トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F16 機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段




【発明の名称】 無段変速機の変速制御装置
【発明者】 【氏名】城所 仁

【氏名】村本 逸朗

【要約】 【課題】メカニカルフィードバック系を備えた無段変速機において、積分値の増大による追従性の低下を抑制することを目的とする。

【解決手段】ステップモータ4に駆動される変速機構とメカニカルフィードバック系とを備えて変速比を連続的に変更する無段変速機10と、運転状態に応じて目標変速比を演算するとともに、実際の変速比と目標変速比の偏差を積分する積分器74手段を備えて、実際の変速比が目標変速比に一致するように指令値を演算するフィードバック制御部と、ステップモータ4の駆動量が所定の駆動範囲を超えないように規制するステップ変換部75を備え、ステップモータ4の駆動量が所定の所定の上限値または下限値にある間は、積分動作を停止する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 アクチュエータに駆動される変速機構により変速比を連続的に変更する無段変速機と、運転状態に応じて前記無段変速機の目標変速比を演算するとともに、実際の変速比と目標変速比の偏差を積分する積分手段を備えて、実際の変速比が目標変速比に一致するように前記アクチュエータを駆動するフィードバック制御手段と、前記アクチュエータの駆動量が所定の駆動範囲を超えないように規制する駆動量規制手段とを備えた無段変速機の変速制御装置において、前記アクチュエータの駆動量が所定の駆動範囲の上限値または下限値にある間は、前記積分手段の積分動作を停止する積分動作停止手段とを備えたことを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
【請求項2】 アクチュエータに駆動される変速機構により変速比を連続的に変更する無段変速機と、運転状態に応じて前記無段変速機の目標変速比を演算するとともに、実際の変速比と目標変速比の偏差を積分する積分手段を備えて、実際の変速比が目標変速比に一致するように前記アクチュエータを駆動するフィードバック制御手段と、前記変速機構の位置が所定の変位範囲を超えないようにアクチュエータの駆動量を規制する駆動量規制手段とを備えた無段変速機の変速制御装置において、前記変速機構の変位量を検出する手段と、この変位量が所定の上限値または下限値にある間は、前記積分手段の積分動作を停止する積分動作停止手段とを備えたことを特徴とする無段変速機の変速制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、無段変速機の変速制御装置の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】車両に用いられる無段変速機としては、Vベルト式やトロイダル型等の無段変速機が従来から知られており、特開昭58−54262号公報、特開平3−288062号公報に開示されるようなトロイダル型無段変速機が知られている。
【0003】これは、図7、図8に示すように、同軸上に配置した入出力コーンディスク1、2と、これら入出力コーンディスク1、2間で摩擦係合により動力の受け渡しを行う一対のパワーローラ3、3からなる、いわゆるシングルキャビティ型のトロイダル伝動ユニットと、メカニカルフィードバック系に加えてPI制御による電子フィードバック系を備えた変速制御装置から構成されるものである。
【0004】このトロイダル型無段変速機10は、パワーローラ3、3は入出力コーンディスク1、2間で狭持、押圧され、パワーローラ3は入出力コーンディスク1、2との間の油膜のせん断によって、入出力コーンディスク1、2間での動力伝達を行う。
【0005】入力コーンディスク1の回転は、油膜のせん断力によってパワーローラ3へ伝達され、次いでパワーローラ3の回転が上記油膜のせん断によって出力コーンディスク2に動力が伝達され、逆に出力コーンディスク2から入力コーンディスク1への動力伝達もパワーローラ3を介して、同様に行われる。
【0006】上記油膜のせん断力は入出力コーンディスク1、2とパワーローラ3との間に生じる速度差及び油膜に働く圧力、すなわち、入出力コーンディスク1、2の間でパワーローラ3を押し付ける圧力によって発生する。
