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【発明の名称】 ロックアップクラッチ制御装置
【発明者】 【氏名】斎藤 吉晴

【氏名】今 孝紀

【氏名】稲川 靖

【要約】 【課題】ギヤ比の変更等があっても、こもり音等の異音およびサージング等の異常振動の発生を回避する設定を行うために必要な労力およびコストを大幅に削減させる。

【解決手段】車両の目標駆動力を求める目標駆動力割出手段21と、該目標駆動力割出手段21で求められた目標駆動力を得るために必要な要求エンジントルクを求める要求エンジントルク割出手段22と、該要求エンジントルク割出手段22で求められた要求エンジントルクに基づき、所定条件を満たす目標エンジン回転数を求める目標エンジン回転数割出手段23と、該目標エンジン回転数割出手段23で求められた目標エンジン回転数に基づいてロックアップクラッチの締結容量の制御量を求める制御量割出手段24とを有し、該制御量割出手段24で求められた制御量によりロックアップクラッチを制御する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジンの出力をトルクコンバータと分配してトランスミッションの入力軸側に伝達させるロックアップクラッチの締結容量を制御するロックアップクラッチ制御装置において、運転状態を判断する複数のパラメータに基づいて車両の目標駆動力を求める目標駆動力割出手段と、該目標駆動力割出手段で求められた目標駆動力を得るために必要な要求エンジントルクを求める要求エンジントルク割出手段と、該要求エンジントルク割出手段で求められた要求エンジントルクに基づき、所定条件を満たす目標エンジン回転数を求める目標エンジン回転数割出手段と、該目標エンジン回転数割出手段で求められた目標エンジン回転数に基づいてロックアップクラッチの締結容量の制御量を求める制御量割出手段とを有し、該制御量割出手段で求められた制御量によりロックアップクラッチを制御することを特徴とするロックアップクラッチ制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンの出力をトルクコンバータと分配してトランスミッションの入力軸側に伝達させるロックアップクラッチの締結容量を制御するロックアップクラッチ制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ロックアップクラッチ制御装置として、例えば特開平7−332479号公報に開示されたもの等がある。この種のロックアップクラッチ制御装置は、こもり音等の異音およびサージング等の異常振動の発生を回避するのに有効な目標スリップ率を車速およびアクセルペダル開度に対し予め実車走行等で実験的に求めることにより作成されたマップを有しており、車速およびアクセルペダル開度に対して、マップから割り出される目標スリップ率を得るようにロックアップクラッチを制御するようになっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記のようなロックアップクラッチ制御用のマップは、実験データに基づいて作成されるものであるため、その作成作業に多大な労力とコストが必要となっている。特に、同一車種でもギヤ比の変更等のみで別のマップが必要となり、その度に実験を行ってマップを作成する必要があって、同一車種全体で見ると膨大な労力とコストが必要となってしまう。したがって、本発明の目的は、ギヤ比の変更等があっても、こもり音等の異音およびサージング等の異常振動の発生を回避する設定を行うために必要な労力およびコストを大幅に削減することができるロックアップクラッチ制御装置を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明のロックアップクラッチ制御装置は、エンジンの出力をトルクコンバータと分配してトランスミッションの入力軸側に伝達させるロックアップクラッチの締結容量を制御するものであって、運転状態を判断する複数のパラメータに基づいて車両の目標駆動力を求める目標駆動力割出手段と、該目標駆動力割出手段で求められた目標駆動力を得るために必要な要求エンジントルクを求める要求エンジントルク割出手段と、該要求エンジントルク割出手段で求められた要求エンジントルクに基づき、所定条件を満たす目標エンジン回転数を求める目標エンジン回転数割出手段と、該目標エンジン回転数割出手段で求められた目標エンジン回転数に基づいてロックアップクラッチの締結容量の制御量を求める制御量割出手段とを有し、該制御量割出手段で求められた制御量によりロックアップクラッチを制御することを特徴としている。