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【発明の名称】 トルクコンバータのロックアップ装置
【発明者】 【氏名】熊田 治郎

【氏名】兵藤 義則

【要約】 【課題】ロックアップの複数の種類に対応可能にする。

【解決手段】ロックアップピストンプレート27の前面に周縁に沿ってクラッチフェーシング30を取付け、ロックアップピストンプレート27の前後の差圧に応じてクラッチフェーシング30のフェイス面をコンバータカバー20に押し付けることで、ロックアップを可能なトルクコンバータのロックアップ装置において、クラッチフェーシング30のフェイス面が複数の異なる面を持ち、そのうち少なくとも1つの面がテーパ面である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 コンバータカバーに対峙するロックアップピストンプレートの前面に周縁に沿ってクラッチフェーシングを取付け、ロックアップピストンプレートの前後の差圧に応じてクラッチフェーシングのフェイス面をコンバータカバーに押し付けることで、ロックアップを可能なトルクコンバータのロックアップ装置において、前記クラッチフェーシングのフェイス面が複数の異なる面を持ち、そのうち少なくとも1つの面がテーパ面であることを特徴とするトルクコンバータのロックアップ装置。
【請求項2】 コンバータカバーに対峙するロックアップピストンプレートの前面に周縁に沿ってクラッチフェーシングを取付け、ロックアップピストンプレートの前後の差圧に応じてクラッチフェーシングのフェイス面をコンバータカバーに押し付けることで、ロックアップを可能なトルクコンバータのロックアップ装置において、前記クラッチフェーシングのフェイス面が複数の異なる面を持ち、それぞれの面がテーパ面であることを特徴とするトルクコンバータのロックアップ装置。
【請求項3】 ロックアップピストンプレートの前後の差圧が低いスリップロックアップ時にフェイス面の半径方向外側の面がコンバータカバーに接触し、ロックアップピストンプレートの前後の差圧が高い完全ロックアップ時にフェイス面の半径方向内側の面がコンバータカバーに接触するようになっている請求項1または2に記載のトルクコンバータのロックアップ装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、車両等の動力伝達機構に採用されるトルクコンバータのロックアップ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から車両のエンジンと変速機の間にトルクコンバータを介装したものが広く採用されており、トルクコンバータには、すべり損失を抑えるために、所定以上の車速域にトルクコンバータの入出力側を機械的に連結するロックアップ装置が設けられている。
【0003】トルクコンバータは、図7に示すように、エンジンクランク軸(図示しない)に連結されるケーシング(コンバータカバー)1と一体に回転するポンプインペラ2と、タービンハブ3を介して変速機(図示しない)の入力軸4に連結されるタービン5と、ステータ6等から構成される。
【0004】ロックアップ装置7は、前面周縁に接着によってクラッチフェーシング8を取付けたピストンプレート10がタービンハブ3に軸方向に移動自由に嵌装され、ピストンプレート10とタービンハブ3の間に回転方向にダンパ11が介装される。
【0005】ロックアップ時には、ピストンプレート10の前室の圧力が開放され、後のコンバータ圧によってピストンプレート10が前進して、その前面周縁のクラッチフェーシング8をケーシング1に押接することで、連結される。このとき、エンジンのトルク変動はダンパ11によって減衰される。
【0006】このようなロックアップ装置7では、ロックアップ時にピストンプレート10が前後の差圧によって変形して、クラッチフェーシング8が傾きやすい。クラッチフェーシング8が傾いてケーシング1に接触すると、接触面圧が上昇して、ロックアップの性能(クラッチフェーシングの摩擦係数−すべり速度特性)、耐久性を低下させることになる。
