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【発明の名称】 ベルト張力調整部材
【発明者】 【氏名】安原 伸二

【氏名】玉川 隆雄

【要約】 【課題】従来のベルト張力調整部材では、ベルトの有効長さの変化を大きく確保しようとすると、大型になる。

【解決手段】揺動部材13の第1の端部11を回動軸線12の回りに回動自在に支持する。揺動部材13の第2の端部14に、ベルト2の外周面2aに係合するテンショナプーリ15を配置する。ベルト2の内周面2bに係合するアイドラプーリ16を第1の端部11に回動軸線12の回りに回動自在に支持する。アイドラプーリ16を別の位置に配置する場合と比較して、スペースを削減できる。小型でもベルト有効長さを十分な量で変化させることができる。アイドラプーリ16が変位しないので、レイアウトが自在である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】固定部材と、第1の端部が上記固定部材に所定の回動軸線の回りに回動自在に支持された揺動部材と、この揺動部材の第2の回動軸線の回りに回動自在に支持され、且つ複数のプーリに巻き回されるベルトの第1の面に係合されるテンショナプーリと、上記揺動部材の第1の端部に回動自在に支持され、上記複数のプーリのうちテンショナプーリに隣接するプーリとテンショナプーリとの間の中間位置でベルトの第2の面に係合されるアイドラプーリとを備えたことを特徴とするベルト張力調整部材。
【請求項2】上記アイドラプーリは上記所定の回動軸線の回りに回動自在であることを特徴とする請求項1記載のベルト張力調整装置。
【請求項3】上記アイドラプーリはテンショナプーリと共働してベルトの有効長さを増減させるように、上記所定の回動軸線から所定距離離れた位置にある回動軸線の回りに回動自在であることを特徴とする請求項1記載のベルト張力調整部材。
【請求項4】上記テンショナプーリの動作位置を揺動部材を介して能動的に変更する油圧アクチュエータをさらに備えることを特徴とする請求項1,2又は3記載のベルト張力調整部材。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】例えば、可変径プーリを有する無段変速機等のベルト伝動装置に適用され、可変径プーリの有効径を変更させるべくベルトの張力を調整するベルト張力調整部材に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、ベルト伝動装置は、例えば、自動車のカーコンプレッサやオイルポンプ等の補機を駆動するために用いられている。このベルト伝動装置では、エンジンのクランク軸からプーリ及びベルトを介して一定の変速比で駆動力が伝達されており、クランク軸の回転数の増加と共に各種補機の回転数が増加する。その回転数の増加と共に各種補機の効率も増加するが、ある回転数以上では逆に効率が低下する。
【0003】したがって、補機を必要以上の回転数で回転させることは、エネルギを無駄に消費し、補機の耐久性にも影響を与える。そこで、可変径プーリを用いて補機の回転数を調整し得るようにした無段変速機が提案されている(例えば、公表特許公報平2−500261号)。この公報の無段変速機では、ベルトに張力を負荷することにより可変径プーリの有効径を変化させる変速比設定用のテンショナを備えている。このテンショナでは、ベルトに係合する回転自在なテンショナプーリの動作位置を、油圧アクチュエータによって変位させて変位後の位置をロックすることにより、可変径プーリの有効径を変化させるようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、車両のエンジンルーム内は、各種の補機が密集されていてスペースが狭いため、上記のテンショナを設置する位置はかなり制約される。このため、テンショナの設置位置によっては、テンショナプーリを変位させても、ベルト有効長の十分な変化量が得られない結果、変速比を大きくとれない場合がある。
