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【発明の名称】 無段変速装置
【発明者】 【氏名】石川 宏史

【氏名】今西 尚

【氏名】宮田 慎司

【氏名】町田 尚

【氏名】伊藤 裕之

【要約】 【課題】低コストで優れた耐久性を有し、しかも小型・軽量な構造を実現する。

【解決手段】トロイダル型無段変速機34と遊星歯車機構37とを、第一、第二の動力伝達機構41、43を介して組み合わせる。そして、高速走行時にトロイダル型無段変速機34を通過するトルクを低減させる。このトロイダル型無段変速機34を構成するローディングナット45と、上記第二の動力伝達機構43を構成する第二駆動歯車46とを一体にする。部品点数の削減と軸方向寸法の短縮とにより、上記課題を解決できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 駆動源に接続される入力軸及び駆動すべき部分に接続される出力軸と、入力ディスクと出力ディスクとの間に挟持した複数個のパワーローラの傾斜角度を変える事により上記入力ディスクと出力ディスクとの間の変速比を変えるトロイダル型無段変速機と、遊星歯車機構と、これらトロイダル型無段変速機と遊星歯車機構とを連結する1対の動力伝達機構と、上記入力軸と出力軸との間の変速状態を高速走行モードと低速走行モードと後退モードとに切り換え自在なモード切換手段とを備えた無段変速装置に於いて、上記動力伝達機構を構成する一部の部品と上記トロイダル型無段変速機を構成する一部の部品とを互いに一体とした事を特徴とする無段変速装置。
【請求項2】 駆動軸により回転駆動される入力軸と、この入力軸の回転に基づく動力を取り出す為の出力軸と、トロイダル型無段変速機と、遊星歯車機構とを備え、このトロイダル型無段変速機は、互いに同心に配置した入力ディスクと出力ディスクとの間に挟持したパワーローラの傾斜角度を変える事により、上記入力軸の回転に基づいて回転する入力ディスクと上記出力ディスクとの間の変速比を変えるものであり、上記遊星歯車機構は、上記出力軸を回転させる太陽歯車とこの太陽歯車の周囲に配置したリング歯車との間に設けられ、上記太陽歯車と同心に且つ回転自在に支持したキャリアに回転自在に支持された遊星歯車を、上記太陽歯車とリング歯車とに噛合させて成るものであり、上記キャリアと上記出力ディスクとを第一の動力伝達機構により回転力の伝達を可能な状態に接続すると共に、上記入力軸と上記リング歯車とを第二の動力伝達機構により回転力の伝達を可能な状態に接続自在とし、更に、この第二の動力伝達機構の構成部材と上記リング歯車とを接続する為の第一のクラッチと、上記遊星歯車機構を構成する太陽歯車とリング歯車と遊星歯車との3種類の歯車のうちの何れか2種類の歯車同士を結合して、これら3種類の歯車同士の相対変位を阻止する第二のクラッチとを備え、上記第一の動力伝達機構の減速比βと上記第二の動力伝達機構の減速比αとの比β/αを、上記トロイダル型無段変速機の最大増速時の減速比iとほぼ同じとして成り、上記第一、第二の動力伝達機構を構成する一部の部品と上記トロイダル型無段変速機を構成する一部の部品とを互いに一体とした無段変速装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば自動車用の変速機として利用する、トロイダル型無段変速機を組み込んだ無段変速装置の改良に関し、小型で、しかもトロイダル型無段変速機の構成部材の耐久性を確保できる構造を実現するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば自動車用変速機として、図7〜8に略示する様なトロイダル型無段変速機を使用する事が研究されている。このトロイダル型無段変速機は、例えば実開昭62−71465号公報に開示されている様に、入力軸1と同心に入力ディスク2を支持し、この入力軸1と同心に配置した出力軸3の端部に出力ディスク4を固定している。トロイダル型無段変速機を納めたケーシングの内側には、上記入力軸1並びに出力軸3に対し捻れの位置にある枢軸5、5を中心として揺動するトラニオン6、6を設けている。
【0003】即ち、これら各トラニオン6、6の両端部外側面には、上記枢軸5、5を、互いに同心に設けている。又、各トラニオン6、6の中心部には変位軸7、7の基端部を支持し、上記枢軸5、5を中心として各トラニオン6、6を揺動させる事により、各変位軸7、7の傾斜角度の調節を自在としている。各トラニオン6、6に支持した変位軸7、7の周囲には、それぞれパワーローラ8、8を回転自在に支持している。そして、これら各パワーローラ8、8を、上記入力、出力両ディスク2、4の間に挟持している。これら入力、出力両ディスク2、4の互いに対向する内側面2a、4aは、それぞれ断面が、上記枢軸5を中心とする円弧を当該ディスクの中心軸を中心に回転させて得られる凹面をなしている。そして、球状凸面に形成された各パワーローラ8、8の周面8a、8aを、上記両内側面2a、4aに当接させている。
【0004】上記入力軸1と入力ディスク2との間には、ローディングカム式の押圧装置9を設け、この押圧装置9によって、上記入力ディスク2を出力ディスク4に向け、弾性的に押圧自在としている。この押圧装置9は、入力軸1と共に回転するカム板10と、保持器11により保持された複数個(例えば4個)のローラ12、12とから構成している。上記カム板10の片側面(図7〜8の左側面)には、円周方向に亙る凹凸面であるカム面13を形成し、上記入力ディスク2の外側面(図7〜8の右側面)にも、同様のカム面14を形成している。そして、上記複数個のローラ12、12を、上記入力軸1の中心に対して放射方向の軸を中心とする回転自在に支持している。
