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【発明の名称】 オルタネータ用ローラクラッチ内蔵型プーリ装置
【発明者】 【氏名】相田 博

【要約】 【課題】ローラクラッチ16の負荷容量を高くして、大きなトルクを伝達する場合でも、十分な耐久性を確保する。

【解決手段】ローラクラッチ16を構成するローラクラッチ用内輪17を、引き抜き材を切断する事により造る。軸方向両端部にだれが存在しない為、カム面18とローラ25の転動面との当接面積、並びにローラクラッチ用内輪17の内周面とスリーブ18の外周面との当接面積を確保して、上記ローラクラッチ16の負荷容量を高くできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 オルタネータの回転軸の周囲に、この回転軸と同心に配置する従動プーリと、これら回転軸の外周面と従動プーリの内周面との間に設け、この従動プーリに加わるラジアル荷重を支承しつつこれら回転軸と従動プーリとの相対回転を自在とするサポート軸受と、上記回転軸の外周面と従動プーリの内周面との間に設け、この従動プーリが上記回転軸に対し所定方向に相対回転する傾向となる場合にのみ従動プーリとスリーブとの間での回転力の伝達を自在とするローラクラッチとを備え、このローラクラッチを構成する為のカム面を、上記従動プーリに内嵌固定した外輪の内周面又は上記回転軸に直接又はスリーブを介して外嵌固定した内輪の外周面に形成すると共に、このカム面を形成した外輪又は内輪を引き抜き材製としたオルタネータ用ローラクラッチ内蔵型プーリ装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明のオルタネータ用ローラクラッチ内蔵型プーリ装置は、自動車用の発電機であるオルタネータの回転軸の端部に固定し、エンジンのクランクシャフトの端部に固定した駆動プーリとの間に無端ベルトを掛け渡す事により、上記オルタネータを駆動する為に利用する。
【0002】
【従来の技術】自動車の駆動用エンジンを駆動源として、自動車に必要な発電を行なうオルタネータの構造が、例えば特開平7−139550号公報に記載されている。図5は、この公報に記載されたオルタネータ1を示している。ハウジング2の内側に回転軸3を、1対の転がり軸受4、4により、回転自在に支持している。この回転軸3の中間部には、ロータ5と整流子6とを設けている。又、この回転軸3の一端部(図5の右端部)で上記ハウジング2外に突出した部分には、従動プーリ7を固定している。エンジンへの組み付け状態では、この従動プーリ7に無端ベルトを掛け渡し、エンジンのクランクシャフトにより、上記回転軸3を回転駆動自在とする。
【0003】上記従動プーリ7として従来一般的には、単に上記回転軸3に固定しただけのものを使用していた。これに対して近年、無端ベルトの走行速度が一定若しくは上昇傾向にある場合には、無端ベルトから回転軸への動力の伝達を自在とし、無端ベルトの走行速度が低下傾向にある場合には、従動プーリと回転軸との相対回転を自在とする、オルタネータ用クラッチ内蔵型プーリ装置が各種提案され、一部で使用されている。例えば、特開昭56−101353号公報、特開平8−61443号公報、特公平7−72585号公報、フランス特許公報FR2726059A1等に、上述の様な機能を有するオルタネータ用クラッチ内蔵型プーリ装置が記載されている。又、一部ではこの様なオルタネータ用クラッチ内蔵型プーリ装置が、実際に使用されている。
【0004】図6は、このうち特開平8−61443号公報に記載されているオルタネータ用クラッチ内蔵型プーリ装置を示している。このオルタネータ用クラッチ内蔵型プーリ装置は、上記回転軸3に外嵌固定自在なスリーブ8を有する。そして、このスリーブ8の周囲に従動プーリ7aを、このスリーブ8と同心に配置している。そして、これらスリーブ8の外周面と従動プーリ7aの内周面との間に、1対のサポート軸受9a、9aと一方向クラッチ10とを設けている。このうちのサポート軸受9a、9aは、上記従動プーリ7aに加わるラジアル荷重を支承しつつ、上記スリーブ8と従動プーリ7aとの相対回転を自在とする。又、上記一方向クラッチ10は、上記従動プーリ7aが上記スリーブ8に対して所定方向に相対回転する傾向となる場合にのみ、この従動プーリ7aからスリーブ8への回転力の伝達を自在とする。
