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【発明の名称】 送りねじおよびその製造方法
【発明者】 【氏名】永井 茂和

【氏名】塩見 裕幸

【要約】 【課題】各部材の摩耗および摺動部位の摩擦抵抗を軽減させるとともに、重量を軽減して取り付け作業の容易化を可能とした送りねじおよびその製造方法を提供する。

【解決手段】ボールねじ2は、駆動力伝達軸4と、駆動力伝達軸4に外嵌される軸受部材6とから構成される。駆動力伝達軸4の本体はアルミニウムまたはアルミニウム合金で転造法等により形成され、軸受部材6は超高分子量のポリエチレン樹脂材料で形成されている。アルミニウムまたはアルミニウム合金を用いて形成された部材に表面処理が施され、好適には、さらに表面仕上げ処理が施される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】駆動力伝達軸および前記駆動力伝達軸に外嵌される軸受部材からなる送りねじであって、前記駆動力伝達軸をアルミニウムまたはアルミニウム合金で形成し、前記軸受部材を合成樹脂、アルミニウムまたはアルミニウム合金で形成することを特徴とする送りねじ。
【請求項2】請求項1記載の送りねじにおいて、アルミニウムまたはアルミニウム合金で形成された前記送りねじの表面が、ニッケルメッキ処理、無電解ニッケルメッキ処理またはカニゼンメッキ処理のうちのいずれか1つの方法で表面処理されていることを特徴とする送りねじ。
【請求項3】請求項1記載の送りねじにおいて、アルミニウムまたはアルミニウム合金で形成された前記送りねじの表面が、アルミニウム陽極酸化(アルマイト)処理またはマグネシウム陽極酸化処理により表面処理されていることを特徴とする送りねじ。
【請求項4】請求項1記載の送りねじにおいて、アルミニウムまたはアルミニウム合金で形成された前記送りねじの表面が、粒径の異なる2種類の粒子を用いて複数回ショットピーニングにより表面処理されていることを特徴とする送りねじ。
【請求項5】請求項2または3記載の送りねじにおいて、表面処理された前記送りねじが、ショットピーニングにより表面仕上げ処理されていることを特徴とする送りねじ。
【請求項6】請求項1乃至5のいずれか1項に記載された送りねじを製造する方法において、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる前記送りねじの駆動力伝達軸および軸受部材の少なくとも一方が、転造法により形成されることを特徴とする送りねじの製造方法。
【請求項7】請求項1乃至5のいずれか1項に記載された送りねじを製造する方法において、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる前記駆動力伝達軸および前記軸受部材の少なくとも一方が、ダイヤモンドチップ、CBNチップ、ダイヤモンドの電着工具、ダイヤモンドの焼結工具、CBNの電着工具およびCBNの焼結工具からなる群から選ばれたいずれか1つを用いた精密切削法により形成されることを特徴とする送りねじの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、送りねじおよびその製造方法に関し、一層詳細には、駆動源の駆動力を駆動力伝達手段を介して移動テーブルに伝達し、前記移動テーブルを所定方向に変位させることによりワークを搬送するアクチュエータの駆動力伝達手段等に用いられる送りねじおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、ワーク等を搬送するために種々のアクチュエータが用いられている。これらのアクチュエータでは、外枠を構成するフレームの長手方向に沿って変位する移動テーブルを有し、モータ軸と同軸に連結されたボールねじ、あるいはすべりねじ等の送りねじを介してモータの回転駆動力を前記移動テーブルに伝達して該移動テーブルを直線的に変位させることにより、該移動テーブルに載置されたワークを搬送している。
【0003】ところで、モータの回転駆動力を移動テーブルに伝達する送りねじは、摺動性を保持するために、例えば、炭素鋼若しくはSUS材等の金属製材料またはポリアセタール等の合成樹脂製材料によって形成されている。しかしながら、前記送りねじを炭素鋼等の金属製材料で形成した場合、該送りねじの重量が大となるために取り付け作業が困難であるとともに、取り付け場所にも制約を受ける等、種々の不具合がある。
