施形態のデファレンシャル装置1、83と同機能の部材には同一の符号を与えて引用する。
【0090】デファレンシャル装置105は、デフケ−ス3、ベベルギヤ式の差動機構5、多板クラッチ7、電動モ−タ9、減速ギヤ組11、カム107、押圧部材109などから構成されている。
【0091】上記のように、減速ギヤ組11は小径の入力ギヤ59と大径の出力ギヤ61から構成され、出力ギヤ61は中空軸部65に形成されており、中空軸部65はドライブシャフト57上で支持されている。
【0092】押圧部材109は中空に形成されており、ドライブシャフト57の外周に嵌裝され、支持されている。又、押圧部材109は連結部111を介して中空軸部65に連結されており、デフケ−ス3の内部で多板クラッチ7に対向している。
【0093】カム107は、押圧部材109とデフケ−ス3にそれぞれ形成されたカム溝113、115とこれらの間に配置されたボ−ル117とで構成されている。
【0094】電動モ−タ9のトルクは減速ギヤ組11で増幅され、中空軸部65、連結部111、押圧部材109を介してカム107を作動させる。カム107は押圧部材109を介して多板クラッチ7を押圧し、多板クラッチ7の差動制限力によって車両の操縦性や安定性などが向上する。
【0095】こうして、デファレンシャル装置105が構成されている。
【0096】上記のように、デファレンシャル装置105では、デフケ−ス3の内部にカム107が配置されており、異物の噛み込みが防止されるから、カム107が正常に作動し、正常な差動制限機能が保持される。
【0097】これに加えて、デファレンシャル装置105は、デファレンシャル装置1と同等の効果を得る。
【0098】なお、本発明において、摩擦クラッチは多板クラッチに限らず、例えばコ−ンクラッチでもよい。
【0099】又、入力ギア、出力ギアは位相変換時の位置安定性を考慮した場合、ウォームホィールギア組とすることが好ましい。
【0100】又、モ−タは、回転磁界によってトルクを取り出す電動モ−タの他に、パルスモ−タやステッピングモ−タなどの電動モ−タでもよく、あるいは、超音波モ−タでもよい。 又、差動機構は、ベベルギヤ式の差動機構に限らず、例えば、プラネタリ−ギヤ式の差動機構や、デフケ−スの収容孔に外周を支持されたピニオンギヤでサイドギヤを連結した差動機構などでもよい。
【0101】又、本発明のデファレンシャル装置は、フロントデフ(エンジンの駆動力を左右の前輪に分配するデファレンシャル装置)とリヤデフ(エンジンの駆動力を左右の後輪に分配するデファレンシャル装置)とセンタ−デフ(エンジンの駆動力を前輪と後輪に分配するデファレンシャル装置)のいずれにも用いることができる。
【0102】
【発明の効果】本発明のデファレンシャル装置では、ギヤ組の出力ギヤに形成された中空軸部が車軸の外周で支持されるから、出力ギヤは、車軸に嵌裝した状態で、外部からデフケ−スに組付けることが可能になり、組付け作業が極めて容易になる。
【0103】又、中空軸部が車軸に支持されることによって、出力ギヤの支持状態は大幅に安定する。
【0104】又、このように支持状態が安定している上に、支持部である中空軸部と入力ギヤとが互いに径方向にあり、噛み合い反力を受けても出力ギヤにモ−メントが生じないから、カムは機能を阻害されず、正常な動作が保たれる。
【0105】請求項2の発明は、請求項1の構成と同等の効果を得ると共に、出力ギヤを摩擦クラッチの押圧部材に一体形成したことにより、部品点数が低減し、それだけ低コストになる。
【0106】又、モ−タのトルクをカムに伝達するトルク伝達系の部材数が、このように低減されたことにより、部材間の連結部が減り、トルク伝達系のガタがそれだけ小さくなるから、カムの作動と停止のレスポンスが改善され、車両の操縦性、安定性などの向上効果が更に大きくなる。
【0107】請求項3の発明は、請求項1の構成と同等の効果を得ると共に、デフケ−スを収容するケ−シングの外部にギヤ組を配置したことにより、ギヤ組は出力ギヤの組付けが容易になるだけでなく、入力ギヤの組付けも容易になる。
【0108】請求項4の発明は、請求項1の構成と同等の効果を得ると共に、デフケ−スを収容するケ−シングの内部にギヤ組を配置したから、ギヤ組の潤滑が容易になり、異物の噛み込みが防止され、耐久性が向上する。
【0109】又、モ−タもケ−シングの内部に配置することが可能になり、モ−タの出力軸の貫通構造をケ−シングに設ける必要がなくなるから、構造簡単で低コストになると共に、シ−ル箇所が減少し、シ−ル性が向上する。
【0110】又、モ−タをケ−シングの内部に配置することによって、モ−タとギヤ組とのユニット性が向上し、ユニット化することによってこれらの取扱いが容易になる。
【0111】請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4の構成と同等の効果を得ると共に、モ−タは静止しているカムにトルクを与えることにより、僅かなエネルギ−で差動制限を行える。
【0112】又、デフケ−スの外部に配置されたカムは、潤滑し易く、動作が安定すると共に、焼き付きなどが防止される。
【0113】請求項6の発明は、請求項1乃至請求項4の構成と同等の効果を得ると共に、デフケ−スの内部に配置されたカムは、異物の噛み込みが防止され、正常な動作が保たれる。
【0114】請求項7の発明は、請求項1乃至請求項5の構成と同等の効果を得ると共に、モ−タの出力軸にギヤ組の入力ギヤを取り付け、モ−タのトルク伝達系を2軸構成にしたから、各軸上での組付け箇所や調整作業がそれだけ低減され、組付け作業が容易になる。
【出願人】 【識別番号】000225050
【氏名又は名称】栃木富士産業株式会社
【出願日】 平成10年(1998)2月13日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和 (外8名)
【公開番号】 特開平11−230310
【公開日】 平成11年(1999)8月27日
【出願番号】 特願平10−31700