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【発明の名称】 自動変速機用油圧制御装置
【発明者】 【氏名】高木 章

【氏名】本多 正志

【氏名】坂口 信也

【要約】 【課題】耐摩耗処理を必要最低限に抑え、安価な自動変速機用油圧制御装置を提供する。

【解決手段】EV(電磁制御弁)11、12、13、14はアッパハウジング10に収容されている。EV15、MV(機械制御弁)31、32、33、34はロアハウジング30に収容されている。アッパハウジング10およびロアハウジング30には各EV、MVと接続する油路が形成されている。シールプレート20は、アッパハウジング10およびロアハウジング30に形成された油路同士を接続する油路を有するとともに、アッパハウジング10とロアハウジング30との間をシールしている。ロアハウジング30にすべてのMVが収容されているので、MVの弁部材との摺動による摩耗を防止するためにロアハウジング30にだけ耐摩耗処理を施せばよい。したがって、耐摩耗処理に要するコストを低減できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 自動変速機に設けられる複数の摩擦係合要素をそれぞれ係合または解除させることにより複数の変速段を切換制御する自動変速機用油圧制御装置において、前記自動変速機用油圧制御装置の油圧回路を構成する電磁制御弁および機械制御弁を収容し、前記油圧回路の油路を設けた複数のハウジングを備え、前記複数のハウジングの一つに前記機械制御弁のすべてを収容することを特徴とする自動変速機用油圧制御装置。
【請求項2】 自動変速機に設けられる複数の摩擦係合要素をそれぞれ係合または解除させることにより複数の変速段を切換制御する自動変速機用油圧制御装置において、前記自動変速機用油圧制御装置の油圧回路を構成する電磁制御弁および機械制御弁を収容し、前記油圧回路の油路を設けた複数のハウジングを備え、前記複数のハウジングの一つに前記電磁制御弁のすべてを収容することを特徴とする自動変速機用油圧制御装置。
【請求項3】 自動変速機に設けられる複数の摩擦係合要素をそれぞれ係合または解除させることにより複数の変速段を切換制御する自動変速機用油圧制御装置において、前記自動変速機用油圧制御装置の油圧回路を構成する電磁制御弁および機械制御弁を収容し、前記油圧回路の油路を設けた複数のハウジングを備え、前記複数のハウジングの一つに前記電磁制御弁のすべてと前記機械制御弁のすべてとを収容することを特徴とする自動変速機用油圧制御装置。
【請求項4】 前記電磁制御弁を収容する前記ハウジングは、前記電磁制御弁の少なくとも一つを上面に配置するとともに、前記上面に配置する前記電磁制御弁の少なくとも一つを包囲する包囲壁体を有することを特徴とする請求項1、2または3記載の自動変速機用油圧制御装置。
【請求項5】 前記上面に配置する前記電磁制御弁の少なくとも一つを固定支持する固定部材を前記包囲壁体にねじ止めすることを特徴とする請求項4記載の自動変速機用油圧制御装置。
【請求項6】 前記電磁制御弁を収容する前記ハウジングは前記電磁制御弁のすべてを前記上面に配置し、前記上面に配置する前記電磁制御弁の電気端子のほぼすべてと電気的に接続する一体コネクタは前記包囲壁体に取付けられることを特徴とする請求項4記載の自動変速機用油圧制御装置。
【請求項7】 前記包囲壁体は前記ハウジングの補強部材を兼ねることを特徴とする請求項4、5または6記載の自動変速機用油圧制御装置。
【請求項8】 前記包囲壁体に包囲された領域内に排出口を設けることを特徴とする請求項4、5、6または7記載の自動変速機用油圧制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動変速機の変速機構を油圧で変速制御する自動変速機用油圧制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】特公平5−59291号公報に開示されるような従来の自動変速機用油圧制御装置では、油圧回路を構成する機械制御弁や電磁制御弁を複数のハウジングに分散して配置することが一般的である。電磁制御弁は弁部材を摺動支持する支持部材と弁部材との摺動クリアランスを高精度に保持する必要があるため、油圧制御装置のハウジングではなく電磁制御弁自身で弁部材を摺動支持する支持部材を備えている。一方、機械制御弁は油圧制御装置のハウジングを弁部材の支持部材として用いるので、機械制御弁の弁部材との摺動による摩耗を防止するため、油圧制御装置のハウジングに耐摩耗処理を施すことが望ましい。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、油圧制御装置のハウジングに施す耐摩耗処理は高価であり、機械制御弁が複数のハウジングに分散していると各ハウジングに耐摩耗処理を施さなければならないので製造コストが上昇するという問題がある。また電磁制御弁を分散して配置していると、電磁制御弁に接続するコネクタの集積および統合化が困難であり、電磁制御弁毎にコネクタを接続しなければならない。したがって、電磁制御弁とコネクタとの接続が煩雑であり接続工数を減少できない。