【0005】この様なオルネータ用クラッチ内蔵型プーリ装置を使用する理由は、次の通りである。例えば、上記駆動用エンジンがディーゼルエンジンである場合、アイドリング時等、低回転時にはクランクシャフトの回転角速度の変動が大きくなる。この結果、上記クランクシャフトの端部に固定した駆動プーリに掛け渡した無端ベルト11の走行速度も細かく変動する事になる。一方、この無端ベルト11により従動プーリ7aを介して回転駆動されるオルタネータ1(図5)の回転軸3は、この回転軸3並びにこの回転軸3に固定したロータ5及び整流子6(図5)等の慣性質量に基づき、それ程急激には変動しない。従って、上記従動プーリ7aを回転軸3に対し単に固定した場合には、クランクシャフトの回転角速度の変動に伴い、上記無端ベルト11と従動プーリ7aとが両方向に擦れ合う傾向となる。この結果、この従動プーリ7aと擦れ合う無端ベルト11に、繰り返し異なる方向の応力が作用して、この無端ベルト11と従動プーリ7aとの間に滑りが発生し易くなったり、或はこの無端ベルト11の寿命が短くなったりする原因となる。
【0006】又、上述の様な従動プーリ7aの外周面と無端ベルト11の内周面との摩擦に基づく無端ベルト11の寿命低下は、走行時に加減速を繰り返す事によっても生じる。即ち、加速時には無端ベルト11側から従動プーリ7a側に駆動力が伝達されるのに対し、減速時には上述の様に慣性に基づいて回転し続けようとする従動プーリ7aに、上記無端ベルト11から制動力が作用する。この制動力と上記駆動力とは、上記無端ベルト11の内周面に対して逆方向の摩擦力として作用するので、やはり上記無端ベルト11の寿命低下の原因となる。特に、トラックの様に排気ブレーキを備えた車両の場合には、アクセルオフ時に於けるクランクシャフトの回転低下の減速度が著しく、上記制動力に基づいて上記無端ベルト11の内周面に加わる摩擦力が大きくなる結果、上記寿命低下が著しい。
【0007】そこで、上述の様な従動プーリ7aとして、前記オルタネータ用クラッチ内蔵型プーリ装置を使用する事により、上記無端ベルト11の走行速度が一定若しくは上昇傾向にある場合には、上記従動プーリ7aから回転軸3への回転力の伝達を自在とし、反対に上記無端ベルト11の走行速度が低下傾向にある場合には、これら従動プーリ7aと回転軸3との相対回転を自在とする。即ち、上記無端ベルト11の走行速度が低下傾向にある場合には、上記従動プーリ7aの回転角速度を上記回転軸3の回転角速度よりも遅くして、上記無端ベルト11と従動プーリ7aとの当接部が強く擦れ合う事を防止する。この様にして、従動プーリ7aと無端ベルト11との擦れ合い部に作用する応力の方向を一定にし、この無端ベルト11と従動プーリ7aとの間に滑りが発生したり、或はこの無端ベルト11の寿命が低下する事を防止する。
【0008】上述の様に構成され作用するオルタネータ用クラッチ内蔵型プーリ装置を構成する一方向クラッチ10としてローラクラッチを使用する場合、このローラクラッチを構成する外輪の内周面又は内輪の外周面に、円周方向に亙る凹凸である、カム面を形成する必要がある。この様なカム面を有する外輪又は内輪を従来は、プレス加工、鍛造加工、燒結により造っていた。プレス加工により造った外輪又は内輪は、従動プーリ7aに内嵌固定若しくはスリーブ8に外嵌固定し、鍛造加工、燒結により造った外輪又は内輪は、上記従動プーリ7a又はスリーブ8と一体に構成していた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】外輪又は内輪をプレス加工により造った場合には、材料コスト並びに加工コストが低い為、上記外輪又は内輪を安価に得られるのに対して、得られる外輪又は内輪の軸方向両端部にだれが生じ、この軸方向両端部周面が、中間部周面よりも直径方向に凹む事が避けられない。