【0005】そこで、アイドラプーリを設置することが考えられるが、上記の狭いスペースに配置することは非常に困難である。本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、狭いスペースにも組み込むことができ、しかも十分な量のベルト有効長さの変化を得ることのできるベルト張力調整部材を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための課題解決手段として、請求項1記載の発明の態様は、固定部材と、第1の端部が上記固定部材に所定の回動軸線の回りに回動自在に支持された揺動部材と、この揺動部材の第2の回動軸線の回りに回動自在に支持され、且つ複数のプーリに巻き回されるベルトの第1の面に係合されるテンショナプーリと、上記揺動部材の第1の端部に回動自在に支持され、上記複数のプーリのうちテンショナプーリに隣接するプーリとテンショナプーリとの間の中間位置でベルトの第2の面に係合されるアイドラプーリとを備えたことを特徴とするものである。
【0007】この態様では、揺動部材の回動軸線が配置される第1の端部にアイドラプーリを配置したので、別の位置にアイドラプーリを配置する場合と比較して、設置スペースを削減できる。また、ベルト有効長さの所要の変化量を得るために必要な揺動部材の揺動角度を相対的に小さくてできるので、小型化を図れる。さらに、テンショナプーリとアイドラプーリとの位置関係が変わらないので、揺動部材の揺動に伴って両者が干渉することがなく、したがって、両者の干渉を一切考慮することなく自在なレイアウトが可能になる。
【0008】請求項2記載の発明の態様は、請求項1において、上記アイドラプーリは上記所定の回動軸線の回りに回動自在であることを特徴とするものである。この態様では、請求項1記載の発明の態様と同様の作用を奏することができ、さらに、揺動部材の例えば回動の支軸によってアイドラプーリを支持することもでき、構造の簡素化を通じて製造コストを安くできる。また、アイドラプーリの位置が変わらないので、揺動部材の揺動時にアイドラプーリが他の部材と干渉することを一切考慮する必要がない結果、一層自在なレイアウトが可能となる。
【0009】請求項3記載の発明の態様は、請求項1において、上記アイドラプーリはテンショナプーリと共働してベルトの有効長さを増減させるように、上記所定の回動軸線から所定距離離れた位置にある回動軸線の回りに回動自在であることを特徴とするものである。この態様では、例えば、テンショナプーリがベルトの有効長さを増大させるときに、アイドラプーリもベルトの有効長さを増大させるように変位させることができるので、ベルト有効長さの所要の変化量を得るために必要な揺動部材の揺動角度を一層小さくすることができる。
【0010】請求項4記載の発明の態様は、請求項1,2又は3において、上記テンショナプーリの動作位置を揺動部材を介して能動的に変更する油圧アクチュエータをさらに備えることを特徴とするものである。この態様では、テンショナプーリの動作位置を能動的に変更して変速比を調整する。油圧アクチュエータを含むベルト張力調整部材に関して、レイアウトの自在性が増す。また、油圧アクチュエータによるテンショナプーリの変位量が少なくても、十分な量のベルト有効長さの変化を得ることができ、結果として、油圧アクチュエータを含めたベルト張力調整部材の小型化を図ることができる。特に直線動型の油圧アクチュエータを用いた場合に小型化の効果が顕著にある。なお、油圧アクチュエータとしては、直動型の油圧シリンダであっても良いし、ベーンモータ等の回転型の油圧アクチュエータであっても良い。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明の好ましい実施形態を添付図面を参照しつつ説明する。図1は本発明のベルト張力調整部材が適用されたベルト伝動装置の概略図である。以下に提示する本発明の実施の形態の説明においては、ベルトで駆動されるベルト伝動装置中の、駆動プーリだけを可変径プーリとしてある構成に即して説明していく。ただし、1のシステムにおいて、1ないし2つ以上の従動プーリを可変径プーリとすることも可能であり、また、そうした場合には、駆動プーリを可変径プーリとしてもしなくても良いことになる。