【0004】さらに、機械制御弁および電磁制御弁と油路とが混在しているので設計が複雑になることに加え、油路設計が制約され自由度が低いので設計工数が増加するという問題がある。さらに、電磁制御弁の冷却を考慮して電磁制御弁の配置がなされていないので、電磁制御弁の冷却が十分に行われていないという問題がある。
【0005】本発明の目的は、耐摩耗処理を必要最低限に抑え、安価な自動変速機用油圧制御装置を提供することにある。本発明の他の目的は、電磁制御弁とコネクタとの接続を容易にし、接続工数を低減する自動変速機用油圧制御装置を提供することにある。本発明の他の目的は、電磁制御弁を十分に冷却する自動変速機用油圧制御装置を提供することにある。
【0006】本発明の他の目的は、油路の設計が容易な自動変速機用油圧制御装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1記載の自動変速機用油圧制御装置によると、油圧回路を構成する機械制御弁を一つのハウジングにすべて収容しているので、機械制御弁の弁部材と摺動するハウジングの内壁に対する耐摩耗処理を一つのハウジングに行うだけでよい。これにより、製造コストを低減することができる。
【0008】本発明の請求項2記載の自動変速機用油圧制御装置によると、油圧回路を構成する電磁制御弁を一つのハウジングに収容しているので、電気的接続を要する部品をハウジングの同一面上に集約して配置できる。これにより、電気的配線が容易になるとともにコネクタを一体化することも可能であるから、組付け工数および製造コストを低減できる。
【0009】本発明の請求項3記載の自動変速機用油圧制御装置によると、電磁制御弁のすべてと機械制御弁のすべてとを一つのハウジングに収容している。したがって、耐摩耗処理を一つのハウジングに行うだけでよい。さらに、電気的接続を要する部品をハウジングの同一面上に集約して配置できるので、電気的配線が容易になるとともにコネクタを一体化することも可能である。これにより、組付け工数および製造コストを低減できる。さらに、電磁制御弁のすべてと機械制御弁のすべてとを収容するハウジングの部品設置方向の面積を小さくしても他のハウジングで油路を自由に設計することができるので、油圧制御装置を小型化できるとともに油路の設計工数が低減する。
【0010】本発明の請求項4記載の自動変速機用油圧制御装置によると、電磁制御弁を収容するハウジングは、電磁制御弁の少なくとも一つを上面に配置するとともに、上面に配置する電磁制御弁の少なくとも一つを包囲する包囲壁体を有する。包囲壁体の内部に作動流体を充満させることにより、包囲壁体に包囲された電磁制御弁を十分に冷却することができるので、温度上昇による電磁制御弁の作動不良を防止する。これにより、電磁制御弁への通電電力量を大きくすることができるので、電磁制御弁の制御電力に余裕が生じる。さらに、電磁制御弁の小型化に伴い電磁制御弁の温度が上昇しやすくなっても十分に冷却できるので、温度上昇による作動不良を防止し、かつ電磁制御弁を小型化できる。
【0011】本発明の請求項5記載の自動変速機用油圧制御装置によると、電磁制御弁を固定支持する固定部材を包囲壁体にねじ止めするので、新たにねじ止め用の部材をハウジングに設ける必要がない。したがって、油圧制御装置の小型化および低コスト化を図ることができる。本発明の請求項6記載の自動変速機用油圧制御装置によると、電磁制御弁のすべてをハウジングの上面に配置するとともに、上面に配置する電磁制御弁の電気端子のほぼすべてを一体コネクタと電気的に接続し、一体コネクタを包囲壁体に取付けている。したがって、すべての電磁制御弁と一体コネクタとを一度に電気的に接続できるので電気的配線が容易になる。さらに、一体コネクタをハウジングに取り付ける部材を新たに設ける必要がないので、油圧制御装置の小型化および低コスト化を図ることができる。