この様にだれに基づいて凹んだ部分は、ローラの転動面と当接しない為、この転動面と上記外輪又は内輪に形成したカム面との当接面積がその分減少し、ローラクラッチの負荷容量が小さくなって、このローラクラッチの耐久性が損なわれる。又、鍛造加工、燒結により造る場合、それ自体の加工コストが高いだけでなく、十分な精度を得る事が難しい為、後加工が必要になり、更にコストが嵩んでしまう。本発明のオルタネータ用ローラクラッチ内蔵型プーリ装置は、この様な事情に鑑みて発明したものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明のローラクラッチ内蔵型プーリ装置は、オルタネータの回転軸の周囲に、この回転軸と同心に配置する従動プーリと、これら回転軸の外周面と従動プーリの内周面との間に設け、この従動プーリに加わるラジアル荷重を支承しつつこれら回転軸と従動プーリとの相対回転を自在とするサポート軸受と、上記回転軸の外周面と従動プーリの内周面との間に設け、この従動プーリが上記回転軸に対し所定方向に相対回転する傾向となる場合にのみ従動プーリとスリーブとの間での回転力の伝達を自在とするローラクラッチとを備える。そして、このローラクラッチを構成する為のカム面を、上記従動プーリに内嵌固定した外輪の内周面又は上記回転軸に直接又はスリーブを介して外嵌固定した内輪の外周面に形成すると共に、このカム面を形成した外輪又は内輪を引き抜き材製とする。
【0011】
【作用】上述の様に構成する本発明のローラクラッチ内蔵型プーリ装置の場合には、カム面を形成した外輪又は内輪を引き抜き材製としているので、この外輪又は内輪を精度良く、且つ、安価に造れる。しかも、引き抜き材製の外輪又は内輪の軸方向両端部周面には、プレス加工により生じる様なだれが発生する事がないので、上記外輪の内周面又は内輪の外周面とローラの転動面との当接面積を広くして、ローラクラッチの負荷容量を確保できる。
【0012】
【発明の実施の形態】図1〜3は、本発明の実施の形態の第1例を示している。スリーブ8は、全体を円筒状に形成しており、オルタネータの回転軸3(図5〜6参照)の端部に外嵌固定して、この回転軸3と共に回転自在である。この為に図示の例では、上記スリーブ8の中間部内周面に雌スプライン部12を形成し、この雌スプライン部12と上記回転軸3の端部外周面に形成した雄スプライン部(図示省略)とを係合自在としている。尚、上記回転軸3とスリーブ8との相対回転を防止する為の構造は、スプラインに代えて、ねじ、或は非円筒面同士の嵌合、キー係合等としても良い。
【0013】上述の様なスリーブ8の周囲には従動プーリ7bを、このスリーブ8と同心に配置している。この従動プーリ7bは、鋼板、アルミニウム合金板等の金属素材にプレス加工、絞り加工、鍛造加工等の塑性加工を施す事により、一体に造っており、内径側円筒部13と外径側円筒部14と連結部15とを有する、断面略コ字形に形成している。このうちの内径側円筒部13は、その内側に次述するサポート軸受9、9及びローラクラッチ16を装着する為、比較的厚肉に形成している。又、上記外径側円筒部14は、内周面の幅方向に亙る断面形状を波形として、上記内径側円筒部13と同心に配置している。この様な外径側円筒部14の外周面には、所謂ポリVベルトと呼ばれる無端ベルトの一部を掛け渡す。更に、円輪状に形成された上記連結部15の外周縁は上記外径側円筒部14の軸方向一端縁(図1の右端縁)に、同じく内周縁は上記内径側円筒部13の軸方向一端縁に、それぞれ連続させて、これら外径側円筒部14と内径側円筒部13とを互いに同心に結合している。尚、上記連結部15の設置位置は特に問わず、外径側、内径側両円筒部の軸方向中央でも、或は軸方向他端縁でも良い。