【0012】図1において、ベルト2で駆動される補機3(補機3は、これに備えられているプーリによって代表して表されている)を備えた無段変速装置としてのベルト伝動装置1の全体概略図である。補機3は、エンジンのクランクシャフトに連結してある可変径プーリ4によって駆動される。本実施の形態では、単一の補機を駆動する場合について示してあるが、複数の補機を一括して駆動するものであっても良い。補機3としては、例えば、クーリングファン、オルタネータ、エアコンディショナ用コンプレッサ、パワーステアリング用ポンプ及びウォータポンプ等がある。
【0013】ベルト張力調整部材5は、例えば車両の駆動源のボディ等で構成される固定部材10(図2参照)によって、第1の端部11が回動軸線12の回りに揺動自在に支持された揺動部材13を備えている。揺動部材13の第2の端部14には、補機3のプーリと可変径プーリ4との中間位置で、ベルト2の第1の面、例えば外周面2aに係合するテンショナプーリ15が回動自在に支持されている。また、揺動部材13の第1の端部11には、テンショナプーリ15と補機3のプーリとの間の中間位置で、ベルト2の第2の面、例えば内周面2bに係合する位置固定型のアイドラプーリ16が回動自在に支持されている。
【0014】テンショナプーリ15は、揺動部材13の回動によって、ベルト2への張力を増す方向と減らす方向へ変位可能となっている。ベルト張力調整部材5は、揺動部材13を揺動させる油圧アクチュエータとして、例えば油圧シリンダ17を備えている。この油圧シリンダ17は、シリンダ本体18の一端19が車両の駆動源のボディ等の固定部材に回動自在に支持され、ロッド20の先端21の連結部材22を介して、揺動部材13の第2の端部14であってテンショナプーリ15の回動軸線47の同軸上に取り付けられている。油圧シリンダ17が図1に示す状態からロッド20を伸長させると、図4に示すように、可変径プーリ4に備えられている動力伝達リング23が可変径プーリ4の中心4aに対して偏心して、ベルト2に対する可変径プーリ4の有効半径が小さくなり、結果として、補機3のプーリが減速されることになる。
【0015】具体的には、テンショナプーリ15の動作は、コントローラ7によって制御されている。このコントローラ7は、可変径プーリ4の回転速度を検出する状態量検出手段としての第1の速度センサ8の出力信号、及びアイドラプーリ16の回転速度を検出する状態量検出手段としての第2の速度センサ9の出力信号を入力している。可変径プーリ4の回転速度は駆動源の回転数に等しく、アイドラプーリ16の回転速度はベルト2の走行速度に相当している。上記の電磁弁6は、油圧シリンダ17と、この油圧シリンダ17に作動油を供給する油圧源24との間に介在し、油圧シリンダ17への作動油の出入りを許容する状態と、禁止する状態とに切り換えるものである。コントローラ7は、上記電磁弁6に対して信号を出力して、電磁弁6の状態を切り換える。
【0016】そして、コントローラ7による制御としては、第1の速度センサ8からの出力信号を入力して駆動源の回転速度を検出し、例えば、駆動源の回転数が所定レベルよりも低い状態でロッド20を図1に示すように短縮させておくことにより、駆動源の回転数に対して補機3の回転数を相対的に高くし、また、駆動源の回転数が所定レベル以上の状態で図4に示すようにロッド20を伸長させておくことにより、駆動源の回転数に対して補機3の回転数を相対的に低くすることができる。さらに、コントローラ7は、第2の速度センサ9からの出力信号の入力により、ベルト2の走行速度を検出し、この走行速度が駆動源の回転数に対して所定の割合になるように、油圧シリンダ17によるテンショナプーリ15の変位量を調整することもできる。