【0012】本発明の請求項7記載の自動変速機用油圧制御装置によると、包囲壁体がハウジングの補強部材を兼ねている。したって、ハウジングに新たに補強部材を設ける必要がないので、装置の小型化および低コスト化を図ることができる。本発明の請求項8記載の自動変速機用油圧制御装置によると、包囲壁体に包囲された領域内に排出口を設けているので、電磁制御弁を冷却して温度が上昇した作動流体が速やかに排出される。したがって、常に新しい作動流体が包囲壁体に供給されるので電磁弁を確実にかつ効果的に冷却することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を示す複数の実施例を図面に基づいて説明する。
(第1実施例)本発明の第1実施例による自動変速機用油圧制御装置を車両用の自動変速機(以下、「自動変速機」をATという)に適用した油圧回路の一例を図2に示す。
【0014】油圧制御装置100には、マニュアルバルブ101、ライン圧制御手段110、ロックアップ制御手段120等が含まれている。マニュアルバルブ101はシフトレバーと連動して走行レンジを切換える切換弁である。ライン圧制御手段110は、高圧のライン圧を発生し、ライン圧の作動油を各油圧部品に供給する。ロックアップ制御手段120は、トルクコンバータ130のロックアップクラッチに加える油圧を制御する。
【0015】図2の上部に位置するOD/C、UD/C、2ND/B、R/C、LR/Bは特許請求の範囲に記載した「摩擦係合要素」を表している。各EVは電磁制御弁を表しており、そのうちEV1、EV2、EV3、EV4は電気的指令によって摩擦係合要素の係合または解除を油圧制御している。各MVは機械制御弁を表しており、油圧指令値によって油路を切り換えたり、出力油圧を調整したりしている。
【0016】図2に示す油圧制御装置100を実際の油圧部品で構成した一例を図1に示す。図1に示す油圧制御装置1は必ずしも図2に示した油圧回路を忠実に実現したものではない。11、12、13、14、15はEVであり、31、32、33、34はMVである。EV11、12、13、14はアッパハウジング10に収容されている。EV15、MV31、32、33、34はロアハウジング30に収容されている。各EVはソレノイド部を収容した上部をアッパハウジング10およびロアハウジング30から露出している。
【0017】アッパハウジング10およびロアハウジング30には各EV、MVと接続する油路が形成されている。シールプレート20は、アッパハウジング10およびロアハウジング30に形成された油路同士を接続する油路を有するとともに、アッパハウジング10とロアハウジング30との間をシールしている。各EVは、図示しないステー等でアッパハウジング10およびロアハウジング30にねじ止めされている。各EVのソレノイド部に制御電流を供給するケーブルのコネクタは、各EVのコネクタとそれぞれ別々に電気的に接続される。各EVは、各EVの弁部材を摺動自在に支持する支持部材をアッパハウジング10およびロアハウジング30とは別にEV自身で備えている。各MVの弁部材はロアハウジング30の内壁に摺動自在に支持されている。
【0018】第1実施例では、アッパハウジング10にMVは収容されておらずロアハウジング30にすべてのMVが収容されているので、MVの弁部材との摺動による摩耗を防止するためにロアハウジング30にだけ耐摩耗処理を施せばよい。したがって、耐摩耗処理に要するコストを低減できる。
(第2実施例)本発明の第2実施例を図3に示す。第1実施例と実質的に同一構成部分には同一符号を付す。
【0019】第2実施例では、アッパハウジング10にすべてのEVが収容され、ロアハウジング30にすべてのMVが収容されている。したがって、ロアハウジング30にだけ耐摩耗処理を施せばよい。さらに、ケーブルとの電気的接続を必要とするEVがすべて同一面上に集約して配置されるので、電気的配線が容易になるとともにEVに接続するコネクタを一体化することも可能である。これにより、組付け工数および製造コストを低減できる。
【0020】(第3実施例)本発明の第3実施例を図4に示す。第2実施例と実質的に同一構成部分には同一符号を付す。第3実施例では、アッパハウジング10にすべてのEVが収容され、ロアハウジング30にすべてのMVが収容されている。さらに、EVの周囲を薄板状の包囲壁体40で覆っているので、包囲壁体40の内部に作動油を充満させることにより発熱量の大きいEVを十分に冷却することができる。これにより、温度上昇によるEVの作動不良を防止するので、EVへの通電電力量を大きくすることができ、EVの制御電力に余裕が生じる。さらに、EVを小型化することに伴いEVの温度が上昇しやすくなっても十分に冷却できるので、作動不良を防止し、かつEVを小型化できる。
