| 【発明の名称】 |
自動変速機の多板ブレーキ装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】小林 憲太郎
【氏名】増田 泰浩
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| 【要約】 |
【課題】多板ブレーキ装置のピストンリテーナの油圧室にエア溜りが発生しないようにする。
【解決手段】変速機ケース1の内壁にハブドラム20の第2ドラム部23に対向してスプライン30が形成され、このスプラインと第2ドラム部のスプライン24にそれぞれ係合する摩擦板31、32が設けられてブレーキBRKが構成される。スプライン30の内径が切削された拡径部35にピストンリテーナ40が設置され、その内部に摩擦板の押圧部46を備えるリング状のピストン45が配置されている。ピストンリテーナの外周壁部40bの底部に油穴43、頂部にエア抜き孔44が形成され、エア抜き孔はスプライン30の内径面に対向する。油圧室に流入するエアはエア抜き孔44からピストンリテーナの外周面41とスプライン30の内径面間の微小間隙を経て、スプラインの谷部空間へ放出される。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ケース部材とこれと相対回転する回転部材とにそれぞれ係合する第1および第2の摩擦板と、軸方向一端側に摺動することにより前記摩擦板を押圧するピストンと、該ピストンが摺動する円環状の内周壁部、外周壁部およびこれら内周壁部と外周壁部とを軸方向他端側で連結している連結壁部とを有してコ字形状をなし、内周壁部、外周壁部、連結壁部ならびに前記ピストンとで当該ピストンの油圧室を形成するピストンリテーナとを有する自動変速機の多板ブレーキ装置であって、前記ピストンリテーナをケース部材に固定し、前記外周壁部の略底部に油圧室への油穴を設けるとともに、外周壁部の略頂部に油圧室のエア抜き孔を設けたことを特徴とする自動変速機の多板ブレーキ装置。 【請求項2】 前記ケース部材は前記第1の摩擦板と係合するスプラインを備え、該スプラインはピストンリテーナの前記外周壁部まで延び、前記油圧室内のエアが前記エア抜き孔から前記スプラインの谷部空間へ排出されるよう構成されていることを特徴とする請求項1記載の自動変速機の多板ブレーキ装置。 【請求項3】 前記エア抜き孔は前記スプラインの内径面巾内に位置し、前記油圧室内のエアはピストンリテーナの外周壁部の外周面とスプラインの内径面間の微小間隙を経て前記谷部空間へ排出されるものであることを特徴とする請求項2記載の自動変速機の多板ブレーキ装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、自動変速機の多板ブレーキ装置に関し、とくにピストンリテーナのエアー抜き構造に関する。 【0002】 【従来の技術】自動変速機のブレーキでは、油圧により作動するピストンで摩擦板を押圧して締結を行なうようになっている。このピストンに対する油圧室を形成するために、ピストンリテーナが設けられる。例えばブレーキにおいては、回転側摩擦板と交互に並べられた固定側摩擦板を回転方向には拘束し、軸方向には移動可能とするスプラインが変速機ケース内壁に形成され、ピストンリテーナは例えばプレス成形によりシリンダ状に形成されて上記のスプラインに隣接して配置される。 【0003】ピストンリテーナ内にピストンが軸方向摺動可能に収納され、ピストンリテーナとピストンの間に油圧室が形成され、この油圧室への油圧の供給、排出は変速機ケース下部に設けられた油圧バルブユニットと連通するようにピストンリテーナ最低部に形成した油穴を介して行われる。同様の取り付け構造が例えば特公平5−43905号公報にも示されている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】上述のように、ピストンリテーナ内においてピストンとの間に形成される油圧室には底部から油圧が供給され、この油圧によってピストンが押し出され摩擦板を押圧するが、油圧室内にはオイルに混入したりピストン摺動部から浸入したりしてエアが流入することがある。しかしながら、このようなエアが一旦流入すると、従来、図4に示すように、その抜け道がないためピストンリテーナ60の油圧室61ではオイルOILの上部にエア溜りAが発生してしまう。その結果、供給されたオイルがエアを圧縮しなければならず、摩擦板の押圧に時間遅れが生じてブレーキとしての締結作動に支障を来すという問題があった。 【0005】したがって本発明は、上記従来の問題点に鑑み、自動変速機の多板ブレーキのピストンリテーナ内に形成される油圧室にエア溜りの発生がないようにした多板ブレーキ装置を提供することを目的とする。 