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【発明の名称】 ベルト式無段変速機付き伝動装置
【発明者】 【氏名】太田 庄次

【氏名】山口 徹朗

【要約】 【課題】ベルト式無段変速機と、その変速機の一方のプーリの固定プーリ半体背面に隣接配置されるクラッチとを備えたベルト式無段変速機付き伝動装置において、クラッチと隣接するプーリが伝動負荷に因り撓み変形を生じても、その変形の影響がクラッチアウタ、延いてはそのアウタ内のクラッチ要素に及ぶことを回避できるようにして、変速に伴うプーリの有効ピッチ径変化に関係なくクラッチを常に的確に作動させ得るようにする。

【解決手段】クラッチCのクラッチアウタ8を一方のプーリPbの固定プーリ半体3背面の、伝動負荷によっても撓みを生じない部位に当接させ、その当接部よりも径方向外方側では該固定プーリ半体3背面とクラッチアウタ8とを非接触とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 有効ピッチ径を各々可変とした駆動プーリ(Pa)及び被動プーリ(Pb)の相互間を伝動ベルト(B)で連動連結してなるベルト式無段変速機(CVT)と、一方のプーリ(Pb)の固定プーリ半体(3)背面に隣接配置されるクラッチ(C)とを少なくとも備えた、ベルト式無段変速機付き伝動装置において、前記クラッチ(C)のクラッチアウタ(8)を前記固定プーリ半体(3)背面の、伝動負荷によっても撓みを生じない部位に当接させ、その当接部よりも径方向外方側では該固定プーリ半体(3)背面とクラッチアウタ(8)とを非接触としたことを特徴とする、ベルト式無段変速機付き伝動装置。
【請求項2】 有効ピッチ径を各々可変とした駆動プーリ(Pa)及び被動プーリ(Pb)の相互間を伝動ベルト(B)で連動連結してなるベルト式無段変速機(CVT)と、一方のプーリ(Pb)の固定プーリ半体(3)背面に隣接配置されるクラッチ(C)とを少なくとも備えた、ベルト式無段変速機付き伝動装置において、前記クラッチ(C)のクラッチアウタ(8)を前記固定プーリ半体(3)の背面に、該プーリ半体(3)の内周端寄りの位置で固着し、その固着部(w)よりも径方向外方側では該固定プーリ半体(3)背面とクラッチアウタ(8)とを非接触としたことを特徴とする、ベルト式無段変速機付き伝動装置。
【請求項3】 前記クラッチ(C)は摩擦式の多板クラッチであり、前記クラッチアウタ(8)は、複数の摩擦板(10)を内周にスプライン嵌合した円筒状ガイド部(8g)と、そのガイド部(8g)の内端に一体に連設されて径方向内方側に延びると共に固定プーリ半体(3)背面にクリアランス(s)を挟んで対面する環状端壁部(8e)とを有し、その端壁部(8e)の内周端部が前記固定プーリ半体(3)背面に固着されたことを特徴とする、請求項1又は2に記載のベルト式無段変速機付き伝動装置。
【請求項4】 前記無段変速機(CVT)およびクラッチ(C)を収容する伝動ケース(M)には、前記一方のプーリ(Pb)のプーリ軸(Sb)を相互に離隔した複数の軸受(b1 ,b2 )を介して支持し、その相隣なる2つの軸受(b1 ,b2 )間に、該一方のプーリ(Pb)および前記クラッチ(C)を配置したことを特徴とする、請求項1,2又は3に記載のベルト式無段変速機付き伝動装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有効ピッチ径を各々可変とした駆動プーリ及び被動プーリの相互間を伝動ベルトで連動連結してなるベルト式無段変速機と、一方のプーリの固定プーリ半体背面に隣接配置されるクラッチとを少なくとも備えたベルト式無段変速機付き伝動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】上記ベルト式無段変速機付き伝動装置に組み込まれるクラッチとしては、例えば発進用クラッチ或いは前後進切換用クラッチ等があり、それらは無段変速機付き車両の発進や、前進・後退切換えのために使用される。
