| 【発明の名称】 |
潤滑剤の補給方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】並松 健
【氏名】出田 理
【氏名】鈴木 精二
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| 【要約】 |
【課題】簡易な方法によって、ボールナット内に存在する劣化したグリースを新品グリースに十分入れ替えること。
【解決手段】まず、ボールナット2に装着したグリースニップル30にグリースガンを接続する。次に、ボールナット2を回転させることなくねじ軸1のみを徐々に回転させて、ボールナット2を図示の矢印方向に移動させる。これと同時に、グリースガンを動作させてグリースニップル30から新品グリース40を加圧供給する。ねじ軸1の回転に伴って潤滑剤保持空間GS内の劣化グリース41に流れが形成され、潤滑剤保持空間GSのシールキャップ4側から徐々に新品グリース40が進入して劣化グリース41に徐々に置き換わる。グリースニップル30から供給された新品グリース40は、一部がシールキャップ4のすき間を介して外部に漏れ出すが、多くは、劣化グリース41を徐々に潤滑剤保持空間GSから追い出して、潤滑剤保持空間GSを劣化グリース41の代わりに新品グリース40で完全に充填することになる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 外周にねじ溝を備えたねじ軸に、複数のボールを介在させつつ、内周にねじ溝を備えたボールナットを対向させるとともに、当該ボールナットの軸方向の両端位置にシールを装着したボールねじに対する潤滑剤の供給方法において、前記ねじ軸を前記ボールナットに対して軸回りに相対的に回転させて前記ボールナットを前記ねじ軸に対して軸方向に相対的に移動させつつ、前記ボールナットと前記ねじ軸との間に形成された潤滑剤保持空間に潤滑剤を供給することを特徴とする潤滑剤の補給方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ボールねじに対するグリース等の潤滑剤の供給方法に関し、特に劣化した潤滑剤と侵入した異物とそれによって生じた摩耗粉とを効率的にボールナット外に排除してボールねじの摩耗寿命の向上を図ることができる潤滑剤の供給方法に関する。 【0002】 【従来の技術】回転運動を直線運動に変換する機構として、ボールねじ機構が知られている。ボールねじ機構は、外周にねじ溝を備えたねじ軸に、複数のボールを介在させつつ、内周にねじ溝を備えたボールナットを対向させたもので、ねじ軸を回転させることにより、ボールナットを軸線方向へと移動させる。 【0003】ところで、ねじ溝とボールとの間には、通常グリースが保持されており、ねじ溝とボールの摩耗や摩擦による加熱等を防止するようになっている。ところが、グリースは一般に温度、水分、異物、摩耗粉の影響により比較的短時間で潤滑剤としての機能が低下するため、ボールねじ機構のメンテナンス時等において定期的に潤滑剤の補給が必要となる。 【0004】このようなグリース補給には、グリース自動補給装置やグリースガンを用いている。すなわち、ボールナットをねじ軸上のある位置に停止させた状態で、ボールナットに形成したグリース補給穴に装着したグリースニツプルを介して、グリースガン等から新品のグリースを補給している。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかし、ボールナットを停止した状態で新品のグリースを補給しても、補給穴に近い方のシールのすき間から新品グリースが漏れるだけで、ボールナット内に存在する劣化したグリースを新品グリースに十分入れ替えることができないといった場合が生じていた。また、上記のようなグリース補給方法では、ボールナットの内部に侵入している異物やそれによって生じた摩耗粉の排除も上記と同様に十分に達成できない。 【0006】このため、ボールナット内に存在する劣化したグリースで引き続き潤滑されてしまうことや、また、ボールナット内にある排除されなかった異物・摩耗粉によってねじ溝、ボール等の摩耗をさらに進行させてしまい、グリース補給によるボールねじの摩耗・剥離寿命の延命化が十分に達成されない。 【0007】そこで、本発明は、簡易な方法によって、ボールナット内に存在する劣化したグリースを新品グリースに十分入れ替えることができ、ボールナットの内部に侵入している異物・摩耗粉の十分な排除を可能にする潤滑剤の補給方法を提供することを目的とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明の潤滑剤の供給方法は、外周にねじ溝を備えたねじ軸に、複数のボールを介在させつつ、内周にねじ溝を備えたボールナットを対向させるとともに、当該ボールナットの軸方向の両端位置にシールを装着したボールねじに対する潤滑剤の供給方法において、前記ねじ軸を前記ボールナットに対して軸回りに相対的に回転させて前記ボールナットを前記ねじ軸に対して軸方向に相対的に移動させつつ、前記ボールナットと前記ねじ軸との間に形成された潤滑剤保持空間に潤滑剤を供給することを特徴とする。