| 【発明の名称】 |
自動変速機の変速制御装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】高木 章
【氏名】中谷 一志
【氏名】鈴木 勝
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| 【要約】 |
【課題】エンジンの運転状態が定常状態のときだけでなく過渡状態のときにも高精度にタービントルクを推定する。
【解決手段】インテークマニホールド5の圧力の時間変位に基づいて、エンジン1の運転状態が定常状態か過渡状態かを判定する。そして、定常状態のときには、トルクコンバータ41のトルク増幅比,トルク容量係数とエンジン回転数とに基づいてタービントルクを推定する。また、過渡状態のときには、エンジン回転数,インテークマニホールド5の圧力,吸入空気温度などに基づいて吸入空気量を算出し、それに基づいてエンジン1の内部発生トルクを推定し、エンジン1自体の慣性トルク,エンジン1の内部損失トルク,エンジン補機の駆動に要するトルクを内部発生トルクから差し引くと共に遅延時間補正を行ってエンジン1の外部出力トルクを求め、外部出力トルクとトルク増幅比とに基づいてタービントルクを推定する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジンからの動力を流体を介して伝動する流体伝動手段と、摩擦係合要素の組み合わせにより、前記流体伝動手段から伝動された動力の変速段を切り替える機械的変速手段と、前記流体伝動手段から前記機械的変速手段へ出力されるタービントルクを推定するタービントルク推定手段と、前記タービントルク推定手段の推定したタービントルクに基づいて前記機械的変速手段の摩擦係合要素の組み合わせを制御する変速制御手段とを備えた自動変速機の変速制御装置であって、前記タービントルク推定手段は、エンジンの運転状態が定常状態の場合は前記流体伝動手段の特性に基づいてタービントルクを推定し、エンジンの運転状態が非定常状態の場合は前記流体伝動手段の特性とエンジンの状態とに基づいてタービントルクを推定することを特徴とする自動変速機の変速制御装置。 【請求項2】 請求項1に記載の自動変速機の変速制御装置において、インテークマニホールド内の圧力を検出する圧力検出手段を備え、前記タービントルク推定手段は、前記インテークマニホールド圧力に基づいてエンジンの運転状態が定常状態か非定常状態かを判定するエンジン運転状態判定手段を備えたことを特徴とする自動変速機の変速制御装置。 【請求項3】 請求項1に記載の自動変速機の変速制御装置において、スロットルバルブの開度を検出するスロットル開度検出手段を備え、前記タービントルク推定手段は、前記スロットルバルブの開度に基づいてエンジンの運転状態が定常状態か非定常状態かを判定するエンジン運転状態判定手段を備えたことを特徴とする自動変速機の変速制御装置。 【請求項4】 エンジンからの動力を流体を介して伝動する流体伝動手段と、複数の摩擦係合要素の組み合わせにより、前記流体伝動手段から伝動された動力の変速段を切り替える機械的変速手段と、前記流体伝動手段から前記機械的変速手段へ出力されるタービントルクを推定するタービントルク推定手段と、前記タービントルク推定手段の推定したタービントルクに基づいて前記機械的変速手段の摩擦係合要素の組み合わせを制御する変速制御手段とを備えた自動変速機の変速制御装置であって、前記タービントルク推定手段は、前記流体伝動手段の特性に基づいてエンジンの運転状態が定常状態の場合のタービントルクを推定し、そのタービントルクの低周波領域から成る第1の推定トルクを求め、前記流体伝動手段の特性とエンジンの状態とに基づいてエンジンの運転状態が非定常状態の場合のタービントルクを推定し、そのタービントルクの高周波領域から成る第2の推定トルクを求め、第1および第2の推定トルクに基づいてタービントルクを推定することを特徴とする自動変速機の変速制御装置。 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動変速機の変速制御装置において、エンジンから前記流体伝動手段へ入力される入力回転数を検出する入力回転数検出手段と、前記流体伝動手段から前記機械的変速手段へ出力される出力回転数を検出する出力回転数検出手段とを備え、前記タービントルク推定手段は、前記入力回転数と前記出力回転数とに基づいて前記流体伝動手段のすべり比を算出するすべり比算出手段と、前記すべり比に基づいて前記流体伝動手段のトルク容量係数を算出するトルク容量係数算出手段と、前記すべり比に基づいて前記流体伝動手段のトルク増幅比を算出するトルク増幅比算出手段と、前記入力回転数と前記トルク容量係数と前記トルク増幅比とに基づいて、エンジンの運転状態が定常状態の場合のタービントルクを算出する定常時タービントルク算出手段とを備えたことを特徴とする自動変速機の変速制御装置。 【請求項6】 請求項5に記載の自動変速機の変速制御装置において、前記流体伝動手段の流体温度を検出する流体温度検出手段を備え、前記トルク容量係数算出手段は、算出したトルク容量係数を前記流体温度に基づいて補正し、前記トルク増幅比算出手段は、算出したトルク増幅比を前記流体温度に基づいて補正することを特徴とする自動変速機の変速制御装置。 【請求項7】 請求項5または請求項6に記載の自動変速機の変速制御装置において、インテークマニホールド内の圧力を検出する圧力検出手段と、インテークマニホールド内の吸入空気温度を検出する吸入空気温度検出手段とを備え、前記タービントルク推定手段は、前記インテークマニホールド圧力と前記吸入空気温度とに基づいてエンジンの内部で発生するエンジン内部発生トルクを算出するエンジン内部発生トルク算出手段と、前記トルク増幅比と前記エンジン内部発生トルクとに基づいて、エンジンの運転状態が非定常状態の場合のタービントルクを算出する非定常時タービントルク算出手段とを備えたことを特徴とする自動変速機の変速制御装置。 【請求項8】 請求項5または請求項6に記載の自動変速機の変速制御装置において、エンジンへの燃料供給量を検出する燃料供給量検出手段を備え、前記タービントルク推定手段は、前記燃料供給量に基づいてエンジンの内部で発生するエンジン内部発生トルクを算出するエンジン内部発生トルク算出手段と、前記トルク増幅比と前記エンジン内部発生トルクとに基づいて、エンジンの運転状態が非定常状態の場合のタービントルクを算出する非定常時タービントルク算出手段とを備えたことを特徴とする自動変速機の変速制御装置。 【請求項9】 請求項5または請求項6に記載の自動変速機の変速制御装置において、インテークマニホールド内の圧力を検出する圧力検出手段と、インテークマニホールド内の吸入空気温度を検出する吸入空気温度検出手段と、エンジンへの燃料供給量を検出する燃料供給量検出手段とを備え、前記タービントルク推定手段は、エンジンの空燃比に基づいて燃料過剰状態か空気過剰状態かを判定する空燃比判定手段と、前記空燃比判定手段が燃料過剰状態と判定した場合は前記インテークマニホールド圧力と前記吸入空気温度とに基づいてエンジンの内部で発生するエンジン内部発生トルクを算出し、前記空燃比判定手段が空気過剰状態と判定した場合は前記燃料供給量に基づいてエンジン内部発生トルクを算出するエンジン内部発生トルク算出手段と、前記トルク増幅比と前記エンジン内部発生トルクとに基づいて、エンジンの運転状態が非定常状態の場合のタービントルクを算出する非定常時タービントルク算出手段とを備えたことを特徴とする自動変速機の変速制御装置。 【請求項10】 請求項9に記載の自動変速機の変速制御装置において、エンジンの空燃比を検出する空燃比検出手段を備えたことを特徴とする自動変速機の変速制御装置。 【請求項11】 請求項7〜10のいずれか1項に記載の自動変速機の変速制御装置において、前記タービントルク推定手段は、前記インテークマニホールド圧力または前記燃料供給量を検出してから前記入力回転数によって決定されるエンジンがトルクを発生するまでの時間分だけ、前記内部発生トルクを遅延させる遅延手段を備えたことを特徴とする自動変速機の変速制御装置。 【請求項12】 請求項1〜11のいずれか1項に記載の自動変速機の変速制御装置において、前記タービントルク推定手段は、エンジンの運転状態が定常状態の場合のタービントルクに基づいて、エンジンの運転状態が非定常状態の場合のタービントルクを補正することを特徴とする自動変速機の変速制御装置。 【請求項13】 請求項6〜11のいずれか1項に記載の自動変速機の変速制御装置において、前記タービントルク推定手段は、エンジンの回転部分の慣性モーメントおよびエンジンの回転角加速度に基づいてエンジン自体の慣性トルクを算出する慣性トルク算出手段と、エンジンの補機を駆動するために要するトルクを算出する補機トルク算出手段と、エンジンの内部損失トルクを算出する内部損失トルク算出手段と、前記エンジン内部発生トルクから前記慣性トルクと補機を駆動するために要するトルクと内部損失トルクとを差し引くことにより、前記エンジン内部発生トルクを補正するトルク補正手段とを備えたことを特徴とする自動変速機の変速制御装置。 【請求項14】 請求項13に記載の自動変速機の変速制御装置において、前記内部損失トルク算出手段は、エンジンの運転状態が定常状態の場合のタービントルクに基づいてエンジンの内部損失トルクを算出することを特徴とする自動変速機の変速制御装置。 【請求項15】 請求項1〜14のいずれか1項に記載の自動変速機の変速制御装置において、前記タービントルク推定手段は、エンジンの点火時期に基づいてエンジンの運転状態が非定常状態の場合のタービントルクを補正することを特徴とする自動変速機の変速制御装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は自動変速機の変速制御装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来より、自動変速機内でトルクコンバータから補助変速機に入力されるタービントルクに基づいて、補助変速機内の変速歯車機構の変速段を切り替えるためのライン油圧を制御する技術が知られている。