【0003】このようなクラッチは、前記伝動装置における伝動経路の配置態様その他の都合により、また該クラッチと一方のプーリとの相互間隔を詰めて軸方向の小型化を図るために、一方のプーリの固定プーリ半体背面に隣接配置されることがあり、この場合、従来では、その固定プーリ半体の背面に短円筒状のクラッチアウタの内端を溶接等により固着するようにしていた(例えば特開昭63−47560号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが上記従来構造では、固定プーリ半体の、伝動負荷により撓みを比較的生じ易い外周端寄り部分(即ち該プーリ半体の外周側の半部)の背面にクラッチアウタの内端部が固着されることから、その撓みの影響をクラッチアウタが少なからず受けることがある。特にそのプーリの有効ピッチ径(即ちベルト巻付け径)が大きくなるように変速制御された場合には、その軸方向推力により固定プーリ半体の外周端寄り部分は撓み変形を起こし易く、その変形がクラッチアウタに伝わることにより、該アウタ内のクラッチ要素に好ましくない影響を与える。
【0005】例えばそのクラッチが、クラッチアウタ内周部に複数の摩擦板等をスプライン嵌合させると共に該アウタの先端部に摩擦板等の抜け止めのための止め具(例えばサークリップ)を装着したようなタイプの摩擦式多板クラッチである場合には、プーリの撓み変形に伴うクラッチアウタの変形のために上記止め具がずれたり或いは摩擦板等の摺動がスムーズでなくなることがあり、そのような状態のままクラッチピストンの押圧力が摩擦板等に加わると、該アウタ自体や止め具、摩擦板等が偏摩耗を起こす等して、クラッチ性能の低下を来たす等の恐れがある。
【0006】更に前記従来構造では、固定プーリ半体の背面に短円筒状のクラッチアウタの内端を直接固着していたので、クラッチの外径は必然的にプーリの外径よりも小径となってしまい、大容量のクラッチが使用できない問題もある。
【0007】本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、従来装置の上記問題を簡単な構造で解決することができる、ベルト式無段変速機付き伝動装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために請求項1の発明は、有効ピッチ径を各々可変とした駆動プーリ及び被動プーリの相互間を伝動ベルトで連動連結してなるベルト式無段変速機と、一方のプーリの固定プーリ半体背面に隣接配置されるクラッチとを少なくとも備えた、ベルト式無段変速機付き伝動装置において、前記クラッチのクラッチアウタを前記固定プーリ半体背面の、伝動負荷によっても撓みを生じない部位に当接させ、その当接部よりも径方向外方側では該固定プーリ半体背面とクラッチアウタとを非接触としたことを特徴とする。この特徴によれば、上記一方のプーリの固定プーリ半体が伝動負荷に因り撓み変形を生じても、その変形の影響がクラッチアウタに及ぶことが回避され、該アウタ内のクラッチ要素に影響しないことから、変速に伴うプーリの有効ピッチ径(即ちベルト巻付け径)変化に関係なくクラッチを常に的確に作動させることができる。例えば上記クラッチが摩擦式多板クラッチである場合には、クラッチアウタの変形回避によって、摩擦板用止め具のずれや偏摩耗、該アウタ自体の偏摩耗、摩擦板の摺動抵抗増加や偏摩耗等が効果的に抑えられる。
【0009】また請求項2の発明は、有効ピッチ径を各々可変とした駆動プーリ及び被動プーリの相互間を伝動ベルトで連動連結してなるベルト式無段変速機と、一方のプーリの固定プーリ半体背面に隣接配置されるクラッチとを少なくとも備えた、ベルト式無段変速機付き伝動装置において、前記クラッチのクラッチアウタを前記固定プーリ半体の背面に、該プーリ半体の内周端寄りの位置で固着し、その固着部よりも径方向外方側では該固定プーリ半体背面とクラッチアウタとを非接触としたことを特徴とし、この特徴によっても、請求項1の発明と同様の作用効果が達成される。尚、この請求項2の発明において、「固定プーリ半体の背面に、該プーリ半体の内周端寄りの位置で固着」とは、その固定プーリ半体の内周側の半部の背面に固着することをいう。
【0010】更に請求項3の発明は、請求項1又は2の発明の前記特徴に加えて、前記クラッチが摩擦式の多板クラッチであり、前記クラッチアウタが、複数の摩擦板を内周にスプライン嵌合した円筒状ガイド部と、そのガイド部の内端に一体に連設されて径方向内方側に延びると共に固定プーリ半体背面にクリアランスを挟んで対面する環状端壁部とを有し、その端壁部の内周端部が前記固定プーリ半体背面に固着されたことを特徴とする。この特徴によれば、プーリ径に関係なく多板クラッチを大径化することが可能となる。