【0006】 【課題を解決するための手段】このため本発明は、ケース部材とこれと相対回転する回転部材とにそれぞれ係合する第1および第2の摩擦板と、軸方向一端側に摺動することにより摩擦板を押圧するピストンと、該ピストンが摺動する円環状の内周壁部、外周壁部およびこれら内周壁部と外周壁部とを軸方向他端側で連結している連結壁部とを有してコ字形状をなし、内周壁部、外周壁部、連結壁部ならびにピストンとで当該ピストンの油圧室を形成するピストンリテーナとを有する自動変速機の多板ブレーキ装置であって、ピストンリテーナをケース部材に固定し、上記外周壁部の略底部に油圧室への油穴を設けるとともに、外周壁部の略頂部に油圧室のエア抜き孔を設けてあるものとした。 【0007】上記ケース部材は第1の摩擦板と係合するスプラインを備え、該スプラインはピストンリテーナの外周壁部まで延び、油圧室内のエアがエア抜き孔からスプラインの谷部空間へ排出されるよう構成することができる。とくに、エア抜き孔は上記スプラインの内径面巾内に位置し、油圧室内のエアはピストンリテーナの外周壁部の外周面とスプラインの内径面間の微小間隙を経て上記谷部空間へ排出されるようにするのが好ましい。 【0008】 【作用】多板ブレーキ装置のピストンリテーナの油圧室にエアが流入しても、ピストンリテーナの外周壁部に設けられたエア抜き孔から排出されるので、油圧室内にエア溜りが発生することがなく、応答性良くピストンが作動する。とくに、ピストンリテーナの外周壁部の略底部に油圧を供給する油穴を設けるとともにエア抜き孔を略頂部に設けてあるので、油圧室の上部に効率よくエアが集まり、このエアを効率よく迅速に排出することができる。 【0009】また、油圧室内のエアがエア抜き孔からスプラインの谷部空間へ排出されるよう構成することにより、排出のための通路を特別に形成する必要がない。この際、エア抜き孔をスプラインの内径面巾内に位置させることにより、ピストンリテーナの外周壁部の外周面とスプラインの内径面間の微小間隙がオイルに対するチョークとなり、オイルの抜けが阻止されるから、エア抜き孔は加工容易なサイズに設定することができ、しかもチョークのために別部材を特別に設ける必要がない。 【0010】 【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を、以下、実施例により説明する。図1は実施例の構成を示す自動変速機の変速機構部の縦断面図である。変速機ケース1内において、主軸2周りには、主軸と一体に回転する第1回転部材3、主軸2に対して回転可能の第2の回転部材4、そしてプラネタリギア5が軸方向に順次設けられている。第1回転部材3にはクラッチドラム12が結合されて、クラッチドラム12の内周にスプライン13が形成され、第2の回転部材4にはそのハブ部の外周にスプライン14が形成されている。これらクラッチドラム12と第2回転部材4の各スプライン13、14にそれぞれ係合する摩擦板15、16とで第1のクラッチCL1が構成されている。第2回転部材4は主軸2とプラネタリギア5のサンギア6の間を延び、キャリアプレート10を介してキャリア9に連結されている。 【0011】プラネタリギア5のサンギア6にはハブドラム20が結合され、ハブドラム20はその外周にそれぞれスプライン22、24を備える第1ドラム部21と第2ドラム部23を有している。第1ドラム部21のスプライン22と上記クラッチドラム12のスプライン13にそれぞれ係合する摩擦板25、26とで第2のクラッチCL2が構成されている。またプラネタリギア5のリングギア7は第3回転部材28に結合され、キャリア9は第4回転部材29に連結されるようになっている。 【0012】ハブドラム20の第2ドラム部23は軸方向においてプラネタリギア5のリングギア7と重なっており、キャリア9は第2ドラム部23とリングギア7の間を第4回転部材29側へ延びている。変速機ケース1の内壁には、ハブドラム20の第2ドラム部23に対向してスプライン30が形成され、このスプライン30と第2ドラム部23のスプライン24にそれぞれ係合する摩擦板31、32が設けられてブレーキBRKが構成されている。摩擦板の一端を支持するリテーナプレート33が変速機ケースのスプライン30の一端側に形成された肩部34に支持されている。変速機ケース1内壁のスプライン30に係合する摩擦板31が固定側の、そして第2ドラム部23のスプライン24に係合する摩擦板32が回転側の摩擦板となる。 【0013】スプライン30はクラッチドラム12に対向する部位まで延び、クラッチドラム12に対向する範囲においてその内径が切削されて拡径部35とされている。この拡径部35には、円環状の内周壁部40a、外周壁部40bおよびこれら壁部の摩擦板31、32方向とは反対側端部で連結する連結壁部40cを有して断面略コ字形状をなすピストンリテーナ40が設置され、拡径部35に形成された溝38に係止されたスナップリング39により位置決めされている。図2はピストンリテーナ40の断面を拡大して示している。 【0014】ピストンリテーナ40内には押圧部46を備えるリング状のピストン45が配置され、拡径部35の段差部36に設けたホルダ37とピストン45の間にはリターンスプリング47が設けられて、押圧部46を摩擦板31、32から離間させる方向にピストン45を付勢している。