【0004】また、送りねじを合成樹脂製材料で形成した場合、長期間の使用によって前記送りねじの摺動部位に摩耗が生じ、その結果、モータの回転駆動力を好適に移動テーブルに伝達することができないという不都合がある。
【0005】さらに、前記の如き摩耗を阻止するために、送りねじの摺動部位にグリス等の潤滑油を用いる場合があるが、クリーンルーム等のように環境に左右される場所では前記潤滑油を使用することができないという難点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記の種々の不都合を克服するためになされたものであり、各部材の摩耗および摺動部位の摩擦抵抗を軽減させるとともに、送りねじの重量を軽減して取り付け作業を容易化し、この結果、取り付け場所の制約からも免れることを可能とした送りねじおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係る送りねじは、該送りねじの駆動力伝達軸をアルミニウムまたはアルミニウム合金で形成し、該送りねじの軸受部材を合成樹脂、アルミニウムまたはアルミニウム合金で形成することを特徴とする。
【0008】ここで、前記送りねじとしては、ボールねじまたはすべりねじを用いることができる。また、前記軸受部材として合成樹脂を用いる際、その材質としては、ポリアセタール等の他、超高分子量のポリエチレンを用いると好適である。また、前記軸受部材として、耐摩耗性の向上等の観点から、必要に応じて、本発明において駆動力伝達軸に用いるアルミニウムまたはアルミニウム合金等と同種類の材質とすることもできる。
【0009】これにより、送りねじを構成する前記駆動力伝達軸と軸受部材の摩耗が減少し、また両者の摺動部位における摺動抵抗が減少して摩擦抵抗が軽減されるとともに、送りねじ、特に、前記駆動力伝達軸の重量が大であることによって生じる送りねじを戴置するアクチュエータ等の取り付け作業の困難性、取り付け場所の制約から免れることができ、しかも該駆動力伝達軸を長尺化しにくいこと、負荷イナーシャが大きいことにより入力トルクが大きくなるために駆動源であるモータの小型化が制限されること等の不具合を解消することができる。また、炭素鋼若しくはSUS材等の強磁性体材料を用いる場合に生じる磁界中での影響を軽減することができる。
【0010】さらに、本発明に係る送りねじの製造方法は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる前記送りねじの駆動力伝達軸および軸受部材の少なくとも一方が、転造法により形成されることを特徴とする。これにより、加工精度が高い送りねじを能率的に製造することができる。
【0011】さらにまた、本発明に係る送りねじの製造方法は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる前記駆動力伝達軸および前記軸受部材の少なくとも一方が、ダイヤモンドチップ、CBNチップ、ダイヤモンドの電着工具、ダイヤモンドの焼結工具、CBNの電着工具およびCBNの焼結工具からなる群から選ばれたいずれか1つを用いた精密切削法により形成されることを特徴とする。これにより、前記駆動力伝達軸と軸受部材の摩耗および両者の摺動部位における摺動抵抗を一層軽減することができる。
【0012】また、本発明に係る送りねじおよびその製造方法は、アルミニウムまたはアルミニウム合金で形成された前記送りねじの表面が、ニッケルメッキ処理、無電解ニッケルメッキ処理またはカニゼンメッキ処理の各方法を用いて表面処理され、あるいは前記送りねじの表面が、アルミニウム陽極酸化(アルマイト)処理、またはマグネシウム陽極酸化処理により表面処理されていることを特徴とする。この場合、これらの方法を用いることにより、表面処理された層をさらに熱硬化処理することができて好適である。
【0013】これにより、アルミニウムまたはアルミニウム合金で形成された前記送りねじの表面の硬度と平滑性が高められ、各部材の摩耗および摺動部位の摩擦抵抗を一層軽減することができる。また、前記陽極酸化処理により表面処理された送りねじをさらに熱硬化処理することにより、陽極酸化処理層およびアルミニウムまたはアルミニウム合金地金層が応力弛緩される効果を得ることができる。さらに、前記陽極酸化処理を着色陽極酸化処理としてもよく、また、前記陽極酸化された層をさらに通常よりも軽度の封孔処理を施すようにしても好適である。