【0014】前述の様に構成するスリーブ8の外周面と上述の様に構成する従動プーリ7bの内周面との間には、1対のサポート軸受9、9と、1個のローラクラッチ16とを設けている。このうちのサポート軸受9、9は、上記従動プーリ7bに加わるラジアル荷重を支承しつつ上記スリーブ8と従動プーリ7bとの相対回転を自在とする。図示の例では、大きなラジアル荷重を支承自在とすべく、上記各サポート軸受9、9として、ころ軸受を使用している。又、上記ローラクラッチ16は、上記従動プーリ7bがスリーブ8に対して所定方向に回転する傾向となる場合にのみ、従動プーリ7bとスリーブ8との間での回転力の伝達を自在とする。
【0015】この様なローラクラッチ16を構成する為、上記スリーブ8の中間部外周面に請求項の内輪に相当するローラクラッチ用内輪17を、締まり嵌めにより外嵌固定している。このローラクラッチ用内輪17は、冷間圧延用鋼、クロムモリブデン鋼等の金属により全体を円筒状に形成し、外周面は、図2(A)に示す様な凹凸を有するカム面18としている。本発明の場合には、この様な形状を有するローラクラッチ用内輪17を、引き抜き材により形成している。即ち、上記金属の材料に引き加工を施す事により、長尺な円管状の素材を造り、この素材を所望の長さに切断して、上記ローラクラッチ用内輪17とする。切断方法は、従来から各種知られた方法を適宜選択するが、例えば、レーザカッタによる切断方法は、切断面にバリやだれが発生しない事から、好ましく使用できる。
【0016】又、上記各サポート軸受9、9を構成する為、上記スリーブ8の両端部外周面には、それぞれサポート軸受用内輪19、19を、締まり嵌めにより外嵌固定している。やはり、軸受鋼等の硬質金属により造った、これら各サポート軸受用内輪19、19は、それぞれ円筒部20の一端縁に外向フランジ状の内輪側鍔部21を形成する事により、断面L字形で全体を円筒状に形成している。この様な各サポート軸受用内輪19、19は、上記内輪側鍔部21を互いに反対側に位置させた状態で上記スリーブ8に締まり嵌めにより外嵌し、それぞれの先端縁を上記ローラクラッチ用内輪17の軸方向両端縁に突き当てている。
【0017】一方、上記従動プーリ7bの中間部内周面には外輪22を、締まり嵌めにより内嵌固定している。この外輪22は、やはり冷間圧延用鋼やクロムモリブデン鋼等の金属製の板材にプレス加工を施す等により、全体を円筒状に形成しており、軸方向両端縁に、それぞれ内向フランジ状の外輪側鍔部23a、23bを形成している。尚、これら両外輪側鍔部23a、23bのうち、一方(図1の左方)の外輪側鍔部23aは、他の構成各部材と組み合わせる以前に形成する為、上記外輪22の本体部分と同等の厚さ寸法を有する。これに対して、他方(図1の右方)の外輪側鍔部23bは、他の構成各部材と組み合わせた後に形成する為、薄肉にしている。
【0018】そして、前記ローラクラッチ16は、上記外輪22の中間部内周面と上記ローラクラッチ用内輪17の外周面とを含んで構成している。即ち、上記外輪22の中間部内周面と上記ローラクラッチ用内輪17の外周面との間に、合成樹脂により籠型円筒状に形成した保持器24と、それぞれ複数ずつのローラ25及びばね26とを設けている。又、保持器24の内周面は上記ローラクラッチ用内輪17のカム面18と係合させて、このローラクラッチ用内輪17に対する相対回転を阻止している。又、上記各ローラ25は、それぞれ上記保持器24に転動自在に保持している。又、上記ばね26は、それぞれ保持器24とローラ25との間に設けて、これら各ローラ25を、円周方向に関して同方向に、弾性的に押圧している。尚、図1には、ばね26を模式的に示している。従って、実際に図1の方向から見た場合のばね26の形状とは異なる状態を描いている。この様に、ローラクラッチ用内輪17と、外輪22と、保持器24と、それぞれ複数個ずつのローラ25及びばね26とから成る、上記ローラクラッチ16は、周知の作用に基づき、上記ローラクラッチ用内輪17を外嵌固定した前記スリーブ8と、上記外輪22を内嵌固定した前記従動プーリ7bとの間で、一方向の回転運動のみを伝達自在とする。