【0007】そこで、クラッチフェーシングがケーシングに均一に接するように、予めピストンプレートの変形を考慮して、クラッチフェーシングのフェイス面をテーパ面に形成しておくものがある。また、ピストンプレートに弾性材(ゴム)を介してクラッチフェーシングを取付けるようにしたものがある(実開平7ー12651号公報等)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで、ロックアップは、車速が中速域(例えば、60km/h)以上で行われるだけでなく、エンジンの燃費の一層の向上を実現するため、より低速域(例えば、40km/h)から行わせることが要求されており、またこの場合中速域以上ではピストンプレートの前後の高い差圧によってクラッチフェーシングをケーシングに接触させて完全ロックアップを行わせるが、低速域ではある程度トルクコンバータの機能を効かせるように、ピストンプレートの前後の差圧を相対的に低くして低圧にてクラッチフェーシングをケーシングに接触させてエンジンのトルク変動を吸収させる、いわゆるスリップロックアップを行わせることが必須となっている。
【0009】しかしながら、このようにピストンプレートの前後の差圧を変える場合、クラッチフェーシングのフェイス面が単一のテーパ面のものでは、例えばその差圧が大きい完全ロックアップ時にはクラッチフェーシングがケーシングに均一に接しても、差圧が低いスリップロックアップ時にはクラッチフェーシングが傾いてケーシングに接してしまう。
【0010】また、弾性材を介してクラッチフェーシングを取付けるものでは、弾性材の変形によってクラッチフェーシングのフェイス面全体がケーシングに接するものの、内周側と外周側等、その弾性材の変形量によって反力が異なるため、クラッチフェーシングのフェイス面がケーシングに均一な力で接しず、実質片当たりを生じてしまう。
【0011】したがって、要求のロックアップ機能を得るのが難しく、またクラッチフェーシングの耐久性にも問題があった。
【0012】この発明は、クラッチフェーシングに複数の面を持たせて、このような問題点を解決することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、コンバータカバーに対峙するロックアップピストンプレートの前面に周縁に沿ってクラッチフェーシングを取付け、ロックアップピストンプレートの前後の差圧に応じてクラッチフェーシングのフェイス面をコンバータカバーに押し付けることで、ロックアップを可能なトルクコンバータのロックアップ装置において、前記クラッチフェーシングのフェイス面が複数の異なる面を持ち、そのうち少なくとも1つの面がテーパ面である。
【0014】第2の発明は、コンバータカバーに対峙するロックアップピストンプレートの前面に周縁に沿ってクラッチフェーシングを取付け、ロックアップピストンプレートの前後の差圧に応じてクラッチフェーシングのフェイス面をコンバータカバーに押し付けることで、ロックアップを可能なトルクコンバータのロックアップ装置において、前記クラッチフェーシングのフェイス面が複数の異なる面を持ち、それぞれの面がテーパ面である。
【0015】第3の発明は、第1、第2の発明において、ロックアップピストンプレートの前後の差圧が低いスリップロックアップ時にフェイス面の半径方向外側の面がコンバータカバーに接触し、ロックアップピストンプレートの前後の差圧が高い完全ロックアップ時にフェイス面の半径方向内側の面がコンバータカバーに接触するようになっている。
【0016】
【発明の効果】第1、第2の発明によれば、ロックアップピストンプレートの前後の差圧を変えて異なるロックアップを行う場合でも、クラッチフェーシングをコンバータカバーに均一に当接させることができ、クラッチフェーシングの高い耐久性を維持できると共に、要求のロックアップ機能、特性を確保することができる。
【0017】第3の発明によれば、トルクコンバータの機能を効かせるスリップロックアップ時に、すべり損失を軽減しつつエンジンのトルク変動を的確に吸収でき、完全ロックアップ時に、トルクコンバータのロックアップを確実に行える。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】図1に示すように、20はエンジンクランク軸(図示しない)に連結されるケーシング(コンバータカバー)、21はケーシング20と一体に回転するポンプインペラ、22はタービンハブ23を介して変速機(図示しない)の入力軸24に連結されるタービン、25はステータである。
【0020】ロックアップ装置26は、ケーシング20の内面に対峙して、円盤状のピストンプレート27がタービンハブ23に軸方向に移動自由に嵌装され、そのピストンプレート27とタービンハブ23の間に回転方向の変動を吸収するダンパ28が介装される。
