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【発明の名称】 ボールねじのシール装置
【発明者】 【氏名】信朝 雅弘

【氏名】戸田 正明

【氏名】柴田 靖史

【氏名】牛田 公人

【氏名】小和田 貴之

【要約】 【課題】シール部材の突部とねじ軸の螺旋溝との間の摺接部で油膜を安定して形成可能する。

【解決手段】ボールナットの両端部に装着されるシール部材5に、ねじ軸1の螺旋溝1aに接触する突部5aを設ける。この突部5aに、その表面をその形成方向に沿って平面的に切除して逃げを形成し、螺旋溝1a表面との間に油の溜り部9を設ける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ねじ軸の螺旋溝に嵌合する、固形潤滑組成物からなる突部を備えたシール部材をボールナットに装着し、シール部材の突部をねじ軸の螺旋溝に接触させてボールナット内をシールするものにおいて、前記螺旋溝表面とシール部材の突部表面との間に、油の溜り部を設けたことを特徴とするボールねじのシール装置。
【請求項2】 油の溜り部を、シール部材の突部表面を部分的に肉取りして形成した請求項1記載のボールねじのシール装置。
【請求項3】 突部表面の肉取り部分が、穴もしくは溝であり、または突部表面を部分的に除去した平面状の逃げである請求項2記載のボールねじのシール装置。
【請求項4】 シール部材を、円周方向の複数箇所で分割し、各分割部分を内径側に弾圧してシール部材の突部をねじ軸の螺旋溝に接触させることを特徴とする請求項1乃至3何れか記載のボールねじのシール装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ボールねじのボールナット内をシールするためのシール装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ボールねじは、ねじ軸の外周面に設けた螺旋溝と、ボールナットの内周面に設けた螺旋溝との間に複数のボールを配し、ねじ軸(またはボールナット)の回転動力をボールを介してボールナット(またはねじ軸)の推力に変換するものである。このボールねじには、ボールナットの内部に充填した潤滑剤の洩出、および外部からの異物の進入を防止するため、ねじ軸の螺旋溝に嵌合する突部を有するシール部材をボールナットの両端部に装着する場合が多い。
【0003】従来のシール装置としては、図7に示すように、ボールナット(22)の両端部に装着したシール部材(25)の突部(25a)とねじ軸(21)の螺旋溝(21a)との間に隙間を設けたいわゆる非接触型シールが一般的であるが、この種のシール装置では、当該隙間の存在により、使用条件によってはシール不足に陥るおそれがあるため、シール性を向上させるべく、シール部材の突部とねじ軸の螺旋溝とを摺接させる、いわゆる接触型のシール部材も従来から多数提案されている(実開平6 −47762 号公報、実開平7-4952号公報等参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記接触型シール装置では、シール部材を、組織内に潤滑油または潤滑グリースを保持する固形潤滑組成物で形成し、これをねじ軸に直接接触させて、シール部材から滲み出した油で油膜を形成し、摺接部における摩擦抵抗を低減する。従って、このシール装置は、シール部材をねじ軸の螺旋溝に密着させているにもかかわらず、トルク損失が少なく、また摺接部における摩擦による発熱も少ない等の特徴を有する。
【0005】しかし、シール部材の突部がねじ軸の螺旋溝表面に密着する構造であるため、突部が螺旋溝に沿って相対移動する際に、突部がシール部材から滲み出した油を摺接部外に押し出し、油膜の形成を阻害するおそれがある。
【0006】そこで、本発明では、接触型のシール装置において、良好な油膜を安定して形成可能とし、摺接部での潤滑性を向上せさ得るボールねじのシール装置の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成すべく、本発明では、ねじ軸の螺旋溝に嵌合する、固形潤滑組成物からなる突部を備えたシール部材をボールナットに装着し、シール部材の突部をねじ軸の螺旋溝に接触させてボールナット内をシールするものにおいて、前記螺旋溝表面とシール部材の突部表面との間に、油の溜り部を設けることとした。