【0014】また、本発明に係る送りねじの製造方法は、アルミニウムまたはアルミニウム合金で形成された前記送りねじの表面が、粒径の異なる2種類の粒子を用いて複数回ショットピーニングにより表面処理され、また、メッキ処理あるいは陽極酸化処理により表面処理された送りねじを、ショットピーニングにより表面仕上げ処理されていることを特徴とする。これにより、表面の粗さや残留応力が軽減された良好な送りねじを得ることができる。
【0015】粒径の異なる2種類の粒子を用いて複数回のショットピーニングにより表面処理する場合、その複数回の処理の間に液体ホーニング仕上げ、ラップ仕上げまたはサンドブラスト仕上げ等の表面仕上げ処理を施すことができる。また、複数回のショットピーニング処理により表面の粗さや残留応力を軽減する方法として、予め、比較的大きな粒子であってかつ被加工材料であるアルミニウムまたはアルミニウム合金に最適なショットピーニング用粒子の寸法を実験的に求めてプログラム化しておき、その条件でショットピーニング処理し、引き続いて粒子寸法を含むショットピーニング条件を深い処理から浅い処理まで段階的に変化させて行うことが好適であり、これらの処理作業は自動化されていることが望ましい。このような段階的なショットピーニング処理を、送りねじのメッキ処理加工等の前に1回または2回以上行うようにしてもよく、また表面の微細なバリを除去するために段階的なショットピーニング処理の前後若しくはその間に、サンドブラスト仕上げ、バフ仕上げ、または液体ホーニング仕上げを行うことも好適である。
【0016】ショットピーニングにより表面処理または表面仕上げ処理する前記の方法において、前記送りねじの表面に弾性液圧潤滑(Elasto Hydraulic Lubrication)効果を有する傾斜面または油溜めを画成することができる。このとき、ショットピーニングに用いる粒子が、所望の前記傾斜面または油溜めを画成するのに対応する所定寸法のボール状または多面体状の形状であれば、より好適である。また、ショットピーニング処理により、前記送りねじの表面近傍を再結晶硬化し、または、部分発熱により熱処理硬化することにより、送りねじの表面の硬度を一層高くすることができる。一方、ショットピーニング処理により、前記送りねじの表面がショットピーニングに用いる粒子に含有される金属により浸透処理されて、金属浸透による表面改質効果を得ることができる。
【0017】なお、メッキ処理、アルミニウム陽極酸化(アルマイト)処理、マグネシウム陽極酸化処理あるいはショットピーニング処理により表面処理された前記送りねじを、超仕上げ、バフ仕上げ、ラップ仕上げ、液体ホーニング仕上げ、バニシ仕上げ、ローラ仕上げ、化学研磨仕上げ、電解研磨仕上げ、サンドブラスト仕上げ、ダイヤモンド砥石若しくはCBN砥石研削仕上げ、ドレッシング機構付きダイヤモンド砥石若しくはCBN砥石研削仕上げ、およびダイヤモンド電着タップ若しくはブローチタップ切削仕上げからなる群から選ばれた少なくとも1つの方法により表面仕上げ処理することができる。これにより、送りねじの表面の平滑性等の性状を一層好適なものとすることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明に係る送りねじについてその製造方法との関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0019】図1および図2に示す本発明の第1の実施の形態に係る送りねじであるボールねじ2は、駆動力伝達軸4と、前記駆動力伝達軸4に外嵌される軸受部材6とから構成され、この場合、前記駆動力伝達軸4の本体はアルミニウムまたはアルミニウム合金で形成され、また、前記軸受部材6は超高分子量のポリエチレン樹脂材料で形成されている。アルミニウム製の駆動伝達軸4には断面が湾曲した一条の螺旋状凹部8が形成され、この駆動力伝達軸4には前記軸受部材6が嵌合する。該軸受部材6は円柱部10とこれと一体的なフランジ部12とを有し、前記駆動力伝達軸4に対応して断面が湾曲した一条の螺旋状凹部14が形成されている。前記凹部8と前記凹部14とによって画成される断面円形状の一条の螺旋溝に複数個のボール16が介装される。なお、図2中、参照符号18は、軸受部材6の円柱部10の一方の端部から他方の端部へと前記ボール16を返送するための溝を示す。