これにより、目標駆動力を得るために必要な要求エンジントルクを要求エンジントルク割出手段で求めると、目標エンジン回転数割出手段が、この要求エンジントルクに基づき、所定条件を満たす目標エンジン回転数を求めて、制御量割出手段が、この目標エンジン回転数に基づいてロックアップクラッチの締結容量の制御量を求め、この制御量でロックアップクラッチを制御する。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明のロックアップクラッチ制御装置の一の実施の形態を図面を参照して以下に説明する。図1中符号11は図示せぬエンジンの出力軸であるクランクシャフトに連結されるカバー、符号12はカバー11に固定されて該カバー11と一体にエンジンの駆動力で回転させられるポンプインペラ、符号13はポンプインペラ12と対向配置されたタービンランナ、符号14はタービンランナ13に固定されたトランスミッションの入力軸、符号15はポンプインペラ12およびタービンランナ13の内側部分に配置されたステータをそれぞれ示している。なお、ポンプインペラ12、タービンランナ13およびステータ15でトルクコンバータ16が構成されている。
【0006】そして、図1中符号18で示されるロックアップクラッチは、エンジンの出力をトルクコンバータ16と分配してトランスミッションの入力軸14側に伝達させるもので、カバー11とタービンランナ13との間に配置されるとともにトランスミッションの入力軸14に固定されており、そのカバー11側とタービンランナ13側との液圧差でカバー11に対し接触および離間する。ここで、ロックアップクラッチ18は、カバー11に対し接触し固定状態となることで、エンジンから入力される駆動力をトルクコンバータ16を介することなくトランスミッションの入力軸14に直接伝達させる。他方、ロックアップクラッチ18は、カバー11に対し完全に離間状態となることで、エンジンから入力される駆動力をすべてポンプインペラ12に伝達させ該ポンプインペラ12の回転によるフルードの移動でタービンランナ13を回転させて(すなわちトルクコンバータ16を介して)トランスミッションの入力軸14に伝達させる。そして、ロックアップクラッチ18は、上記した液圧差が制御されカバー11に対する接触状態すなわち締結容量が制御されることで、エンジンから入力される駆動力の入力軸14への該ロックアップクラッチ18を介しての直接の伝達量とトルクコンバータ16を介しての伝達量との配分を制御する。
【0007】ロックアップクラッチ制御装置20は、図示せぬデューティソレノイドを制御し上記した液圧差を制御してロックアップクラッチ18のカバー11に対する締結容量を制御するものであり、図2に示すように、目標駆動力割出手段21と要求エンジントルク割出手段22と目標エンジン回転数割出手段23と制御量割出手段24とを有している。
【0008】目標駆動力割出手段21は、運転状態を判断するアクセルペダル開度APおよび車速Vの複数のパラメータに基づいて車両の目標駆動力を求めるもので、アクセルペダル開度APおよび車速Vの検出値に基づき、運転者の加速意志に基づく車両の目標駆動力を、予め設定された例えば図3に示す特性のマップにしたがって割り出し、該目標駆動力を表す信号を出力する。ここで、図3においては、横軸が車速Vを、縦軸が目標駆動力を、各線が各アクセルペダル開度をそれぞれ示している。なお、アクセルペダル開度は右上になるほど大きくなり、目標駆動力が一番大きい最も右上側の線が、アクセルペダル開度AP=WOT(ワイドオープンスロットル。すなわち全開)の状態である。
【0009】要求エンジントルク割出手段22は、目標駆動力割出手段21で求められた目標駆動力を得るために必要な要求エンジントルク(以下要求トルクと称す)Tinを求めるもので、シフト位置に対応するギア比から要求トルクTinを求めて、該要求トルクTinを表す信号を出力する。
