| 【発明の名称】 |
歯 車 |
| 【発明者】 |
【氏名】三浦 健蔵
【氏名】吉田 彰
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| 【要約】 |
【課題】耐摩耗性、耐スカッフ性、強度、伸び、加工性等の特性がより一層改善された耐摩耗性鋼よりなる歯車を提供する。
【解決手段】炭素:1.0重量%以上、珪素:0.8重量%以上、マンガン:0.8重量%以上、硫黄:0.01重量%以下及びモリブデン:5.0重量%以下を含み、残部が実質的に鉄よりなる耐摩耗性鋼製の歯車。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】炭素:1.0重量%以上、珪素:0.8重量%以上、マンガン:0.8重量%以上、硫黄:0.01重量%以下及びモリブデン:5.0重量%以下を含み、残部が実質的に鉄よりなる耐摩耗性鋼製の歯車。 【請求項2】炭素:1.0重量%以上、珪素:0.8重量%以上、マンガン:0.8重量%以上、硫黄:0.01重量%以下及びモリブデン:5.0重量%以下と、ニッケル:3.0重量%以下、アルミニウム:1.0重量%以下、タングステン:1.5重量%以下、バナジウム:1.0重量%以下及び硼素:0.5重量%以下よりなる群から選ばれる1種又は2種以上とを含み、残部が実質的に鉄よりなる耐摩耗性鋼製の歯車。 【請求項3】 請求項1又は2において、前記耐摩耗性鋼は炭素:1.25〜2.50重量%、珪素:1.50〜3.00重量%、マンガン:0.8〜3.00重量%、硫黄:0.01重量%以下及びモリブデン:0.20〜2.0重量%を含むことを特徴とする歯車。 【請求項4】 炭素:2.2重量%以下、珪素:1.2重量%以下、マンガン:0.2重量%以上、クロム:16重量%以下、リン:0.2重量%以下及び硫黄:0.1重量%以上を含み残部が実質的に鉄よりなる耐摩耗性鋼製の歯車。 【請求項5】 請求項4において、炭素:1.2重量%以下、珪素:0.8重量%以下、マンガン:0.2重量%以上、リン:0.2重量%以下、硫黄:0.1重量%以上、クロム:6.0重量%以下を母材成分として含むと共に、モリブデン:5.0重量%以下、タングステン:1.0重量%以下、バナジウム:2.0重量%以下及び硼素:0.5重量%以下よりなる群から選ばれる1種又は2種以上をクリープ特性改善のための添加成分として含み、残部が鉄よりなる耐摩耗性鋼製の歯車。 【請求項6】 請求項5において、母材成分の炭素含有量が0.9〜1.1重量%、珪素含有量が0.4〜0.7重量%、マンガン含有量が0.9〜1.2重量%、リン含有量が0.05重量%以下、硫黄含有量が0.2〜0.5重量%、クロム含有量が0.9〜1.2重量%であることを特徴とする歯車。 【請求項7】 請求項4において、母材成分の炭素含有量が1.2重量%以下、珪素含有量が0.8重量%以下、マンガン含有量が0.2重量%以上、リン含有量が0.2重量%以下、硫黄含有量が0.1重量%以上、クロム含有量が15.0重量%以下であることを特徴とする歯車。 【請求項8】 請求項7において、母材成分の炭素含有量が0.6〜1.0重量%、珪素含有量が0.2〜0.4重量%、マンガン含有量が0.5〜1.0重量%、リン含有量が0.05重量%以下、硫黄含有量が0.2〜0.5重量%、クロム含有量が11〜13重量%であることを特徴とする歯車。 【請求項9】 請求項4において、炭素:2.2重量%以下、珪素:1.2重量%以下、マンガン:0.2重量%以上、クロム:6重量%以下、リン:0.08重量%以下、硫黄:0.15重量%以上を母材成分として含むと共に、モリブデン:5.0重量%以下、タングステン:1.0重量%以下、バナジウム:2.0重量%以下及び硼素:0.5重量%以下よりなる群から選ばれる1種又は2種以上をクリープ特性改善のための添加成分として含み、残部が鉄よりなる耐摩耗性鋼製の歯車。 【請求項10】 請求項9において、母材成分の炭素含有量が0.25〜2.0重量%、珪素含有量が0.20〜1.20重量%、マンガン含有量が0.40〜1.20重量%、クロム含有量が0.80〜5.50重量%、リン含有量が0.05重量%以下、硫黄含有量が0.20〜0.50重量%であることを特徴とする歯車。 