【0005】上述の様に構成するトロイダル型無段変速機の使用時、入力軸1の回転に伴ってカム板10が回転すると、カム面13によって複数個のローラ12、12が、入力ディスク2の外側面に形成したカム面14に押圧される。この結果、上記入力ディスク2が上記複数のパワーローラ8、8に押圧されると同時に、上記1対のカム面13、14と複数個のローラ12、12との押し付け合いに基づいて、上記入力ディスク2が回転する。そして、この入力ディスク2の回転が、上記複数のパワーローラ8、8を介して出力ディスク4に伝達され、この出力ディスク4に固定の出力軸3が回転する。
【0006】上記入力軸1と出力軸3との間の回転速度比(変速比)を変える場合で、先ず入力軸1と出力軸3との間で減速を行なう場合には、枢軸5、5を中心として各トラニオン6、6を揺動させ、各パワーローラ8、8の周面8a、8aが図7に示す様に、入力ディスク2の内側面2aの中心寄り部分と出力ディスク4の内側面4aの外周寄り部分とにそれぞれ当接する様に、各変位軸7、7を傾斜させる。反対に、増速を行なう場合には、上記トラニオン6、6を揺動させ、各パワーローラ8、8の周面8a、8aが図8に示す様に、入力ディスク2の内側面2aの外周寄り部分と出力ディスク4の内側面4aの中心寄り部分とに、それぞれ当接する様に、各変位軸7、7を傾斜させる。各変位軸7、7の傾斜角度を図7と図8との中間にすれば、入力軸1と出力軸3との間で、中間の変速比を得られる。
【0007】又、図9〜10は、実願昭63−69293号(実開平1−173552号)のマイクロフィルムに記載された、より具体化されたトロイダル型無段変速機の1例を示している。入力ディスク2と出力ディスク4とは円管状の入力軸15の周囲に、それぞれニードル軸受16、16を介して、回転自在に支持している。又、カム板10は上記入力軸15の端部(図9の左端部)外周面にスプライン係合させ、鍔部17により上記入力ディスク2から離れる方向への移動を阻止している。そして、このカム板10とローラ12、12とにより、上記入力軸15の回転に基づいて上記入力ディスク2を、上記出力ディスク4に向け押圧しつつ回転させる押圧装置9を構成している。上記出力ディスク4には出力歯車18を、キー19、19により結合し、これら出力ディスク4と出力歯車18とが同期して回転する様にしている。
【0008】1対のトラニオン6、6の両端部は1対の支持板20、20に、揺動並びに軸方向(図9の表裏方向、図10の左右方向)に亙る変位自在に支持している。そして、上記各トラニオン6、6の中間部に形成した円孔21、21部分に、変位軸7、7を支持している。これら各変位軸7、7は、互いに平行で且つ偏心した支持軸部22、22と枢支軸部23、23とを、それぞれ有する。このうちの各支持軸部22、22を上記各円孔21、21の内側に、ラジアルニードル軸受24、24を介して、回転自在に支持している。又、上記各枢支軸部23、23の周囲にパワーローラ8、8を、別のラジアルニードル軸受25、25を介して、回転自在に支持している。
【0009】尚、上記1対の変位軸7、7は、上記入力軸15に対して180度反対側位置に設けている。又、これら各変位軸7、7の各枢支軸部23、23が各支持軸部22、22に対し偏心している方向は、上記入力、出力両ディスク2、4の回転方向に関し同方向(図10で左右逆方向)としている。又、偏心方向は、上記入力軸15の配設方向に対しほぼ直交する方向としている。従って、上記各パワーローラ8、8は、上記入力軸15の配設方向に亙る若干の変位自在に支持される。この結果、回転力の伝達状態で構成各部材に加わる大きな荷重に基づく、これら構成各部材の弾性変形に起因して、上記各パワーローラ8、8が上記入力軸15の軸方向(図9の左右方向、図10の表裏方向)に変位する傾向となった場合でも、上記構成各部品に無理な力を加える事なく、この変位を吸収できる。
【0010】又、上記各パワーローラ8、8の外側面と上記各トラニオン6、6の中間部内側面との間には、パワーローラ8、8の外側面の側から順に、スラスト玉軸受26、26とスラストニードル軸受27、27とを設けている。このうちのスラスト玉軸受26、26は、上記各パワーローラ8、8に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ8、8の回転を許容するものである。又、上記各スラストニードル軸受27、27は、上記各パワーローラ8、8から上記各スラスト玉軸受26、26を構成する外輪28、28に加わるスラスト荷重を支承しつつ、前記各枢支軸部23、23及び上記外輪28、28が、前記支持軸部22、22を中心に揺動する事を許容する。
【0011】更に、上記各トラニオン6、6の一端部(図9の左端部)にはそれぞれ駆動ロッド29、29を結合し、これら各駆動ロッド29、29の中間部外周面に駆動ピストン30、30を固設している。そして、これら各駆動ピストン30、30を、それぞれ駆動シリンダ31、31内に油密に嵌装している。
【0012】上述の様に構成するトロイダル型無段変速機の運動時に、入力軸15の回転は、押圧装置9を介して入力ディスク2に伝わる。そして、この入力ディスク2の回転が、1対のパワーローラ8、8を介して出力ディスク4に伝わり、更にこの出力ディスク4の回転が、出力歯車18より取り出される。入力軸15と出力歯車18との間の回転速度比を変える場合には、上記1対の駆動ピストン30、30を互いに逆方向に変位させる。これら各駆動ピストン30、30の変位に伴って上記1対のトラニオン6、6が、それぞれ逆方向に変位し、例えば図10の下側のパワーローラ8が同図の右側に、同図の上側のパワーローラ8が同図の左側に、それぞれ変位する。この結果、これら各パワーローラ8、8の周面8a、8aと上記入力ディスク2及び出力ディスク4の内側面2a、4aとの当接部に作用する、接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って上記各トラニオン6、6が、支持板20、20に枢支された枢軸5、5を中心として、互いに逆方向に揺動する。この結果、前述の図7〜8に示した様に、上記各パワーローラ8、8の周面8a、8aと上記各内側面2a、4aとの当接位置が変化し、上記入力軸15と出力歯車18との間の回転速度比が変化する。