【0007】したがって、押し付ける圧力が強ければ、小さな速度差でトルクを伝達することができ、また、押し付ける圧力が小さければ、大きな速度差が必要となる。
【0008】また、トルクの伝達は油膜のせん断力によるため、所定値以上の速度差が生じてしまうと、油膜がせん断力を発生しなくなり、入出力コーンディスク1、2とパワーローラ3との間の係合関係が絶たれるため、大きな押し付け力を付与することが望ましいが、不必要な押し付け力を与えることは動力伝達の効率を損ねるため、伝達トルクに応じた応じた押し付け力に設定する必要がある。
【0009】このため、図8に示すように、上記押し付け力を付与する機構は、エンジン側に連結される入力軸20に配設されたカムディスク22と入力コーンディスク1の背面との間に、カムディスク22の径方向に回転軸を備えたローディングカム28を設けるとともに、背面に所定の斜面を設けた入力コーンディスク1を相対回転自在に入力軸20で軸支し、さらにカムディスク22の対向面にも所定の斜面を備えた構成となっており、カムディスク22と入力コーンディスク1の間に回転位相差が発生した場合、入力コーンディスク1の背面に形成された斜面とカムディスク22の斜面の間をローディングカム28が転動することによって、入力コーンディスク1が入力軸20の軸方向(O2軸方向)へ押し付けられ、ベアリング30を介して出力歯車29とともに軸支された出力コーンディスク2との間でパワーローラ3を押し付け、入力軸20に加わる伝達トルクに応じた押し付け力を発生させるものである。なお、入力軸20はベアリング31を介してケーシング19に軸支され、また、出力歯車29は図示しない出力軸を介して駆動輪と連結される。
【0010】一方、無段変速機10の伝達トルクが微小な場合は、上記ローディングカム28が動作しないため、ベアリング31側に入力軸20を軸方向へ付勢する皿バネ21を設け、常時所定の押し付け力を付与するが、伝達効率向上のため及び組み付け性を確保するために、皿バネ21が発生する付勢力を著しく大きくすることはできない。
【0011】そして、トロイダル型無段変速機10の変速比は、パワーローラ3が入力コーンディスク1及び出力コーンディスク2と接触する半径に応じて決定され、この変速比の変更は、パワーローラ3、3をそれぞれ軸支するとともに図7のO3軸方向及び軸まわりに変位可能なトラニオン41、41を駆動することで行われ、パワーローラ3はトラニオン41の軸方向変位に応じてトラニオン41の軸まわりに回転する傾転運動によって、上記入出力コーンディスク1、2との接触半径を連続的に変更する。なお、トラニオン41は、偏心軸9を介してパワーローラ3を軸支する。
【0012】ここで、変速制御装置について説明すると、図8に示すように、トラニオン41の下端部には上下の油室6H、6Lへ供給された油圧に応動するピストン6aを備えた油圧シリンダ6と、これら油室6H、6Lへ油圧を供給する変速制御弁5と、コントローラ52からの指令に応じて変速制御弁5のスリーブ5bを駆動するステップモータ4と、トラニオン41のO3軸方向(図8の上下方向)及び軸まわりの変位を変速制御弁5のスプール5aへフィードバックするプリセスカム7及びリンクカム8を主体にメカニカルフィードバック系が構成される。
【0013】ステップモータ4は、コントローラから目標変速比に対応した変速指令値(ステップ数)を与えられて回転し、変速制御弁5を構成するスリーブ5b、スプール5aのうちスリーブ5bをラックアンドピニオン機構を介して駆動し、スプール5aに対し相対的に所定の中立位置から変位させる。
【0014】変速制御弁5は、入力ポート5dを油圧源60に接続しており、一方の連絡ポート5eを油圧シリンダ6、6の油室6Lに、他方の連絡ポート5fを油圧シリンダ6、6の油室6Hにそれぞれ連通させる。そして、スプール5aをリンクカム8を介してプリセスカム7に連結する一方、スプール5aの外周とバルブボディ5cの内周の間で軸方向へ摺動自在なスリーブ5bが、ラックアンドピニオンを介してステップモータ4に駆動される。
【0015】ステップモータ4に駆動されたスプール5aの変位によって、両パワーローラ3、3はピストン6aに加わる油圧に応じてO3軸方向へ変位するが、このとき、各ピストン6aへの油圧は、対向するパワーローラ3、3が相互逆向きに変位するよう供給され、例えば、図中左側のパワーローラ3が上昇すれば、図中右側のパワーローラ3が下降する。
【0016】そして、対向するパワーローラ3、3は、回転軸線O1が入出力コーンディスク1、2の回転軸線O2と交差する図示のような中立位置から、トラニオン41、41の相互に逆向きな変位に応じて同期的にオフセットされる。