【請求項11】 請求項7において、母材成分の炭素含有量が0.60〜2.0重量%、珪素含有量が0.10〜0.40重量%、マンガン含有量が0.40〜1.0重量%、クロム含有量が11.0〜15.0重量%、リン含有量が0.05重量%以下、硫黄含有量が0.20〜0.60重量%であることを特徴とする歯車。 【請求項12】 請求項4,7,8ないし11のいずれか1項において、添加成分としてモリブデンを含むことを特徴とする歯車。 【請求項13】 請求項12において、添加成分としてモリブデンと、タングステン、バナジウム及び硼素よりなる群から選ばれる1種又は2種以上とを含むことを特徴とする歯車。 【請求項14】 請求項4ないし13のいずれか1項において、母材成分として更にニオブ及び/又はテルルを含むことを特徴とする歯車。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は耐摩耗性鋼製の歯車に係り、特に、耐摩耗性、耐スカッフ性に優れる耐摩耗性鋼であって、鋳鉄に比べて強度が高く、伸びが大きい上に、超強力鋼、超硬合金に比べて靭性が高く、加工性も良好な高特性耐摩耗性鋼よりなる歯車に関する。 【0002】 【従来の技術及び先行技術】従来、歯車に用いられる耐摩耗性材料としては、ユーバロイ等の片状黒鉛鋳鉄(以下、鋳鉄と略記)や硬度の高い超強力鋼、超硬合金が知られている。 【0003】しかしながら、鋳鉄は強度が低く、伸びが小さいという欠点を有し、また、超強力鋼、超硬合金は靭性が低く、加工性に乏しく、更に耐スカッフ性(耐焼付き性)にも劣るという欠点を有している。 【0004】このような問題を解決するものとして、本出願人は先に次のI〜III のような組成の耐摩耗性鋼を提案した。 【0005】 【表1】
【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、強度、加工性、熱的安定性に優れる上に、摺動特性に優れ、油切れ状態ないし高PV値条件下において異常摩耗を起こし難い耐摩耗性鋼よりなる歯車を提供することを第1の目的とする。 【0007】本発明は、耐摩耗性、耐スカッフ性、強度、伸び、加工性等の特性がより一層改善された耐摩耗性鋼よりなる歯車を提供することを目的とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】本発明の歯車を構成する第1(請求項1〜3)の耐摩耗性鋼は、炭素:1.0重量%以上、好ましくは1.25〜2.50重量%、珪素:0.8重量%以上、好ましくは1.50〜3.00重量%、マンガン:0.8重量%以上、好ましくは0.80〜3.00重量%、硫黄:0.01重量%以下及びモリブデン:5.0重量%以下、好ましくは0.20〜2.0重量%を含み、残部が実質的に鉄よりなる。 【0009】本発明の耐摩耗性鋼は、更に、ニッケル:3.0重量%以下、アルミニウム:1.0重量%以下、タングステン:1.5重量%以下、バナジウム:1.0重量%以下及び硼素:0.5重量%以下よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を含んでいても良い。 【0010】この組成範囲を一覧表にまとめると、次の表2の通りである。 【0011】 【表2】
【0012】上記組成範囲の耐摩耗性鋼は、強度、加工性、熱的安定性を損なうことなく、摺動特性を片状黒鉛鋳鉄と同程度或いはそれ以上に向上させることができ、油切れ状態ないし高PV値条件下において異常摩耗を起こし難い。 【0013】本発明の歯車を構成する第2(請求項4〜14)の耐摩耗性鋼は、C:2.2重量%以下、Si:1.2重量%以下、Mn:0.2重量%以上、Cr:16重量%以下、P:0.2重量%以下及びS:0.1重量%以上を母材成分として含むと共に、Mo:5.0重量%以下、W:1.0重量%以下、V:2.0重量%以下及びB:0.5重量%以下よりなる群から選ばれる1種又は2種以上をクリープ特性改善のための添加成分として含み、残部がFeよりなる。 【0014】上記特定の母材成分を含む第2の耐摩耗性鋼に、更に、Mo,W,V,Bの1種又は2種以上を特定の割合で添加することにより、母材成分による耐摩耗性、耐スカッフ性、強度、伸び、靭性、加工性の向上効果を損なうことなく、クリープ特性を大幅に改善することができる。 【0015】第2の耐摩耗性鋼(請求項4〜11)の組成は次の通りである。 【0016】 【表3】