この方法では、前記ねじ軸と前記ボールナットとを相対的に回転させることで潤滑剤保持空間内の劣化した潤滑剤等に流れを形成することができ、潤滑剤保持空間内に新たな潤滑剤を効果的に送り込むことができる。 【0009】また、好ましい態様では、前記潤滑剤保持空間のうち前記ボールナットが前記ねじ軸に対して移動する方向の先端側に挿着されたシールの内側近傍に潤滑剤を加圧供給する。これにより、潤滑剤保持空間内の劣化した潤滑剤等を外部に効果的に押し出すことができるとともに、潤滑剤保持空間内に新たな潤滑剤をより効果的に送り込むことができる。 【0010】 【発明の実施の形態】以下、本発明に係る潤滑剤の供給方法の具体的な実施形態を、図面を参照して説明する。 【0011】図1は、実施形態の方法が適用されるボールねじ機構の全体構造を概念的に説明する図である。外周にねじ溝を備えたねじ軸1の両端は、一対の軸受10、11によって回転可能に支持されている。これにより、ねじ軸1は、その軸芯の回りに滑らかに回転する。一方の軸受10の外側には、ねじ軸1の一端に連結されてこのねじ軸1を駆動する回転駆動装置15が設けられている。ねじ軸1のうち、ねじ溝が形成されている一部領域の周囲には、ねじ軸1の回転に伴ってねじ軸1の軸芯方向に移動するボールナット2が配置されている。 【0012】図2は、図1に示すボールねじ機構の要部拡大図であり、ねじ軸1の軸芯に沿った断面構造を示している。なお、図2(a)及び図2(b)は、新しいグリースの充填の進行段階を示している。 【0013】図示のように、ボールナット2は、ねじ軸1を内包するように配置され、ボールナット2の内周に形成されたねじ溝2aと、それに対向するねじ軸1の外周に形成されたねじ溝1bとの間には、複数のボール3が転動自在に配置されている。また、ボール3は、図示しない循環機構により循環する。これにより、ねじ軸1とボールナット2は、これらの軸回りに相対的に回転する。 【0014】ボールナット2の軸方向の両端には、円筒状のシールキャップ4、5が、図示を省略するボルトにより取り付けられている。シールキャップ4、5の内周面は、ねじ溝1bの外周形状に一致した形状に加工されてねじ溝1bに密着しており、ねじ軸1とボールナット2との間に形成された潤滑剤保持空間GS内のグリースが外部に漏れ出したり、外部から潤滑剤保持空間GS内に塵埃等の異物が侵入することを極力防止している。 【0015】ボールナット2は、一対の円筒状の第1及び第2ナット部分21、22からなる。これらのナット部分21、22は、間座23によって連結されている。第1ナット部分21の一端に形成されているフランジ部21aの外周の一部には、グリースニップル30が装着されている。このグリースニップル30は、フランジ部21a内部を貫通する補給穴21bを介して、シールキャップ4内面近傍で潤滑剤保持空間GSに連通している。 【0016】図2のボールねじ機構に新品のグリースを充填する方法を説明する。まず、ボールナット2に装着したグリースニップル30にグリースガンを接続する。次に、ボールナット2を回転させず回転駆動装置15を駆動してねじ軸1のみを徐々に回転させ、ボールナット2を図中の矢印方向に移動させる。これと同時に、グリースガンを動作させてグリースニップル30から新品グリース40を加圧供給する。ねじ軸1の回転に伴って潤滑剤保持空間GS内の劣化グリース41に流れが形成され、潤滑剤保持空間GSのシールキャップ4側から徐々に新品グリース40が進入して劣化グリース41に徐々に置き換えられる(図2(a)参照)。グリースニップル30から供給された新品グリース40は、一部がシールキャップ4のすき間を介して外部に漏れ出すが、多くは、劣化グリース41を徐々に潤滑剤保持空間GSから追い出して、潤滑剤保持空間GSを劣化グリース41の代わりに新品グリース40で完全に充填する(図2(b)参照)。 【0017】図3は、図2の場合と異なり、ねじ軸1を回転させないで新品グリース40を供給した場合を説明する図である。この場合、ねじ軸1が回転しないので、潤滑剤保持空間GS内の劣化グリース41に流れが形成されず、潤滑剤保持空間GS内に新品グリース40がほとんど進入して来ないでシールキャップ4側から外部に漏れ出す。このため、内部の劣化グリース41を新品グリース40に十分入れ替えることができないといった不都合が生じる。