【0017】このO3軸方向のオフセット量に基づいて両パワーローラ3、3は、入出力コーンディスク1、2からの分力で、自己の回転軸線O1と直交する首振り軸線O3(=トラニオン41の回転軸線)のまわりに回動する傾転運動を行い、入出力コーンディスク1、2に対するパワーローラ3、3の摩擦接触半径が連続的に変化することで無段変速を行うことができる。
【0018】このような無段変速によってコントローラからの変速指令値が達成されるとき、パワーローラ3のO3軸方向オフセット量及び傾転角を、トラニオン41、プリセスカム7及びリンクカム8を介して変速制御弁5のスプール5aへフィードバックし、スプール5aはスリーブ5bに対し相対的に初期の中立位置に復帰して油室6H、6Lへの作動油の吸排が遮断されるため、トラニオン41、41は両パワーローラ3、3の回転軸線O1が、入出力コーンディスク1、2の回転軸線O2と交差する中立位置へ戻ることで、上記変速指令値の達成状態を維持するのである。
【0019】このような無段変速機10においては、トラニオン41並びにパワーローラ3のO3軸方向変位が微小(例えば、数mm)であるがゆえに、伝達するトルクによって、フィードバック機構を構成するトラニオン41の一部が変形した場合、目標変速比に対して誤差を生じてしまうという問題がある。
【0020】すなわち、トロイダル型無段変速機が伝達するトルクが急激に増加した場合、パワーローラ3は入出力コーンディスク1、2との接触点においてO3軸方向の力を受け、これをピストン6aに加わる油圧によって支持するものの、応力を受けたトラニオン41が弾性変形を起こすと、パワーローラ3を支持しきれず、パワーローラ3はO3軸方向へ移動するため、このO3軸方向のオフセット量に応じて傾転運動を起こし、目標変速比に対して実際の変速比が変化してしまう。
【0021】さらに、これを所定の目標変速比に制御すべく、プリセスカム7及びリンクカム8によるフィードバック機構が働くものの、上記のようにトラニオン41が変形した場合、パワーローラ3の回転中心(軸線O1)とプリセスカム7までの距離が変化するため、この差分だけ定常的に変速比がずれてしまうのである。
【0022】このような変速比のずれは、いわゆるトルクシフトと呼ばれており、このトルクシフトを解消するため、目標変速比と実変速比の偏差に基づく電子的フィードバック系を付加したものを、本願出願人は特開平8−296722号公報として提案している。
【0023】また、本願出願人は、比例積分制御(以下、PI制御という)の遅れやメカニカルフィードバック系の変形を見越してフィードフォワード制御を行い、変速比制御の精度を向上させるものとして、特開平8−326887号公報として提案している。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記変速制御弁5のスリーブ5bの変位量は、図10にも示すように、機構的な上限値、下限値(Lo側、Hi側変位限界位置)があるため、ステップモータ4の駆動範囲にも制限を設ける必要がある。
【0025】このステップモータ4の駆動範囲の制限を、ステップモータ駆動制限量とすると、この制限量は、寸法公差などの機械的誤差やステップモータ4の脱調を加味して、図10のように、スリーブ5bの変位量の上限値及び下限値よりも小さく設定するのが望ましい。
【0026】しかしながら、上述したような制限を設けたため、上記特開平8−326887号公報では、PI制御により目標変速比と実変速比とを一致させるようにステップモータ4に対して指令値が出され、この指令値がステップモータ駆動制限量に達した場合、ステップモータ4の駆動は停止されるが、このとき、目標変速比と実変速比の間に偏差が生じていると積分制御による積分値が蓄積され、ステップモータ4が逆方向へ駆動されると、この蓄積した積分値によって指令値の変化開始が遅れてしまい、変速制御の追従性が低下するという問題がある。例えば、図9のように、ステップモータの指令値が下限値に達して駆動されなくなると、PI制御による積分値が積分上限値に達してしまうため、目標変速比が減少した時点からステップモータ指令値が変化を開始する時点までに遅れが生じて追従性が低下するのである。