【0017】また、クリープ特性改善のための添加成分としては、特にMoを添加するのが好ましく、とりわけMoと、W,V及びBの1種又は2種以上を使用添加するのが好ましい。 【0018】この添加成分の好ましい添加形態及び添加割合は次の通りである。 【0019】■ Mo:5.0重量%以下■ Mo:5.0重量%以下とW:1.5重量%以下の併用添加■ Mo:5.0重量%以下とV:2.0重量%以下の併用添加■ Mo:5.0重量%以下とB:0.5重量%以下の併用添加■ Mo:5.0重量%以下とV:2.0重量%以下とW:3.0重量%以下との併用添加なお、本発明において、「残部が鉄よりなる」とは、残部がすべて鉄であることを示すものではなく、不可避的に含まれる不純物ないしその他の微量成分を2.0重量%以下、好ましくは0.5重量%以下の範囲で含有していても良い。例えば、母材成分として更に、Nb0.2重量%以下及び/又はTe0.1重量%以下を含有していても良い。 【0020】本発明は、平歯車、内歯車、はすば歯車、やまば歯車、すぐばかさ歯車、まがりばかさ歯車、ハイポイドギヤ、ウォーム、ウォームホィール、ねじ歯車など各種の歯車に適用できる。 【0021】 【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。 【0022】I.第1の耐摩耗性鋼よりなる歯車(請求項1〜3) 第1の耐摩耗性鋼の合金組成は前記表2に示す通りである。 【0023】この第1の耐摩耗性鋼において、炭素(C)が1.0重量%未満では、耐摩耗性が良好であるとは言えないが、Cが過度に多いと靭性が大幅に低下するので、好ましいCの含有割合は1.25〜2.50重量%である。 【0024】珪素(Si)が0.8重量%未満では黒鉛化しにくいが、Siが過度に多いと靭性が大幅に低下するので、好ましくはSiの含有割合は1.50〜3.00重量%である。 【0025】マンガン(Mn)が0.8重量%未満では黒鉛化しにくいが、Mnが過度に多いと靭性が大幅に低下するので、好ましいMnの含有割合は0.80〜3.00重量%である。 【0026】ニッケル(Ni)は、機械的性質を向上するためのものであるが3.0重量%を超えると耐スカッフ性が低下する。Niの好ましい含有割合は2.0重量%以下である。 【0027】アルミニウム(Al)は黒鉛化、および脱酸するためのものであるが、1.0重量%を超えると靭性が大幅に低下する。Alの好ましい含有割合は0.5重量%以下である。 【0028】硫黄(S)が0.01重量%を超えると靭性が低下するので、0.01重量%以下とする。 【0029】モリブデン(Mo)の存在で熱的特性の向上という効果が得られるが、Moが5.0重量%を超えると靭性が低下する。Moの好ましい含有割合は0.20〜2.0重量%である。 【0030】タングステン(W)は、熱的特性を向上するためのものであるが、1.5重量%を超えると靭性が低下する。Wの好ましい含有割合は0.8重量%以下である。 【0031】バナジウム(V)は、熱的特性を向上するためのものであるが、Vが2.0重量%を超えると靭性が低下する。Vの好ましい含有割合は1.0重量%以下である。 【0032】硼素(B)は、熱的特性を向上するためのものであるが、0.5重量%を超えると靭性が低下する。Bの好ましい含有割合は0.10重量%以下である。 【0033】このような耐摩耗性鋼は、下記のような熱処理を施して歯車素材を歯切り又は転造による歯の創成後、歯車が製作される。また、このような熱処理の他、レーザ焼入れ処理又は深冷処理を施しても良い。 【0034】[熱処理方法及び条件]焼入(温度:760℃〜820℃)→油中急冷→焼戻(温度100℃〜600℃)→放冷II.第2の耐摩耗性鋼よりなる歯車(請求項4〜14) 第2の耐摩耗性鋼(請求項4〜14)の母材成分の組成範囲は前記表3の通りである。 【0035】第2の耐摩耗性鋼において、母材成分として含まれるC,Si,Mn,Cr,P及びSの含有量は、機械的特性(強度、伸び等)や摺動特性等を高めるために必要な値である。 【0036】一方、Mo,W,V,Bはクリープ特性改善のための添加成分であるが、これらの添加量が多過ぎると一部の機械的性質が低下するため、これらの添加成分は、前記■〜■の添加形態及び添加量とする。 