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【発明の名称】 マニュアルトランスミッションのケーシング構造
【発明者】 【氏名】鈴木 康久

【氏名】武藤 久

【要約】 【課題】オイルレベルの高い側のオイルを効率的にオイルレベルの低い部屋へ流し込むことができ、登降坂中にケーシングが傾斜しても良好なオイルの流れ込みが確保できるマニュアルトランスミッションのケーシング構造を提供する。

【解決手段】オイルの攪拌量が第2の部屋5において、オイルが跳ね上がる部位のケーシング3の内壁に、跳ね上がったオイルを隔壁に誘導するオイル戻しリブ20を突設したので、ギヤの回転により連れ回るオイルは、オイルの攪拌量に応じてオイル戻しリブに突き当たり、隔壁2に向かって誘導されたオイルは、隔壁2に設けたオイル戻し穴21を通って第1の部屋4に環流するので、第1の部屋のオイルレベルが上昇し、焼き付き等の不具合が防止される。また、オイルは攪拌されるオイルの勢いを利用してオイル戻し穴へ誘導される構造であるため、登降坂の際にトランスミッションの傾斜による影響を受けることがない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 収納するギヤやシャフトの外径や回転数によりオイルの攪拌量が異なる2またはそれ以上の部屋にケースを隔壁により分離し前記各隔壁底部に隣の部屋とオイルが流通するのオイル流通穴を設けたマニュアルトランスミッションのケーシング構造において、オイルの攪拌量が多い部屋においてオイルが跳ね上がる部位のケーシングの内壁に跳ね上がったオイルを前記隔壁に誘導するオイル戻しリブを突設し、前記オイル戻しリブにより誘導されたオイルを隣の部屋に戻すオイル戻し穴を前記隔壁に貫設したことを特徴とするマニュアルトランスミッションのケーシング構造。
【請求項2】 前記オイル戻しリブは、一端が前記隔壁に突き当たり他端は軸方向に延設されると共に部屋内部への突設下面を凹状に湾曲させたことを特徴とする請求項1に記載のマニュアルトランスミッションのケーシング構造。
【請求項3】 前記オイル戻しリブは、部屋内部への突設下面をを渦巻き状に形成したことを特徴とする請求項2に記載のマニュアルトランスミッションのケーシング構造。
【請求項4】 前記オイル戻しリブは、軸方向に対して傾斜させたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のマニュアルトランスミッションのケーシング構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はマニュアルトランスミッションのケーシング構造に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】内燃機関のマニュアルトランスミッションのケーシングの構造は、シャフトを支持するベアリングの位置に合わせ隔壁が設けられているため、ケーシング内は複数の部屋に区分され、各部屋のオイル量のバランスをとるため、各々の隔壁の下部のオイルの浸漬部分に隣の部屋にオイルが流通するオイル流通穴が設けられている。
【0003】しかし、各々の隔壁のオイルの浸漬部分に、隣の部屋にオイルが流通するオイル流通穴を設けただけでは、充分なオイル水準のバランスがとれず、オイルの攪拌量の少ない部屋ではオイルレベルが低下し、焼き付きが発生するという不具合がある。このような不具合を解決するため種々の提案がなされており、例えば実開平5−47601号公報のトランスミッションのケーシング構造の考案においては、ケーシングを隔壁で低速ギヤを収納する第1の部屋と高速ギヤを収納する第2の部屋に分割し、該隔壁下部には第1の部屋と第2の部屋の間でオイルが流通するオイル流通穴を設けたケーシング構造において、隔壁上部にオイル誘導穴を設け、第2の部屋で高速ギヤの回転により掻き上げられたオイルをケーシング内壁に設けた凹形状の「樋」で受けオイル誘導穴に誘導しオイルを第1の部屋へ戻すトランスミッションのケーシング構造が提案されている。
