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【発明の名称】 歯車衝撃緩衝機構
【発明者】 【氏名】駒崎 義一

【氏名】大津 新喜

【要約】 【課題】歯車装置の無負荷運転時の騒音低減に関し、簡単な構造で歯と歯の衝突力を緩衝し、歯車音を低減する歯車衝撃緩衝装置を提供すること。

【解決手段】被駆動歯車2は径方向の隙間8を隔てて被駆動軸4に結合されると共に、被駆動歯車2のキー溝10と周方向の隙間7を隔てて配設されたキー5、被駆動歯車2のキー溝10、被駆動軸4のキー溝11が一直線上に並ぶように被駆動軸4の一部に設けた穴13と被駆動歯車2の穴12を弾性部材であるピアノ線6で結合してある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 回転軸と、回転軸と回転中心を共有するように回転軸に装着された歯車と、歯車と回転軸の間に設けられた回り止め部材とを有し、回り止め部材を回転軸と歯車との間に若干の回転方向の動きを許容するように設け、かつ弾性材により歯車を軸方向に付勢して、歯車を回転方向に摩擦摺動可能に支持した歯車衝撃緩衝機構であって、静止時には回り止め部材が回転軸または歯車の少なくとも一方に非接触となるように、回転軸と歯車の相対位置を決定する第2弾性材を設けたことを特徴とする歯車衝撃緩衝機構。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は無負荷運転時に発生する歯車音を低減するようにした歯車衝撃緩衝機構に関するもので、騒音低減効果の向上を図るようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】上記した無負荷運転時に発生する歯車音を低減する歯車衝撃緩衝機構は本出願人により特開平9−158993号で提案されている。これを図5〜図7を参照して説明する。図7は本歯車衝撃緩衝機構が採用されるディスクグラインダの一例を示し、図5は図7の歯車部を拡大して示す。なお図5において駆動軸3を駆動するモータ及び被駆動軸4の支持機構等の図示は省略した。駆動歯車1は図示しないモータによって駆動される駆動軸3に圧入され、駆動軸3と一体で回転する。駆動歯車1により噛み合い駆動される被駆動歯車2は径方向の隙間8を隔てて被駆動軸4に結合し、被駆動軸4に結合した止め輪19と被駆動歯車2との間に弾性部材であるウェーブワッシャ18を軸方向に圧縮して設置してある。従って被駆動歯車2の軸方向の位置は、被駆動歯車2を被駆動軸4の段差面9に突き当て、被駆動軸4に結合された止め輪19と被駆動歯車2との間にウェーブワッシャ18を設けることによって固定される。図6は図5のA−A断面を示したもので、被駆動歯車2と被駆動軸4との回り止め部材としてキー5を周方向の隙間7を隔てて設けている。
【0003】上記のように構成された歯車衝撃緩衝機構では、駆動歯車1の歯と被駆動歯車2の歯が衝突した際の衝撃力が小さい時は、被駆動歯車2と段差面9及び被駆動歯車2とウェーブワッシャ18との接触面で発生する静止摩擦力によって被駆動歯車2は被駆動軸4と一体で回転する。前記衝撃力が前記静止摩擦力を超えた場合、被駆動歯車2は被駆動軸4に対して周方向の隙間7の距離を摺動する。この時、被駆動歯車2と段差面9及び被駆動歯車2とウェーブワッシャ18との接触面で発生する動摩擦力が被駆動歯車2に作用している。すなわち前記衝撃力は動摩擦力により減衰され、歯面同士の衝突による騒音及び衝撃が被駆動軸4の先端に装着される砥石15を振動させて発生する騒音を低減する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記した歯車衝撃緩衝機構では、回り止め部材として作用するキー5を被駆動軸4と被駆動歯車2との間に若干の回転方向の動きを許容するように設け、かつウェーブワッシャ18により被駆動歯車2を軸方向に付勢して、回転方向に摩擦摺動可能に支持している。しかし上記のように構成された歯車機構の場合、無負荷運転時においてピッチ誤差、歯車の偏心等の種々の要因がランダムに作用することにより、被駆動軸4に対する被駆動歯車2の偏りがしばしば発生する。特にモータのトルクの影響で回転方向に偏る場合が多く、キー5が被駆動歯車2のキー溝の回転方向に接触しやすい。この状態で更に回転方向に衝突が発生すれば、衝突力を緩衝できず歯車音は低減できない。更に研削時にはキー5は被駆動歯車2と接触するため、研削終了時にも被駆動歯車2の偏りが発生し歯車音を吸収することができない。すなわち被駆動歯車2に対して、被駆動軸4及びキー5の位置が自由であるため、衝撃力の作用する方向における周方向の隙間7の確保は確実ではなく、定常的な歯車音低減効果を得られないといった問題があった。本発明の目的は、上記した従来技術の問題点をなくし、簡易構造かつ低騒音の歯車衝撃緩衝機構を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的は、静止時には回り止め部材が回転軸または歯車の少なくとも一方に非接触となるように、回転軸と歯車の相対位置を決定するための弾性材を設けることにより達成される。