【0011】更にまた請求項4の発明は、請求項1,2又は3の発明の前記各特徴に加えて、前記無段変速機およびクラッチを収容する伝動ケースには、前記一方のプーリのプーリ軸を相互に離隔した複数の軸受を介して支持し、その相隣なる2つの軸受間に、該一方のプーリおよび前記クラッチを配置したことを特徴とする。この特徴によれば、該一方のプーリとクラッチとの間には軸受が介在しないため、その間を極力詰めることができて、それらの軸方向小型化が図られる。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を、添付図面に例示した本発明の実施例に基づいて以下に具体的に説明する。
【0013】添付図面において、図1は、本発明伝動装置の一実施例の概略を示すミッションケースの要部断面図、図2は図1の2矢視部拡大断面図である。
【0014】先ず、図1において、本実施例の伝動装置Tは、エンジンの出力を駆動車輪に伝達するための車両用伝動装置であって、そのミッションケースM内には、エンジンのクランク軸1にダンパ機構Dを介して連動連結される入力軸Saと、その入力軸Saに前後進切換用機構FRを介して駆動プーリPaが連動連結されるベルト式無段変速機CVTと、その変速機CVTの被動プーリPbに連動連結された出力軸Sbと、その出力軸Sb上に設けられて被動プーリPbの一側に隣接配置される発進用クラッチCと、そのクラッチCを介して出力軸Sbに連動連結される減速歯車列2と、その減速歯車列2に連動連結されて左右の車軸へ動力を分配伝達する差動機構Diとが収容されている。
【0015】前記無段変速機CVTは、有効ピッチ径(ベルト巻付け径)が各々可変の駆動プーリPa及び被動プーリPb、並びにその両プーリPa,Pb間を連動連結する無端状の伝動ベルトBを備えており、その構造自体は従来周知であるが、次に被動プーリPbの構造を簡単に説明する。被動プーリPbは、被動プーリ軸を兼ねる前記出力軸Saの外周に固着(図示例では一体に形成)された固定プーリ半体3と、その出力軸Sa上に摺動可能に支持されて固定プーリ半体3に対向する可動プーリ半体4とを備えており、その可動プーリ半体4を固定プーリ半体3に向かって前進駆動するための作動油室5が、出力軸Sbの外周に固定支持した隔壁部材6と、可動プーリ半体4の背面と、同プーリ半体4の外周に固定支持したフランジ4fとにより画成される。
【0016】また前記作動油室5の内部には、可動プーリ半体4を固定プーリ半体3側に常時付勢して被動プーリPbと伝動ベルトBとの間に初期荷重を与えるためのスプリング7が縮設される。前記作動油室5への給油は、出力軸Sb内の油路Sbpと、可動プーリ半体4を貫通する油路4pとを経てプーリPb外の図示しない油圧供給源より制御弁手段を介して行われ、該作動油室5への給油時には、その油圧に応じて可動プーリ半体4が駆動プーリ半体3側へ前進移動して、被動プーリPbの有効ピッチ径を増加させることができる。
【0017】尚、駆動プーリPaは、被動プーリPbと基本的に同様の構造であり、その駆動プーリPaの各構成部材には被動プーリPbの対応する構成部材と同じ参照符号を付すに留め、構造の具体的な説明を省略する。
【0018】而して各プーリPa,Pbの作動油室5に対し作動油圧を互いに独立に供給制御して各プーリPa,Pbの有効ピッチ径を変えることで、両プーリPa,Pb相互間の有効ピッチ径の比率、即ち無段変速機CVTの変速比を可変制御することができ、エンジンの回転駆動力が適当に変速されながら駆動車輪側へ伝達可能である。
【0019】前記被動プーリPbの固定プーリ半体3背面には、出力軸Sb上に設けられた摩擦式の多板クラッチより成る発進用クラッチCが隣接配置されている。図2に明示したように、この発進用クラッチCは、被動プーリPb側に固定されたクラッチアウタ8と、出力軸Sb上に軸受b0 を介して回転自在に嵌合支持されてクラッチアウタ8に同心状に囲繞されるクラッチインナ9と、それらクラッチアウタ8及びインナ9間に介装されてその間の係脱を行う摩擦係合要素とから構成されている。