【0013】尚、この様に上記入力軸15と出力歯車18との間で回転力の伝達を行なう際には、構成各部材の弾性変形に基づいて上記各パワーローラ8、8が、上記入力軸15の軸方向に変位し、これら各パワーローラ8、8を枢支している前記各変位軸7、7が、前記各支持軸部22、22を中心として僅かに回動する。この回動の結果、前記各スラスト玉軸受26、26の外輪28、28の外側面と上記各トラニオン6、6の内側面とが相対変位する。これら外側面と内側面との間には、前記各スラストニードル軸受27、27が存在する為、この相対変位に要する力は小さい。従って、上述の様に各変位軸7、7の傾斜角度を変化させる為の力が小さくて済む。
【0014】上述の様に構成され作用するトロイダル型無段変速機を実際の自動車用の無段変速機に組み込む場合、遊星歯車機構と組み合わせて無段変速装置を構成する事が、特開平1−169169号公報、同1−282266号公報に記載されている様に、従来から提案されている。図11は、この様な従来から提案されている無段変速装置の基本構成を略示している。駆動源であるエンジン32の駆動軸33(クランクシャフト)は、上述した図9〜10に示す様な構成を有するトロイダル型無段変速機34の入力軸15(図9〜10参照)に結合している。又、デファレンシャルギヤ35(本発明の実施の形態を示す図1参照)を介して駆動輪を駆動する為の出力軸36は、遊星歯車機構37を構成する太陽歯車38(図1参照)に結合固定して、この太陽歯車38と共に回転する様にしている。
【0015】又、上記トロイダル型無段変速機34の出力ディスク4(図1、7、8、9参照)と上記遊星歯車機構37を構成するキャリア39(図1参照)とを第一の動力伝達機構41により、回転力の伝達を可能な状態に接続している。又、上記駆動軸33及び入力軸15と上記遊星歯車機構37を構成するリング歯車42(図1参照)とを第二の動力伝達機構43により、回転力の伝達を可能な状態に接続自在としている。更に、上記駆動軸33及び入力軸15と出力軸36との間の変速状態を、高速走行モードと低速走行モードと後退モードとの3種類のモードに切り換え自在な、モード切換手段を備える。そして、上記第一の動力伝達機構41の減速比βと上記第二の動力伝達機構43の減速比αとの比β/αを、上記トロイダル型無段変速機34の最大増速時の減速比(図8に示した状態での入力軸1と出力軸3との間の減速比)i とほぼ同じとしている。
【0016】上述の図11に示す様な無段変速装置は、所謂パワー・スプリット型と呼ばれるもので、低速走行モードでは上記駆動軸33及び入力軸15と出力軸36との間の動力を、総て上記トロイダル型無段変速機34を通じて伝達する。これに対して高速走行モードでは、動力を上記遊星歯車機構37を介して伝達し、この動力の一部をこの遊星歯車機構37から上記トロイダル型無段変速機34に循環させる。即ち、低速走行時には前記エンジン32の駆動力を上記トロイダル型無段変速機34のみで伝達し、高速走行時には上記駆動力を上記遊星歯車機構37で伝達する事により、高速走行時に上記トロイダル型無段変速機34に加わるトルクの低減を図る様にしている。この様に構成する事により、上記トロイダル型無段変速機34の構成各部材の耐久性を向上させると同時に、無段変速装置全体としての伝達効率の向上を図れる。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】上述した様な、パワー・スプリット型と呼ばれる無段変速装置は、高速走行時にトロイダル型無段変速機34を通じて伝達するトルクの軽減を図り、耐久性の向上と伝達効率の向上とを図れる反面、第一、第二の動力伝達機構41、43を設ける事に伴って、構造が複雑になり、小型・軽量化を図りにくい。例えば、無段変速装置の軸方向寸法の短縮を図るべく、上記第一、第二の動力伝達機構の軸方向寸法を小さくする為には、これら各動力伝達機構を、ベルトやチェンによる伝達機構ではなく、歯車伝達機構にする事が好ましい。一方、トロイダル型無段変速機34は、複数の部品を軸方向に亙り互いに直列に配置する事により構成している。従って、上述の様な歯車伝達機構を、上記トロイダル型無段変速機34の構成部材と独立して設けると、部品点数が多くなり、部品製作、部品管理、組立作業が何れも面倒になるだけでなく、上記トロイダル型無段変速機34の設置部分の軸方向が嵩んで、上記無段変速装置の小型・軽量化を図りにくくなる。本発明は、この様な事情に鑑み、高速走行時にトロイダル型無段変速機を通じて伝達するトルクの軽減を図れ、しかも小型且つ軽量に構成できる、実用的な構造を実現すべく発明したものである。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明の無段変速装置は、駆動源に接続される入力軸及び駆動すべき部分に接続される出力軸と、入力ディスクと出力ディスクとの間に挟持した複数個のパワーローラの傾斜角度を変える事により上記入力ディスクと出力ディスクとの間の変速比を変えるトロイダル型無段変速機と、遊星歯車機構と、これらトロイダル型無段変速機と遊星歯車機構とを連結する1対の動力伝達機構と、上記入力軸と出力軸との間の変速状態を高速走行モードと低速走行モードと後退モードとの3種類のモードに切り換え自在なモード切換手段とを備える。特に、本発明の無段変速装置に於いては、上記動力伝達機構を構成する一部の部品と上記トロイダル型無段変速機を構成する一部の部品とを互いに一体としている。
【0019】
【作用】上述の様に構成する本発明の無段変速装置の作用は、次の通りである。先ず、低速走行時には、入力軸と出力軸との間の動力を総て上記トロイダル型無段変速機を通じて伝達する。この為に例えば、モード切換手段により、遊星歯車機構を構成する太陽歯車とリング歯車とキャリアとのうちの何れかの部材同士を結合し、これら太陽歯車とリング歯車とキャリアとを、太陽歯車を中心として一体的に回転させる。この状態ではトロイダル型無段変速機のみが、入力軸から出力軸に動力を伝達する。この低速走行時に入力、出力両ディスク同士の間の変速比を変換する際の作用は、前述の図7〜10に示した従来のトロイダル型無段変速機の場合と同様である。勿論、この状態では、上記入力軸と出力軸との間の変速比、即ち無段変速装置全体としての変速比は、トロイダル型無段変速機の変速比に比例する。又、この状態では、このトロイダル型無段変速機に入力されるトルクは、上記入力軸に加えられるトルクに等しくなる。