【0010】目標エンジン回転数割出手段23は、要求エンジントルク割出手段22で求められた要求トルクTinに基づき、この要求トルクTinを得てしかも所定条件を満たす目標エンジン回転数NAを求めるもので、前記所定条件を満たす目標エンジン回転数NAとして、こもり音等の異音およびサージング等の異常振動の発生を回避することができる目標エンジン回転数NAを求めることになる。この目標エンジン回転数NAは、要求トルクTinに対するテーブルから求められるもので、このテーブルは、図4に示すように、要求トルクTinに対し上記した異音および異常振動の発生を回避することができる目標エンジン回転数NAが予め実験データに基づいて設定されてなるものである。ここで、上記した異音および異常振動は、回転が低いと発生し回転が高いと発生し難いため、目標エンジン回転数NAは異音および異常振動が許容レベルに抑えられる最低限の回転数が設定されている(言い換えれば目標エンジン回転数NA以上であれば異音および異常振動は許容レベルに抑えられる。すなわち発生が回避される)。
【0011】制御量割出手段24は、目標エンジン回転数割出手段23で求められた目標エンジン回転数NAに基づいてロックアップクラッチ18の締結容量の制御量を求めるものである。具体的には、目標エンジン回転数NAがトランスミッションの入力軸14の回転数Ninより大きい場合は、ロックアップクラッチ18でエンジンと入力軸14とを直結させることにより実エンジン回転数がその時点の車速で決まる入力軸14の回転数Ninまで落ちると該実エンジン回転数が目標エンジン回転数NAより小さくなって上記した異音および異常振動が発生してしまうことになるため、締結容量を最適な状態(後述する)としつつロックアップクラッチ18を滑らせるよう制御量を決定する。
【0012】他方、目標エンジン回転数NAがトランスミッションの入力軸14の回転数Nin以下の場合は、ロックアップクラッチ18でエンジンと入力軸14とを直結させて実エンジン回転数がその時点の車速で決まる入力軸14の回転数Ninとなっても、実エンジン回転数が目標エンジン回転数NAより小さくなることがなく上記した異音および異常振動が発生することはないため、燃費向上の目的からロックアップクラッチ18を直結させるべく締結容量を最大とするよう制御量を決定する。
【0013】そして、制御量割出手段24で決定された制御量でロックアップクラッチ制御用の図示せぬデューティソレノイドを電気的に制御し、ロックアップクラッチ18の締結容量を制御する。
【0014】ここで、要求エンジントルク割出手段22で求められた要求トルクTinおよび制御量割出手段24で求められたロックアップクラッチ18の締結容量は、エンジンを制御するエンジントルク割出手段26に対しても出力される。このエンジントルク割出手段26は、これら要求トルクTinおよび締結容量から、必要なスロットル開度THを求め、スロットルを電気的に制御する。
【0015】以上の構成のロックアップクラッチ制御装置20は、図5のフローチャートに示すように、まず、アクセルペダル開度APおよび車速Vに基づいて目標駆動力割出手段21で求めた目標駆動力から、要求エンジントルク割出手段22が、該目標駆動力を得るために必要な要求トルクTinを求めるとともに、トランスミッションの入力軸回転数Ninを検出する(ステップS1)。次に、目標エンジン回転数割出手段23が、要求エンジントルク割出手段22で求められた要求トルクTinに基づき図4に示すテーブルにしたがって目標エンジン回転数NAを求める(ステップS2)。
【0016】そして、制御量割出手段24が、目標エンジン回転数割出手段23で求められた目標エンジン回転数NAがトランスミッションの入力軸14の回転数Ninより大きいか否かを判定する(ステップS3)。目標エンジン回転数NAが入力軸回転数Ninより大きくない場合は、ロックアップクラッチ18でエンジンと入力軸14とを直結させても、実エンジン回転数が目標エンジン回転数NAより小さくなることがなく上記した異音および異常振動が発生することはないため、燃費向上の目的からロックアップクラッチ18を直結させるべく締結容量を最大とするよう制御量を決定する(ステップS4)。
【0017】他方、制御量割出手段24は、ステップS3において、目標エンジン回転数NAが入力軸回転数Ninより大きい場合は、実エンジン回転数が目標エンジン回転数NAより小さくなることがない範囲内となる目標滑り率eの値ETを、入力軸回転数Nin/目標エンジン回転数NAで割り出す(ステップS5)。そして、トルクコンバータ16で吸収されるトルコン吸収トルクTpを以下の式から求める(ステップS6)。
