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【発明の名称】 シフトフォークの潤滑構造
【発明者】 【氏名】塚本 保

【要約】 【課題】油の飛散を抑制してシフトフォークとスリーブとの摺動部を効率よく潤滑できるシフトフォークの潤滑構造を提供する。

【解決手段】変速切換用スリーブ7の外周溝7aに係合しスリーブ7をシフト操作するシフトフォーク8に、外周溝7aに遊嵌合する連続した内リブ8bと、内リブ8bの少なくとも回転方向両端部に外周溝7aの側壁面に摺動自在に当接する複数の爪部8c,8d,8eとを設ける。内リブ8bの両側面に内リブ8bと外周溝7aとの間に溜まった潤滑油の飛散を防止する油飛散防止用段部8fを周方向に形成し、少なくともスリーブ7の回転方向後側の爪部8d,8eの両側面であって、かつスリーブ7の回転方向と対向する端部に、潤滑油を爪部8d,8eの両側面に導くための油導入用凹部8gを形成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】変速切換用スリーブの外周溝に係合し、スリーブをシフト操作するシフトフォークにおいて、上記シフトフォークには、スリーブの外周溝に遊嵌合する連続した内リブと、内リブの少なくとも回転方向両端部にスリーブの外周溝の側壁面に摺動自在に当接する複数の爪部とが設けられ、上記内リブの両側面には、内リブとスリーブの外周溝との間に溜まった潤滑油の飛散を防止する油飛散防止用段部が周方向に形成され、少なくともスリーブの回転方向後側の爪部の両側面であって、かつスリーブの回転方向と対向する端部に、潤滑油を爪部の両側面に導くための油導入用凹部が形成されていることを特徴とするシフトフォークの潤滑構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は変速切換用スリーブをシフト操作するためのシフトフォークの潤滑構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、変速切換用スリーブをシフト操作するために、シフトフォークにはスリーブの外周溝の側壁面に摺動自在に当接する複数の爪部が設けられている。この爪部の両側面と外周溝の側壁面との摩耗や焼き付きを防止するため、種々の潤滑構造が提案されている。
【0003】例えば、実公昭57−418号公報には、スリーブの外周溝に嵌合したシフトフォークの爪部に、スリーブの回転方向に対応する角部に斜状または円弧状の面取り部と、この面取り部を基端とし、この面取り部から爪部の途中まで一条ないし複数条の油溝を設けたものが開示されている。
【0004】この場合には、スリーブの回転に伴い外周溝内に付着している潤滑油が爪部の位置に到達しても、面取り部のためにかき落とされず、面取り部から油溝内に流入し、爪部と外周溝との接触面に補給される。そのため、潤滑性が向上し、焼き付きや摩耗を防止できる利点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のように油溝を面取り部から爪部の途中まで設けると、爪部と外周溝との接触面積が小さくなり、爪部の単位面積あたりの接触圧が高くなって発熱や摩耗を引き起こす可能性があった。また、爪部以外の部分は外周溝に対して遊嵌合しているに過ぎないので、爪部以外の部分と外周溝との隙間からスリーブの回転に伴って油が飛散してしまい、爪部と外周溝との摺接部分に効率よく油を供給できないという問題があった。
【0006】そこで、本発明の目的は、油の飛散を抑制してシフトフォークとスリーブとの摺動部を効率よく潤滑できるシフトフォークの潤滑構造を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明は、変速切換用スリーブの外周溝に係合し、スリーブをシフト操作するシフトフォークにおいて、上記シフトフォークには、スリーブの外周溝に遊嵌合する連続した内リブと、内リブの少なくとも回転方向両端部にスリーブの外周溝の側壁面に摺動自在に当接する複数の爪部とが設けられ、上記内リブの両側面には、内リブとスリーブの外周溝との間に溜まった潤滑油の飛散を防止する油飛散防止用段部が周方向に形成され、少なくともスリーブの回転方向後側の爪部の両側面であって、かつスリーブの回転方向と対向する端部に、潤滑油を爪部の両側面に導くための油導入用凹部が形成されていることを特徴とする。
【0008】スリーブの外周溝に溜まった潤滑油は、スリーブの回転に伴いシフトフォークの爪部に到達する。ここで、少なくともスリーブの回転方向後側の爪部の両側面であって、かつスリーブの回転方向と対向する端部に、油導入用凹部が形成されているので、この凹部に潤滑油が入り込み、爪部と外周溝の側壁面との間に導入される。また、シフトフォークの内リブとスリーブの外周溝との間には隙間があるので、潤滑油はこの隙間から外周側へ飛び散ろうとするが、内リブの両側面には油飛散防止用段部が周方向に形成されているので、潤滑油の飛び散りを抑制でき、油導入用凹部へ無駄なく供給できる。
【0009】なお、油導入用凹部を少なくともスリーブの回転方向後側の爪部の両側面に設けたのは、スリーブの回転方向前側の爪部の前方は開放しているので、油導入用凹部を設けなくても比較的容易に潤滑油が供給されるのに対し、回転方向後側の爪部の前方は開放していないので、潤滑油量が不足しがちになるからである。また、油導入用凹部をスリーブの回転方向と対向する側に設けたのは、スリーブの回転に伴って外周溝に沿って流れる潤滑油の流動を利用して潤滑油を爪部の両側面に導くためである。