【0004】このケーシング構造においては、次のような欠点がある。第1に「樋」でキャッチしたオイルを重力で誘導穴へ流し込むため、効率よくオイルを流し込むためには、「樋」にある一定の角度を付ける必要があり、ケーシングとの一体成形が困難であり、また一定量のオイルしか流せないという不利がある。第2に登坂等に対しては車両角度の影響を受けやすく、傾斜角度によっては、オイルを誘導できない場合もある。第3にオイルを樋で受ける構造上、オイルのかき上げ部からある程度離れたオイルの落ちてくる位置に樋を設置する必要があり、部屋全体に拡がっているオイルのかき上げ量そのものを低減させるのは困難である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は前記のごとき従来のトランスミッションのケーシング構造の欠点を解決すべくなされたものであって、オイルレベルの高い側のオイルを効率的にオイルレベルの低い部屋へ流し込むことができ、登降坂中にケーシングが傾斜しても良好なオイルの流れ込みが確保できるマニュアルトランスミッションのケーシング構造を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1のマニュアルトランスミッションのケーシング構造は、収納するギヤやシャフトの外径や回転数によりオイルの攪拌量が異なる2またはそれ以上の部屋に隔壁により分離し前記各隔壁底部に隣の部屋とオイルが流通するオイル流通穴を設けたマニュアルトランスミッションのケーシング構造において、オイルの攪拌量が多い部屋においてオイルが跳ね上がる部位のケーシングの内壁に、跳ね上がったオイルを前記隔壁に誘導するオイル戻しリブを突設し、前記オイル戻しリブにより誘導されたオイルを隣の部屋に戻すオイル戻し穴を前記隔壁に貫設したことを要旨とする。
【0007】本発明の請求項2のマニュアルトランスミッションのケーシング構造は、請求項1の発明において、前記オイル戻しリブは、一端が前記隔壁に突き当たり他端は軸方向に延設されると共に部屋内部への突設下面を凹状に湾曲させたことを要旨とする。請求項3の発明は、請求項2に記載のマニュアルトランスミッションのケーシング構造において、前記オイル戻しリブは、部屋内部への突設下面を渦巻き状に形成したことを要旨とする。本発明の請求項4の発明は、請求項3に記載のマニュアルトランスミッションのケーシング構造において、前記オイル戻しリブを、軸方向に対して傾斜させたことを要旨とする。
【0008】本発明のマニュアルトランスミッションのケーシング構造においては、オイルの攪拌量が多い部屋において、オイルが跳ね上がる部位のケーシングの内壁に、跳ね上がったオイルを隔壁に誘導するオイル戻しリブを突設したので、ギヤの回転により連れ回るオイルは、オイルの攪拌量に応じてオイル戻しリブに突き当たり隔壁に誘導される。隔壁には誘導されたオイルを隣の部屋に戻すオイル戻し穴が設けられているので、隔壁に向かって誘導されたオイルは、このオイル戻し穴を通って隣の部屋に戻される。そのため、隣の部屋のオイルレベルが上昇し、焼き付き等の不具合が防止される。また、オイルは攪拌されるオイルの勢いを利用して隔壁に設けたオイル戻し穴へ誘導される構造であるため、登降坂の際にトランスミッションの傾斜による影響を受けることなく、隣の部屋にオイルを戻すことができる。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を以下図面に従って説明する。図1は本発明の第1の実施例を示す断面図であり、図2は図1におけるA−A線における断面図、図3は図1におけるB−B線における断面図である。図1において、トランスミッションは、フロントケ−ス1と隔壁2により囲まれた低速のギヤを収納する第1の部屋4と、リヤケース3と隔壁2により囲まれた高速のギヤを収納する第2の部屋5に分かれている。隔壁2の下部のオイル18が溜まる部位にはオイル流通穴19が貫設されており、このオイル流通穴19を通してオイル18が第1の部屋4と第2の部屋5の間で行き来が可能である。