【0020】前記クラッチアウタ8は、円筒状のアウタガイド部8gと、そのガイド部8gの内端に一体に連設されて径方向内方側に延びる内向きフランジ状の環状端壁部8eとより構成されており、そのアウタガイド部8gの内周には、摩擦係合要素としての複数の駆動摩擦板10および1つのエンドプレート11が摺動可能にスプライン嵌合される。一方、前記クラッチインナ9の外周には、前記駆動摩擦板10及びエンドプレート11と交互に重合する摩擦係合要素としての複数の被動摩擦板12が摺動可能にスプライン嵌合される。更にアウタガイド部8gの内周には、エンドプレート11に係合して該プレート11及び駆動摩擦板10のガイド部8gからの離脱(従って被動摩擦板12のクラッチインナ9からの離脱)を阻止するサークリップ等の止め具13が着脱可能に係止される。
【0021】クラッチアウタ8のアウタガイド部8g内周と出力軸Sbの外周とには、最内端の駆動摩擦板10に当接するリング状のクラッチピストン14の内、外周端がそれぞれ摺動可能に嵌合されており、このピストン14の内面側には、該ピストン14に摩擦板10,12側への押圧力を付与する作動油室15が画成される。またそのクラッチピストン14の外面とクラッチインナ9との間には、該ピストン14を摩擦板10,12から離れる方向(即ちクラッチCを遮断する方向)に付勢するばね16が介装される。
【0022】前記作動油室15への給油は、出力軸Sb内の油路Sbp′を経てプーリPb外の図示しない油圧供給源より制御手段を介して行われ、その作動油室15への給油時には、その油圧に応じてクラッチピストン14を摩擦板10,12側へ前進移動させて、その両摩擦板10,12相互を密接結合させ、発進用クラッチCを接続作動させることができ、これにより車両が発進可能となる。
【0023】クラッチアウタ8と被動プーリPbの固定プーリ半体3とは、該固定プーリ半体3が伝動負荷によっても撓みを生じない位置で当接、固着されており、その当接部(固着部)よりも径方向外方側では該固定プーリ半体3とクラッチアウタ8とが非接触とされる。即ち、被動プーリPbの固定プーリ半体3の背面には、該半体3の内周端寄りの位置(即ち該プーリ半体3の内周側の半部の背面)に取付段部3sが形成されており、その取付段部3sに、クラッチアウタ8の前記環状端壁部8eの内周端が衝合して溶接等の固着手段により固着されており、その固着部wよりも径方向外方側の固定プーリ半体3背面とクラッチアウタ8(環状端壁部8e、アウタガイド部8g内端)との対向面間に、その全面に亘り小さなクリアランスsが設けられる。
【0024】前記出力軸Sbは、その軸方向に離隔した複数部位(図示例では両端部)において、伝動ケースとしてのミッションケース1内に複数(図示例では2個)の軸受b1 ,b2 を介してそれぞれ回転自在に支持されており、その相隣なる2個の軸受b1 ,b2 間に、被動プーリPbおよび発進用クラッチCが配置される。このようにクラッチCと、それに隣接するプーリSbとの間には軸受b1 ,b2 が配置されないように構成すれば、該クラッチCとプーリPb間の軸方向間隔を極力詰めることができて、それらの軸方向小型化を図ることができる。
【0025】前記クラッチインナ9の外端には出力歯車9tが一体に形成されており、その出力歯車9tは、減速歯車列2を介して前記差動機構Diに連動連結される。
【0026】而して本実施例では、被動プーリが本発明の「一方のプーリ」に、また発進用クラッチが本発明の「クラッチ」にそれぞれ該当する。
【0027】次に本実施例の作用を説明する。エンジンの運転中は、その出力がクランク軸1からダンパ機構Dを介して伝動装置Tの入力軸Saに伝えられ、更にその入力軸Saから前後進切換用機構FRを経てベルト式無段変速機CVTの駆動プーリPaに伝わり、そこから伝動ベルトBを介して被動プーリPb(従って出力軸Sb)に伝わる。この時、被動プーリPb一側の発進用クラッチCが接続状態にあれば、前記出力が該クラッチCから減速歯車列2を介して差動機構Diに伝えられ、該機構Diから左右の車軸へ伝えられて車両が走行する。また同クラッチCが遮断状態にあれば、各車軸への出力伝達は行われない。尚、車両の前進・後退の切り換えは、前後進切換用機構FRを図示しない切換操作手段により適宜切り換え操作することにより行われる。
【0028】また車両走行時において、その変速制御は、前述のように各プーリPa,Pbの作動油室5に対し作動油圧をそれぞれ供給制御して各プーリPa,Pbの有効ピッチ径を変えることで行われる。