【0008】油の溜り部は、シール部材の突部表面を部分的に肉取りすることにより形成することができる。
【0009】突部表面の肉取り部分は、穴もしくは溝で、または突部表面を部分的に除去した平面状の逃げで形成される。
【0010】以上の場合においては、シール部材を、円周方向の複数箇所で分割し、各分割部分を内径側に弾圧してシール部材の突部をねじ軸の螺旋溝に接触させるのが望ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施形態を図1乃至図6に基いて説明する。
【0012】図5は、接触型シール装置を有するボールねじの一例を示す断面図である。このボールねじは、ねじ軸(1)の外周面に設けられた螺旋溝(1a)と、ボールナット(2)の螺旋溝(2a)との間に複数のボール(3)を配置して構成され、ねじ軸(1)とボールナット(2)とを相対回転させて、その回転動力をボール(3)を介して相手側に伝達することにより、ボールナット(2)またはねじ軸(1)を軸方向に相対移動させるものである。ボールナット(2)の内径面両端部には凹部が形成され、凹部にリング状のシール部材(5)と補助リング(6)とが装着されている。
【0013】シール部材(5)は、合成樹脂基材に潤滑油や潤滑グリース等の潤滑成分を分散保持させた固形潤滑組成物で形成される。具体的には、超高分子量ポリオレフィン粉末95〜1重量%に潤滑油または潤滑グリース5〜99重量%を混合し、この混合物を所定形状の型に入れ、超高分子量ポリオレフィンのゲル化温度以上の温度で加熱し、その後、冷却固化させて形成される[油の滲み出しを抑制するための添加物(固形ワックス等)を1〜50重量%加える場合もある]。
【0014】超高分子量ポリオレフィン粉末としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブデン若しくはこれらの共重合体からなる粉末、またはそれぞれ単独の粉末を配合した混合粉末で、各粉末の平均分子量約1×106 〜5×106 のものを使用することができる。
【0015】潤滑油としては、鉱油、ポリオールエステル油、ジエステル油、合成炭化水素油、アルキルフェニルエーテル油あるいはこれらの混合物からなる潤滑油を使用することができる。一方、潤滑グリースの種類は特に限定されるものではなく、石けん又は非石けんで増稠した潤滑グリースであれば、リチウム石けん−ジエステル系、リチウム石けん−鉱油系、ナトリウム石けん−鉱油系、アルミニウム石けん−鉱油系、リチウム石けん−ジエステル鉱油系、非石けん−ジエステル系、非石けん−鉱油系、非石けん−ポリオールエステル系、リチウム石けん−ポリオールエステル系等から適宜選択されるが、少なくとも超高分子量ポリオレフィンのゲル化点よりも高い滴点を有するものでなければならない。
【0016】シール部材(5)は、一体のリング状に形成しても良いが、ねじ軸(1)やシール部材(5)の寸法精度に影響されず、ねじ軸(1)と適度な接触力で接触するように、例えば図6(a)(b)に示すように、円周等配位置の3箇所で分割した分割構造とすることができる。分割した各シール部材(5)は、内径方向に突出した突部(5a)を有し、この突部(5a)はねじ軸(1)の螺旋溝(1a)に対応した形状・寸法を有する。また、シール部材(5)の各分割部分の分割面(5b)間には、僅かな隙間がある。シール部材(5)の3つの分割部分は、それぞれ適宜の手段で内径側に弾圧され、そのために突部(5a)とねじ軸(1)の螺旋溝(1a)との嵌合隙間は、図5(b)に示すようにゼロあるいは僅かにマイナス(締め代をもった状態)になっている。図面では、弾圧手段として、ボールナット(2)のねじ穴(2b)に螺着したボールプランジャ(8)を例示しているが、その他にも、例えばシール部材(5)の外周に嵌着したガータスプリングを用いて各分割部分を内径側に弾圧してもよい。また、シール部材(5)を軸方向の全幅で完全に分割する他、途中部分までを複数の軸方向スリットで分割し、この分割部分のみを弾圧手段で内径側に弾圧してもよい(詳細は、実開平 6-47762号公報参照)。また、各分割部分の全てに突部(5a)を設ける必要はなく、少なくともそのうちの一の分割部分に突部(5a)が形成されていれば足りる。