そして、タービントルクを知るにあたり、タービントルクを直接検出するセンサを設けることなく、エンジントルクまたはトルクコンバータの特性(トルク容量係数,トルク増幅比)からタービントルクを推定する方法が種々提案されている。 【0003】例えば、実公平5−22682号公報には、エンジン回転数およびタービン回転数からトルクコンバータのトルク容量係数およびトルク増幅比を算出し、そのトルク容量係数およびトルク増幅比に基づいてタービントルクを推定し、そのタービントルクに基づいてライン油圧を制御する方法が開示されている。 【0004】また、特開昭62−124343号公報には、エンジン回転数およびスロットル開度とエンジントルクとの関係を予め測定してデータマップ化しておき、そのデータマップを参照することによりエンジントルクを推定し、そのエンジントルクにトルクコンバータのトルク増幅比を乗算してタービントルクを算出する方法が開示されている。 【0005】また、特開平4−300454号公報には、エンジンの吸入空気質量を測定し、その吸入空気質量に基づいてライン油圧を制御する方法が開示されている。また、特開平8−142710号公報には、すべり比(=タービン回転数/エンジン回転数)の値の大小に応じて、吸入空気質量流量,吸気管内圧力,スロットル弁開度,燃料噴射弁パルス幅に基づいて推定したエンジントルクと、トルクコンバータのトルク容量係数から推定したエンジントルクとのいずれか一方を選択し、その選択したエンジントルクに基づいてタービントルクを推定する方法が開示されている。 【0006】また、特許公報第2518270号には、エンジン自体の慣性トルクを考慮してエンジントルクを推定し、そのエンジントルクに基づいてタービントルクを推定する方法が開示されている。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】上記各公報に記載の技術は、エンジンの運転状態が定常状態のときのタービントルクを推定するものであり、エンジンの運転状態が非定常状態(すなわち、過渡状態)のときのタービントルクの推定については、何らの記載もなされていない。そして、エンジンの運転状態が定常状態であることを前提に推定したタービントルクは、エンジンの運転状態が過渡状態のときの実際のタービントルクとは大きく異なる。そのため、上記各公報に記載の技術によれば、エンジンの運転状態が過渡状態のときには、タービントルクを正確に推定することができず、補助変速機内の変速歯車機構の変速段を切り替えるためのライン油圧の制御を正確に行うことができないという問題があった。 【0008】例えば、実公平5−22682号公報の技術では、すべり比に基づいてトルクコンバータのトルク容量係数およびトルク増幅比を算出しているため、すべり比が変化しない限り、推定したタービントルクは変化しないことになる。従って、スロットルの急開時には、スロットル開度に対してエンジン回転数の応答が遅れることからすべり比の応答も遅れ、すべり比の変化を検出することができないため、タービントルクを正確に推定することができない。 【0009】また、特開昭62−124343号公報の技術では、エンジン回転数およびスロットル開度によるデータマップを参照してエンジントルクを算出しているため、スロットル開度に対して時間遅れを伴って発生するエンジントルクを算出することは極めて困難である。そのため、スロットル開度の変化に適当な時間遅れを持たせて前記データマップを参照することになり、スロットル開度に対するエンジントルクの発生時間遅れによって定義される時定数を、エンジンの様々な運転状態に対応して予め測定しておく必要があり、前記データマップの作成に多大な工数を要する。 【0010】特に、ターボチャージャを備えたエンジンにおいては、スロットル開度に対して、エンジン回転数の応答が相当に遅れる上に、エンジントルクが相当な時間遅れを伴って発生する。そのため、実公平5−22682号公報や特開昭62−124343号公報の技術を、ターボチャージャを備えたエンジンに適用することは難しい。 【0011】それに対して、特開平4−300454号公報や特開平8−142710号公報の技術では、エンジンの状態量(吸入空気量,吸気管圧力,燃量噴射量など)を用いてエンジントルクを推定しているため、実公平5−22682号公報や特開昭62−124343号公報の技術に比べれば、エンジンの運転状態が過渡状態のときでもタービントルクの正確な推定が可能になる。 【0012】しかし、前記エンジンの状態量は、エンジンの内部で発生するトルクには対応しているものの、エンジンから外部へ出力されるトルクには対応していない。すなわち、エンジンの内部で発生するトルクから、エンジン自体の慣性トルク,エンジンの内部損失トルク,エンジン補機(エアコンコンプレッサ,オルタネータ,ウォーターポンプ,パワステポンプなど)の駆動に要するトルクを差し引いたトルクがエンジンの外部へ出力される。尚、エンジンの内部損失トルクには、エンジンの回転部分に発生する摺動損失,ポンピングロス,オイルポンプの駆動損失などが含まれる。 【0013】従って、特開平4−300454号公報や特開平8−142710号公報の技術では、エンジンの内部で発生するエンジントルクについては前記エンジンの状態量を用いてかなり正確に推定することができるものの、エンジンの外部へ出力されるエンジントルクを正確に推定することはできず、その不正確なエンジントルクに基づいてタービントルクを推定するため、そのタービントルクは必然的に不正確なものになる。 【0014】また、特許公報第2518270号の技術では、エンジン自体の慣性トルクについては考慮しているものの、エンジンの内部損失トルクやエンジン補機の駆動に要するトルクについては考慮していないため、やはり、エンジンの外部へ出力されるエンジントルクを正確に推定することはできず、特開平4−300454号公報や特開平8−142710号公報の技術と同様の問題を抱える。 【0015】ところで、エンジンの内部損失トルクには、エンジンの個体差や経時変化によるバラツキがある。尚、特開平8−142710号公報には、推定したエンジントルクをエンジンの個体差や経時変化の影響を回避するように補正する旨の記載がなされているが、その具体的な方法については何らの記載もなされていない。 【0016】加えて、特開平8−142710号公報の技術では、すべり比に応じてエンジントルクを選択しているため、スロットルの急開時にすべり比の応答が遅れたときには、エンジントルクを的確に選択することができず、タービントルクを正確に推定することができない。 【0017】ところで、近年、燃費向上を目的として、理論空燃比以上の空燃比による空気過剰状態でエンジンを運転するリーンバーン運転が広く用いられている。また、冷間始動時には、燃料の霧化が十分に行われずエンジンが失火する可能性が高いため、理論空燃比以下の空燃比による燃料過剰状態でエンジンが運転される。 【0018】上記各公報に記載の技術は、理論空燃比でエンジンを運転したときのタービントルクを推定するものであり、理論空燃比と異なる空燃比でエンジンを運転したときのタービントルクの推定については、何らの記載もなされていない。そして、エンジンの空燃比が異なればタービントルクも当然異なるものになる。そのため、上記各公報に記載の技術によれば、理論空燃比と異なる空燃比でエンジンを運転したときには、タービントルクを正確に推定することができず、補助変速機内の変速歯車機構の変速段を切り替えるためのライン油圧の制御を正確に行うことができないという問題があった。 【0019】本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、流体伝動手段から機械的変速手段へ出力されるタービントルクを、エンジンの運転状態に応じて高精度かつ高応答に推定し、そのタービントルクに基づいて機械的変速手段の変速段を制御することにより、変速ショックを防止することが可能な自動変速機の変速制御装置を提供することにある。 【0020】 【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するため請求項1に記載の発明は、流体伝動手段、機械的変速手段、タービントルク推定手段、変速制御手段を備える。流体伝動手段は、エンジンからの動力を流体を介して伝動する。機械的変速手段は、複数の摩擦係合要素の組み合わせにより、前記流体伝動手段から伝動された動力の変速段を切り替える。タービントルク推定手段は、前記流体伝動手段から前記機械的変速手段へ出力されるタービントルクを推定する。変速制御手段は、前記タービントルク推定手段の推定したタービントルクに基づいて前記機械的変速手段の摩擦係合要素の組み合わせを制御する。そして、タービントルク推定手段は、エンジンの運転状態が定常状態の場合は前記流体伝動手段の特性に基づいてタービントルクを推定し、エンジンの運転状態が非定常状態の場合は前記流体伝動手段の特性とエンジンの状態とに基づいてタービントルクを推定する。 【0021】従って、本発明によれば、エンジンの運転状態が定常状態のときだけでなく過渡状態のときにもタービントルクを正確に推定することが可能になり、機械的変速手段の変速段を切り替える制御を正確に行うことができる。その結果、タービントルクの誤差に起因して、機械的変速手段が車両の走行状態に応じた最適な変速を行うことができずに発生する変速ショックを防止することができる。 【0022】次に、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の自動変速機の変速制御装置において、インテークマニホールド内の圧力を検出する圧力検出手段を備える。そして、タービントルク推定手段は、前記インテークマニホールド圧力に基づいてエンジンの運転状態が定常状態か非定常状態かを判定するエンジン運転状態判定手段を備える。 【0023】従って、本発明によれば、エンジンの運転状態が定常状態か非定常状態かを判定するに際して、高応答なインテークマニホールド圧力の時間変位に基づいて、当該時間変位が所定値より小さい場合は定常状態であり、所定値より大きい場合は非定常状態であると判定することが可能になる。ここで、インテークマニホールド圧力は吸入空気量に対応するため、インテークマニホールド圧力の時間変位は吸入空気量の変化を忠実に表す。