【0020】図3は、本発明の第1の実施の形態に係るボールねじ2を装備したアクチュエータの要部分解斜視図である。
【0021】このアクチュエータ20は、長手方向に沿って貫通する複数の流体通路22a〜22dおよび溝部24a、24bを有するフレーム26と、前記フレーム26の対向する側面部に前記溝部24a、24bを介して着脱自在に設けられた一対のサイドカバー28a、28bと、前記フレーム26の長手方向の両端部に夫々装着されるエンドカバー30a、30bとを含む。なお、前記サイドカバー28a、28bおよびエンドカバー30a、30bによって閉塞される部分を除く上部開口部は、図示しないトップカバーにより閉塞されている。
【0022】前記フレーム26の上面部には、長手方向に沿って該フレーム26と一体的に設けられた一対のガイドレール32a、32bを含むガイド機構34が設けられる。前記一対のガイドレール32a、32b間にはモータ36が固設され、ブロック体38内に配設された図示しないカップリング部材によって前記モータ36の回転駆動力をボールねじ2に伝達している。前記駆動力伝達軸4は、一端部が支持ブロック40によって回動自在に支持されている。
【0023】図4に本発明の第2の実施の形態に係る送りねじであるすべりねじ2aを示す。このすべりねじ2aは、図示しない駆動源からの回転駆動力を伝達する駆動力伝達軸4aをアルミニウムまたはアルミニウム合金とし、前記駆動力伝達軸4aに係合する軸受部材6aをポリアセタール樹脂としている。なお、図4中、参照符号8aは一条の螺旋状凹部を示し、参照符号10aは円柱部を示し、参照符号12aはフランジ部を示す。また、参照符号14aは軸受け部材6aに形成された一条の螺旋状凹部を示す。
【0024】本発明の第1および第2の実施の形態に係る送りねじであるボールねじ2およびすべりねじ2aによれば、駆動力伝達軸4、4aがアルミニウムまたはアルミニウム合金で構成され、軸受部材6、6aが合成樹脂材料で構成されているために、駆動力伝達軸と軸受部材との摺動部位における摩擦抵抗を軽減するとともに、軽量化を図ることができる。
【0025】上記した本発明に係る送りねじおよびその製造方法は、前記送りねじ(ボールねじ2、送りねじ2a)のみならず、アクチュエータ20を構成する駆動力伝達手段(駆動力伝達軸4、4a)以外の支持ブロック40、移動体42、ガイドレール32a、32bを含むガイド機構34等の各構成要素に対して適用することができ、さらにアクチュエータ10全体をアルミニウムまたはアルミニウム合金で形成することもできる。さらにまた、アクチュエータ20を戴置する機械装置をアルミニウムまたはアルミニウム合金で形成してもよく、前記アクチュエータ20の送りねじと直交若しくは任意の角度で組み合わされて一体的に動作する他のアクチュエータとの接続部材や他のアクチュエータ本体にも適用することができる。ここでアクチュエータと接続部材等を一体的に形成する方法としては、鋳造、押し出し、引き抜き、鍛造等の各方法を用いることができる。このように構成されたアクチュエータは半導体製造装置としても好適に用いることができる。一方、本発明に係る送りねじは、アクチュエータばかりでなく、一般工作機械あるいはロボット装置等の送りねじとしても好適に用いることができる。
【0026】図5〜図7にアクチュエータ全体をアルミニウムまたはアルミニウム合金で形成した例を示す。図5〜図7においては、ともにモータおよび送りねじが固設されたガイド機構と該ガイド機構を受けるフレーム部分を示すアクチュエータの部分断面図であるが、構造上、図3に示すアクチュエータ20とは異なる。すなわち、図3に示すアクチュエータ20では、ガイドレール32a、32b上をガイド機構34が摺動する構造となっているが、図5〜図7に示すアクチュエータでは、ガイド機構44a〜44cとガイドレール46a、46b、48a、48b、50a、50bとの間に形成される各4カ所の周回溝52a〜52d、54a〜54d、56a〜56dにボール57が介装されており、該周回溝52a〜52d、54a〜54d、56a〜56dを転動する該ボール57を介して該ガイドレール46a、46b、48a、48b、50a、50b上を該ガイド機構44a〜44cが移動する構造となっている。また、これに関連して、送りねじ58a〜58cとモータ60a〜60cとの直結部分のセンタリングがある程度変位しても安定した駆動動作を行うことができるようにオルダム継手62a〜62cにより送りねじ58a〜58cとモータ60a〜60cとが接続されている。