【0017】ベルト2、可変径プーリ4、補機3のプーリ、ベルト2への張力を調整可能な変速比調整用のテンショナとしてのベルト張力調整部材5、電磁弁6、コントローラ7及び速度センサ8,9によって、補機3に駆動力を伝達するためのベルト伝動装置1が構成されている。図2を参照して、揺動部材13の第1の端部11には、回動軸線12と同心の環状のハブ25が設けられている。固定部材10は二重筒状をなし、上記ハブ25を貫通させた状態でこれを回動可能に支持する内筒部としてのボス26と、これを取り囲む同心の外筒部27を有している。固定部材10の外筒部27内には、揺動部材13を所定方向へ回動付勢するねじりコイルばね等の弾性部材28が収容されている。このねじりコイルばね等の弾性部材28の一端である上端は揺動部材13に固定され、他端である下端は固定部材10に固定されている。
【0018】ボス26の上端面には、段付きボルト29によって環状のプレート30が固定されている。このプレート30と揺動部材13のハブ25の基端側端面25aとの間には、樹脂等からなる環状の摩擦部材31が介在している。また、ハブ25の先端側端面25bをプレート30側(上方)へ弾性付勢して、プレート30と揺動部材13のハブ25の基端側端面25aとによって摩擦部材31に対する挟持力を働かせる皿ばね32が備えられている。33はハブ25とボス26との間に介在するフランジ付のブッシュであり、34はこのブッシュ33のフランジ部分と皿ばね32との間に介在するスラストワッシャである。また、35は固定部材10の切欠き溝と係合して揺動部材13の回動角度を所定範囲内に規制するために、揺動部材13に打設されたピンである。
【0019】上記の段付きボルト29の頭部には、回動軸線12に沿ってスタッドボルト36が固定されており、このスタッドボルト36にブッシュ37を介して上記アイドラプーリ16が回動軸線12の回りに回動自在に支持されている。ブッシュ37はスタッドボルト36の先端にねじ込まれたナット38によって固定されており、ナット38と段付きボルト29の頭部との間に、一対のスラストワッシャ39によって挟持された状態でアイドラプーリ16が軸方向に所定の遊びを有して介在している。ベルト2は第2の面2bに走行方向に延びる断面略V字形形状のリブを複数平行に配置した、いわゆるVリブトベルトからなり、これに対応して、アイドラプーリ16の周面には断面V字形形状の周溝が複数平行に形成されている。また、アイドラプーリ16の支持には、ブッシュ37の代わりに、スタッドボルト36とアイドラプーリ16の間に転がり軸受を介挿して回転可能に支持するようにしても良い。
【0020】揺動部材13の第2の端部14には、筒軸40が突設されており、この筒軸40の外周面に転がり軸受41を介して上記テンショナプーリ15が回動自在に支持されている。具体的には、筒軸40を貫くボルト42の先端にねじ込まれたナット43によって、転がり軸受41の内輪を筒軸40の段付き部に固定し、転がり軸受41の外輪にテンショナプーリ15を嵌め込んで固定してある。
【0021】上記ボルト42の頭部にはテンショナプーリ15の回動軸線47の同軸上にスタッドボルト44が固定されており、このスタッドボルト44にブッシュ45を介して、上記油圧シリンダ17のロッド20の先端の連結部22が回動自在に支持されている。46はブッシュ45を固定して連結部22をスタッドボルト44に保持するためのナットである。
【0022】本実施の形態では、揺動部材13の回動軸線12が配置される第1の端部11にアイドラプーリ16を配置したので、別の位置にアイドラプーリ16を配置する場合と比較して、設置スペースを大幅に削減し、小型化を図ることができる。しかも、ベルト有効長の所要の量の変化を実現するのに必要なテンショナプーリ15の変位量を相対的に少なくできるので、油圧シリンダ17のストローク量を短くできる結果、油圧シリンダ17を含めたベルト張力調整装置5を小型にすることができる。
【0023】また、アイドラプーリ16を揺動部材13の回動の中心に配置しているので、揺動部材13が回動してもアイドラプーリ16とテンショナプーリ15との距離は常に一定であり、互いに干渉することがない。したがって、両者の干渉を何ら考慮することなく本ベルト張力調整部材5をレイアウトできる結果、自在なレイアウトが可能になる。特に、揺動部材の揺動時にアイドラプーリ16の位置が変わらないので、アイドラプーリ16が他の部材と干渉することを一切考慮する必要がない結果、一層自在なレイアウトが可能となる。