【0029】ところで無段変速機CVTにおいては、クラッチCと隣接する被動プーリPbの固定プーリ半体3の外周端寄り部分に、特に変速に伴う有効ピッチ径(ベルト巻付け径)が大きい場合に伝動負荷に因り撓み変形を生じることがあるが、本実施例の如く固定プーリ半体3背面の内周端寄りの部位にクラッチアウタ8(特に環状端癖8e)の内周端部を当接、固着し、その当接部(固着部w)よりも径方向外方側の固定プーリ半体3背面とクラッチアウタ8との対向面間に、その全面に亘りクリアランスsを設けているため、該プーリ半体3の上記撓み変形の影響がクラッチアウタ8、従ってそのアウタ8内のクラッチ要素10〜16に及ぶことを回避でき、変速に伴うプーリの有効ピッチ径変化に関係なくクラッチを常に的確に作動させることができる。即ち図示例のようにクラッチCが摩擦式多板クラッチである場合には、クラッチアウタ8の変形回避により、摩擦板用止め具13のずれや偏摩耗や、摩擦板10,11,12の摺動抵抗増加、偏摩耗等を効果的に抑えることができることから、該多板クラッチCの耐久性向上や作動精度向上が図られる。
【0030】また本実施例では、クラッチアウタ8の内周端部が固定プーリ半体3に直接(即ちプーリ軸Sbを介さずに)固着されているため、該アウタ8の内周端部をプーリ軸Sb外周に固着した場合と比べて、該プーリ半体3とクラッチアウタ8間のトルク伝達をより大径側で効率よく行い得る利点がある。
【0031】以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明はこの実施例に限定されることなく、本発明の範囲内で種々の実施例が可能である。例えば、前記実施例では、クラッチアウタ8の内周端部を固定プーリ半体3の背面に直接固着したものを示したが、本発明(特に請求項1)では、そのクラッチアウタ8の内周端部を固定プーリ半体3背面に当接させ且つプーリ軸Sbに固着するようにしてもよい。またその固着は、溶接以外の固着手段を用いてもよい。
【0032】また前記実施例では、被動プーリPbと発進用クラッチCとの接続部に本発明を実施したものを示したが、本発明では、無段変速機CVTの少なくとも一方のプーリとこれに隣接するクラッチとの隣接部位であれば、プーリやクラッチの種類に限定されず適用可能であり、例えば伝動装置Tにおける伝動経路の配置態様の如何によっては被動プーリと前後進切換用機構中のクラッチとの接続部や、駆動プーリと発進用クラッチ又は前後進切換用中のクラッチとの接続部等にも実施可能である。
【0033】更に前記実施例では、プーリPbに隣接するクラッチCとして摩擦式多板クラッチを示したが、本発明(特に請求項1,2,4)は、クラッチの形式に限定されず、少なくともプーリの撓み変形によりクラッチ要素に影響が及ぶ可能性のあるクラッチであれば実施可能である。
【0034】
【発明の効果】以上のように各請求項の発明によれば、クラッチと隣接するプーリの固定プーリ半体の外周端寄り部分が伝動負荷に因り撓み変形を生じても、その変形の影響がクラッチアウタ、従ってそのアウタ内のクラッチ要素に及ぶことを効果的に回避できるようにしたので、変速に伴うプーリの有効ピッチ径(即ちベルト巻付け径)変化に関係なくクラッチを常に的確に作動させることができ、例えば上記クラッチが摩擦式多板クラッチである場合には、クラッチアウタの変形回避により、摩擦板用止め具のずれや偏摩耗、摩擦板の摺動抵抗増加や偏摩耗等を効果的に抑えることができて、該多板クラッチの耐久性向上や作動精度の向上に寄与することができる。
【0035】また特に請求項3の発明によれば、摩擦式多板クラッチのクラッチアウタの円筒状ガイド部の内端に、径方向内方側に延びると共に固定プーリ半体背面との間にクリアランスが形成された環状端壁部を連設し、その端壁部の内周端部を固定プーリ半体背面に固着したので、その多板クラッチをプーリ径に関係なく大径化することができ、大容量のクラッチの使用が可能となる。
【0036】また特に請求項4の発明によれば、クラッチと、それに隣接するプーリとの間には軸受が配置されないようにしたので、そのクラッチとプーリ間を極力詰めることができて、それらの軸方向小型化を図ることができる。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【出願日】 平成9年(1997)10月29日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健 (外1名)
【公開番号】 特開平11−132300
【公開日】 平成11年(1999)5月18日
【出願番号】 特願平9−297449