そのため、エンジンの運転状態を正確に判定することができる。尚、当該所定値はエンジンの特性を測定することにより予め設定しておく。 【0024】次に、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の自動変速機の変速制御装置において、スロットルバルブの開度を検出するスロットル開度検出手段を備える。そして、タービントルク推定手段は、前記スロットルバルブの開度に基づいてエンジンの運転状態が定常状態か非定常状態かを判定するエンジン運転状態判定手段を備える。 【0025】従って、本発明によれば、エンジンの運転状態が定常状態か非定常状態かを判定するに際して、スロットルバルブ開度の時間変位に基づいて、当該時間変位が所定値より小さい場合は定常状態であり、所定値より大きい場合は非定常状態であると判定することが可能になる。尚、当該所定値はエンジンの特性を測定することにより予め設定しておく。ここで、インテークマニホールド圧力は、スロットルバルブが開かれて吸入空気量が増大することによって生じる。つまり、インテークマニホールド圧力に変化が現れるのに先だってスロットルバルブの開度が変化する。そのため、スロットルバルブの開度の時間変位に基づいてエンジンの運転状態の判定を行えば、定常状態から過渡状態への移行を早い時期に判定することが可能になり、運転状態の判定遅れによって生じるタービントルクの誤差に起因して発生する変速ショックをより確実に防止することができる。 【0026】次に、請求項4に記載の発明は、流体伝動手段、機械的変速手段、タービントルク推定手段、変速制御手段を備える。流体伝動手段は、エンジンからの動力を流体を介して伝動する。機械的変速手段は、複数の摩擦係合要素の組み合わせにより、前記流体伝動手段から伝動された動力の変速段を切り替える。タービントルク推定手段は、前記流体伝動手段から前記機械的変速手段へ出力されるタービントルクを推定する。変速制御手段は、前記タービントルク推定手段の推定したタービントルクに基づいて前記機械的変速手段の摩擦係合要素の組み合わせを制御する。そして、タービントルク推定手段は、前記流体伝動手段の特性に基づいてエンジンの運転状態が定常状態の場合のタービントルクを推定し、そのタービントルクの低周波領域から成る第1の推定トルクを求め、前記流体伝動手段の特性とエンジンの状態とに基づいてエンジンの運転状態が非定常状態の場合のタービントルクを推定し、そのタービントルクの高周波領域から成る第2の推定トルクを求め、第1および第2の推定トルクに基づいてタービントルクを推定する。 【0027】従って、本発明によれば、エンジンの運転状態が定常状態の場合は流体伝動手段の特性に基づいて推定されたタービントルクにローパスフィルタをかけることにより、その低周波領域だけを取り出して第1の推定トルクを求める。また、エンジンの運転状態が非定常状態の場合は流体伝動手段の特性とエンジンの状態とに基づいて推定されたタービントルクにハイパスフィルタをかけることにより、その高周波領域だけを取り出して第2の推定トルクを求める。そして、第1および第2の推定トルクを加算することにより、タービントルクを算出する。すなわち、エンジンの運転状態が定常状態の場合のタービントルクにおける高周波領域の信号はノイズなどの影響により不明確であるため、ローパスフィルタをかけることにより、その不明確な領域を取り除く。また、エンジンの運転状態が非定常状態の場合のタービントルクにおける低周波領域の信号はノイズなどの影響により不明確であるため、ハイパスフィルタをかけることにより、その不明確な領域を取り除く。そして、不明確な領域を取り除いた両信号を加算することにより、全帯域に渡って明確なタービントルクを推定する。そのため、本発明においては、エンジンの運転状態が定常状態か過渡状態かを判定する必要がなく、高精度かつ高応答にタービントルクを推定することができる。尚、ローパスフィルタおよびハイパスフィルタの遮断周波数および遮断特性については、エンジンおよび流体伝動手段の特性を測定して予め設定しておく。 【0028】次に、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動変速機の変速制御装置において、エンジンから前記流体伝動手段へ入力される入力回転数を検出する入力回転数検出手段と、前記流体伝動手段から前記機械的変速手段へ出力される出力回転数を検出する出力回転数検出手段とを備える。そして、タービントルク推定手段は、すべり比算出手段、トルク容量係数算出手段、トルク増幅比算出手段、定常時タービントルク算出手段を備える。すべり比算出手段は、前記入力回転数と前記出力回転数とに基づいて前記流体伝動手段のすべり比を算出する。トルク容量係数算出手段は、前記すべり比に基づいて前記流体伝動手段のトルク容量係数を算出する。トルク増幅比算出手段は、前記すべり比に基づいて前記流体伝動手段のトルク増幅比を算出する。定常時タービントルク算出手段は、前記入力回転数と前記トルク容量係数と前記トルク増幅比とに基づいて、エンジンの運転状態が定常状態の場合のタービントルクを算出する。 【0029】従って、本発明によれば、トルク容量係数およびトルク増幅比という流体伝動手段の特性に基づいて、エンジンの運転状態が定常状態の場合のタービントルクを正確に推定することができる。次に、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の自動変速機の変速制御装置において、前記流体伝動手段の流体温度を検出する流体温度検出手段を備える。そして、トルク容量係数算出手段は、算出したトルク容量係数を前記流体温度に基づいて補正する。また、トルク増幅比算出手段は、算出したトルク増幅比を前記流体温度に基づいて補正する。 【0030】従って、本発明によれば、流体伝動手段の流体温度に基づいてトルク容量係数およびトルク増幅比が補正される。すなわち、トルク容量係数算出手段およびトルク増幅比算出手段は、流体伝動手段の特性を測定して予め設定されたデータマップを参照し、すべり比を引数とするトルク容量係数およびトルク増幅比を算出する。流体伝動手段においては、流体温度が高くなるほどトルク容量係数およびトルク増幅比が小さくなる。それに対して、前記データマップは、流体伝動手段が作動する際の適正な流体温度を基準として設定されている。そのため、実際の流体温度に基づいてトルク容量係数およびトルク増幅比を補正することにより、前記データマップの作成時に基準とされた流体温度と実際の流体温度とが異なる場合でも、トルク容量係数およびトルク増幅比を正確に求めることが可能になる。その結果、タービントルクを高精度に推定することができる。 【0031】次に、請求項7に記載の発明は、請求項5または請求項6に記載の自動変速機の変速制御装置において、インテークマニホールド内の圧力を検出する圧力検出手段と、インテークマニホールド内の吸入空気温度を検出する吸入空気温度検出手段とを備える。そして、タービントルク推定手段は、エンジン内部発生トルク算出手段、非定常時タービントルク算出手段を備える。エンジン内部発生トルク算出手段は、前記インテークマニホールド圧力と前記吸入空気温度とに基づいてエンジンの内部で発生するエンジン内部発生トルクを算出する。非定常時タービントルク算出手段は、前記トルク増幅比と前記エンジン内部発生トルクとに基づいて、エンジンの運転状態が非定常状態の場合のタービントルクを算出する。 【0032】従って、本発明によれば、高応答なインテークマニホールド圧力に基づいて正確にエンジン内部発生トルクを算出することができる。例えば、吸入空気量をエアフローメータを用いて検出し、その吸入空気量に基づいてエンジン内部発生トルクを算出した場合、エアフローメータの応答性は悪いため、急激な吸入空気量の変化を検出することはできない。それに対して、インテークマニホールド圧力は、高応答な圧力センサを用いて簡単かつ容易に検出することができる。そのため、本発明によれば、エンジン内部発生トルクを正確に算出することにより、タービントルクの算出精度を高くすることができる。 【0033】次に、請求項8に記載の発明は、請求項5または請求項6に記載の自動変速機の変速制御装置において、エンジンへの燃料供給量を検出する燃料供給量検出手段を備える。そして、タービントルク推定手段は、エンジン内部発生トルク算出手段と非定常時タービントルク算出手段とを備える。エンジン内部発生トルク算出手段は、前記燃料供給量に基づいてエンジンの内部で発生するエンジン内部発生トルクを算出する。非定常時タービントルク算出手段は、前記トルク増幅比と前記エンジン内部発生トルクとに基づいて、エンジンの運転状態が非定常状態の場合のタービントルクを算出する。 【0034】従って、本発明によれば、インテークマニホールド圧力と同様に高応答な燃料供給量に基づいて、エンジンの運転状態が非定常状態の場合のタービントルクを算出するため、その算出精度を高くすることができる。次に、請求項9に記載の発明は、請求項5または請求項6に記載の自動変速機の変速制御装置において、インテークマニホールド内の圧力を検出する圧力検出手段と、インテークマニホールド内の吸入空気温度を検出する吸入空気温度検出手段と、エンジンへの燃料供給量を検出する燃料供給量検出手段とを備える。そして、タービントルク推定手段は、空燃比判定手段、エンジン内部発生トルク算出手段、非定常時タービントルク算出手段を備える。空燃比判定手段は、エンジンの空燃比に基づいて燃料過剰状態か空気過剰状態かを判定する。エンジン内部発生トルク算出手段は、前記空燃比判定手段が燃料過剰状態と判定した場合は前記インテークマニホールド圧力と前記吸入空気温度とに基づいてエンジンの内部で発生するエンジン内部発生トルクを算出し、前記空燃比判定手段が空気過剰状態と判定した場合は前記燃料供給量に基づいてエンジン内部発生トルクを算出する。非定常時タービントルク算出手段は、前記トルク増幅比と前記エンジン内部発生トルクとに基づいて、エンジンの運転状態が非定常状態の場合のタービントルクを算出する。 【0035】従って、本発明によれば、空燃比判定手段が燃料過剰状態と判定した場合は請求項7に記載の発明と同様に、また、空燃比判定手段が空気過剰状態と判定した場合は請求項8に記載の発明と同様にして、エンジンの運転状態が非定常状態の場合のタービントルクを算出する。