【0020】これに対して、高速走行時には、動力を上記遊星歯車機構により伝達すると共に、この動力の一部を、この遊星歯車機構を介して、上記トロイダル型無段変速機に循環させる。この状態では、上記トロイダル型無段変速機の出力ディスクに、この遊星歯車機構を構成するキャリアからトルクが伝わる。この状態では、上記無段変速装置全体としての変速比は、遊星歯車の公転速度に応じて変化する。そこで、上記トロイダル型無段変速機の変速比を変えて、上記遊星歯車の公転速度を変えれば、上記無段変速装置全体としての変速比を調節できる。即ち、この状態では、トロイダル型無段変速機の変速比を減速側に変化させる程、無段変速装置全体の変速比は増速側に変化する。この様な高速走行時の状態では、無段変速装置全体の変速比を増速側に変化させるべく、トロイダル型無段変速機の変速比を減速側に変化させる程、このトロイダル型無段変速機に入力されるトルクが小さくなる。この結果、高速走行時に上記トロイダル型無段変速機に入力されるトルクを小さくして、このトロイダル型無段変速機の構成部品の耐久性向上を図れる。
【0021】特に、本発明の場合には、動力伝達機構を構成する一部の部品と上記トロイダル型無段変速機を構成する一部の部品とを互いに一体として、無段変速装置の小型・軽量化を図れる。即ち、上記動力伝達機構を構成する一部の部品を、上記トロイダル型無段変速機を構成する一部の部品と一体とした分、部品点数を少なくして、部品製作、部品管理、組立作業を何れも容易にできる。又、上記トロイダル型無段変速機の設置部分の軸方向を短縮して、上記無段変速装置の小型・軽量化を図れる。又、この軸方向の短縮に伴って、上記トロイダル型無段変速機の剛性を向上させ、強度並びに耐久性の向上を図れる。
【0022】
【発明の実施の形態】図1〜2は、本発明の実施の形態の第1例を示している。本発明の無段変速装置は、駆動源であるエンジン32(図11)の駆動軸33(クランクシャフト)につながって、このエンジン32により回転駆動される入力軸15を備える。この入力軸15の入力側端部(図1の左端部)と上記駆動軸33の出力側端部(図1の右端部)との間には、トルクコンバータ等の発進クラッチ(図示省略)及び緩衝継手44を、これら駆動軸33及び入力軸15に対し直列に設けている。従って、これら駆動軸33と入力軸15とを、互いに同心に配置している。これに対して、上記入力軸15の回転に基づく動力を取り出す為の出力軸36を、この入力軸15と平行に配置している。そして、このうちの入力軸15の周囲にトロイダル型無段変速機34を、上記出力軸36の周囲に遊星歯車機構37を、それぞれ設けている。
【0023】上記トロイダル型無段変速機34に付属のローディングカム式の押圧装置9を構成するカム板10は、上記入力軸15の中間部で入力ディスク2の外側面(図1の左側面)から突出した部分にスプライン係合(図示の例ではボールスプライン)させると共に、上記入力軸15の中間部に螺合させたローディングナット45により、軸方向に亙る移動を阻止した状態で、上記入力軸15に支持している。本例の場合には、上記ローディングナット45の外周面に、第二動力伝達機構43を構成する、第二駆動歯車46を、このローディングナット45と一体に、且つ、このローディングナット45と同軸に設けている。又、このローディングナット45の内周面の片半部(上記カム板10側半部で、図1〜2の右半部)には円筒面部48を、同じく他半部(図1〜2の左半部)にはこの円筒面部48よりも少し小径の雌ねじ部49を、それぞれ形成している。
【0024】この様なローディングナット45は、上記円筒面部48を上記入力軸15の中間部に密に外嵌すると共に、上記雌ねじ部49をこの入力軸40の中間部外周面に設けた雄ねじ部50に螺合させ更に緊締する事により、上記入力軸40の中間部に固定している。尚、無段変速装置の運転時に上記第二駆動歯車46から上記ローディングナット45に加わるトルクにより、このローディングナット45が緩むのを防止する為、このローディングナット45と上記入力軸15との間には、キー或はかしめ等の緩み止め手段を設ける事が好ましい。
【0025】又、上記トロイダル型無段変速機34を構成する入力ディスク2と出力ディスク4とは、上記入力軸15の周囲に、ニードル軸受16、16により、この入力軸15に対し、互いに独立した回転並びに軸方向に亙る若干の変位自在に支持している。そして、上記カム板10の片面(図1の右面)に形成したカム面13と入力ディスク2の外側面に形成したカム面14との間にローラ12、12を挟持し、上記押圧装置9を構成している。従って、上記入力ディスク2は上記入力軸15の回転に伴い、上記出力ディスク4に向け押圧されつつ回転する。上記ローディングナット45は、上記押圧装置9の作動時に、上記カム板10に加わる大きなスラスト荷重を支承する。又、このカム板10と上記ローディングナット45との間には、皿板ばね等の予圧ばね47を設けて、上記押圧装置9、並びに上記入力ディスク2と出力ディスク4との間に挟持した、次述するパワーローラ8、8に、予圧を付与している。
【0026】又、上記入力ディスク2の内側面2aと上記出力ディスク4の内側面4aとの間に複数個(通常2〜3個)のパワーローラ8、8(図7〜10参照)を挟持し、これら各パワーローラ8、8の周面8a、8aと上記両内側面2a、4aとを当接させている。これら各パワーローラ8、8は、トラニオン6、6及び変位軸7、7(図7〜10参照)により、回転及び揺動自在に支持している。上記トロイダル型無段変速機34は、従来から広く知られているトロイダル型無段変速機と同様に、上記トラニオン6、6を揺動させて上記各パワーローラ8、8を支持している変位軸7、7の傾斜角度を変える事により、上記入力ディスク2と上記出力ディスク4との間の変速比を変える。