【0027】この現象は、特開平3−249463号公報において指摘された、無段変速機の機械的に固有の変速限界(上限または下限)に達した場合、積分を停止しなければ積分値が異常な値となって追従性が悪化する現象と類似するが、この特開平3−249463号公報では油圧バルブの開口量を直接PI制御する無段変速機を制御対象としているため、積分値の異常な蓄積は、無段変速機の機械的に固有の変速比限界に達してから初めて発生する。
【0028】これに対して、上記特開平8−326887号公報等の従来例では、アクチュエータとしてのステップモータ4を駆動することで、変速制御弁5のスリーブ5bを変位させることでバルブ開口量が変化して変速比の変化が開始され、この変速比の変化に応じて相対変位するスプール5aがスリーブ5bを閉弁してステップモータ4の駆動量に対応した変速比を維持するもので、いわゆる追従制御型のメカニカルフィードバック系を備えている。このため、無段変速機の変速比が固有の変速比限界に到達する前に、上記スリーブ5bの変位限界位置に基づくステップモータ駆動制限量に達してしまい、実変速比の値が固有の変速比限界に対して余裕があるのにも関わらず、ステップモータの駆動停止によって積分値が蓄積されて、上記したように追従性が低下するという問題があった。
【0029】また、図10に示すように、ステップモータ4が脱調を起こして、本来の駆動制限量が図中波線のように移動すると、無段変速機に固有の変速比限界に対して余裕がある場合であっても、ステップモータ駆動制限量に到達して、上記と同様に積分値の蓄積による追従性の低下が発生するという問題があった。
【0030】そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、積分値の増大による追従性の低下を抑制することを目的とする。
【0031】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、アクチュエータに駆動される変速機構により変速比を連続的に変更する無段変速機と、運転状態に応じて前記無段変速機の目標変速比を演算するとともに、実際の変速比と目標変速比の偏差を積分する積分手段を備えて、実際の変速比が目標変速比に一致するように前記アクチュエータを駆動するフィードバック制御手段と、前記アクチュエータの駆動量が所定の駆動範囲を超えないように規制する駆動量規制手段とを備えた無段変速機の変速制御装置において、前記アクチュエータの駆動量が所定の駆動範囲の上限値または下限値にある間は、前記積分手段の積分動作を停止する積分動作停止手段とを備える。
【0032】また、第2の発明は、アクチュエータに駆動される変速機構により変速比を連続的に変更する無段変速機と、運転状態に応じて前記無段変速機の目標変速比を演算するとともに、実際の変速比と目標変速比の偏差を積分する積分手段を備えて、実際の変速比が目標変速比に一致するように前記アクチュエータを駆動するフィードバック制御手段と、前記変速機構の位置が所定の変位範囲を超えないようにアクチュエータの駆動量を規制する駆動量規制手段とを備えたトロイダル型無段変速機の変速制御装置において、前記変速機構の変位量を検出する手段と、この変位量が所定の上限値または下限値にある間は、前記積分手段の積分動作を停止する積分動作停止手段とを備える。
【0033】
【発明の効果】したがって、第1の発明は、積分制御を含んだ電子的フィードバック制御を行う場合、アクチュエータの駆動量を所定の駆動範囲内に規制することで、アクチュエータに駆動される変速機構、例えば、変速制御弁の変形などを防止することができ、さらに、アクチュエータの駆動量がこれら駆動範囲の上限値または下限値にある場合は、フィードバック手段の積分動作を一時的に停止するようにしたため、前記従来例のように積分値の増大による追従性の低下を抑制して、変速制御の制御精度をさらに向上させることが可能となり、また、アクチュエータにステップモータを採用した場合では、脱調などにより制御量に対する変速機構の変位、例えば、バルブ開口量との関係がずれて、バルブ位置が上限値または下限値に設定され続けても、この間は積分動作が停止するため積分値の過剰な増大を防いで追従性の悪化を防止することができる。
【0034】また、第2の発明は、アクチュエータに駆動される変速機構の変位量、例えば、変速制御弁のストローク等を検出し、この変位量が所定の上限値または下限値にある間は、アクチュエータの駆動と積分動作が停止するため、アクチュエータに駆動される変速機構、例えば、変速制御弁の変形などの防止と、フィードバック手段の積分動作を一時的に停止するようにしたため、前記従来例のように積分値の増大による追従性の低下を抑制することができ、また、アクチュエータにステップモータを採用した場合、脱調を起こしても変速機構の変位量に基づいて駆動が行われるため、駆動範囲のずれを防いで変速制御の安定性をさらに向上させることが可能となる。