つまり、冷間始動時などで燃料の霧化が十分に行われずエンジンが失火する可能性が高いときには、理論空燃比以下の空燃比による燃料過剰状態でエンジンを運転するが、その場合は、請求項7に記載の発明と同様に、インテークマニホールド圧力と吸入空気温度とに基づいてタービントルクを算出する。また、燃費向上を目的として理論空燃比以上の空燃比による空気過剰状態でエンジンを運転するリーンバーン運転時には、請求項8に記載の発明と同様に、燃料供給量に基づいてタービントルクを算出する。すなわち、燃料過剰状態でエンジンを運転している場合は過不足のない吸入空気量に基づいて、また、空気過剰状態でエンジンを運転している場合は過不足のない燃料供給量に基づいて、それぞれタービントルクを算出する。そのため、理論空燃比と異なる空燃比でエンジンを運転しているときでも、エンジンの運転状態が非定常状態の場合のタービントルクを高精度に推定することができる。そのため、理論空燃比と異なる空燃比でエンジンを運転しているときに生じるタービントルクの誤差に起因して発生する変速ショックを確実に防止することができる。 【0036】次に、請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の自動変速機の変速制御装置において、エンジンの空燃比を検出する空燃比検出手段を備える。従って、本発明によれば、エンジンの空燃比を実際に検出するため、燃料過剰状態か空気過剰状態かの判定を正確に行うことができる。 【0037】次に、請求項11に記載の発明は、請求項7〜10のいずれか1項に記載の自動変速機の変速制御装置において、タービントルク推定手段は、前記インテークマニホールド圧力または前記燃料供給量を検出してから前記入力回転数によって決定されるエンジンがトルクを発生するまでの時間分だけ、前記内部発生トルクを遅延させる遅延手段を備える。 【0038】すなわち、インテークマニホールドを介してエンジンに吸入された燃料と空気との混合気は、ピストンによる圧縮行程から点火プラグによる点火工程によって着火されることにより爆発する爆発工程を経て、はじめてトルクを発生させる。つまり、ある時刻においてインテークマニホールドに存在している混合気によって発生するトルクは、吸入→圧縮→点火→爆発の各工程に要する時間分だけ遅れて発生することになる。そして、吸入→圧縮→点火→爆発の各工程に要する時間は、入力回転数によって決定される。従って、インテークマニホールド圧力または燃料供給量を検出してから入力回転数によって決定されるエンジンがトルクを発生するまでの時間分だけ、エンジン内部発生トルクを遅延させることにより、より高精度にタービントルクを推定することができる。 【0039】次に、請求項12に記載の発明は、請求項1〜11のいずれか1項に記載の自動変速機の変速制御装置において、タービントルク推定手段は、エンジンの運転状態が定常状態の場合のタービントルクに基づいて、エンジンの運転状態が非定常状態の場合のタービントルクを補正する。 【0040】従って、本発明によれば、エンジンの運転状態が非定常状態の場合のタービントルクを補正することにより、高精度なタービントルクを得ることができる。次に、請求項13に記載の発明は、請求項6〜11のいずれか1項に記載の自動変速機の変速制御装置において、タービントルク推定手段は、慣性トルク算出手段、補機トルク算出手段、内部損失トルク算出手段、トルク補正手段を備える。慣性トルク算出手段は、エンジンの回転部分の慣性モーメントおよびエンジンの回転角加速度に基づいてエンジン自体の慣性トルクを算出する。補機トルク算出手段は、エンジンの補機を駆動するために要するトルクを算出する。内部損失トルク算出手段は、エンジンの内部損失トルクを算出する。トルク補正手段は、前記エンジン内部発生トルクから前記慣性トルクと補機を駆動するために要するトルクと内部損失トルクとを差し引くことにより、前記エンジン内部発生トルクを補正する。 【0041】従って、本発明によれば、エンジンの状態からタービントルクを推定するに際して、エンジン自体の慣性トルク,エンジンの補機を駆動するために要するトルク,エンジンの内部損失トルクを勘案することが可能になるため、運転状態の変化に対応してより高精度にタービントルクを推定することができる。 【0042】次に、請求項14に記載の発明は、請求項13に記載の自動変速機の変速制御装置において、内部損失トルク算出手段は、エンジンの運転状態が定常状態の場合のタービントルクに基づいてエンジンの内部損失トルクを算出する。すなわち、エンジンの内部損失トルクには、エンジンの回転部分に発生する摺動損失,ポンピングロス,オイルポンプの駆動損失などを含むため、エンジンの個体間である程度のバラツキがある上に、経時変化が大きいという特徴がある。そのため、設計時点で作成したデータマップを参照してエンジンの内部損失トルクを求めた場合、その内部損失トルクは、エンジンの個体間のバラツキや経時変化により、実際の内部損失トルクとは異なったものになるおそれがある。従って、本発明によれば、エンジンの運転状態が定常状態のときのタービントルクに基づいて内部損失トルクを算出するため、エンジンの内部損失トルクのバラツキや経時変化に対応して、内部損失トルクのトルク補正を行うことが可能であり、内部損失トルクを正確に求めることができることから、エンジンの運転状態の変化やエンジンの個体間のバラツキおよび経時変化に影響を受けることなく、高精度なタービントルクを得ることができる。 【0043】次に、請求項15に記載の発明は、請求項1〜14のいずれか1項に記載の自動変速機の変速制御装置において、タービントルク推定手段は、エンジンの点火時期に基づいてエンジンの運転状態が非定常状態の場合のタービントルクを補正する。 【0044】すなわち、エンジンに設けられた点火プラグによる点火の時期によって、エンジンのトルクは変化する。従って、本発明によれば、点火プラグの基準点火時期からの進角量および遅角量に基づいた補正を施すことにより、より高精度なタービントルクを得ることができる。尚、以下に述べる発明の実施の形態において、特許請求の範囲または課題を解決するための手段に記載の「流体伝動手段」はトルクコンバータ41に相当し、同じく「機械的変速手段」は補助変速機42に相当し、同じく「タービントルク推定手段」は自動変速機用電子制御装置52に相当し、同じく「変速制御手段」は油圧制御装置43に相当し、同じく「圧力検出手段」は圧力センサ14および自動変速機用電子制御装置52におけるS104の処理に相当し、同じく「エンジン運転状態判定手段」は自動変速機用電子制御装置52におけるS105,S152の処理に相当し、同じく「スロットル開度検出手段」はスロットル開度センサ13および自動変速機用電子制御装置52におけるS151の処理に相当し、同じく「エンジンの運転状態が定常状態の場合のタービントルク」はタービントルクTtaに相当し、同じく「エンジンの運転状態が非定常状態の場合のタービントルク」はタービントルクTtbに相当し、同じく「入力回転数検出手段」はエンジン回転数センサ44および自動変速機用電子制御装置52におけるS101の処理に相当し、同じく「入力回転数」はエンジン回転数Neに相当し、同じく「出力回転数検出手段」はタービン回転数センサ45および自動変速機用電子制御装置52におけるS101の処理に相当し、同じく「出力回転数」はタービン回転数Ntに相当し、同じく「すべり比算出手段」は自動変速機用電子制御装置52におけるS102の処理に相当し、同じく「トルク容量係数算出手段」「トルク増幅比算出手段」は自動変速機用電子制御装置52におけるS103の処理に相当し、同じく「定常時タービントルク算出手段」は自動変速機用電子制御装置52におけるS106の処理に相当し、同じく「流体温度検出手段」は作動油温センサ47および自動変速機用電子制御装置52におけるS161の処理に相当し、同じく「流体温度」は作動油温THtに相当し、同じく「吸入空気温度検出手段」は吸入空気温度センサ15および自動変速機用電子制御装置52におけるS112の処理に相当し、同じく「エンジン内部発生トルク算出手段」は自動変速機用電子制御装置52におけるS114,S136の処理に相当し、同じく「非定常時タービントルク算出手段」は自動変速機用電子制御装置52におけるS120の処理に相当し、同じく「燃料供給量検出手段」はエンジン用電子制御装置51および自動変速機用電子制御装置52におけるS131の処理に相当し、同じく「燃料供給量」は燃料噴射量qに相当し、同じく「空燃比判定手段」は自動変速機用電子制御装置52におけるS141の処理に相当し、同じく「空燃比検出手段」は空燃比センサ20および自動変速機用電子制御装置52におけるS141の処理に相当し、同じく「遅延手段」は自動変速機用電子制御装置52におけるS119の処理に相当し、同じく「慣性トルク算出手段」は自動変速機用電子制御装置52におけるS115の処理に相当し、同じく「補機トルク算出手段」は自動変速機用電子制御装置52におけるS118の処理に相当し、同じく「内部損失トルク算出手段」は自動変速機用電子制御装置52におけるS117,S181の処理に相当し、同じく「トルク補正手段」は自動変速機用電子制御装置52におけるS115,S117,S118,S182の処理に相当する。 【0045】 【発明の実施の形態】 (第1実施形態)以下、本発明を具体化した第1実施形態を図面と共に説明する。図1は、本実施形態におけるエンジンおよび自動変速機の概略構成図である。 【0046】エアインテーク2から吸い込まれた空気は、自然吸気用空気通路3aおよびターボチャージャ用空気通路3bからサージタンク4を介して、ガソリンエンジン1の各シリンダ(図示略)毎に設けられた各インテークマニホールド5を通り、エンジン1の吸気側バルブ(図示略)へ導入される。また、エンジン1の排気側バルブ(図示略)から排出された排気ガスは、エキゾーストマニホールド6からエキゾーストパイプ7を通ってマフラー8から放出される。 【0047】エアインテーク2には、空気を濾過するためのエアフィルタ9が設けられている。エアフィルタ9と各空気通路3a,3bとの間には、エンジン1の吸入空気量を検出するエアフローメータ10が設けられている。