【0019】又、前記各サポート軸受9、9は、前記各サポート軸受用内輪19、19と上記外輪22の軸方向両端部寄り部分とを含んで構成している。即ち、上記各サポート軸受用内輪19、19の外周面と上記外輪22の軸方向両端部寄り部分の内周面との間に、それぞれ合成樹脂により籠型円筒状に形成された保持器27と、この保持器27により転動自在に保持された複数のローラ28とを配置して、ラジアルころ軸受を構成している。
【0020】又、前記各外輪側鍔部23a、23bの外側面と前記各内輪側鍔部21、21の内側面との間には、それぞれフローティングワッシャ29、29を、これら各外輪側鍔部23a、23bと内輪側鍔部21、21とに対する相対回転を自在に装着している。上記各フローティングワッシャ29、29は、銅等の自己潤滑性を有する金属、タフトライド処理した金属、或は含油メタル等の潤滑油を含浸させた金属材、若しくはポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリ四弗化エチレン樹脂等の摩擦係数の低い合成樹脂により、円輪状に形成している。尚、上記各フローティングワッシャ29、29の全面にグリースを塗布すれば、上記各サポート軸受用内輪19、19と上記外輪22との相対回転に対する抵抗をより小さくできる。この様なフローティングワッシャ29、29は、上記各外輪側鍔部23a、23bと内輪側鍔部21、21との間に、緩く挟持している。又、このフローティングワッシャ29、29は、上記各サポート軸受用内輪19、19の外周面、又は上記従動プーリ7bを構成する内径側円筒部13の内周面により案内(ラジアル方向の偏心を防止)する。
【0021】又、上記外輪22の軸方向両端部内周面と上記各サポート軸受用内輪19、19の外周面との間の隙間は、それぞれシールリング30、30により塞いでいる。これら各シールリング30、30はそれぞれ、鋼板等の金属板により円環状に構成した芯金31と、ゴム、エラストマー等の弾性材32とから成る。この様な上記各シールリング30、30は、上記弾性材32の外径を弾性的に縮めた状態で、上記外輪22の両端部内周面に、締り嵌めにより内嵌支持している。そして、各弾性材32、32にそれぞれ複数本ずつ設けたシールリップの先端縁を、上記サポート軸受用内輪19、19の中間部外周面、並びに上記各外輪側鍔部23a、23bの内側面に摺接させている。
【0022】更に、上記外輪側、内輪側両鍔部23a、23b、21とフローティングワッシャ29、29とを設けた部分を、ラビリンスにしている。即ち、上記各内輪側鍔部21、21の外径を、前記従動プーリ7bを構成する内径側円筒部13の内径よりも僅かに小さくし、これら各内輪側鍔部21、21の外周縁を上記内径側円筒部13の内周面に近接させている。又、上記各フローティングワッシャ29、29の外径を上記内径側円筒部13の内径よりも僅かに小さくし、これら各フローティングワッシャ29、29の内径を上記各サポート軸受用内輪19、19の円筒部20、20の外径よりも僅かに大きくして、これら各フローティングワッシャ29、29の内外両周縁を、上記各円筒部20、20の外周面又は上記内径側円筒部13の内周面に近接させている。更に、上記各外輪側鍔部23a、23bの内径を、上記各円筒部20、20の外径よりも僅かに大きくして、これら各外輪側鍔部23a、23bの内周縁と各円筒部20、20の外周面とを近接させている。これら各部材の周縁と周面との近接部分は、それぞれラビリンスシールとして機能し、周囲に存在する塵芥等の異物が、上記各シールリング30、30側に入り込む事に対する抵抗となる。又、これら各シールリング30、30は、上記各フローティングワッシャ29、29と上記外輪側、内輪側両鍔部23a、23b、21との擦れ合いに基づいて発生する摩耗粉が、内部に入り込む事を防止する。