【0021】そして、このピストンプレート27の前面周縁部に所定のフェーシング材を接着等により取付けてクラッチフェーシング30が形成されると共に、図2、図3のようにこのクラッチフェーシング30のフェイス面が半径方向に複数の異なるテーパ面31,32を持つように形成される。
【0022】このクラッチフェーシング30のテーパ面31,32は、半径方向外側のテーパ面32よりも内側のテーパ面31のほうがテーパδ(単位長さ当たりの勾配)が大きくなるように形成される。
【0023】この半径方向内側のテーパ面31のテーパδ1は、完全ロックアップ時(ピストンプレート27の前後の差圧が所定の高圧時)に当該テーパ面31がケーシング20の面に均一に当接する大きさに、また半径方向外側のテーパ面32のテーパδ2は、ある程度トルクコンバータの機能を効かせるスリップロックアップ時(ピストンプレート27の前後の差圧が所定の低圧時)に当該テーパ面32がケーシング20の面に均一に当接する大きさに形成される。
【0024】このテーパ面31,32の形成は、予めピストンプレート27のフェーシング材の取付面を所定のテーパ面に形成して、その取付面にフェーシング材を取付けることで、形成するようにして良い。
【0025】また、ピストンプレート27の前後の差圧が高い完全ロックアップ時の面圧が高くならないように、完全ロックアップ用のテーパ面31の面積つまり半径方向の幅は、スリップロックアップ用のテーパ面32よりも大きくする。
【0026】なお、非ロックアップ時に、コンバータ圧は変速機の入力軸24側からピストンプレート27の前室33を介してコンバータ内に供給される。また、完全ロックアップ時に、ピストンプレート27の前室33は開放され、コンバータ圧は入力軸24の回りからステータ25の近傍を通りコンバータ内に供給される。また、スリップロックアップ時に、コンバータ圧は所定圧に減圧されて入力軸24の回りからステータ25の近傍を通りコンバータ内に供給され、ピストンプレート27の前室33の圧は所定圧でリリーフされるようになっている。
【0027】このように構成したので、スリップロックアップ時には、相対的に低い差圧によってピストンプレート27が前進してクラッチフェーシング30がケーシング20に押接されると共に、その差圧に応じてピストンプレート27が変形するが、この場合図5のようにその低い差圧によるピストンプレート27の変形に合うテーパδ2のテーパ面32がケーシング20に均一に当接するようになる。
【0028】また、完全ロックアップ時には、高い差圧によってピストンプレートが前進してクラッチフェーシング30がケーシング20に押接され、その差圧に応じてピストンプレート27が変形すると共に、図6のようにその高い差圧によるピストンプレート27の変形に合うテーパδ1のテーパ面31がケーシング20に均一に当接するようになる。
【0029】このため、スリップロックアップ時、完全ロックアップ時にクラッチフェーシング30が傾いてケーシング20に接触するようなことはなく、クラッチフェーシング30の高い耐久性が維持される。また、均一な接触によって、スリップロックアップ時にすべり損失を軽減しつつエンジンのトルク変動を的確に吸収でき、完全ロックアップ時にトルクコンバータのロックアップを確実に行え、それぞれ要求のロックアップ機能、特性が確保される。
【0030】図4はクラッチフェーシング30のテーパ面31,32の接触状態によるクラッチフェーシング30の面圧を示すもので、均一に接触するテーパδ1、δ2よりテーパが大きくなると外周側が接触する外当たりとなり、テーパが小さくなると内周側が接触する内当たりとなる。テーパδ1、δ2のときに面圧が最小となり、したがって、最適なテーパを設定することで、クラッチフェーシング30のテーパ面31,32がケーシング20に均一に接触するようになり、性能面、耐久面等から良好な面圧を保てる。
【0031】なお、実施の形態では、2つのテーパ面を形成した例を示したが、ピストンプレート27の前後の差圧が低いスリップロックアップ用の面は平面でも良い。また、テーパ面はロックアップの種類に応じて増やすことができる。
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成10年(1998)2月9日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜 (外1名)
【公開番号】 特開平11−230305
【公開日】 平成11年(1999)8月27日
【出願番号】 特願平10−27515