各空気通路3a,3bとサージタンク4との間には、サージタンク4へ送られる空気を冷却するインタークーラ11が設けられている。インタークーラ11とサージタンク4との間には、吸入空気量を調整するスロットルバルブ12と、そのスロットルバルブ12の開度を検出するスロットル開度センサ13とが設けられている。サージタンク4には、サージタンク4内の圧力(すなわち、インテークマニホールド5内の圧力)を検出する圧力センサ14と、サージタンク4内の温度(すなわち、エンジン1の吸入空気温度)を検出する吸入空気温度センサ15とが設けられている。各インテークマニホールド6にはそれぞれ、インテークマニホールド6内に燃料を噴射するインジェクタ16が設けられている。 【0048】ターボチャージャ用空気通路3bには、吸入空気を圧縮するためのコンプレッサ17が設けられている。また、エキゾーストパイプ7には、コンプレッサ17を駆動するためのタービン18が設けられている。このタービン18はエキゾーストパイプ7内を流れる排気ガスによって回転され、そのタービン18の回転力によってコンプレッサ17が駆動されることにより、吸入空気が圧縮されてエンジン1の過給がなされる。コンプレッサ17によって圧縮されることで温度が上昇した空気は、インタークーラ11によって冷却されてエンジン1へ送られる。また、インタークーラ11とスロットルバルブ12との間およびエキゾーストマニホールド6とタービン18との間には、ウエストゲートバルブ19が設けられている。このウエストゲートバルブ19は、エンジン1の吸入空気圧力が一定値以上になると、タービン18へ流れる排気ガスをエキゾーストパイプ7から逃がすことにより、コンプレッサ17による吸入空気の過給圧力を制限する。また、エキゾーストパイプ7には、エンジン1の空燃比を検出する空燃比センサ20が設けられている。 【0049】エンジン1の動力は、自動変速機31からディファレンシャルギア32を介して駆動輪33へ伝動される。自動変速機31は、トルクコンバータ41,補助変速機42,油圧制御装置43から構成されている。 【0050】トルクコンバータ41は、エンジン1から出力されたトルクを増幅し、その増幅した動力を作動油を介して補助変速機42の入力軸42aへ伝動することにより、入力軸42aを回転させる。補助変速機42内には、遊星歯車装置から成る変速歯車機構(プラネタリギア装置)が備えられている。その変速歯車機構の変速段は、油圧制御装置43の生成したライン油圧に従って切り替えられる。尚、油圧制御装置43におけるライン油圧の生成動作は、油圧制御装置43内に設けられたバルブの開度調整によって行われるが、その動作は公知であるため説明を省略する。入力軸42aの回転は変速歯車機構の変速段に応じて変速され、補助変速機42の出力軸42bからディファレンシャルギア32へ伝動される。 【0051】エンジン1の出力軸1aには、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ44が設けられている。補助変速機42の入力軸42aには、入力軸42aを介してトルクコンバータ41から補助変速機42に伝動されるタービン回転数を検出するタービン回転数センサ45が設けられている。補助変速機42の出力軸42bには、出力軸42bを介して補助変速機42からディファレンシャルギア32へ伝動される自動変速機31の出力回転数を検出する変速機出力回転数センサ46が設けられている。尚、自動変速機31の出力回転数は駆動輪33の回転数でもあり、駆動輪33の回転数は車速に対応しているため、変速機出力回転数センサ46は間接的に車速を検出しているといえる。トルクコンバータ41には、トルクコンバータ41内の作動油の油温を検出する作動油温センサ47が設けられている。エンジン1のウォータジャケット(図示略)には、エンジン1の冷却水温を検出する冷却水温センサ48が設けられている。 【0052】図2は、本実施形態における自動車のパワートレイン制御系の概略構成図である。パワートレイン制御系は、エンジン用電子制御装置(ECU)51および自動変速機用電子制御装置52から構成されている。各電子制御装置51,52はそれぞれ、CPU,ROM,RAM,I/O回路を有する周知のマイクロコンピュータであり、イグニッションスイッチ(図示略)がオンされることによりバッテリ(図示略)から電源が供給される。 【0053】エンジン用電子制御装置51には、エアフローメータ10,スロットル開度センサ13,圧力センサ14,吸入空気温度センサ15,空燃比センサ20,エンジン回転数センサ44,変速機出力回転数センサ46,冷却水温センサ48からの検出信号が入力される。そして、エンジン用電子制御装置51は、各検出信号に基づいてインジェクタ16から燃料を噴射させる期間(燃料噴射パルス幅)を算出し、その燃料噴射パルス幅に基づいてインジェクタ16を制御することにより、エンジン1の運転状態に応じた最適な量の燃料をインジェクタ16から噴射させる燃料噴射制御を行う。 【0054】自動変速機用電子制御装置52には、スロットル開度センサ13,圧力センサ14,吸入空気温度センサ15,空燃比センサ20,エンジン回転数センサ44,タービン回転数センサ45,変速機出力回転数センサ46,作動油温センサ47,冷却水温センサ48からの検出信号と、エンジン用電子制御装置51によって制御されるインジェクタ16の燃料噴射量の信号とが入力される。そして、自動変速機用電子制御装置52は、各信号に基づいてトルクコンバータ41から補助変速機42へ伝動されるタービントルクを推定し、そのタービントルクに基づいて油圧制御装置43の生成するライン油圧を制御することにより、補助変速機42の変速段(すなわち、自動変速機31の変速段)を車両の走行状態に応じた最適な段数に切り替えさせる変速段制御を行う。 【0055】次に、自動変速機用電子制御装置52が実行する処理の詳細を、図3および図4に示すフローチャートと、図5に示す特性図とを用いて説明する。図3に示すように、自動変速機用電子制御装置52が起動すると、まず、ステップ(以下、Sという)101において、エンジン回転数センサ44の検出信号に基づいてエンジン回転数Neを検出すると共に、タービン回転数センサ45の検出信号に基づいてタービン回転数Ntを検出する。 【0056】次に、S102において、タービン回転数Ntをエンジン回転数Neで除算することにより、すべり比e(=Nt/Ne)を算出する。次に、S103において、自動変速機31の特性を測定して予め設定されたデータマップを参照し、すべり比eを引数とするトルクコンバータ41のトルク容量係数C(e)およびトルク増幅比tr(e)を算出する。 【0057】次に、S104において、圧力センサ14の検出信号に基づいてインテークマニホールド5内の圧力(インテークマニホールド圧力)Pmを検出する。次に、S105において、インテークマニホールド圧力Pmの時間変位に基づいて、エンジン1の運転状態が定常状態であるか否かを判定する。すなわち、インテークマニホールド圧力Pmは吸入空気量に対応するため、インテークマニホールド圧力Pmの時間変位は吸入空気量の変化を忠実に表す。従って、インテークマニホールド圧力Pmの時間変位が所定値よりも小さい場合は、エンジン1の運転状態が定常状態であると判定してS106へ移行する。また、インテークマニホールド圧力Pmの時間変位が所定値よりも大きい場合は、エンジン1の運転状態が非定常状態(すなわち、過渡状態)であると判定してS107へ移行する。尚、当該所定値は、エンジン1の特性を測定することにより予め設定しておく。 【0058】S106において、式(1)に示すように、トルク増幅比tr(e),トルク容量係数C(e),エンジン回転数Neから、エンジン1の運転状態が定常状態のときのタービントルクTtaを算出し、S108へ移行する。 Tta=tr(e)・C(e)・Ne2 ……(式1) つまり、エンジン1の運転状態が定常状態のときのタービントルクTtaは、トルク増幅比tr(e)とトルク容量係数C(e)とエンジン回転数Neの二乗値との3者の積から推定される。 【0059】S107において、後述するようにエンジン1の運転状態が過渡状態のときのタービントルクTtbを算出し、S108へ移行する。S108において、各タービントルクTta,Ttbのいずれかに基づいて油圧制御装置43の生成するライン油圧を制御し、S101へ戻る。 【0060】図4に、S107における処理の詳細を示す。まず、S111において、エンジン1の特性を測定して予め設定されたデータマップを参照し、エンジン回転数Neおよびインテークマニホールド圧力Pmに基づいて吸入空気の体積効率ηvを算出する。 【0061】次に、S112において、吸入空気温度センサ15の検出信号に基づいて吸入空気温度Tmを検出する。次に、S113において、式(2)に示すように、エンジン回転数Ne,エンジン1の排気量D,体積効率ηv,インテークマニホールド圧力Pm,気体定数R,吸入空気温度Tmから、吸入空気量Qapを算出する。 【0062】 Qap=(Ne・D・ηv・Pm)/(120・R・Tm) ……(2) 次に、S114において、エンジン1の特性を測定して予め設定されたデータマップを参照し、吸入空気量Qapに基づいてエンジン1の内部で発生するトルク(内部発生トルク)Tenetを算出する。 【0063】次に、S115において、内部発生トルクTenetに対してエンジン1自体の慣性トルクの補正を行う。すなわち、エンジン1の回転部分の慣性モーメントIeとエンジン回転角加速度dωeとを乗算することにより、エンジン1自体の慣性トルク(=Ie・dωe)を算出する。そして、内部発生トルクTenetからエンジン1自体の慣性トルクを差し引く。 【0064】次に、S116において、スロットル開度センサ13の検出信号に基づいてスロットルバルブ12の開度(スロットル開度)θthを検出する。次に、S117において、内部発生トルクTenetに対してエンジン1の内部損失トルクの補正を行う。すなわち、エンジン1の特性を測定して予め設定されたデータマップを参照し、エンジン回転数Neおよびスロットル開度θthに基づいてエンジン1の内部損失トルクを算出する。