【0017】以上の構成から、シール部材(5)の突部(5a)がねじ軸(1)の螺旋溝(1a)に対して密着状態で摺接するため、ボールナット(2)内の潤滑剤が外部に洩れにくくなり、外部から異物が侵入しにくくなる。また、シール部材(5)の組織内に保持された潤滑成分(油)が突部(5a)と螺旋溝(1a)との摺接部に滲み出して油膜を形成するので、摺接部における摩擦抵抗を低減することができる。さらに、シール部材(5)から摺接部に滲み出した油が、ねじ軸(1)の回転に伴ってボールナット(2)の内部に送られ、ボール(3)とねじ軸(1)およびボールナット(2)の螺旋溝(1a、2a)との接触部分の潤滑にも寄与する。
【0018】以上説明した接触型のシール装置において、本発明は、図1および図2に示すように、ねじ軸(1)の螺旋溝(1a)表面とシール部材(5)の突部(5a)表面との間に、油の溜り部(9:散点模様で示す)を設けたものである。この溜り部(9)は、ねじ軸(1)の螺旋溝(1a)と接触する突部(5a)表面を螺旋溝(1a)表面に対して部分的に肉取りすることにより形成され、両図面では、肉取り部として突部(5a)の両側表面をその形方向に沿って平面的に除去して逃げを形成した場合を例示している。なお、このような平面状の逃げに代えて、突部(5a)の両側表面をその形成方向に沿って凹状に除去した溝を形成しても良い。
【0019】このような溜り部(9)を設けることにより、シール部材(5)から滲み出した油が溜り部(9)に保持されるので、ねじ軸(1)とボールナット(2)との相対回転時に突部(5a)とねじ軸(1)の螺旋溝(1a)とが摺接する際にも、摺接部分に確実に油膜を形成することができ、この部分での潤滑性を向上させることができる。また、摺接部の油がねじ軸(1)の回転に伴ってボール(3)とねじ軸(1)およびボールナット(2)の螺旋溝(1a、2a)との接触部分にも供給されるので、ボールナット(2)の内部の潤滑性も向上する。このような潤滑効果のさらなる安定化を図るため、溜り部(9)は突部(5a)の頂点を挟んで軸方向の両側(両側部)に設けるのが望ましい。
【0020】図3および図4は本発明の他の実施形態を表すもので、図3は突部(5a)表面に周方向に整列させた多数の穴を形成することにより(ランダムに形成してもよい)、図4はねじ軸(1)の螺旋溝(1a)と直交する方向の多数条の溝を形成することにより、油の溜り部(9)を形成したもので、図1に示す溜り部(9)と同様の効果が奏される。
【0021】なお、以上の説明では、シール部材(5)を円周方向の複数箇所で分割し、各分割部分を内径側に弾圧する場合を例示しているが、これは突部(5a)と螺旋溝(1a)との密着性を確保するためである。従って、そのような密着性が確保されるのであれば、シール部材(5)を円周方向で連続する一体のリング状とする場合にも(弾圧手段の有無は問わない)本発明を同様に適用することができる。
【0022】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、シール部材から滲み出した油が溜り部に保持されるので、シール部材の突部とねじ軸の螺旋溝とが摺接する際にも、摺接部に確実に油膜を形成することができ、この部分での潤滑性を向上させることができる。また、摺接部の油がねじ軸の回転に伴ってボールとねじ軸およびボールナットの螺旋溝との接触部分にも供給されるので、ボールナットの内部の潤滑性も向上する。
【出願人】 【識別番号】000102692
【氏名又は名称】エヌティエヌ株式会社
【出願日】 平成9年(1997)10月29日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】江原 省吾 (外3名)
【公開番号】 特開平11−132305
【公開日】 平成11年(1999)5月21日
【出願番号】 特願平9−297284