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【発明の名称】 自動二輪車の自動変速機
【発明者】 【氏名】鈴木 清一

【要約】 【課題】エンジンのデザインに悪影響を及ぼすことなく、Vベルトの公比を大きくでき、スクータ等の小径タイヤの場合でもバンク角を大きくできる自動二輪車の自動変速機を提供する。

【解決手段】自動二輪車のエンジン1のクランク軸4に嵌着されたドライブプーリ8と、ドライブ軸6に嵌着されたドリブンプーリ15と、クランク軸4とドライブ軸6とのほぼ中間に介在されたアイドルプーリ22と、これらドライブプーリ8、ドリブンプーリ15、及びアイドルプーリ22の間に巻きかけられた第一、第二のVベルト25、26とを備える。そして、アイドルプーリ22を、アイドル軸7に間隔をおいて嵌着された一対のアウタープーリ23と、この一対のアウタープーリ23間にスライド可能に介在されたインナープーリ24とから構成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 自動二輪車のエンジンのクランク軸に取り付けられたドライブプーリと、ドライブ軸に取り付けられたドリブンプーリと、前記クランク軸と該ドライブ軸との間に介在されたアイドルプーリと、これらドライブプーリ、ドリブンプーリ、及びアイドルプーリの間に巻きかけられた複数のベルトとを含み、前記アイドルプーリは、アイドル軸に間隔をおいて嵌め着けられた一対のアウタープーリと、この一対のアウタープーリ間にスライド可能に介在されたインナープーリとを備えてなることを特徴とする自動二輪車の自動変速機。
【請求項2】 前記ドライブプーリと前記アイドル軸との間に始動装置を備えてなる請求項1記載の自動二輪車の自動変速機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スクータ等に取り付けられる自動二輪車の自動変速機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】スクータやモペット等には軽量性や小騒音等に優れるVベルト式の自動変速機が取り付けられるが、この図示しない自動変速機において、Vベルトの公比(LOW/TOP)を大きくするには、ドライブプーリとドリブンプーリのプーリ径を大きくするのが一般的である。このように構成するのは、(1)Vベルトの最小径は、軸の強度上、及びムーバブルドライブフェイスの内径の面圧を考慮し、最小径を小さく構成することができない。また、(2)Vベルトの耐久性からVベルトの半径を極端に小さくすることができない、という理由に基づくものである。したがって、従来においては、ドライブプーリとドリブンプーリのプーリ径を大きくしなければ、Vベルトの公比を大きくすることができない。
【0003】なお、この種の自動変速機に関する先行技術文献として、特開昭63−38746号公報等があげられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ドライブプーリとドリブンプーリのプーリ径を大きく設定すると、クランクケースとそのカバーの幅が上下に広がり、自動二輪車のデザインに悪影響を及ぼすという問題があった。また、スクータ等の小径タイヤの場合、バンク角を大きくとることができないという問題があった。
【0005】本発明は、前記従来の問題に鑑みなされたもので、エンジンのデザインに悪影響を及ぼすことなく、Vベルトの公比を大きくすることができ、スクータ等の小径タイヤの場合でもバンク角を大きくすることのできる自動二輪車の自動変速機を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明においては、前記課題を達成するため、自動二輪車のエンジンのクランク軸に取り付けられたドライブプーリと、ドライブ軸に取り付けられたドリブンプーリと、前記クランク軸と該ドライブ軸との間に介在されたアイドルプーリと、これらドライブプーリ、ドリブンプーリ、及びアイドルプーリの間に巻きかけられた複数のベルトとを含み、前記アイドルプーリは、アイドル軸に間隔をおいて嵌め着けられた一対のアウタープーリと、この一対のアウタープーリ間にスライド可能に介在されたインナープーリとを備えてなることを特徴としている。なお、前記ドライブプーリと前記アイドル軸との間に始動装置を備えることができる。