【0024】また、本実施の形態では、ボス26およびこれに固定される段付きボルト29が揺動部材13の回動の支軸となっているが、上記の段付きボルト29に一体に設けたスタッドボルト36によって、アイドラプーリ16を支持することにより、構造の簡素化を通じて製造コストを安くできる。また、本ベルト張力調整部材5では、図1に示すように動力伝達リング23が可変径プーリ4と略同心にある状態で、例えば油圧シリンダ17のロックを解除しておくことにより、弾性部材28の弾性力によってテンショナプーリ15をベルト2側へ押し付けつつこれに追従させると共に、上記摩擦部材31の摩擦力による揺動抵抗を生じさせることができる。これにより、テンショナプーリ15に巻き掛けられたベルト2のテンションを一定に保つことができる。また、万一、油圧シリンダ17が制御不能に陥ったとしても、通常のテンショナとしての機能は維持できるので、ベルト伝動装置1としての機能を損なうことがない。
【0025】図5,図6および図7は本発明の他の実施の形態を示している。図1の実施の形態では、油圧アクチュエータとして直線動型の油圧シリンダを用いたが、本実施の形態では、固定部材50に内蔵したベーンモータ60を用いてある。上記の固定部材50は、ボス51を有する下部材52と、この下部材52にねじ53により一体的に固定された二重筒状の上部材54とを備えている。この上部材54は、図において下向きに開いた内筒部55と、図において上向きに開いた外筒部56とを有している。また、外筒部56にはねじりコイルばね等からなる弾性部材28が収容されている。
【0026】上記の内筒部55は、筒状部57とこの筒状部57の上端に一体に形成された環状の第1の端面板58とからなり、この第1の端面板58の内面に隣接して、第2の端面板59が配置されている。そして、この第2の端面板59と上記固定部材50の下部材52と、上部材54の内筒部55とによって、ベーンモータ60のケーシング61が構成されている。
【0027】一方、固定部材50の下部材52のボス51には、揺動部材13の第1の端部11にボルト62によって一体回動可能に固定されたスリーブ63が、揺動自在に嵌め合わされている。このスリーブ63の内周面とボス51の外周面との間には、軸方向に並ぶ一対の筒状の摺動部材64が介在している。また、これらの摺動部材64よりも下方で、スリーブ63の内周面とボス51の外周面との間を密封する一対のOリング65が、軸方向に距離を隔てて配置されている。そして上記のスリーブ63がベーンモータ60のロータを構成しており、このロータを構成するスリーブ63の外周面には、径方向に延びる矩形板からなる複数のベーン66が円周等配に一体に形成されている(図5のVI−VI線に沿う断面図である図6参照)。
【0028】また、本実施の形態では、揺動部材13を固定部材10に固定するためのボルト62は、アイドラプーリ16を共締めしている。すなわち、ボルト62の頭部と、フランジ付カラー77のフランジとの間で、スラストワッシャ39,39で挟持されるアイドラプーリ16が回動自在に保持されている。図5、およびこの図5のVI−VI線に沿う断面図である図6を参照して、ケーシング61内に円周等配に配置された断面扇形の仕切部材67によって複数の室68に仕切られている。上記の仕切部材67を貫通した固定軸69が、第2の端面板36および仕切部材67を、固定部材50の下部材52に固定している。そして、上記の複数の室68の各々に、上記のベーン66がそれぞれ収容されており、各室68内がベーン66によって一対の油室70,71に仕切られている。各油室70,71には、開口72,73がそれぞれ設けられており、各開口72,73は、油路74,75および電磁弁6を介して図1で示した駆動源(油圧供給源)24に接続されている。そして、テンショナプーリ15の動作位置を変更する場合には、例えば高圧側の油室70に作動油が供給され低圧側の油室71から作動油が排出されることにより、各ベーン66がロータとしてのスリーブ63と共に回転され、揺動部材13およびテンショナプーリ15を、ベルト張力を増す方向に揺動変位させる駆動力が得られるようになっている。