なお、押圧部46とリターンスプリング47はピストン45の周方向に間隔をおいてそれぞれ複数設けられている。上記のブレーキBRK、ピストンリテーナ40およびピストン45を主要素として多板ブレーキ装置が構成されている。 【0015】ピストンリテーナ40の外周壁部40bには、油圧室42の底部と図示省略の油圧コントロールバルブユニットに通じる油路49とを連通する油穴43が形成されている。この油穴43を通して油圧室42へ油圧供給することにより、ピストン45が軸方向一端側へ内周壁部40aおよび外周壁部40b上を摺動し、摩擦板31、32を押圧してハブドラム20が固定される。 【0016】また、ピストンリテーナ40の外周壁部40bの頂部には、油圧室42の頂部と油圧室の外部とを連通するエア抜き孔44が形成されている。とくに図3に示すように、ピストンリテーナ40はその外周面41に溶接固定した位置決めストッパ50を、拡径部35のスプラインの山52、52間に係合させて周方向に周り止めされており、エア抜き孔44は、拡径部35のスプライン30の内径面巾S、すなわち山の頂面巾の略中央部に位置している。これにより、油圧室42の頂部はエア抜き孔44からピストンリテーナの外周壁部40bの外周面41とスプライン30の内径面間の微小間隙を経て、拡径部のスプライン30の谷部空間Fに通じる。 【0017】本実施例は以上のように構成され、拡径部35のスプライン30の内径面巾Sの略中央部に対向するエア抜き孔44を、ピストンリテーナ40の外周壁部40bの頂部に、油圧室42の頂部と油圧室外部とを連通するよう設けたので、油圧室42にエアが混入してもそのエアはエア抜き孔44からピストンリテーナの外周壁部40bの外周面41とスプライン30の内径面間の微小間隙を経て外部へ放出されるから、エア溜りの発生することがなくピストン45が確実に作動してブレーキとしての応答性が向上するという効果を有する。また、エア抜き孔44からのエアは上記のようにスプライン30の谷部空間Fに排出されるので、特別に排出のための通路を形成する必要がない。 【0018】なお、実施例ではエア抜き孔44をスプライン30の内径面巾S内に位置させたが、直接スプラインの谷部空間Fに臨むように配置することもできる。しかし、スプラインの内径面巾内に位置させるほうが、ピストンリテーナの外周壁部40bの外周面とスプラインの内径面間の微小間隙がオイルに対するチョークとなり、エアは容易に放出するがオイルの抜けは阻止されるのでより好ましい。またこれにより、ピストンリテーナに形成するエア抜き孔44自体は、スプラインの谷部空間に臨むように配置するのに比較して、加工容易な大き目のサイズに設定することができる。なお、実施例はエア抜き孔を外周壁部の頂部に設けたものについて説明したが、必ずしも厳密な意味での頂部に限定されず、ピストンの応答性を十分保証できる程度にエアを抜くことができる頂部近傍の範囲を含む略頂部に設けた場合も本発明に含まれる。 【0019】 【発明の効果】以上のとおり、本発明は、摩擦板をピストンで押圧して締結を行なう自動変速機の多板ブレーキにおいて、ピストンの油圧室を形成するピストンリテーナの外周壁部の略底部に油圧を供給する油穴を設けるとともに、略頂部にエア抜き孔を設けたので、ピストンリテーナの油圧室にエアが流入しても油圧室の上部に効率よくエアが集まり、このエアが効率よく迅速にエア抜き孔から排出されるので、油圧室内にエア溜りが発生することがなく、確実にピストンが作動して多板ブレーキとしての応答性が向上するという効果を有する。 【0020】また、油圧室内のエアがエア抜き孔から摩擦板が係合するスプライン延長部の谷部空間へ排出されるよう構成することにより、排出のための通路を特別に形成する必要がなく加工コストがかからない。この際、エア抜き孔をスプラインの内径面巾内に位置させることにより、ピストンリテーナの外周壁部の外周面とスプラインの内径面間の微小間隙がオイルに対するチョークとなり、オイルの抜けが阻止されるから、エア抜き孔は加工容易なサイズに設定することができ、しかもチョークのために別部材を特別に設ける必要がない。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000231350 【氏名又は名称】ジャトコ株式会社
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| 【出願日】 |
平成9年(1997)11月4日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】菊谷 公男 (外3名)
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| 【公開番号】 |
特開平11−141661 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)5月25日 |
| 【出願番号】 |
特願平9−317704 |
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