【0010】また、図2および図3に示すように、リヤケース3の内壁には、高速ギヤの回転により攪拌されたオイル18が跳ね上がる部位に、オイル18を隔壁2に向かって誘導するオイル戻しリブ20が突設されている。このオイル戻しリブ20は、一端が隔壁2に突き当たっており、他端は軸方向に延設されると共に第2の部屋5内部への突設下面は凹状に湾曲している。さらに、図3に示すように隔壁2のオイル戻しリブ20の一端が突き当たる位置には、オイル戻し穴21が貫通している。
【0011】エンジンの出力および回転はインプットシャフト6に入力され、カウンターシャフト15から各ギヤ9、10、11、17のいずれかを介してアウトプットシャフト13へ伝達される。なお、インプットシャフト6はインプットベアリング7で、アウトプットシャフト13はアウトプットベアリング12で、またカウンターシャフト15はカウンターベアリング14および16でそれぞれ支持されている。
【0012】本実施例の作動を、図4および図5に従って説明する。図4は図1の実施例の作動状態の軸方向の断面図であり、図5は図4のC−C線における断面図である。図4において、エンジンを始動するとインプットシャフト6の回転がカウンターシャフト15に伝えられるので、カウンターシャフト15に固着されている各ギヤ9、10、11、17が回転するが、第2の部屋5内で回転するギヤ17の外径が最も大きいため、第2の部屋5のオイル18の攪拌量が多く、多量のオイルが掻き上げられ、第2の部屋5内のオイルレベルの低下により、第1の部屋4内のオイル18がオイル流通穴19を通って第2の部屋5内に吸い込まれる。
【0013】第2の部屋5内においては、ギヤ17の回転により連れ回るオイルの流れ22は、ケース3の内壁面に設けたオイル戻しリブ20に突き当たり、隔壁2に向かう流れ23と、それと逆方向の流れ24に分かれる。隔壁2に向かうオイルの流れ23は、オイル戻しリブ20により誘導されて隔壁2に至り、オイル戻し穴21を通って第1の部屋4内に流入する。そのため、第1の部屋4のオイルレベルが上昇し、第1の部屋4に収納したギヤの焼き付きが防止される。
【0014】図6は第2の実施例の軸方向の断面図であり、図7は図6のD−D線における断面図である。この実施例においては軸方向に延びているオイル戻しリブ20を角度Θだけ傾けて設置したものであり、隔壁2に向かって流れるオイル流23を下から上に向かって流れるようにし、オイル流23の誘導の際の抵抗を減少したので、より効率的にオイルをオイル戻し穴21に導くことができる。
【0015】図8は第3の実施例の軸方向の断面図であり、図9は図8のE−E線における断面図、図10は図9に示したオイル戻しリブ20付近F部の部分拡大断面図である。この第3の実施例においては、オイル戻しリブ20の第2の部屋5内部への突設下面をを渦巻き状に形成したものである。このオイル戻しリブ20により隔壁2に向かって誘導されるオイルは旋回流29となるので、より効率的にオイル戻し穴21から第1の部屋4内にオイルを環流することができる。
【0016】
【発明の効果】本発明のマニュアルトランスミッションのケーシング構造は以上に詳述したように、オイルの攪拌量が多い部屋において、オイルが跳ね上がる部位のケーシングの内壁に、跳ね上がったオイルを隔壁に誘導するオイル戻しリブを突設したので、ギヤの回転により連れ回るオイルは、オイルの攪拌量に応じてオイル戻しリブに突き当たり、隔壁に向かって誘導されたオイルは、隔壁に設けたオイル戻し穴を通って隣の部屋に環流する。そのため、隣の部屋のオイルレベルが上昇し、焼き付き等の不具合が防止される。また、オイルは攪拌されるオイルの勢いを利用して隔壁に設けたオイル戻し穴へ誘導される構造であるため、登降坂の際にトランスミッションの傾斜による影響を受けることなく、隣の部屋にオイルを戻すことができる。
【出願人】 【識別番号】592058315
【氏名又は名称】アイシン・エーアイ株式会社
【出願日】 平成9年(1997)10月15日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
【公開番号】 特開平11−118027
【公開日】 平成11年(1999)4月30日
【出願番号】 特願平9−281838