【0035】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0036】図1は無段変速機10として、前記従来例と同様のシングルキャビティ型式のトロイダル型を採用するとともに、無段変速機10の変速制御コントローラ52に本発明を適用した一例を示す。
【0037】無段変速機10は、入力軸20側にロックアップ機構L/Uを備えたトルクコンバータ12を介してエンジン11に連結される一方、出力軸側(出力コーンディスク2側)を図示しない駆動輪に連結しており、トロイダル型の無段変速機10の変速機構及びメカニカルフィードバック機構は前記従来例に示した図7、図8と同様に構成され、変速制御コントローラ52の指令に応じてステップモータ4(アクチュエータ)が変速制御弁5を駆動することで変速が行われるもので、前記従来例と同一のものに同一の図番を付して重複説明を省略する。
【0038】変速制御コントローラ52は、マイクロコンピュータを主体に構成されており、スロットル開度センサ53が検出したスロットル開度TVO、無段変速機10の出力軸側に配設された車速センサ54からの車速VSP及び入力軸回転センサ55が検出した無段変速機10の入力軸20の回転数Niに基づいて車両の運転状態に応じた目標変速比を演算するとともに、無段変速機10の実際の変速比がこの目標変速比と一致するような制御量STPをステップモータ4へ指令する。なお、車速センサ54は無段変速機10の出力軸回転数Noに所定の定数を乗じたものを車速VSPとして出力するものである。
【0039】この変速制御コントローラ52の変速制御の概要は、図2に示すように、スロットル開度TVOと車速VSPに応じて目標変速比を演算する目標傾転角算出部73と、車速VSP(∝出力軸回転数No)と入力軸回転数Niから実際の変速比を求める傾転角算出部71、上記目標変速比と実際の変速比の偏差に基づいて、オブザーバを用いた積分制御による電子的フィードバック制御を行ってステップモータ4へ制御量STPを送出するもので、状態推定オブザーバ部72、積分器74、ステップ変換部75を主体に、各種ゲインの乗算と、各種信号の加減算を行っている。
【0040】ここで、オブザーバを用いた積分制御による電子的フィードバック制御は、次のように行われる。
【0041】目標傾転角算出部73は、スロットル開度TVOと車速VSPから、予め設定したマップ(図示せず)に基づいて目標傾転角度を演算する。
【0042】状態推定オブザーバ部72は、トロイダル型無段変速機10の特性を図3のように表現した場合、図4に構成することができ、この場合、図3のa、fは傾転角φに関する特性を示す定数で、b、gはトラニオン41の軸方向変位yの特性を示す定数であり、これら定数はトロイダル型無段変速機10の入出力特性より同定することができる。
【0043】また、図4において、ωはオブザーバの極を示す所定の定数で、K1、K2はオブザーバゲインで、入力Aは指令値、入力Bは実変速比である。
【0044】なお、状態推定オブザーバ部72は、上記の他、特願平7−71495号と同様に構成してもよい。
【0045】一方、目標傾転角算出部73からの目標変速比と傾転角算出部71からの実変速比から偏差eが演算され、この偏差eが積分器74に入力される。そして、積分器74の出力に所定のゲインC0を乗じた値と、偏差eに所定のゲインC1を乗じた者とを加算した後、状態推定オブザーバ部72の出力を減算して指令値を算出する。
【0046】そして、この指令値にカム相殺フィードバック部70の出力を加算したものをステップ変換部75へ入力する。カム相殺フィードバック部70は、特開平8−296722号公報に開示されるように、メカニカルフィードバック量と等しいバルブ変位量を、ステップモータ4を駆動することで与え、メカニカルフィードバック量を相殺するものである。
【0047】ステップ変換部75では、指令値に応じた制御出力値、具体的にはステップモータ4のステップ数STPを、図5に示すマップに基づいて演算する。このとき、ステップ変換部75は、出力される制御出力値STPが、前記図8及び図10に示した変速制御弁5のスリーブ5bの変位限界を超えないように、所定の下限値Lowlimと上限値Hilimの間に制限される。