また、図3のようなグリース補給方法では、潤滑剤保持空間GSに侵入している異物やそれによって生じた摩耗粉も十分に排除することができない。 【0018】以下、上記実施形態の効果を確認する実験について説明する。先ず、粒径37〜148mの鉄粉塵をボールナット2内のグリースに約115mg混入させた。図4は、このような擬似的な劣化グリース41を濾紙上に付着させて劣化グリース41の状態を視覚的に説明する図である。白い円は濾紙であり、濾紙の中央部に黒色の劣化グリース41を付着させている。この状態から、ボールナット2のグリースニップル30からグリースガンを用いてボールナット2を往復させながら新品グリース40を補給した。具体的には、ボールナット2を12往復させるとともに、ボールナット2の1往復毎にグリースガンのレバーを3回押して新品グリース40を間欠的に補給した。これにより、新品グリース40はボールナット2の移動方向とは逆に流動し、ボールナット2の潤滑剤保持空間GS内の劣化グリース41を鉄粉塵とともに潤滑剤保持空間GS外に押し出し、潤滑剤保持空間GSが新品グリース40に入れ替わる。この時のボールナット2内に残された鉄粉塵量は、測定誤差範囲5mg以下であった。図5は、潤滑剤保持空間GSに充填された新品グリース40の状態を視覚的に説明する図である。図4の場合と同様に、白い円は濾紙であり、濾紙の中央部に殆ど白色の新品グリース40を付着させている。なお、メンテナンス時は、潤滑剤保持空間GSの外に押し出された劣化グリース41をふき取ること等でねじ軸1上から除去する。 【0019】以上、実施形態に即してこの発明を説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、シールキャップ4、5をねじ軸1の外周に接触するタイプのものとしているが、非接触タイプの場合でも、上記実施形態の方法を適用することにより、新品グリースを劣化グリースに置換することができる。 【0020】また、グリースを封入する装置としては、グリースガンに限られず、各種グリース補給装置を用いることができる。 【0021】また、上記実施形態では、ボールナット2の移動方向の先端側、すなわち一方のシールキャップ4の内面近傍に新品グリース40を供給しているが、他方のシールキャップ5の内面近傍に新品グリース40を供給してもよい。この場合、ボールナット2の移動方向の正逆移動に際して、ボールナット2の移動方向の先端側に適宜のタイミングで新品グリース40を供給する。 【0022】さらにまた、ボールナット2は一体であってもいいし、ボールナット2のフランジがなくても本発明の方法を適用できる。 【0023】 【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明の潤滑剤の供給方法によれば、前記ねじ軸を前記ボールナットに対して軸回りに相対的に回転させて前記ボールナットを前記ねじ軸に対して軸方向に相対的に移動させつつ、前記ボールナットと前記ねじ軸との間に形成された潤滑剤保持空間に潤滑剤を供給するので、潤滑剤保持空間内の劣化した潤滑剤等に流れを形成することができ、潤滑剤保持空間内に新たな潤滑剤を効果的に送り込むことができる。すなわち、ボールねじのメンテ時につねにボールナットの潤滑剤保持空間内を清浄な状態に容易に確実に戻すことができ、摩耗・剥離寿命が伸びるボールねじを提供することができる。 【0024】また、好ましい態様では、前記潤滑剤保持空間のうち前記ボールナットが前記ねじ軸に対して移動する方向の先端側に挿着されたシールの内側近傍に潤滑剤を加圧供給するので、潤滑剤保持空間内の劣化した潤滑剤等を外部に効果的に押し出すことができるとともに、潤滑剤保持空間内に新たな潤滑剤をより効果的に送り込むことができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000004204 【氏名又は名称】日本精工株式会社
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| 【出願日】 |
平成9年(1997)10月15日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】井上 義雄
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| 【公開番号】 |
特開平11−118017 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)4月30日 |
| 【出願番号】 |
特願平9−296420 |
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