そして、S116にてエンジン1自体の慣性トルクが差し引かれた内部発生トルクTenetから、エンジン1の内部損失トルクを差し引いて補正する。尚、エンジン1の内部損失トルクには、エンジン1の回転部分に発生する摺動損失,ポンピングロス,オイルポンプの駆動損失などが含まれる。 【0065】次に、S118において、内部発生トルクTenetに対してエンジン補機の駆動に要するトルクの補正を行う。すなわち、S115,S117にてエンジン1自体の慣性トルクと内部損失トルクとが差し引かれた内部発生トルクTenetから、エンジン補機の駆動に要するトルクを差し引いて補正する。尚、エンジン補機には、エアコンコンプレッサ,オルタネータ,ウォーターポンプ,パワステポンプなどがある。これらのエンジン補機の駆動に要するトルクは、エンジン1の特性を測定して予め設定されたデータマップを参照し、エンジン回転数Neに基づいて算出する。 【0066】次に、S119において、内部発生トルクTenetに対して遅延時間補正を行う。すなわち、インテークマニホールド5を介して吸気側バルブからシリンダ内に吸入された燃料と空気との混合気は、ピストンによる圧縮行程から点火プラグによる点火工程によって着火されることにより爆発する爆発工程を経て、はじめてトルクを発生させる。つまり、ある時刻においてインテークマニホールド5に存在している混合気によって発生するトルクは、吸入→圧縮→点火→爆発の各工程に要する時間分だけ遅れて発生することになる。そして、吸入→圧縮→点火→爆発の各工程に要する時間は、エンジン回転数Neによって決定される。従って、インテークマニホールド圧力Pmの検出時刻から、エンジン回転数Neによって決定されるトルクの発生時刻までの時間分だけ、S115〜S118にてエンジン1自体の慣性トルク,エンジン1の内部損失トルク,エンジン補機の駆動に要するトルクが差し引かれた内部発生トルクTenetを遅延させる。 【0067】このように、S115〜S118において、内部発生トルクTenetからエンジン1自体の慣性トルク,エンジン1の内部損失トルク,エンジン補機の駆動に要するトルクを差し引いてトルク補正を行い、S119において、トルク補正を行った内部発生トルクTenetに対して遅延時間補正を行うことにより、エンジン1から外部へ出力されるトルク(外部出力トルク)Teを求めることができる。 【0068】次に、S120において、トルク増幅比tr(e)を外部出力トルクTeに乗算することにより、エンジン1の運転状態が過渡状態のときのタービントルクTtb(=tr(e)・Te)を算出する。そして、メインルーチンへ復帰してS108へ移行する。 【0069】図5に、本実施形態におけるスロットル開度θth,エンジン回転数Ne,タービン回転数Nt、実際のタービントルクTt、実際の吸入空気量Qa,S113にて算出した吸入空気量Qap,エアフローメータ10の検出した吸入空気量Qafm,インテークマニホールド圧力Pmの時間変化を示す。 【0070】時刻t1において、スロットル開度θthが急激に増大した場合、エンジン回転数センサ44およびタービン回転数センサ45の分解能は有限であるため急激な変化を検出することができず、各センサ44,45の検出したエンジン回転数Neおよびタービン回転数Ntは、実際のエンジン回転数およびタービン回転数よりも遅れて変化することになる。 【0071】このとき、実際の吸入空気量Qaはスロットル開度θthの変化に対応して急激に増大する。しかし、一般に、エアフローメータ10は応答性が悪く、急激な吸入空気量の変化を検出することができない。そのため、エアフローメータ10の検出した吸入空気量Qafmは、実際の吸入空気量Qaよりも遅れて変化することになる。 【0072】従って、吸入空気量Qafmに基づいて内部損失トルクを正確に算出するのは極めて困難である。また、吸入空気量Qafmに基づいて、実際のインテークマニホールド5の圧力を正確に推定することはできない。そのため、S105において、吸入空気量Qafmに基づいて推定したインテークマニホールド5の圧力により、エンジン1の運転状態の判定を行った場合、高精度な判定はできないことになる。 【0073】ところで、実際のインテークマニホールド5の圧力は、実際の吸入空気量Qaの波形を積分したものであるため、実際の吸入空気量Qaの急激な変化に対応して変化する。一般に、圧力センサ14は応答性が良好であるため、圧力センサ14の検出したインテークマニホールド圧力Pmは、実際のインテークマニホールド5の圧力の急激な変化にも正確に追従する。従って、S113において、エンジン回転数Neおよびインテークマニホールド圧力Pmに基づいて算出された吸入空気量Qapは、実際の吸入空気量Qaの急激な変化に対してほぼ正確に対応したものなる。そのため、S114において、吸入空気量Qapに基づいて算出された内部損失トルクTenetは、実際の値とほぼ等しくなる。その結果、内部損失トルクTenetに基づいて算出されたエンジン1の運転状態が過渡状態のときのタービントルクTtbも、実際の値とほぼ等しくなる。 【0074】以上詳述したように、本実施形態においては、インテークマニホールド圧力Pmの時間変位に基づいて、エンジン1の運転状態が定常状態か過渡状態かを判定する(S105)。前記したように、インテークマニホールド圧力Pmの時間変位は吸入空気量の変化を忠実に表すため、定常状態か過渡状態かを正確に判定することができる。 【0075】そして、エンジン1の運転状態が定常状態のときには、トルク増幅比tr(e),トルク容量係数C(e),エンジン回転数Neに基づいてタービントルクTtaを推定する(S106)。尚、トルク増幅比tr(e)およびトルク容量係数C(e)は、すべり比e(=タービン回転数Nt/エンジン回転数Ne)を引数として予め設定されたデータマップを参照することによって推定したものである(S103)。 【0076】また、エンジン1の運転状態が過渡状態のときには、エンジン回転数Ne,エンジン1の排気量D,体積効率ηv,インテークマニホールド圧力Pm,気体定数R,吸入空気温度Tmに基づいて吸入空気量Qapを算出する(S113)。尚、体積効率ηvは、エンジン回転数Neおよびインテークマニホールド圧力Pmに基づいて予め設定されたデータマップを参照することによって推定したものである(S111)。そして、吸入空気量Qapに基づいて予め設定されたデータマップを参照することにより、エンジン1の内部発生トルクTenetを推定する(S114)。続いて、内部発生トルクTenetに対して、エンジン1自体の慣性トルク,エンジン1の内部損失トルク,エンジン補機の駆動に要するトルクを差し引いてトルク補正を行う(S115〜S118)。次に、トルク補正を行った内部発生トルクTenetに対して遅延時間補正を行うことにより、エンジン1の外部出力トルクTeを求める(S119)。その外部出力トルクTeとトルク増幅比tr(e)とに基づいて、エンジン1の運転状態が過渡状態のときのタービントルクTtbを推定する(S120)。 【0077】従って、本実施形態によれば、エンジン1の運転状態が定常状態のときだけでなく過渡状態のときにもタービントルクを正確に推定することが可能になり、補助変速機42内の変速歯車機構の変速段を切り替えるためのライン油圧の制御を正確に行うことができる。 【0078】また、エンジン1の運転状態が過渡状態のときには、前記したように応答性の良好な圧力センサ14を用いて検出されたインテークマニホールド圧力Pmに基づいてタービントルクTtbを推定するため、高精度かつ高応答なタービントルクTtbを得ることができる。そのため、検出遅れによって生じるタービントルクTtbの誤差に起因して、自動変速機31が車両の走行状態に応じた最適な変速を行うことができずに発生する変速ショックを防止することができる。 【0079】さらに、エンジン1の運転状態が過渡状態のときには、エンジン1の内部発生トルクTenetからエンジン1自体の慣性トルク,エンジン1の内部損失トルク,エンジン補機の駆動に要するトルクを差し引いてトルク補正を行うため、タービントルクTtbをより正確に推定することができる。 【0080】そして、インテークマニホールド圧力Pmの検出時刻からエンジン回転数Neによって決定されるトルクの発生時刻までの時間分だけ内部発生トルクTenetを遅延させるため、タービントルクTtbをより正確に推定することができる。 【0081】ところで、ターボチャージャの動作時において、タービン18はエキゾーストパイプ7内を流れる排気ガスによって回転され、そのタービン18の回転力によってコンプレッサ17が駆動されて吸入空気が圧縮されることにより、エンジン1の過給がなされる。そのため、ターボチャージャの動作時には、スロットル開度θthに対して、エンジン回転数Neの応答が相当に遅れる上に、外部出力トルクTeが相当な時間遅れを伴って発生する。しかし、本実施形態によれば、そのようなスロットル開度θthに対してエンジン回転数Neおよび外部出力トルクTeが遅れる場合でもタービントルクTtbを正確に推定することが可能であるため、特に、ターボチャージャの動作時に顕著な効果を発揮することができる。 【0082】(第2実施形態)次に、本発明を具体化した第2実施形態を図面と共に説明する。尚、本実施形態において、第1実施形態と同じ構成部材については符号を等しくしてその詳細な説明を省略する。 【0083】第2実施形態において、第1実施形態と異なるのは、図3に示すフローチャートにおけるS107の処理だけである。図6に、第2実施形態のS107における処理(エンジン1の運転状態が過渡状態のときのタービントルクTtbの算出処理)の詳細を示す。尚、図6において、図4に示すフローチャートと同じ処理内容のステップについては符号を等しくしてその詳細な説明を省略する。 【0084】まず、S131において、インジェクタ16からインテークマニホールド5内に噴射される燃料噴射量qを検出する。尚、この燃料噴射量qは、エンジン用電子制御装置51によって制御されるインジェクタ16の燃料噴射量でもよく、エンジン用電子制御装置51の算出した燃料噴射パルス幅でもよい。 【0085】次に、S132において、燃料噴射量qをエンジン回転数Neで除算することにより、エンジン1の1回転当たりの燃料噴射量q/Neを算出する。