【0048】さらに、ステップ変換部75では、指令値または指令値に対応する制御出力値STPが所定の下限値(LowmaxまたはLowlim)未満、あるいは上限値(HimaxまたはHilim)を超えようとすると、積分器74へ積分停止指令を送出し、積分器74は積分停止指令が出ている間は、その積分動作を停止することになる。すなわち、指令値Uが所定の下限値Lowmaxから上限値Himaxの間にあるとき積分器74が積分動作を行う一方、指令値Uが所定の下限値Lowmax未満あるいは上限値Himaxを超えて制御出力値STPが下限値Lowlimまたは上限値Hilimに達している間は、積分動作が一時的に中止されるのである。
【0049】したがって、本発明によれば、図6の実線に示すように、時間Time=0からステップモータ4への制御出力値を上限値または下限値(図中lim)に設定して変速制御弁5の開口量を増大させて迅速に変速を開始した後に、変速制御弁5を所定の変速比に向けて開口量を低減する場合、Time=0.4までは上限値または下限値を維持し、その後、ステップモータ4の駆動範囲内となるよう目標値を変化させると、制御出力値が上限値または下限値の間は積分動作が停止するため、偏差eにかかわらず積分値が増大することはなく、したがって、駆動範囲内となるように指令値を変化させた直後のTime=0.5から制御出力STPが駆動範囲内となって変速制御弁5の開口量を変化させ、迅速に変速を行うことができ、追従制御型のメカニカルフィードバック系を備えた無段変速機において、積分値の増大による追従性の低下を抑制することが可能となるのである。
【0050】一方、前記従来例では、図中一点差線で示すように、制御出力値STPが上限値または下限値(図中lim)にある間も積分動作を継続するため、積分値の蓄積が過大となってしまい、Time=0.4から指令値が変化しても、過大な積分値によって、実際に制御出力値が変化を開始するのがTime=0.9以降となり、追従性を大きく低下させている。
【0051】さらに、制御出力値に制限を設けない場合では、図6の破線で示すように、応答性は向上するものの変速制御弁5のスリーブ5bが制限値limを超えるため、変速制御弁5を変形させるなどの悪影響を与えてしまうのである。
【0052】以上のように、追従制御型のメカニカルフィードバック系を備えた無段変速機において、積分制御を含んだ電子的フィードバック制御を行う場合、ステップモータ4の制御出力値STPに上限値Hilim及び下限値Lowlimを設定することで変速制御弁5の変形などを防止するのに加え、制御出力値STPがこれら上限値または下限値にある場合は、積分動作を一時的に停止するようにしたため、前記従来例のように積分値の増大による追従性の低下を抑制して、変速制御の制御精度をさらに向上させることができるのである。
【0053】また、ステップモータ4の脱調などにより制御出力値に対するバルブ開口量の関係がずれて、制御出力値が上限値Hilimまたは下限値Lowlimに設定され続けても、この間は積分動作が停止するため積分値の過剰な増大を防いで追従性の悪化を防止することができる。
【0054】なお、上記実施形態において、ステップモータ4への制御出力値から変速制御弁5のスリーブ5bの位置を推定したが、図示はしないが、ストロークセンサ等によってスリーブ5bの位置を検出し、この位置情報に基づいてステップモータ4等のアクチュエータを駆動してもよく、この場合、スリーブ5bの位置が最Loまたは最Hiに達するとアクチュエータの駆動を停止すると同時に、積分動作を停止すれば上記と同様の作用、効果を得ることができるのに加え、ステップモータ等のアクチュエータが脱調した場合であっても、駆動範囲のずれを防止することができる。
【0055】また、上記実施形態において、変速制御コントローラ52は積分制御を行っているが、図示はしないが、前記従来例のように、PI制御やPID制御を行うものに本発明を適用してもよい。
【0056】また、上記実施形態において、無段変速機としてトロイダル型を採用した一例を示したが、Vベルト型の無段変速に本発明を適用しても同様の作用効果を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成9年(1997)11月10日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜 (外1名)
【公開番号】 特開平11−141666
【公開日】 平成11年(1999)5月25日
【出願番号】 特願平9−307175