【0027】又、前記遊星歯車機構37を構成する太陽歯車38は、前記出力軸36の中間部に固設している。従ってこの出力軸36は、上記太陽歯車38の回転に伴って回転する。この太陽歯車38の周囲にはリング歯車42を、上記太陽歯車38と同心に、且つ回転自在に支持している。そして、このリング歯車42の内周面と上記太陽歯車38の外周面との間に、複数個(通常は3〜4個)の遊星歯車組51、51を設けている。図示の例ではこれら各遊星歯車組51、51は、それぞれ1対ずつの遊星歯車52a、52bを組み合わせて成る。これら1対ずつの遊星歯車52a、52bは、互いに噛合すると共に、外径側に配置した遊星歯車52aを上記リング歯車42に噛合させ、内径側に配置した遊星歯車52bを上記太陽歯車38に噛合させている。この様に各遊星歯車組51、51をそれぞれ1対ずつの遊星歯車52a、52bにより構成するのは、上記リング歯車42と太陽歯車38との回転方向を一致させる為である。従って、他の構成部分との関係で、これらリング歯車42と太陽歯車38との回転方向を一致させる必要がなければ、単一の遊星歯車をこれらリング歯車42と太陽歯車38との両方に噛合させても良い。
【0028】上述の様な遊星歯車組51、51は、キャリア39の片側面(図1の左側面)に、上記出力軸36と平行な枢軸53a、53bにより、回転自在に支持している。又、上記キャリア39は、上記出力軸36の中間部に、第一スリーブ54を介して、回転自在に支持している。この第一スリーブ54は上記出力軸36の中間部周囲に、複数の転がり軸受を介して、回転自在に支持している。そして、上記第一スリーブ54及びキャリア39と上記出力軸36との間に、請求項2に記載した第二のクラッチに対応する、湿式多板クラッチである、低速用クラッチ55を設けている。この低速用クラッチ55は、上記第一スリーブ54に設けた給排孔56を通じての圧油の送り込みにより接続されて、上記出力軸36に対する上記第一スリーブ54の相対回転を不能にし、同じく排出により接続を断たれて、上記相対回転を可能にする。
【0029】又、上記第一スリーブ54と前記出力ディスク4とを、第一の動力伝達機構41により、回転力の伝達を可能な状態に接続している。この第一の動力伝達機構41は、上記出力ディスク4に対してスプライン係合させた第一駆動歯車57と、上記スリーブ51の周囲にスプライン係合させた第一従動歯車58と、これら第一駆動歯車57と第一従動歯車58とに噛合させた、図示しないアイドル歯車とから構成している。従って、上記低速用クラッチ55の接続時に、上記第一スリーブ54及び前記キャリア39は、上記出力ディスク4の回転に伴って、この出力ディスク4と同方向に、上記第一駆動歯車57と第一従動歯車58との歯数の比に応じた速度で回転する。
【0030】一方、前記入力軸15と前記リング歯車42とは、第二の動力伝達機構43と、第一のクラッチである高速用クラッチ59とを介して、回転力の伝達を可能な状態に接続自在としている。このうちの第二の動力伝達機構43は、上記入力軸15の中間部に螺合固定した前記ローディングナット45の外周面に固設した第二駆動歯車46と、前記出力軸36の周囲に回転自在に支持した第二従動歯車60とを、互いに噛合させる事により構成している。このうちの第二従動歯車60を設ける為、上記出力軸36の周囲に第二スリーブ61を、複数の転がり軸受により、回転自在に支持している。この様な第二スリーブ61は、上記入力軸15の回転に伴って、この入力軸15と反対方向に、上記第二駆動歯車46と第二従動歯車60との歯数の比に応じた速度で回転する。尚、前記第一の動力伝達機構41の減速比βと上記第二の動力伝達機構43の減速比αとの比β/αは、前記トロイダル型無段変速機34の最大増速時の減速比iH (図8に示した状態での入力ディスク2と出力ディスク4との減速比で、例えば0.5程度)とほぼ同じとしている。例えば、α=1とすれば、β≒iH にする。この理由は、後述する低速モードと高速モードとの間での切り換え時に、無段変速装置全体としての変速比が不連続になる事を防止若しくはその程度を低減する為である。そして、上記第二スリーブ61と上記リング歯車42との間に、湿式多板クラッチである、上記高速用クラッチ59を設けている。この高速用クラッチ59は、上記第二スリーブ61に設けた給排孔62を通じての圧油の送り込みにより接続され、同じく排出により接続を断たれる。
【0031】又、本発明の無段変速装置は、高速走行モードと低速走行モードと後退モードとの3種類のモードを切り換えるモード切換手段を備える。図示の例ではこのモード切換手段を、上述した高速用クラッチ59及び前述した低速用クラッチ55と、後退用クラッチ63との、3個のクラッチにより構成している。やはり湿式多板クラッチである、この後退用クラッチ63は、無段変速装置を収納したハウジング64と、前記リング歯車42との間に設けている。この後退用クラッチ63は、上記ハウジング64に固設したシリンダ65内への圧油の送り込みにより接続され、同じく排出により接続を断たれる。
【0032】これら3個のクラッチ59、55、63は、後述する様に、実現すべきモードに応じて何れか1個のクラッチのみを接続し、残る2個のクラッチは接続を断つ。尚、前述した低速用クラッチ55は、接続時に遊星歯車機構37を構成する前記各歯車38、42、52a、52b同士が相対変位する事を阻止し、前記キャリア39と前記太陽歯車38とを同期して回転させるものである。この為に上記低速用クラッチ55は、接続に伴って遊星歯車機構37の構成部材同士の相対変位を阻止自在な位置に設ける。図示の例では上記低速用クラッチ55を、上記キャリア39と太陽歯車38との間に設けている。この様な低速用クラッチ55は、接続時には、上記遊星歯車機構37を構成する太陽歯車38とリング歯車42と遊星歯車組51、51との相対変位を阻止し、これら太陽歯車38とリング歯車42と遊星歯車組51、51を支持したキャリア39とを一体的に結合する。これら高速用クラッチ59と低速用クラッチ55とは、何れか一方のクラッチが接続された場合には、他方のクラッチの接続が断たれる様に、制御回路(油圧、電気)を構成している。尚、上記低速用クラッチ55は、上述の様に、接続時に上記太陽歯車38とリング歯車42と遊星歯車組51、51との相対変位を阻止できるものであれば良く、図示の様な部位の他にも、太陽歯車38とリング歯車42との間、リング歯車42とキャリア39との間等に設ける事もできる。