次に、S133において、燃料噴射量q/Neに対してインテークマニホールド5の壁面付着燃料量の補正を行う。すなわち、インテークマニホールド5内に噴射された燃料の幾分かはインテークマニホールド5の壁面に付着し、エンジン1のシリンダ内へは送られない。そのため、エンジン用電子制御装置51は、インテークマニホールド5の壁面に付着する燃料量分だけ、インジェクタ16の燃料噴射量を多く設定している。そこで、燃料噴射量q/Neからインテークマニホールド5の壁面に付着する燃料量を差し引いて補正する。 【0086】次に、S134において、冷却水温センサ48の検出信号に基づいてエンジン1の冷却水温THeを検出する。次に、S135において、燃料噴射量q/Neに対して冷却水温THeの補正を行う。すなわち、エンジン1の冷間始動時には、インジェクタ16から噴射された燃料の霧化が十分に行われずエンジン1が失火する可能性が高いため、理論空燃比以下の空燃比による燃料過剰状態でエンジン1が運転される。そのため、エンジン用電子制御装置51は、冷却水温THeが所定値以下の場合にはエンジン1の失火を防ぐため、インジェクタ16の燃料噴射量を多めに設定している。そこで、S133にてインテークマニホールド5の壁面付着燃料量が差し引かれた燃料噴射量q/Neから、冷却水温THeに基づいて多めに設定された燃料量を差し引いて補正する。 【0087】このように、S133,S135において、燃料噴射量q/Neからインテークマニホールド5の壁面に付着する燃料量と冷却水温THeに基づいて多めに設定された燃料量とを差し引く補正を行うことにより、実際にエンジン1のシリンダ内へ送られる燃料噴射量qe/Neを求めることができる。 【0088】次に、S136において、エンジン1の特性を測定して予め設定されたデータマップを参照し、燃料噴射量qe/Neに基づいてエンジン1の内部発生トルクTenetを算出する。その後、第1実施形態と同様に、S115〜S120の処理を行うことにより、エンジン1の運転状態が過渡状態のときのタービントルクTtbを算出する。そして、図3に示すメインルーチンへ復帰してS108へ移行する。 【0089】尚、S119においては、燃料噴射量qの検出時刻から、エンジン回転数Neによって決定されるトルクの発生時刻までの時間分だけ、S115〜S118にてエンジン1自体の慣性トルク,エンジン1の内部損失トルク,エンジン補機の駆動に要するトルクが差し引かれた内部発生トルクTenetを遅延させる。 【0090】以上詳述したように、本実施形態において、エンジン1の運転状態が過渡状態のときには、エンジン1の1回転当たりにシリンダ内へ実際に送られる燃料噴射量qe/Neに基づいて予め設定されたデータマップを参照することにより、エンジン1の内部発生トルクTenetを推定する(S136)。尚、燃料噴射量qe/Neは、エンジン用電子制御装置51によって制御される燃料噴射量qをエンジン回転数Neで除算した値から、インテークマニホールド5の壁面に付着する燃料量と冷却水温THeに基づいて多めに設定された燃料量とを差し引いて補正することにより求めたものである(S131〜S135)。 【0091】従って、本実施形態によれば、エンジン1の運転状態が過渡状態のときには、インテークマニホールド圧力Pmと同様に応答性の良好な燃料噴射量qに基づいてタービントルクTtbを推定するため、高精度かつ高応答なタービントルクTtbを得ることができる。そのため、第1実施形態と同様に、検出遅れによって生じるタービントルクTtbの誤差に起因する変速ショックを防止することができる。 【0092】尚、本実施形態におけるその他の効果については、第1実施形態と同じであるため説明を省略する。 (第3実施形態)次に、本発明を具体化した第3実施形態を図面と共に説明する。尚、本実施形態において、第1および第2実施形態と同じ構成部材については符号を等しくしてその詳細な説明を省略する。 【0093】第3実施形態において、第1実施形態と異なるのは、図3に示すフローチャートにおけるS107の処理だけである。図7および図8に、第3実施形態のS107における処理(エンジン1の運転状態が過渡状態のときのタービントルクTtbの算出処理)の詳細を示す。尚、図7および図8において、図4および図6に示すフローチャートと同じ処理内容のステップについては符号を等しくしてその詳細な説明を省略する。 【0094】まず、S141において、空燃比センサ20の検出信号に基づいてエンジン1の空燃比A/Fを検出する。次に、S142において、空燃比A/Fが理論空燃比以下(すなわち、リッチ)であるか否かを判定し、リッチの場合はS111へ移行し、空燃比A/Fが理論空燃比以上(すなわち、リーン)の場合はS131へ移行する。 【0095】S111へ移行した場合は第1実施形態と同様にS111〜S120の処理を行い、S131へ移行した場合は第2実施形態と同様にS131〜S136,S115〜S120の処理を行ことにより、エンジン1の運転状態が過渡状態のときのタービントルクTtbを算出する。そして、図3に示すメインルーチンへ復帰してS108へ移行する。 【0096】このように本実施形態において、冷間始動時などで燃料の霧化が十分に行われずエンジン1が失火する可能性が高いときに理論空燃比以下の空燃比A/Fによる燃料過剰状態でエンジン1を運転しているときには、第1実施形態と同様に、吸入空気量Qapに基づいてタービントルクTtbを推定する。また、燃費向上を目的として理論空燃比以上の空燃比A/Fによる空気過剰状態でエンジン1を運転するリーンバーン運転時には、第2実施形態と同様に、燃料噴射量qに基づいてタービントルクTtbを推定する。 【0097】すなわち、燃料過剰状態でエンジン1を運転している場合は過不足のない吸入空気量Qapに基づいて、また、空気過剰状態でエンジン1を運転している場合は過不足のない燃料噴射量qに基づいて、それぞれタービントルクTtbを推定している。 【0098】従って、本実施形態によれば、理論空燃比と異なる空燃比A/Fでエンジン1を運転しているときでも、過渡状態におけるタービントルクTtbを高精度に推定することができる。そのため、理論空燃比と異なる空燃比A/Fでエンジン1を運転しているときに生じるタービントルクTtbの誤差に起因して発生する変速ショックを防止することができる。 【0099】また、本実施形態においては、空燃比センサ20を用いて空燃比A/Fを検出するため、正確な空燃比A/Fを得ることが可能であり、前記したリッチとリーンの判定を確実に行うことができる。尚、本実施形態におけるその他の効果については、第1および第2実施形態と同じであるため説明を省略する。 【0100】(第4実施形態)次に、本発明を具体化した第4実施形態を図面と共に説明する。尚、本実施形態において、第1実施形態と同じ構成部材については符号を等しくしてその詳細な説明を省略する。 【0101】図9に、本実施形態において自動変速機用電子制御装置52が実行する処理の詳細を示す。尚、図9において、図3に示すフローチャートと同じ処理内容のステップについては符号を等しくしてその詳細な説明を省略する。自動変速機用電子制御装置52が起動すると、第1実施形態と同様にS101〜S103の処理を行う。 【0102】次に、S151において、スロットル開度センサ13の検出信号に基づいてスロットルバルブ12の開度(スロットル開度)θthを検出する。次に、S152において、スロットル開度θthの時間変位に基づいて、エンジン1の運転状態が定常状態であるか否かを判定する。すなわち、スロットル開度θthの時間変位が所定値よりも小さい場合は、エンジン1の運転状態が定常状態であると判定してS106へ移行する。また、インテークマニホールド圧力Pmの時間変位が所定値よりも大きい場合は、エンジン1の運転状態が過渡状態であると判定してS104からS107へ移行する。尚、当該所定値は、エンジン1の特性を測定することにより予め設定しておく。 【0103】このように本実施形態においては、スロットル開度θthの時間変位に基づいて、エンジン1の運転状態が定常状態か過渡状態かを判定している。すなわち、インテークマニホールド圧力Pmは、スロットルバルブ12が開かれて吸入空気量が増大することによって生じる。つまり、インテークマニホールド圧力Pmに変化が現れるのに先だってスロットル開度θthが変化する。そのため、スロットル開度θthの時間変位に基づいてエンジン1の運転状態の判定を行えば、定常状態から過渡状態への移行を早い時期に判定することが可能になる。従って、本実施形態によれば、インテークマニホールド圧力Pmの時間変位に基づいて定常状態と過渡状態の判定を行う第1実施形態に比べて、定常状態から過渡状態への移行をさらに速く判定することが可能になり、運転状態の判定遅れによって生じるタービントルクTtbの誤差に起因して発生する変速ショックをより確実に防止することができる。 【0104】尚、本実施形態におけるその他の効果については、第1実施形態と同じであるため説明を省略する。 (第5実施形態)次に、本発明を具体化した第5実施形態を図面と共に説明する。尚、本実施形態において、第1実施形態と同じ構成部材については符号を等しくしてその詳細な説明を省略する。 【0105】第5実施形態において、第1実施形態と異なるのは、図3に示すフローチャートにおけるS103の処理だけである。図10に、第5実施形態のS103における処理(トルクコンバータ41のトルク容量係数C(e)およびトルク増幅比tr(e)を算出処理)の詳細を示す。 【0106】まず、S161において、作動油温センサ47の検出信号に基づいてトルクコンバータ41の作動油温THtを検出する。次に、S162において、自動変速機31の特性を測定して予め設定されたデータマップを参照し、すべり比eを引数とするトルクコンバータ41のトルク容量係数C(e)を算出する。 【0107】次に、S163において、作動油温THtに基づいてトルク容量係数C(e)を補正する。次に、S164において、自動変速機31の特性を測定して予め設定されたデータマップを参照し、すべり比eを引数とするトルクコンバータ41のトルク増幅比tr(e)を算出する。 【0108】次に、S165において、作動油温THtに基づいてトルク増幅比tr(e)を補正する。