【0023】上述の様に構成する本例のローラクラッチ内蔵型プーリ装置により、例えばエンジンのクランクシャフトによりオルタネータ1の回転軸3を回転駆動する場合には、この回転軸3の端部でオルタネータ1のハウジング2(図5)から突出した部分に、前記スリーブ8を外嵌固定する。そして、上記クランクシャフトの端部に固定した駆動シャフトと上記従動プーリ7bとの間に、無端ベルト11(図6)を掛け渡す。この際、上記回転軸3の回転方向に関して、上記従動プーリ7bの回転角速度が回転軸3の回転角速度よりも早くなる傾向の場合に、前記ローラクラッチ16がロックされ、上記従動プーリ7bの回転が上記スリーブ8を介して上記回転軸3に伝達される様に、その装着方向を規制する。逆に言えば、上記回転軸3の回転方向に関して、上記従動プーリ7bの回転角速度が回転軸3の回転角速度よりも遅い場合には、上記ローラクラッチ16がフリーとなり、上記従動プーリ7bと上記回転軸3との間で回転力の伝達が行なわれない様にする。
【0024】前述の様に構成され、上述の様にオルタネータ1の回転軸3に組み付ける、本発明のオルタネータ用ローラクラッチ内蔵型プーリ装置の場合には、外周面にカム面18を形成したローラクラッチ用内輪17を引き抜き材製としているので、このローラクラッチ用内輪17を精度良く、しかも安価に造れる。しかも、引き抜き材製のローラクラッチ用内輪17の軸方向両端部周面には、プレス加工により生じる様なだれが発生する事がない。即ち、本発明のローラクラッチ内蔵型プーリ装置に組み込むローラクラッチ用内輪17の場合には、図2(B)及び図3に示す様に、軸方向両端縁部にだれが存在しない。従って、上記ローラクラッチ用内輪17の外周面に形成したカム面18と前記各ローラ25が、これら各ローラ25の転動面の幅で互いに当接する。又、上記ローラクラッチ用内輪17の内周面は、軸方向両端縁まで単一円筒面上に位置するので、この内周面と前記スリーブ8の外周面とが、この内周面の軸方向両端縁まで密接する。従って、上記各ローラ25に加わる負荷トルクを、これら各ローラ25の転動面のほぼ全幅に亙って上記カム面18により支承し、且つ、このカム面18から上記ローラクラッチ用内輪17に加わった負荷トルクを、このローラ25の転動面のほぼ全幅に亙って、上記スリーブ8に伝達できる。この様に本発明によれば、上記ローラクラッチ用内輪17の外周面に設けたカム面18と上記各ローラ25の転動面との当接面積、並びにこのローラクラッチ用内輪17の内周面と上記スリーブ8の外周面との当接面積を広くして、前記ローラクラッチ16のトルク負荷容量を確保すると共に、上記スリーブ8との抜け力や振動下でのクリープ防止力の向上を図る事ができる。
【0025】これに対して、上記ローラクラッチ用内輪17をプレス加工により造ると、図4に示す様に、内外両周面の軸方向両端部にだれ34a、34bが生じる。これらのだれ34a、34bのうち、外周面側のだれ34aは、カム面18とローラ25の転動面との当接面積を減少させ、内周面側のだれ34bは、この内周面とスリーブ8(図1)の外周面との当接面積を減少させて、何れもローラクラッチ16(図1)の負荷容量の減少及びスリーブ8からの抜け力及びクリープ力の低下を生じさせる。本発明は、上記ローラクラッチ用内輪17を引き抜き材で造る事により、図2〜3に示す様な形状を得て、上述の様な不都合をなくすものである。
【0026】又、図示の例の場合には、前記従動プーリ7bの直径を確保したまま(小さくする事なく)、この従動プーリ7bの慣性質量を軽減できる。即ち、前記無端ベルトの一部を掛け渡すべき前記外径側円筒部14は薄肉であり、この外径側円筒部14の慣性質量は限られたものである。又、この外径側円筒部14の内周面と前記内径側円筒部13の外周面との間には空間33が存在する。従って、前記回転軸3を駆動する為のトルクを確保すべく、上記外径側円筒部14の直径を確保しても、上記従動プーリ7bの回転に伴うモーメントが徒に大きくなる事はない。この為、上記ローラクラッチ16が繋がる(ロックする)瞬間に、ローラ25、外輪22、ローラクラッチ用内輪17等、このローラクラッチ16の構成部品に加わる衝撃荷重を小さくして、このローラクラッチ16の耐久性向上を図れる。