【0007】ここで、特許請求の範囲における「自動二輪車」には、少なくともオンロード、スクータ、ファミリーバイク、又はモペット等が含まれる。また、「エンジン」には、2気筒エンジン、4気筒エンジン、V型エンジン、又はユニットスイングエンジン等の種類があるが、特に限定するものではない。また、「複数のベルト」は、2本用いた二段掛けでも良いし、それ以上の多段掛けでも良い。したがって、アイドル軸とアイドルプーリとは単数複数いずれでも良い。また、アイドルプーリを構成する一対のアウタープーリは、アイドル軸にスプライン嵌合、ナット締め、又は溶接等の手段により固定して取り付けられる。さらに、「インナープーリ」は、アイドル軸方向にスライド可能なものであれば、回転自在の構成でも良く、又スプライン嵌合でも、それ以外の周知慣用手段で介在状態に取り付けても良い。
【0008】請求項1記載の発明によれば、例えば、第一、第二のベルトを2本用いた二段掛けの場合、自動二輪車のアイドリングやスタート時等においては、ドライブプーリに巻かれた第一のベルトが回転半径の小さい状態で回転し、アイドルプーリのインナープーリが車体の内側方向に位置し、アイドルプーリに巻かれた第一のベルトが押し出されて回転半径が拡大するとともに、アイドルプーリに巻かれた第二のベルトの回転半径が小さくなる。また、ドリブンプーリの回転半径が大きくなる。これは、ドライブプーリ側のローラの遠心力による力よりもドリブンプーリ側のスプリング力が大きいためで、減速比の一番大きい状態である。
【0009】エンジンの回転数が上昇すると、ローラの遠心力が大きくなり、スプリング力に打ち勝つと、第一のベルトのドライブ側のベルト回転半径が大きくなり、第一のベルトのアイドル側のインナープーリが左側に徐々に移動し、第一のベルトのアイドル側ではベルトの回転半径が小さくなる。また同時に、第二のベルトのアイドル側のベルト回転半径は徐々に大きくなり、第二のベルトのドリブン側のベルト回転半径が小さくなる。このような作用により、低速から高速まで幅広いベルト公比が可能となる。この公比は、単一のベルトに比べ、大きく取ることができる。
【0010】また、請求項2記載の発明によれば、ドライブプーリとアイドル軸との間の特に用途のない空間に始動装置の全部又は一部を設置することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。本実施形態における自動二輪車の自動変速機は、大型のスクータ(例えば、250cc、400cc等)からなる自動二輪車のエンジン1のクランク軸4とドライブ軸6との間にアイドル軸7を介在し、クランク軸4にドライブプーリ8を、ドライブ軸6にドリブンプーリ15をそれぞれ嵌着し、アイドル軸7にはアイドルプーリ22を嵌着し、ドライブプーリ8とアイドルプーリ22との間に第一のVベルト25を巻架するとともに、アイドルプーリ22とドリブンプーリ15との間には第二のVベルト26を巻架し、ドライブプーリ8とアイドル軸7との間にはキックスタータ27を介在配備している。
【0012】エンジン1は、ユニットスイングタイプからなり、シリンダを搭載するクランクケース2を備えており、このクランクケース2の前部の内部両側間にはコンロッド3を貫通支持するクランク軸4が軸受を介し回転可能に軸架されている。クランクケース2の側部は、開口形成され、この開口側部にはカバー5が締結具を介し着脱自在に覆着されている。また、ドライブ軸6は、クランクケース2の後部に軸受を介し軸支され、図示しないギヤボックス内のアイドルシャフト、及びリヤアクスルシャフトを介してリヤタイヤに動力を伝達する。また、アイドル軸7は、短く構成され、クランクケース2のほぼ中央部とカバー5との間に軸受を介し回転可能に軸架されており、クランク軸4とドライブ軸6のほぼ中間に位置している。
【0013】ドライブプーリ8は、クランク軸4の内側にスペーサを介しスライド可能に嵌合されたムーバブルドライブフェイス9と、クランク軸4の端部側に嵌着されたフィクストドライブフェイス10とを対向状態に備えている。ムーバブルドライブフェイス9は、その対向面がテーパ形に形成され、反対向面が開口面に形成されており、内部に所定の間隔をおいて複数のウエイトローラ11が皿形のプレート12を介し移動可能・転動可能に内蔵されている。また、フィクストドライブフェイス10は、断面皿形に形成され、クラッチカバー内の温度上昇を緩和するファン13、スタータ14、ワッシャ、及びナットが重ねて取り付けられている。