【0021】さらに、包囲壁体40がアッパハウジング10の上面に取り付けられていることにより、包囲壁体40がアッパハウジング10の補強部材の役割を果たしている。したがって、アッパハウジング10を補強するための部材を新たに設ける必要がないので、油圧制御装置の小型化を図るとともに製造コストが低減する。第3実施例では、アッパハウジング10の上面に包囲壁体40を設けることによりEVの周囲に作動油を充満させたが、アッパハウジング10に凹部を設けて凹部の周壁を包囲壁体とし、この凹部内にEVを配置し、凹部に作動油を充満してEVを冷却してもよい。また、EVの配置によっては一部のEVだけを薄板状または凹部による包囲壁体で覆ってもよい。
【0022】(第4実施例)本発明の第4実施例を図5に示す。第2実施例と実質的に同一構成部分には同一符号を付す。第4実施例では、アッパハウジング10にすべてのEVが収容され、ロアハウジング30にすべてのMVが収容されている。薄板状の包囲壁体41はEVの周囲を覆っており、ねじ穴41aが包囲壁体41に形成されている。固定部材としてのカバー42はEV21、22、23、24、25を押さえつけながらねじ43により包囲壁体41にねじ止めされる。したがって、EV21、22、23、24、25にはアッパハウジング10にねじ止めするためのステー等が設けられていない。カバー42には作動油を供給するための貫通孔42aが形成されている。
【0023】第4実施例では、カバー42が各EVをアッパハウジング10に押しつけて固定するので、アッパハウジング10にEVを固定するためのステー等が不要になる。したがって、各EVをそれぞれアッパハウジング10にねじ止めする必要がないので、EVを固定する工数が減少する。さらに、カバー42を包囲壁体41にねじ止めすることにより、カバー42をねじ止めする部材を新たにアッパハウジング上に設ける必要がない。したがって、油圧制御装置の小型化を図るとともに部品点数が減少するので製造コストが低減する。
【0024】(第5実施例)本発明の第5実施例を図6に示す。第4実施例と実質的に同一構成部分には同一符号を付す。第5実施例では、アッパハウジング10にすべてのEVが収容され、ロアハウジング30にすべてのMVが収容されている。ソレノイド部に制御電流を供給するEV46、47、48、49、50のターミナルは露出している。そして、露出した各EVのターミナルに一体化されたコネクタ45が接続され、コネクタ45はねじ43により包囲壁体41にねじ止めされる。このとき、各EVはコネクタ45によりアッパハウジング10に押しつけながら固定される。コネクタ45には作動油を供給する貫通孔45aが形成されている。
【0025】第5実施例では、各EVと電気的に接続する一体化されたコネクタ45が各EVをアッパハウジング10に押しつけながら固定する固定部材を兼ねている。したがって、各EVにそれぞれケーブルを接続する必要がなく、一回の接続工程ですべてのEVのターミナルとコネクタ45とを電気的に接続できるので、EVとコネクタとの電気的接続工数が減少する。
【0026】さらに、コネクタ45がEVの固定部材を兼ねているので、アッパハウジング10にEVを固定するためのステー等が不要になる。したがって、各EVをそれぞれアッパハウジング10にねじ止めする必要がないので、EVを固定する工数が減少する。
(第6実施例)本発明の第6実施例を図7に示す。第3実施例と実質的に同一構成部分には同一符号を付す。
【0027】アッパハウジング10に排出口10aが形成されているので、包囲壁体40内に供給される冷却用の作動油が排出口10aから排出され、常に新しい作動油が包囲壁体40内に供給される。したがって、EVを効率よく冷却することができるので、温度上昇によるEVの作動不良を防止できる。
(第7実施例)本発明の第7実施例を図8に示す。第2実施例と実質的に同一構成部分には同一符号を付す。
【0028】第7実施例では、アッパハウジング51にすべてのEV、すべてのMVが収容されている。したがって、耐摩耗処理をアッパハウジング50にだけ施せばよい。さらに、EVに接続するコネクタを一体化できる。さらに、アッパハウジング51、シールプレート20、ロアハウジング53の油圧部品を設置する方向の面積が狭くてもシールプレート52およびロアハウジング53においてEV、MVに邪魔されることなく自由に油路を形成できるので、油圧制御装置を小型化できるとともに油路の設計工数が低減する。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成9年(1997)9月22日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
【公開番号】 特開平11−94058
【公開日】 平成11年(1999)4月9日
【出願番号】 特願平9−256836