【0027】更に、図示の例の場合には、周囲に存在する塵芥等の異物により構成各部材が摩耗する事を防止して、十分な耐久性を確保できる。即ち、外輪側鍔部23a、23bと内輪側鍔部21、21とに対する相対回転を自在に装着したフローティングワッシャ29、29は、前記外輪22の鍔部23a、23bと上記各サポート軸受用内輪19、19の鍔部21、21との間に作用するスラスト荷重を支承しつつ、上記外輪側鍔部23a、23bと内輪側鍔部21、21との互いに対向する面が摩耗する事を防止する。即ち、上記ローラクラッチ16には、スリーブ8と従動プーリ7bとの間での回転力の伝達方向を規制する機能はあるが、これらスリーブ8と従動プーリ7bとがスラスト方向にずれる事を防止する機能はない。又、それぞれがラジアルころ軸受である、前記各サポート軸受9、9は、大きなラジアル荷重を支承する機能を有する反面、やはり上記スリーブ8と従動プーリ7bとがスラスト方向にずれる事を防止する機能はない。そこで、図示のローラクラッチ内蔵型プーリ装置の場合には、上記各外輪側鍔部23a、23bと、内輪側鍔部21、21と、フローティングワッシャ29、29とにより、上記スリーブ8と従動プーリ7bとがスラスト方向にずれる事を防止している。しかも、それぞれが金属により造られた上記各外輪側鍔部23a、23bと内輪側鍔部21、21との間に上記各フローティングワッシャ29、29を組み込む事により、互いに擦れ合う面の相対回転速度を半減させて、これら各鍔部23a、23b、21の摩耗防止を図ると同時に、上記スリーブ8と従動プーリ7bとの相対回転が円滑に行なわれる様にしている。
【0028】又、上記外輪22の両端部には、それぞれシールリング30、30を装着している。これら各シールリング30、30は、上記外輪22の両端部内周面と上記各サポート軸受用内輪19、19の中間部外周面との間の隙間を塞ぎ、上記各サポート軸受9、9及びローラクラッチ16の設置部分に塵芥等の異物が進入する事や、上記各フローティングワッシャ29、29と上記外輪側、内輪側両鍔部23a、23b、21との擦れ合いに基づいて発生した摩耗粉が上記設置部分に進入する事を防止する。そして、これら各サポート軸受9、9及びローラクラッチ16の構成部品の摩耗防止に寄与する。更に、図示の例の場合には、これら各シールリング30、30の外側部分に、それぞれ複数段のラビリンスシールを設けている為、上記各シールリング30、30の外側に達する異物の量自体が少なくなる。この為、これら各シールリング30、30を越えて上記サポート軸受9、9及びローラクラッチ16の設置部分に達する異物の量が極く少なくなる。この結果、これら各サポート軸受9、9及びローラクラッチ16の構成部品の摩耗防止効果をより一層向上させる事ができる。
【0029】尚、図示の例では、上記各サポート軸受9、9及びローラクラッチ16を、回転軸3(図5〜6)の端部に外嵌固定するスリーブ8の外周面と従動プーリ7bの内周面との間に設ける場合に就いて示したが、上記スリーブ8を省略する事もできる。この場合には、上記各サポート軸受9、9及びローラクラッチ16を、回転軸3の端部外周面と従動プーリ7bの内周面との間に設ける。又、カム面をローラクラッチ用内輪の外周面に代えて、ローラクラッチ用外輪の内周面に設ける構造でも、本発明を実施する事は可能である。この場合には、ローラクラッチ用内輪をサポート軸受用外輪と別体とし、ローラクラッチ用外輪の両端部には鍔部は設けない。
【0030】
【発明の効果】本発明のオルタネータ用ローラクラッチ内蔵型プーリ装置は、以上に述べた通り構成され作用するので、ローラクラッチの負荷容量を増大させて、このローラクラッチの耐久性向上を図れる。
【出願人】 【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
【出願日】 平成9年(1997)10月15日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】小山 武男 (外1名)
【公開番号】 特開平11−118025
【公開日】 平成11年(1999)4月30日
【出願番号】 特願平9−281869