【0037】なお、添加成分の2種以上を併用添加する場合、その合計の添加量は5.0重量%以下であることが好ましい。 【0038】このような第2の耐摩耗性鋼よりなる歯車も、歯車素材を歯切り又は転造による歯の創成後、下記のような熱処理を施して使用に供される。また、このような熱処理の他、レーザ熱処理或いはサブゼロ処理を施しても良い。 【0039】[熱処理方法及び条件]請求項5,6,9,10の耐摩耗性鋼:焼入(温度:780℃〜840℃)→油中急冷→焼戻(温度100℃〜700℃)→放冷請求項4,7,8,11,12,13,14の耐摩耗性鋼:焼入(温度:1000℃〜1100℃)→油中急冷→焼戻(温度100℃〜800℃)→放冷【0040】 【実施例】以下に実施例及び比較例を挙げて第1の耐摩耗性鋼よりなる歯車についてより具体的に説明する。 【0041】実施例1〜7,比較例1,2表2に示す構成を有し、下記条件で熱処理を行った合金鋼よりなる歯車について、下記試験を行ってその特性を調べ、結果を表2に示した。 【0042】[熱処理方法及び条件]焼入(温度:780℃)→油中急冷→焼戻(温度500℃)→放冷[摺動特性]片状黒鉛鋳鉄以上[機械的強度]引張強度σB ≧60kg/mm2伸び ε ≧1.5%[熱的特性]片状黒鉛鋳鉄以上【0043】 【表4】
【0044】表4より、第1の耐摩耗性鋼よりなる歯車は、機械的強度等に優れる上に、摺動特性が著しく良好で異常摩耗が改善されていることが明らかである。 【0045】次に、第2の耐摩耗性鋼よりなる歯車についてより具体的に説明する。 【0046】説明の便宜上まず比較例を挙げる。 【0047】比較例3〜6表5に示す組成を有し、表5に示す熱処理を行った耐摩耗性鋼よりなる歯車について、下記方法で各種特性を調べ、結果を表6に示した。 【0048】 【表5】
【0049】 【表6】
【0050】(1) 耐摩耗性ターカロイ製ディスクと、耐摩耗性鋼で構成されたピンとを用い、下記条件で摺動摩擦することにより摩耗試験を行い、摩耗試験100時間あたりの摩耗量を調べた。 [摩耗試験条件]摩擦速度 :1.65m/sec接触荷重 :4500N潤滑油 :SAE#20エンジルオイル潤滑油速度:160℃(2) 耐スカッフ性スーパーターカロイ製回転片と、耐摩耗性鋼で構成された固定片とを用いて、ピンディスク型摩擦摩耗試験機により下記条件でスカッフ試験を行い、スカッフ発生までの時間及び荷重を調べた。その結果を表6に示す。 [スカッフ試験条件]■ 潤滑油 :SAE#30+白灯油(1:1) 潤滑油量:潤滑油を回転片摺動面に塗布し、周速5m/sで30秒間空転させ摺動面上の油量を一定にした。 試験方法:荷重は25kgfから50kgfに5分毎に10kgfずつ高め周速は5m/s一定とした。 (3) 機械的強度引張強さ、0.2%耐力、ヤング率、伸びを調べた。 【0051】 【発明の効果】本発明によれば、強度、加工性、熱的安定性に優れる上に、摺動特性に優れ、油切れ状態ないし高PV値条件下において異常摩耗を起こし難い耐摩耗性鋼よりなる歯車が提供される。 【0052】また、本発明によれば、耐摩耗性、耐スカッフ性、強度、伸び、加工性等の特性がより一層改善された耐摩耗性鋼よりなる歯車が提供される。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000005902 【氏名又は名称】三井造船株式会社
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| 【出願日】 |
平成9年(1997)11月7日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】重野 剛
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| 【公開番号】 |
特開平11−141656 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)5月25日 |
| 【出願番号】 |
特願平9−305601 |
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