【0006】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施形態を図1を用いて説明する。なお上記した図5〜図7と同じ要素には同じ符号を付し、説明を省略する。駆動歯車1と噛み合い駆動される被駆動歯車2は径方向の隙間8を隔てて被駆動軸4に結合し、被駆動軸4に結合した止め輪19と被駆動歯車2との間にウェーブワッシャ18を軸方向に圧縮して設置してある。従って被駆動歯車2の軸方向の位置は、被駆動歯車2を被駆動軸4の段差面9に突き当て、被駆動軸4に結合された止め輪19と被駆動歯車2との間にウェーブワッシャ18を設けることによって固定される。図2は図1の上面図であり、駆動歯車1と駆動軸3は2点鎖線で示した。被駆動歯車2のキー溝10の周方向の幅は、回り止め部材として作用するキー5の幅よりも大きく設けてある。またキー5、被駆動歯車2のキー溝10、被駆動軸4のキー溝11が一直線上に並ぶように、弾性材であるピアノ線6が被駆動軸4と被駆動歯車2の周方向の相対位置を決定している。ピアノ線6の一端は被駆動歯車2の上面に設けられた穴12内に止められ、他端は、被駆動軸4を軸方向と直角の方向に沿って貫通した穴13及びキー溝11を通過した後被駆動軸4に止められている。ここでピアノ線6は板バネ等任意の弾性材に交換することが可能である。ピアノ線6の弾性力は被駆動歯車2と被駆動軸4の相対変位に比例し、相対変位が最大となった時、すなわちキー5が被駆動歯車2と接触した時、被駆動歯車2と段差面9及び被駆動歯車2とウェーブワッシャ18との接触面で発生する静止摩擦力より大きくなるように線径、長さを設定してある。従って被駆動歯車2のキー溝10とキー5の間には常に周方向の隙間7が確保され、静止時にはキー5が被駆動歯車2と非接触となる。
【0007】上記のように構成された本発明歯車衝撃緩衝機構では、駆動歯車1の歯と被駆動歯車2の歯が衝突した際の衝撃力が小さい時は、被駆動歯車2と段差面9及び被駆動歯車2とウェーブワッシャ18との接触面で発生する静止摩擦力によって被駆動歯車2は被駆動軸4と一体で回転する。衝撃力が、静止摩擦力を超えた場合、被駆動歯車2は被駆動軸4に対して周方向の隙間7の距離を摺動する。この時、被駆動歯車2と段差面9及び被駆動歯車2とウェーブワッシャ18との接触面で発生する動摩擦力に加えてピアノ線6の弾性力が反力として被駆動歯車2に作用している。すなわち衝撃力は弾性力と動摩擦力との合力により減衰され、歯面同士の衝突による騒音及び衝撃が砥石15を振動させて発生する騒音を低減する。上記のようにして衝突力が減衰された後、ピアノ線6の弾性力により被駆動歯車2と被駆動軸4の周方向相対位置はピアノ線6の弾性力と静止摩擦力が釣り合う位置に復元する。従って次に表裏どちらの歯面で衝突することになっても、常に周方向の隙間7は確保されているので衝撃力を確実に緩和し、定常的な歯車音低減効果を得ることができる。ここで復元後の周方向の隙間7の大きさについて詳細に述べると、本実施例のような砥石15が100mmクラスのディスクグラインダの場合、キー5と被駆動歯車2のキー溝10の間隔は0.3rad以上の隙間が確保されるようにピアノ線6の弾性力を設定するとよいことが実験により判明している。
【0008】上記の効果に加えて研削後においてもピアノ線6の弾性力によって周方向の隙間7が確保されるため、歯車音低減効果を得ることが可能である。更には研削時のように被駆動歯車2に大きな外的トルクが作用しない限り、キー5は被駆動歯車2と接触することはないため、歯面から砥石15に伝わる振動を低減でき、砥石15やハウジング16、ホイルガード17等から放射される騒音も低減することができる。加えて構造面においては簡易な構造であるので生産コストの上昇は僅小である。
【0009】図3は本発明の他の実施形態を示すもので、キー5の周方向両面にゴム20を挿入することで被駆動軸4と被駆動歯車2を非接触とした例を示したものであり、図4は図3の上面図である。歯面衝突後、ゴム20の弾性力により被駆動歯車2と被駆動軸4の周方向相対位置はゴム20の弾性力と前記静止摩擦力が釣り合う位置に復元し、常に周方向の隙間7は確保される。上記した実施形態においては、衝撃緩衝機構を、被駆動軸4と被駆動歯車2との間に設けるとしたが、本発明は駆動軸3と駆動歯車1と間に設けてもよく、ほぼ同じ効果を得ることができる。
【0010】
【発明の効果】本発明によれば、無負荷運転時に発生する歯車音を低減するための歯車衝撃緩衝機構の回転軸に対する歯車の偏りを防止し、定常的な歯車音低減効果を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000005094
【氏名又は名称】日立工機株式会社
【出願日】 平成9年(1997)10月31日
【代理人】
【公開番号】 特開平11−132310
【公開日】 平成11年(1999)5月21日
【出願番号】 特願平9−300389