【0029】揺動部材13の第1の端部11には、貫通孔76が形成され、この貫通孔76にフランジ付カラー77が挿通されている。上記のボルト62は、一対のスラストワッシャ39,39およびアイドラプーリ16を貫通するブッシュ37を貫通して後、上記フランジ付カラー77を貫通して固定部材50の下部材52のボス51にねじ込まれている。これにより、フランジ付カラー77がブッシュ37とボス51の上端面との間で挟持された状態で回動不能に固定され、揺動部材13の揺動を支持する支軸の一部を構成している。
【0030】78は、フランジ付カラー77のフランジ下面と揺動部材13の第1の端部11の落とし込み段部との間に挟持された摺動部材である。この摺動部材78は、スリーブ63の上面に取り付けられたピン79によってスリーブ63と一体回動可能に連結されている。また、80は、スリーブ63と揺動部材13とを一体回転可能に連結するピンである。
【0031】81は固定部材50の第1の端面板58の上面と、これに対向する揺動部材13の下面との間に介在する環状板からなる摺動部材である。この摺動部材81はピン82によって揺動部材13に一体回動可能に連結されている。第1の端面板58の内周面に周方向に沿って形成された環状溝には、スリーブ63の外周面に摺接するOリング83が収容されている。また、第2の端面板59の内周面に周方向に沿って形成された環状溝には、スリーブ63の外周面に摺接するOリング84が収容されている。そして、これら一対のOリング83,84によって、ロータとしてのスリーブ63とケーシング61の各端面板58,59との間が密封されている。一方、固定部材50の下部材52と上部材54との合わせ面は、シール部材85によって密封されている。
【0032】図7は図5のVII −VII 線に沿う断面図である。すなわち、図7は第2の端面板59の外面を示している。図5および図7を参照して、第2の端面板59の外面は、第1の端面板58の内面の環状溝に収容される、バックアッププレート付きのOリング86によって内外の領域に分けられており、このOリング86を挟んで外側に環状の高圧側油路87が形成され、内側に低圧側油路88が形成されている。高圧側油路87は第2の端面板59を軸方向に貫通する連通路89をそれぞれ介して高圧側の各油室70に連通しており、また、低圧側油路88は第2の端面板59を軸方向に貫通する連通路90をそれぞれ介して低圧側の各油室71に連通している。このようにして互いに連通された高圧側の各油室70同士は互いに等しい圧に保たれ、同様に低圧側の油室71同士も互いに等しい圧に保たれる。
【0033】また、第2の端面板59の外面には、低圧側油路88から径方向内方に延びてスリーブ63の外周面に至る一対の径方向溝91が形成されている。これらの径方向溝91によって、スリーブ63の外周面における一対のOリング83,84間の領域が、低圧側油路88に連通されることになる。これにより、軸方向外側に位置するOリング83に負荷される圧力を低減できる。その結果、作動油の漏れを防止できる。また、この軸方向外側のOリング83のスリーブ63(ロータ)に対する接触圧を低くできる結果、当該Oリング83がスリーブ63に与える摩擦トルクを低減できる。
【0034】また、高圧側油路87を外周側に配置し、低圧側油路88を内周側に配置することにより、第2の端面板59の外面(背面)にかかる背圧を高め、ベーンモータ60内の高圧に抗して第2の端面板59がベーン66の端面との間のクリアランスを所定に維持できるようになっている。その結果、特にテンショナプーリ15が揺動される場合において、ベーンモータ60内の油室からの作動油漏れを確実に抑制できる。
【0035】なお、電磁弁6が閉じられてベーンモータ60への作動油の流出入が禁止され、またオリフィスが閉じられている時、これによりテンショナプーリ15は揺動した位置に固定され、ベーンモータ60の高圧側油路87および低圧側油路88は、低圧および高圧の状態で固定されるが、第2の端面板59とベーン66の端面との密着性が維持される結果、作動油漏れのおそれは殆どない。