【0027】さらに、図5〜図7に示すアクチュエータには、個別の構造上の相違がある。図5に示すアクチュエータにおいては、フレーム64aは3分割構造となっており、相互にねじ止めされている。3分割された前記フレーム64aの中央に位置するフレーム部位の両端部にはガイドレール46a、46bが上向きに設けられており、これに嵌合して凹形状の溝が下向きに形成されたガイド機構44aが戴置されており、ガイド機構44aの中央部には送りねじ58aとモータ60aとが配設されている。
【0028】図6に示すアクチュエータにおいては、矩形状に形成されたガイド機構44bの中央部に送りねじ58bとモータ60bとが設けられ、該ガイド機構44bは、上部を除く3方向から一体型のフレーム64bによって囲まれた構造となっている。ガイド機構44bはその側面に設けられたガイドレール48a、48bの周回溝54a〜54d間を転動するボール57を介してガイドレール48a、48bに支持されている。この場合、周回溝54a〜54dのうち、ボール57が周回する内側の溝部位はガイド機構44bの荷重を直接には受けない位置に形成されている。
【0029】図7は、図5に示すアクチュエータの変形例を示しており、フレーム64cでは、図5のアクチュエータに設けられていた両端部のフレーム部位を有しない一方、図6のアクチュエータと同様に、各周回溝56a〜56dのうち、ボール57が転動される外側の溝部位では荷重を直接には受けない構成を採用している。円滑な摺動とボール57の返送動作を確保するためである。
【0030】これらの例において、図8に示すように、前記ガイドレール46a、46b、48a、48b、50a、50bの前記周回溝52a〜52d、54a〜54d、56a〜56dの断面形状をゴチックアーチ65の形状に形成すれば、ボール57との摺動部位の摩耗抵抗がより好適に軽減される。
【0031】本発明の第1または第2の実施の形態に係る製造方法により送りねじをアルミニウムまたはアルミニウム合金で形成する場合、転造法、あるいはダイヤモンドチップ、CBNチップ、ダイヤモンドの電着工具、ダイヤモンドの焼結工具、CBNの電着工具、CBNの焼結工具等を用いた精密切削法が好適である。この場合、前記送りねじを回転数が10000〜30000rpmの超高速切削工具により切削することもでき、また、これらの方法に代えて、前記送りねじの駆動力伝達軸および軸受部材の少なくとも一方を汎用のチップ切削工具で切削し、または軸受部材をタップまたはブローチタップのうちのいずれかの切削工具で切削することにより、所望の表面性状をもつ送りねじを簡便に製造することができる。
【0032】また、図9に示すように、アルミニウムまたはアルミニウム合金で形成された前記送りねじの内面研削をスパイラル動作するグラインディングセンタ66により行うことも好適であり、その際、切削油に代えて、吹き付け部68より高圧空気あるいは高圧ガスを吹き付けることができる。グラインディングセンタ66は、研削工具69と、テーブル70と、ターンテーブル72と、ヘッド74と、フレーム76とから構成されており、研削工具69を除く各部材がアルミニウムまたはアルミニウム合金で形成されている。
【0033】研削工具69はテーブル70に固設され、該テーブル70はフレーム76の立設する部材に昇降自在に係合されている。被加工材である送りねじ(図示せず)を載せるターンテーブル72は、ヘッド74上に置かれている。前記ターンテーブル72の下部に形成された2条の突起部77a、77bと前記ヘッド74の上部に形成された2条の溝部78a、78bとが嵌合され、案内機構を構成することにより該ターンテーブル72の溝方向の移動を自在にするとともに、グラインディングセンタ66の使用時には、該ターンテーブル72がねじ79aにより任意の位置で固定される構造となっている。