Tp=τ(ET)*(NA/1000)^2ここで、τはトルクコンバータ16によるトルク吸収係数であり、τ(ET)は、図6に示すような滑り率e=Nin/Neおよびτの予め設定されたテーブルから求める。なお、Neはエンジン回転数であり、この場合はNe=NAである。
【0018】続いて、ロックアップクラッチ18の伝達トルクTLCを以下の式から求める(ステップS7)。
TLC=Tin−Tpすなわち、要求トルクTinのうちトルクコンバータ16で伝達されるトルクを除いてロックアップクラッチ18の伝達トルクTLCを算出するのである。そして、この伝達トルクTLCが得られる締結容量をロックアップクラッチ18に持たせるための制御量を決定する(ステップS8)。この制御量で制御することで、実エンジン回転数が目標エンジン回転数NAより小さくなってしまうことがない範囲で最大の締結容量を得ることができる。
【0019】以上のようにして制御量割出手段24で決定された制御量でロックアップクラッチ制御用の図示せぬデューティソレノイドを電気的に制御し、ロックアップクラッチ18の締結容量を制御する。
【0020】このようなロックアップクラッチ制御装置20によれば、目標駆動力を得るために必要な要求エンジントルクTinを要求エンジントルク割出手段22で求めると、目標エンジン回転数割出手段23が、この要求エンジントルクに基づき、こもり音等の異音およびサージング等の異常振動の発生に対し有効な目標エンジン回転数NAを求めて、制御量割出手段24が、この目標エンジン回転数NA以上を得るようにロックアップクラッチ18の締結容量の制御量を求め、この制御量でロックアップクラッチ18を制御することになる。
【0021】したがって、こもり音等の異音およびサージング等の異常振動の発生に対し有効なエンジン回転数を常に得る、言い換えればエンジン側でこもり音等の異音およびサージング等の異常振動の発生に対処するようロックアップクラッチ18を制御するため、ギヤ比の変更等があっても、ロックアップクラッチ18側の制御特性で対処する必要がなくなる。しかも、上記によれば、燃費向上の目的からロックアップクラッチ18をその締結容量を最大とすることを基本とし、締結容量を最大とした場合にこもり音等の異音およびサージング等の異常振動が発生する場合に、ロックアップクラッチ18を滑らせてエンジン回転をこれら異音および異常振動が許容レベルに抑えられる回転に制御するものであるため、車速およびアクセルペダル開度に基づいてロックアップクラッチ18を制御するためのマップをなくすことができ、こもり音等の異音およびサージング等の異常振動の発生を回避する設定を行うための労力およびコストを大幅に削減することができる。
【0022】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明のロックアップクラッチ制御装置によれば、目標駆動力を得るために必要な要求エンジントルクを要求エンジントルク割出手段で求めると、目標エンジン回転数割出手段が、この要求エンジントルクに基づき、所定条件を満たす目標エンジン回転数を求めて、制御量割出手段が、この目標エンジン回転数に基づいてロックアップクラッチの締結容量の制御量を求め、この制御量でロックアップクラッチを制御する。よって、上記所定条件を満たす目標エンジン回転数として、こもり音等の異音およびサージング等の異常振動の発生に対し有効な目標エンジン回転数を求めることにより、この目標エンジン回転数が得られるようにロックアップクラッチを制御することができる。したがって、こもり音等の異音およびサージング等の異常振動の発生に対し有効なエンジン回転数を常に得る、言い換えればエンジン側でこもり音等の異音およびサージング等の異常振動の発生に対処するようロックアップクラッチを制御するため、ギヤ比の変更等があっても、ロックアップクラッチ側の制御特性で対処する必要がなく、よってマップの変更が不要となり、こもり音等の異音およびサージング等の異常振動の発生を回避する設定を行うための労力およびコストを大幅に削減することができる。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【出願日】 平成9年(1997)9月17日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武 (外11名)
【公開番号】 特開平11−94068
【公開日】 平成11年(1999)4月9日
【出願番号】 特願平9−252534