【0033】又、前記後退用クラッチ63は、上記低速用クラッチ55と高速用クラッチ59との何れか一方が接続された状態では、接続が断たれる。又、この後退用クラッチ63が接続された状態では、上記低速用クラッチ55と高速用クラッチ59とは、何れも接続が断たれる。即ち、前記図示しない発進クラッチを除く、残り3個のクラッチ55、59、63は、何れか1個が接続されると、残り2個のクラッチの接続は断たれる。
【0034】更に、前記出力軸36とデファレンシャルギヤ35とを、この出力軸36の端部に固定した第三駆動歯車66と第三従動歯車67とにより構成する第三の動力伝達機構68により接続している。従って、上記出力軸36が回転すると、これら第三の動力伝達機構68及びデファレンシャルギヤ35を介して左右1対の駆動車軸69、69が回転し、自動車の駆動輪を回転駆動させる。
【0035】上述の様に構成する本例の無段変速装置の作用は、次の通りである。先ず、低速走行時には、前記低速用クラッチ55を接続すると共に、前記高速用クラッチ59及び後退用クラッチ63の接続を断つ。この状態で前記発進クラッチを接続し、前記入力軸15を回転させると、トロイダル型無段変速機34のみが、上記入力軸15から出力軸36に動力を伝達する。即ち、低速用クラッチ55の接続に伴って、前記太陽歯車38とキャリア39とが一体的に結合され、前記遊星歯車機構37を構成する各歯車38、42、52a、52b同士の相対回転が不能になる。又、上記高速用クラッチ59及び後退用クラッチ63の接続が断たれる事により、上記リング歯車42は、上記入力軸15の回転速度に関係なく回転自在となる。
【0036】従って、この状態で上記入力軸15を回転させると、この回転は前記押圧装置9を介して入力ディスク2に伝わり、更に複数のパワーローラ8、8を介して出力ディスク4に伝わる。更に、この出力ディスク4の回転は、第一の動力伝達機構41を構成する第一駆動歯車57及び第一従動歯車58、前記第一スリーブ54を介して、キャリア39及び前記各遊星歯車52a、52bに伝わる。上述の様にこの状態では、遊星歯車機構37を構成する各歯車38、42、52a、52b同士の相対回転が不能になっているので、上記出力軸36が、上記キャリア39と同じ速度で回転する。
【0037】この様な低速走行時に、入力、出力両ディスク2、4同士の間の変速比を変える際の作用は、前述の図7〜10に示した従来のトロイダル型無段変速機の場合と同様である。勿論、この状態では、上記入力軸15と出力軸36との間の変速比、即ち、無段変速装置全体としての変速比は、トロイダル型無段変速機34の変速比に比例する。又、この状態では、このトロイダル型無段変速機34に入力されるトルクは、上記入力軸15に加えられるトルクに等しくなる。尚、低速走行時には、前記第二の動力伝達機構43を構成する第二駆動歯車46及び第二従動歯車60は、空回りするだけである。
【0038】これに対して、高速走行時には、前記高速用クラッチ59を接続すると共に、前記低速用クラッチ55及び後退用クラッチ63の接続を断つ。この状態で前記発進クラッチを接続し、上記入力軸15を回転させると、この入力軸40から前記出力軸36には、上記第二の動力伝達機構43を構成する第二駆動歯車46及び第二従動歯車60と前記遊星歯車機構37とが、動力を伝達する。
【0039】即ち、上記高速走行時に上記入力軸15が回転すると、この回転は上記第二の動力伝達機構43並びに高速用クラッチ59を介してリング歯車42に伝わり、このリング歯車42を回転させる。そして、このリング歯車42の回転が複数の遊星歯車組51、51を介して太陽歯車38に伝わり、この太陽歯車38を固設した上記出力軸36を回転させる。上記リング歯車42が入力側となった場合に上記遊星歯車機構37は、上記各遊星歯車組51、51が停止している(太陽歯車38の周囲で公転しない)と仮定すれば、上記リング歯車42と太陽歯車38との歯数の比に応じた変速比で増速を行なう。但し、上記各遊星歯車組51、51は上記太陽歯車38の周囲を公転し、無段変速装置全体としての変速比は、これら各遊星歯車組51、51の公転速度に応じて変化する。そこで、上記トロイダル型無段変速機34の変速比を変えて、上記遊星歯車組51、51の公転速度を変えれば、上記無段変速装置全体としての変速比を調節できる。
【0040】即ち、図示の例では、上記高速走行時に上記各遊星歯車組51、51が、上記リング歯車42と同方向に公転する。そして、これら各遊星歯車組51、51の公転速度が遅い程、上記太陽歯車38を固定した出力軸36の回転速度が速くなる。例えば、上記公転速度とリング歯車42の回転速度(何れも角速度)が同じになれば、上記リング歯車42の回転速度と出力軸36の回転速度とが同じになる。これに対して、上記公転速度がリング歯車42の回転速度よりも遅ければ、上記リング歯車42の回転速度よりも出力軸36の回転速度が速くなる。反対に、上記公転速度がリング歯車42の回転速度よりも速ければ、上記リング歯車42の回転速度よりも出力軸36の回転速度が遅くなる。
【0041】従って、上記高速走行時には、前記トロイダル型無段変速機34の変速比を減速側に変化させる程、無段変速装置全体の変速比は増速側に変化する。この様な高速走行時の状態では、上記トロイダル型無段変速機34に、入力ディスク2側からではなく、出力ディスク4側からトルクが加わる(低速時に加わるトルクをプラスのトルクとした場合にマイナスのトルクが加わる)。即ち、前記高速用クラッチ59を接続した状態では、前記エンジン32から入力軸15に伝達されたトルクは、前記押圧装置9が前記入力ディスク2を押圧する以前に、前記第二の動力伝達機構43及び高速用クラッチ59を介して前記遊星歯車機構37のリング歯車42に伝達される。従って、入力軸15の側から上記押圧装置9を介して入力ディスク2に伝達されるトルクは殆どなくなる。