【0036】また、電磁弁6を閉じてベーンモータ60への作動油の流出入を禁止しオリフィスが開けられた状態では、両油室70,71はともに低圧となり、油室70と油室71との間の作動油の流通が、所定の絞り抵抗を持って許容される結果、本ベルト張力調整部材10はダンパ機能を発揮し、ベルト2に発生する振動を効果的に抑制することができる。
【0037】本実施の形態では、図1の実施の形態と同様にして、小型化を図りつつ十分な量でベルト有効長さを変化させることができ、且つレイアウトの自在性がある。さらに、油圧アクチュエータとしてのベーンモータ60を固定部材50に組み込んであるので、ベルト張力調整部材5Aとして一層の小型化を図り、より自在なレイアウトが可能となる。
【0038】なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、例えば油圧源24として、パワーステアリング用ポンプを用いることが可能である。また、摺動部材78又は摺動部材81を摩擦部材で構成し、テンショナプーリ15の揺動に摩擦抵抗を与えて、ベルト振動を減衰させるようにしても良い。また、第1の端面板58に形成した環状溝を用いて高圧側油路87や低圧側油路88を形成しても良い。
【0039】なお、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、例えば、図8に示すように、第1の端部11にアーム92を延設し、このアーム92に揺動部材13の回動軸線12から離れた回動軸線93の回りに回動自在なアイドラプーリ16を設けるようにしても良い。この場合、揺動部材13の回動に伴って、アイドラプーリ16がテンショナプーリ15とともに変位し、両者が協働してベルト2のテンションを増減させるようにしても良い。この場合、油圧アクチュエータのより少ない変位によって、より大きなベルト有効長さの変化量を得ることができる。揺動部材13の揺動角度をより少なくすることができる。
【0040】また、アイドラプーリがベルトの外周面に係合し、テンショナプーリがベルトの外周面に係合するようにしても良い。その他、本発明の範囲で種々の変更を施すことができる。
【0041】
【発明の効果】請求項1記載の発明では、揺動部材の回動軸線が配置される第1の端部にアイドラプーリを配置したので、別の位置にアイドラプーリを配置する場合と比較して、設置スペースを削減できる。また、ベルト有効長さの所要の変化量を得るために必要な揺動部材の揺動角度を相対的に小さくできるので、小型化を図れる。さらに、テンショナプーリとアイドラプーリとの位置関係が変わらないので、揺動部材の揺動に伴って両者が干渉することがない結果、自在なレイアウトが可能になる。
【0042】請求項2記載の発明では、揺動部材の例えば回動の支軸によってアイドラプーリを支持することもでき、構造の簡素化を通じて製造コストを安くできる。また、アイドラプーリの位置が変わらないので、揺動部材の揺動時にアイドラプーリが他の部材と干渉することを一切考慮する必要がない結果、一層自在なレイアウトが可能となる。
【0043】請求項3記載の発明では、例えば、テンショナプーリがベルトの有効長さを増大させるときに、アイドラプーリもベルトの有効長さを増大させるように変位させることができるので、ベルト有効長さの所要の変化量を得るために必要な揺動部材の揺動角度を一層小さくすることができる。請求項4記載の発明では、テンショナプーリの動作位置を能動的に変更して変速比を調整することができる。また、油圧アクチュエータによるテンショナプーリの変位量を少なくできるので、油圧アクチュエータを含むベルト張力調整部材に関して、小型化を図りつつレイアウトの自在性を増すことができる。
【出願人】 【識別番号】000001247
【氏名又は名称】光洋精工株式会社
【出願日】 平成10年(1998)2月13日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 弘勝 (外1名)
【公開番号】 特開平11−230282
【公開日】 平成11年(1999)8月27日
【出願番号】 特願平10−31562