【0010】本発明は、シフトフォークがスリーブに対して下側から嵌合する形式の変速機構において、より効果的である。すなわち、シフトフォークが下側から嵌合する場合、スリーブの外周溝に溜まった潤滑油が重力によって内リブの隙間から落下しやすいので、油飛散防止用段部によって潤滑油を積極的に受け止めることができるからである。
【0011】
【発明の実施の形態】図1は本発明の第1実施例を示す。変速機の内部には回転軸1が水平に配設されており、この回転軸1上には変速用ギヤ2,3がニードルベアリング4,5を介して回転自在に支持されている。変速用ギヤ2,3を支持した回転軸1の中間部にはスプライン部1aが設けられ、このスプライン部1aにはクラッチハブ6が嵌合し、このクラッチハブ6の外周部に同期装置を構成する変速切換用スリーブ7が配設されている。そして、スリーブ7を図1の左右方向へ操作することにより、変速用ギヤ2,3を回転軸1に対して選択的に連結することができる。
【0012】上記スリーブ7の外周溝7aにシフトフォーク8が下方から係合している。シフトフォーク8は例えばアルミニウムによって一体に形成されており、図2に示すように、下端部にはフォークシャフト9が嵌合するボス部8aを有し、ピン10によって連結されている。シフトフォーク8は、スリーブ7の外周溝7aに遊嵌合する連続した半円弧状の内リブ8bを備えており、内リブ8bの回転方向両端部と中間部には、外周溝7aの側壁面に摺動自在に当接する3個の爪部8c,8d,8eが設けられている。このうち、中央の爪部8dはシフトフォーク8をシフト操作する際の倒れ防止用爪部である。
【0013】上記内リブ8bの両側面には、図3に示すように内リブ8bと外周溝7aとの間に溜まった潤滑油の飛散を防止する油飛散防止用段部8fが形成されている。この実施例の段部8fは断面突起状に形成され、爪部8c,8d,8eの間に周方向に連続的に形成されている。なお、段部8fは外周溝7aの側壁面に近接しているが、接触しない程度の高さに設定されている。また、爪部8d,8eの両側面の前端部(スリーブ7の回転方向Dと対向する端部)には、図4,図5に示すように潤滑油を爪部8d,8eの両側面に導くための油導入用凹部8gが形成されている。この凹部8gは側面視半円弧状で、内リブ8bから爪部8d,8eにかけて漸次傾いている。
【0014】上記構成の変速機構において、回転軸1が回転すると、スリーブ7も回転軸1と一体に回転する。回転方向の前方に位置する爪部8cには多くの潤滑油がかかるので、格別な潤滑手段を設けなくても十分に潤滑できる。一方、回転方向の後方に位置する爪部8d,8eには供給される潤滑油量が少ないため、発熱や摩耗を生じやすい。
【0015】スリーブ7が矢印D方向に回転するに伴って外周溝7aを流れる潤滑油は、重力および遠心力の作用によって外周溝7aから外径方向へ飛び散ろうとするが、内リブ8bの両側面には油飛散防止用段部8fが周方向に形成されているため、この段部8fで外周溝7a内の潤滑油を受け止め、爪部8d,8eの前端部へと供給する。そして、爪部8d,8eの前端部には油導入用凹部8gが形成されているので、潤滑油はスリーブ7の回転によって爪部8d,8eの両側面と外周溝7aの側壁面との隙間へ導かれ、摺動面を効率よく潤滑する。特に、凹部8gに入った潤滑油は、スリーブ7の回転によって後から送り込まれる潤滑油の動圧によって圧力が高まり、摺動面への供給が促進される。その結果、爪部8d,8eと外周溝7aとの発熱や摩耗を防止できる。
【0016】上記実施例では、油飛散防止用段部8fを突起状に形成したが、これに限るものではなく、図6に示すように段差状に形成してもよい。この場合には、段部8fより外周側の内リブ8bの厚みが内周側より厚くなる。
【0017】上記実施例では、シフトフォーク8がスリーブ7に対して下方から係合する例について説明したが、スリーブに対して上方から、あるいは側方から係合するシフトフォークにも本発明は適用できる。また、上記実施例では、シフトフォーク8の内リブ8bの前後両端部以外に中間部にも爪部8dを設けたが、この中間部の爪部8dは省略することが可能である。
【0018】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明によれば、シフトフォークの内リブの両側面に油飛散防止用段部を周方向に形成し、爪部のスリーブ回転方向と対向する端部に油導入用凹部を形成したので、スリーブの外周溝を流れる潤滑油を油飛散防止用段部で積極的に受け止め、この潤滑油を爪部の両側面に効率よく供給できる。そのため、爪部の摩耗や発熱を防止できる。また、油導入用凹部は爪部のスリーブ回転方向と対向する端部に形成されているので、爪部と外周溝との接触面積が減少せず、爪部の発熱や摩耗を抑制できる。
【出願人】 【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
【出願日】 平成9年(1997)10月13日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 秀隆
【公開番号】 特開平11−118029
【公開日】 平成11年(1999)4月30日
【出願番号】 特願平9−296249