【0042】一方、上記第二の動力伝達機構43を介して前記遊星歯車機構37のリング歯車42に伝達されたトルクの一部は、前記各遊星歯車組51、51から、キャリア39及び第一の動力伝達機構41を介して出力ディスク4に伝わる。この様に出力ディスク4側からトロイダル型無段変速機34に加わるトルクは、無段変速装置全体の変速比を増速側に変化させるべく、トロイダル型無段変速機34の変速比を減速側に変化させる程小さくなる。この結果、高速走行時に上記トロイダル型無段変速機34に入力されるトルクを小さくして、このトロイダル型無段変速機34の構成部品の耐久性向上を図れる。
【0043】更に、自動車を後退させるべく、前記出力軸36を逆回転させる際には、前記低速用、高速用両クラッチ55、59の接続を断つと共に、前記後退用クラッチ63を接続する。この結果、上記リング歯車42が固定され、上記各遊星歯車組51、51が、このリング歯車42並びに前記太陽歯車38と噛合しつつ、この太陽歯車38の周囲を公転する。この結果、この太陽歯車38並びにこの太陽歯車38を固定した出力軸36が、前述した高速走行時並びに上述した低速走行時とは逆方向に回転する。
【0044】尚、図3は、上述の様な無段変速装置により、無段変速装置全体としての変速比(itotal)を連続して変化させる場合に、トロイダル型無段変速機34の変速比(icvt)と、このトロイダル型無段変速機34に入力される入力トルク(Tin)と、無段変速装置の出力軸36から取り出される出力トルク(Ts )とが変化する状態の1例を示している。これら各変速比(itotal)(icvt)並びに各トルク(Tin)(Ts )の関係は、トロイダル型無段変速機34の変速幅、遊星歯車機構37の構造並びに歯数比、第二の動力伝達機構43の減速比等に応じて変わる。本発明を実施する場合にこれらの値並びに構造は、設計的に定める。図3に記載した各線を得る為の条件としては、トロイダル型無段変速機34の変速幅を凡そ4倍(0.5〜2.0)とし、遊星歯車機構37はそれぞれが1対ずつの遊星歯車52a、52bから成る遊星歯車組51、51を備え、第二の動力伝達機構43の減速比は凡そ2であるとして計算した。又、低速用クラッチ55と高速用クラッチ59との切り換えは、無段変速装置全体としての変速比(itotal)が1の場合に行なうとした。
【0045】尚、実際の無段変速装置を構成する場合には、無段変速装置全体としての変速比(itotal)が1の場合に常に低速用クラッチ55と高速用クラッチ59との切り換えを行なう様にすると、上記変速比(itotal)が1の前後で走行している場合に、頻繁にこれら両クラッチ55、59の切り換えが行なわれる。この様な事態は、運転者に違和感を与えるだけでなく、これら各クラッチ55、59の耐久性にも悪影響を及ぼす。従って、実際の無段変速装置を構成する場合には、上記変速比(itotal)が高くなる場合と低くなる場合とで上記各クラッチ55、59の切り換えのタイミングを変える、所謂ヒステリシスを設ける。例えば、上記変速比(itotal)の値が小さくなる(変速比の値が図3の左から右に変化する)際の切り換えのタイミングを、この値が大きくなる(変速比の値が図3の右から左に変化する)際の切り換えのタイミングよりも、変速比の値が小さい時点と(図3の右側に)する。
【0046】上述の様な条件で試算した結果を示す図3で、縦軸は、トロイダル型無段変速機34の変速比(icvt)並びに、トロイダル型無段変速機34の入力トルク(Tin)、又は無段変速装置の出力トルク(Ts )と前記エンジン32(図11)から前記入力軸15に伝えられるトルク(Te )との比(Tin/Te )(Ts /Te )を、横軸は、無段変速装置全体としての変速比(itotal)を、それぞれ表している。尚、トロイダル型無段変速機34の変速比(icvt)を示す値がマイナスなのは、このトロイダル型無段変速機34に組み込んだ出力ディスクの回転方向が入力軸15の回転方向と逆になる為である。又、実線aは、上記トロイダル型無段変速機34の変速比(icvt)を、破線bは、上記出力トルク(Ts )と前記エンジン32から前記入力軸15に伝えられるトルク(Te )との比(Ts /Te )を、鎖線cは、上記入力トルク(Tin)と前記エンジン32から前記入力軸40に伝えられるトルク(Te )との比(Tin/Te )を、それぞれ表している。この様な図3の記載から明らかな通り、本発明の無段変速装置によれば、高速走行時にトロイダル型無段変速機34に加わるトルクを小さくできる。図3を求めた条件では、上記入力トルク(Tin)を、最大限、上記エンジン32から前記入力軸15に伝えられるトルク(Te )の14%程度にまで低減できる。更に、条件を変える事により、10%程度までの低減が可能である。
【0047】又、上記トロイダル型無段変速機34の伝達効率は90%弱であるが、高速走行時には、動力のうちの多くの割合を、伝達効率が高い(100%に近い)遊星歯車機構37を介して伝達するので、無段変速機全体としての伝達効率を高くできる。例えば、トロイダル型無段変速機34の伝達効率を90%(動力損失が10%)、遊星歯車機構37の伝達効率を100%、入力軸15から送り込まれたトルクのうち、トロイダル型無段変速機34を通過するトルクの割合を10%とすると、このトロイダル型無段変速機34部分での動力損失は0.1×0.1=0.01=1%となり、無段変速機全体としての伝達効率は100−1=99(%)と、きわめて高くなる。