【0014】ドリブンプーリ15は、ドライブ軸6の内側に軸受を介し嵌合されたフィクストドリブンフェイス16と、ドライブ軸6の端部側にスペーサを介しスライド可能に嵌合されたムーバブルドリブンフェイス17とを対向状態に備えている。フィクストドリブンフェイス16の周面には複数のトルクカムピン18が所定の間隔をおいて螺着突出している。また、ムーバブルドリブンフェイス17は、その周面にトルクカムピン18に嵌まるトルクカム19が周方向に傾斜して複数切り欠かれ、円筒形のシート20に嵌合被覆されている。
【0015】ムーバブルドリブンフェイス17にはクラッチシュー21がフィクストドリブンフェイス16のボスの端部に装着されている。また、ムーバブルドリブンフェイス17とクラッチシュー21との間には、変速をコントロールするスプリング17aが嵌入して介在されている。このスプリング17aは、フィクストドリブンフェイス16方向にムーバブルドリブンフェイス17を付勢するよう作用する。
【0016】アイドルプーリ22は、アイドル軸7に間隔をおいて嵌着対設された左右一対のアウタープーリ23と、アイドル軸7にスプライン嵌合等されて一対のアウタープーリ23の間に位置する断面ほぼ算盤玉形のインナープーリ24とを備えている。各アウタープーリ23は断面皿形に形成されている。また、インナープーリ24は、アイドル軸7の左右方向、換言すれば、軸方向にスライドするよう機能する。また、第一、第二のVベルト25、26は、耐熱性や耐耗性等に優れるガラス繊維やケプラー繊維等を用いてエンドレスに形成され、内周面に複数の歯が並設されている。
【0017】さらに、キックスタータ27は、キックペダル28と、このキックペダル28を端部に備えたスタータ軸29とを備え、このスタータ軸29がクランクケース2とカバー5との間にクリップやブシュを介して軸架されている。スタータ軸29にはほぼ扇形のドライブギヤ30がコイル形のスタータスプリング31を介して嵌着され、このドライブギヤ30がカバー5に突出可能に軸支されたドリブンギヤ32に噛合されており、このドリブンギヤ32からスタータ14に動力が伝達される。これらドリブンギヤ32とスタータ14との対向部にはラチェット機構33が配設されている。
【0018】前記構成において、キックペダル28を踏むと、ドライブギヤ30がドリブンギヤ32を回転させ、ドリブンギヤ32が突出し、このドリブンギヤ32からスタータ14に動力が伝達され、クランク軸4が回転する。エンジン1が始動すると、ラチェット機構33がドリブンギヤ32に対する伝動を遮断する。
【0019】前記構成によれば、従来のような単一のVベルトではなく、第一、第二のVベルト25、26を使用してスムーズに変速するので、ドライブプーリ8とドリブンプーリ15のプーリ径を大きく設定する必要性がない。したがって、変速公比を従来のほぼ2乗倍と大きくでき、変速の幅も広くすることができる。この点に関し、近年、大型のスクータが登場しているが、従来の自動変速機では変速公比を大きくとることができず、性能の向上を期待することができない。しかしながら、本実施形態では、大きな変速公比を十分に得ることができ、大型のスクータの速度等の性能を著しく向上させることができる。
【0020】また、クランクケース2とそのカバー5の幅が上下に広がることもないので、デザインに悪影響を及ぼすおそれが全くない。さらに、デザインや形状等に悪影響を及ぼすおそれがないので、スクータ等のタイヤが例え小径でも、バンク角を大きくとることが可能になる。
【0021】
【発明の効果】以上のように請求項1記載の発明によれば、エンジンのデザインに悪影響を及ぼすことなく、Vベルトの公比を大きくとることができるという効果がある。また、スクータ等の小径タイヤの場合でもバンク角を大きくすることが可能になる。さらに、請求項2記載の発明によれば、不使用の空間に始動装置を設置するので、エンジンに始動装置専用の取付空間を特に設ける必要がなく、スペースを有効利用することができる。
【出願人】 【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
【出願日】 平成10年(1998)2月10日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
【公開番号】 特開平11−230285
【公開日】 平成11年(1999)8月27日
【出願番号】 特願平10−28624