一方、前記ヘッド74の下部に形成された2条の突起部77c、77dと前記フレーム76の上部に形成された2条の溝部78c、78dとが嵌合され、案内機構を構成することにより該ターンテーブル72を介して前記ターンテーブル72の溝方向の移動を自在にするとともに、グラインディングセンタ66の使用時には、該ターンテーブル72がねじ79bにより任意の位置で固定される構造となっている。前記溝部78a〜78dは直溝切り加工されている。なお、図9中、参照符号80は研削時に発生する研削屑を吸引排出するための負圧源に接続された吸引機構を示す。グラインディングセンタ66は、研削と切削の両方を行うことができるものであることが望ましく、さらにまた、被加工材である送りねじを自動交換することが可能であること、あるいはパレット若しくはパーツ送り手段を有するものであることが好ましい。
【0034】前記した方法によりアルミニウムまたはアルミニウム合金等で形成された送りねじは、その表面を表面処理し、好ましくは、さらに表面仕上げ処理することにより摩擦抵抗が著しく減少し、各部材の摩耗がより一層好適に軽減され、また、硬度等の表面性状が改善される。
【0035】表面処理方法としては、ニッケルメッキ処理、アルミニウム陽極酸化処理等を施し、また、前記した表面処理を施した部材の表面処理層を熱硬化処理等により改質し、あるいはショットピーニング、バフ仕上げ、ラップ仕上げ、液体ホーニング仕上げ、バニシ仕上げ、ローラー仕上げ、化学研磨、電解研磨、サンドブラスト仕上げ等の各種仕上げを行う。
【0036】また、前記送りねじがボールねじである場合、該ボールねじのボールとして7000番前後のアルミニウムボールを用いると好適である。この際、前記アルミニウムボールの表面をショットピーニングにより表面処理し、油溜め、またはEHL効果を有する傾斜面を画成することができる。また、前記アルミニウムボールの表面をショットピーニング条件の異なる複数回のショットピーニング処理を行い、表面の残留応力および不純物を除去するとともに、表面にショットピーニング粒子の材料である金属を浸透させることができる。
【0037】なお、送りねじ以外の前記した各部材、装置においても、本発明に係る製造方法である転造法若しくはダイヤモンドチップ等を用いた精密切削法等の切削法、汎用切削工具を用いた切削法等の形成方法や、メッキ処理等の各表面処理、超仕上げ等の表面仕上げ処理等の各方法を好適に用いることができる。
【0038】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る送りねじおよびその製造方法によれば、送りねじの駆動力伝達軸をアルミニウムまたはアルミニウム合金で形成し、前記軸受部材を合成樹脂、アルミニウムまたはアルミニウム合金で形成することにより、各部材の摩耗および摺動部位における摺動抵抗が減少し、摩擦抵抗が軽減されるとともに、駆動力伝達手段、特に、前記駆動力伝達軸の重量が大であることによって生じる、送りねじを装備する装置の取り付け作業の困難性、取り付け場所に対する制約から免れることができ、しかも該駆動力伝達軸が長尺化しにくいこと、負荷イナーシャが大きいこと等により入力トルクが大きくなり駆動源であるモータの小型化が制限されること等の不具合を解消することができる。また、炭素鋼若しくはSUS材等の強磁性体材料を用いる場合に生じる磁界中での影響を軽減することができる。
【0039】さらに、駆動力伝達軸または軸受部材のうちの少なくともいずれか一方をアルミニウムまたはアルミニウム合金で形成する方法として、転造法、精密切削法等を用いることにより、加工精度が高い送りねじを効率的に製造することができる。
【0040】さらにまた、アルミニウムまたはアルミニウム合金で形成された送りねじの表面にニッケルメッキ等の表面処理を施すことにより、各部材の摩耗および摺動部位の摩擦抵抗を一層軽減することができる。
【0041】また、表面処理された駆動力伝達軸等の各部材に対して、さらに超仕上げ等の表面仕上げを施すことにより、各部材の摩耗および摺動部位の摩擦抵抗を一層軽減することができる。
【出願人】 【識別番号】000102511
【氏名又は名称】エスエムシー株式会社
【出願日】 平成10年(1998)1月7日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏 (外1名)
【公開番号】 特開平11−201257
【公開日】 平成11年(1999)7月27日
【出願番号】 特願平10−1781