【0048】又、本発明の無段変速装置の場合には、前記第二の動力伝達機構43を構成する第二駆動歯車46と、上記トロイダル型無段変速機34を構成するローディングナット45とを互いに一体としている為、無段変速装置の小型・軽量化を図れる。即ち、上記第二駆動歯車46とローディングナット45とを一体とした事により、部品点数を少なくして、部品製作、部品管理、組立作業が何れも容易にできる。又、これら第二駆動歯車46とローディングナット45とを直径方向に亙り互いに重ね合わせて配置した分、上記トロイダル型無段変速機34及び上記第二の動力伝達機構43の設置部分の軸方向を短縮して、上記無段変速装置の小型・軽量化を図れる。
【0049】又、この軸方向の短縮に伴って、上記トロイダル型無段変速機34の剛性を向上させ、強度並びに耐久性の向上を図れる。特に、本例の場合には、上記第二駆動歯車46とローディングナット45とを一体とした為、この第二駆動歯車46と入力軸15との間に、相対回転を防止する為のスプラインを形成する必要がなく、その分、上記第二駆動歯車46を設置した部分に於ける上記入力軸15の外径を大きくして、この入力軸15の剛性を確保できる。即ち、上記第二駆動歯車46とローディングナット45とを別体とした場合には、この第二駆動歯車46と入力軸15との間に、相対回転を防止する為のスプラインを形成する必要が生じる。又、ローディングナットを螺合する為に上記入力軸15の外周面に形成する雄ねじ部の外径は、上記スプラインの谷径以下にする必要がある。この為、上記第二駆動歯車46とローディングナット45とを別体とした場合には、上記入力軸15の外径が小さくなり、この入力軸15の剛性が低くなるが、本例の場合には、この様な問題をなくせる。
【0050】次に、図4は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、トロイダル型無段変速機34(図1参照)に付属の押圧装置9を構成するカム板10と、第二の動力伝達機構43を構成する第二駆動歯車46とを、互いに一体に構成している。即ち、上記カム板10の外周縁部を直径方向外方に少し延長し、この延長部分を上記第二駆動歯車46としている。上記カム板10は入力軸15の中間部に、ボールスプライン70により、軸方向に亙る変位のみ自在に支持している。そして、上記カム板10と上記入力軸15に螺合固定したローディングナット45との間に、予圧ばね47を設けている。この様な本例の構造の場合も、上記トロイダル型無段変速機34及び上記第二の動力伝達機構43の設置部分の軸方向を短縮して、上記無段変速装置の小型・軽量化を図れる。又、この軸方向の短縮に伴って、上記トロイダル型無段変速機34の剛性を向上させ、強度並びに耐久性の向上を図れる。
【0051】次に、図5は、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合には、入力軸15の中間部外周面に動力伝達板71を螺合固定し、この動力伝達板71の片側面(図5の右側面)に形成した駆動側突起72、72とカム板10の片側面(図5の左側面)に形成した従動側突起73、73とを係合させている。又、上記入力軸15にはローディングナット45を、上記動力伝達板71に隣接した状態で螺合固定し、上記カム板10から加わるスラスト荷重を支承自在とすると共に、上記動力伝達板71の緩み止めを図っている。又、上記カム板10は上記入力軸15の中間部周囲に、ニードル軸受74により、回転及び軸方向に亙る変位自在に支持している。更に、トロイダル型無段変速機34の構成部材である、上記動力伝達板71の外周寄り部分により、第二の駆動力伝達機構43(図1参照)を構成する為の第二駆動歯車46を構成している。
【0052】上述の様に構成する本例の場合には、上記入力軸15に対して上記カム板10を支持する為のボールスプラインを使用しないので、この入力軸15の剛性がボールスプライン溝により低下する事がない。そして、ボールスプライン溝を省略する代わりに設けた上記動力伝達板71と上記第二駆動歯車46とを一体に設けているので、上記トロイダル型無段変速機34及び上記第二の動力伝達機構43の設置部分の軸方向を短縮して、上記無段変速装置の小型・軽量化を図れる。又、この軸方向の短縮に伴って、上記トロイダル型無段変速機34の剛性を向上させ、強度並びに耐久性の向上を図れる。尚、本例を実施する場合に、上記動力伝達板71とローディングナット45とを一体にしても良い。
【0053】次に、図6は、本発明の実施の形態の第4例を示している。本例の場合には、トロイダル型無段変速機34(図1参照)を構成する出力ディスク4の外周縁部に歯を形成する事により、この出力ディスク4に、第一の動力伝達機構41(図1参照)を構成する第一駆動歯車57としての機能を合わせ持たせている。従って、この第一駆動歯車57を、上記出力ディスク4と別個に用意する必要はない。この様な本例の構造の場合には、上記トロイダル型無段変速機34及び上記第一の動力伝達機構41の設置部分の軸方向を短縮して、無段変速装置の小型・軽量化を図れる。又、この軸方向の短縮に伴って、上記トロイダル型無段変速機34の剛性を向上させ、強度並びに耐久性の向上を図れる。
【0054】
【発明の効果】本発明は、以上に述べた通り構成され作用するので、比較的簡単で、小型・軽量、且つ低コストで造れる構造にも拘らず、無段変速装置に組み込んだトロイダル型無段変速機の構成部品に加わる荷重を軽減して、耐久性の向上を図れる。特に、トロイダル型無段変速機及び第一、第二の動力伝達機構41、43の設置部分の軸方向寸法の短縮により、小型・軽量化をより進める事ができる。又、伝達効率を高くして、自動車の動力性能並びに燃費性能の向上に寄与できる。更に、部品点数の削減によるコスト低減も図れる。
【出願人】 【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
【出願日】 平成10年(1998)2月20日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】小山 武男 (外1名)
【公開番号】 特開平11−230300
【公開日】 平成11年(1999)8月27日
【出願番号】 特願平10−38619