そして、図3に示すメインルーチンへ復帰してS104へ移行する。このように本実施形態においては、作動油温THtに基づいてトルク容量係数C(e)およびトルク増幅比tr(e)を補正し、その補正したトルク容量係数C(e)およびトルク増幅比tr(e)に基づいて各タービントルクTta,Ttbを推定している。 【0109】すなわち、作動油温THtが高くなるほど、トルク容量係数C(e)およびトルク増幅比tr(e)は小さくなる。それに対して、S162およびS164において参照するデータマップは、自動変速機31が作動する際の適正な作動油温を基準として設定されている。従って、実際の作動油温THtに基づいてトルク容量係数C(e)およびトルク増幅比tr(e)を補正することにより、前記データマップの作成時に基準とされた作動油温と実際の作動油温THtとが異なる場合でも、トルク容量係数C(e)およびトルク増幅比tr(e)を正確に求めることが可能になることから、各タービントルクTta,Ttbを高精度に推定することができる。 【0110】尚、本実施形態におけるその他の効果については、第1実施形態と同じであるため説明を省略する。 (第6実施形態)次に、本発明を具体化した第6実施形態を図面と共に説明する。尚、本実施形態において、第1実施形態と同じ構成部材については符号を等しくしてその詳細な説明を省略する。 【0111】図11に、本実施形態において自動変速機用電子制御装置52が実行する処理の詳細を示す。尚、図11において、図3に示すフローチャートと同じ処理内容のステップについては符号を等しくしてその詳細な説明を省略する。自動変速機用電子制御装置52が起動すると、S101〜S103の処理を行った後に、S106の処理を行うことにより、エンジン1の運転状態が定常状態のときのタービントルクTtaを算出する。 【0112】次に、S171において、タービントルクTtaにローパスフィルタをかけることにより第1の推定トルクTt1を求める。次に、S104において、インテークマニホールド圧力Pmを検出する。次に、S107において、エンジン1の運転状態が過渡状態のときのタービントルクTtbを算出する。 【0113】次に、S172において、タービントルクTtbにハイパスフィルタをかけることにより第2の推定トルクTt2を求める。次に、S173において、各推定トルクTt1,Tt2を加算することによりタービントルクTtを算出する。 【0114】次に、S174において、タービントルクTtに基づいて油圧制御装置43の生成するライン油圧を制御し、S101へ戻る。このように本実施形態においては、エンジン1の運転状態が定常状態のときのタービントルクTtaにローパスフィルタをかけることによって求めた第1の推定トルクTt1と、エンジン1の運転状態が過渡状態のときのタービントルクTtbにハイパスフィルタをかけることによって求めた第2の推定トルクTt2とを加算することにより、タービントルクTtを推定している。すなわち、S106にて算出したタービントルクTtaにおける高周波側領域の信号はノイズなどの影響により不明確であるため、ローパスフィルタをかけることにより、その不明確な領域を取り除く。また、S107にて算出したタービントルクTtbにおける低周波側領域の信号はノイズなどの影響により不明確であるため、ハイパスフィルタをかけることにより、その不明確な領域を取り除く。そして、不明確な領域を取り除いた両信号を加算することにより、全帯域に渡って明確なタービントルクTtを推定する。 【0115】従って、本実施形態によれば、エンジン1の運転状態が定常状態か過渡状態かを判定する必要がなく、高精度かつ高応答にタービントルクTtを推定することができる。尚、ローパスフィルタおよびハイパスフィルタの遮断周波数および遮断特性については、エンジン1および自動変速機31の特性を測定して予め設定しておく。 【0116】ところで、本実施形態におけるその他の効果については、第1実施形態と同じであるため説明を省略する。 (第7実施形態)次に、本発明を具体化した第7実施形態を図面と共に説明する。尚、本実施形態において、第1実施形態と同じ構成部材については符号を等しくしてその詳細な説明を省略する。 【0117】図12および図13に、本実施形態において自動変速機用電子制御装置52が実行する処理の詳細を示す。尚、図12および図13において、図3および図4に示すフローチャートと同じ処理内容のステップについては符号を等しくしてその詳細な説明を省略する。 【0118】自動変速機用電子制御装置52が起動すると、S101〜S103の処理を行った後に、S106の処理を行うことにより、エンジン1の運転状態が定常状態のときのタービントルクTtaを算出する。次に、S104において、インテークマニホールド圧力Pmを検出する。 【0119】次に、S111〜S114の処理を行うことにより、内部発生トルクTenetを算出する。次に、S115において、内部発生トルクTenetに対してエンジン1自体の慣性トルクの補正を行う。 【0120】次に、S118において、内部発生トルクTenetに対してエンジン補機の駆動に要するトルクの補正を行う。すなわち、S115にてエンジン1自体の慣性トルクが差し引かれた内部発生トルクTenetから、エンジン補機の駆動に要するトルクを差し引いて補正する。 【0121】次に、S181において、S106にて算出したタービントルクTtaをトルク増幅比tr(e)で除算した除算値C(e)・Ne2(=Tta/tr(e))を、S115,S118にて慣性トルクおよびエンジン補機の駆動に要するトルクが差し引かれて補正された内部発生トルクTenetから差し引くことにより、エンジン1の内部損失トルクを算出する。 【0122】次に、S182において、内部発生トルクTenetに対してエンジン1の内部損失トルクの補正を行う。すなわち、S115,S118にて慣性トルクおよびエンジン補機の駆動に要するトルクが差し引かれて補正された内部発生トルクTenetから、S181にて算出した内部損失トルクを差し引いて補正する。 【0123】次に、S119において、内部発生トルクTenetに対して遅延時間補正を行う。このように、S115,S118,S181,S182において、内部発生トルクTenetからエンジン1自体の慣性トルク,エンジン補機の駆動に要するトルク,エンジン1の内部損失トルクを差し引いてトルク補正を行い、S119において、トルク補正を行った内部発生トルクTenetに対して遅延時間補正を行うことにより、外部出力トルクTeを求める。 【0124】次に、S120において、トルク増幅比tr(e)を外部出力トルクTeに乗算することにより、エンジン1の運転状態が過渡状態のときのタービントルクTtb(=tr(e)・Te)を算出する。次に、S105において、インテークマニホールド圧力Pmの時間変位に基づいて、エンジン1の運転状態が定常状態であるか否かを判定する。そして、インテークマニホールド圧力Pmの時間変位が所定値よりも小さい場合は、エンジン1の運転状態が定常状態であると判定してS183へ移行し、S183においてタービントルクTtaを選択する。また、インテークマニホールド圧力Pmの時間変位が所定値よりも大きい場合は、エンジン1の運転状態が過渡状態であると判定してS184へ移行し、S184においてタービントルクTtaを選択する。そして、S108において、各タービントルクTta,Ttbのいずれかに基づいて油圧制御装置43の生成するライン油圧を制御し、S101へ戻る。 【0125】このように本実施形態においては、エンジン1の運転状態が定常状態のときのタービントルクTtaと、エンジン1自体の慣性トルクおよびエンジン補機の駆動に要するトルクのトルク補正が行われた内部発生トルクTenetとに基づいて、エンジン1の内部損失トルクを算出する(S181)。そして、エンジン1自体の慣性トルクおよびエンジン補機の駆動に要するトルクのトルク補正が行われた内部発生トルクTenetから、算出したエンジン1の内部損失トルクを差し引くことにより、内部損失トルクのトルク補正を行う(S182)。 【0126】それに対して、第1実施形態のS117においては、エンジン1の特性を測定して予め設定されたデータマップを参照してエンジン1の内部損失トルクを算出する。そして、エンジン1自体の慣性トルクのトルク補正が行われた内部発生トルクTenetから、算出したエンジン1の内部損失トルクを差し引くことにより、内部損失トルクのトルク補正を行う。 【0127】エンジン1の内部損失トルクには、エンジン1の回転部分に発生する摺動損失,ポンピングロス,オイルポンプの駆動損失などを含むため、エンジン1の個体間である程度のバラツキがある上に、経時変化が大きいという特徴がある。そのため、設計時点で作成した前記データマップを参照して求めたエンジン1の内部損失トルクは、エンジン1の個体間のバラツキや経時変化により、実際の内部損失トルクとは異なったものになるおそれがある。 【0128】また、エンジン補機にはエアコンコンプレッサ,オルタネータ,ウォーターポンプ,パワステポンプなどがあるため、これらエンジン補機の駆動に要するトルクについても、エンジン補機の個体間である程度のバラツキがある上に、経時変化が大きいという特徴がある。 【0129】従って、第1実施形態においては、エンジン1の内部損失トルクやエンジン補機の駆動に要するトルクのバラツキや経時変化に影響され、タービントルクTtbを高精度に推定できなくなるおそれがある。それに対して、本実施形態によれば、エンジン1の運転状態が定常状態のときのタービントルクTtaに基づいて内部損失トルクを算出するため、エンジン1の内部損失トルクのバラツキや経時変化に対応して、内部損失トルクのトルク補正を行うことが可能であるため、内部損失トルクを正確に求めることができる。また、エンジン補機の駆動に要するトルクのトルク補正が行われた内部発生トルクTenetに基づいて内部損失トルクを算出するため、エンジン補機の駆動に要するトルクのバラツキや経時変化に対応して、内部損失トルクを正確に求めることができる。その結果、エンジン1の内部損失トルクやエンジン補機の駆動に要するトルクのバラツキや経時変化に影響されることなく、タービントルクTtbをより高精度に推定することができる。 【0130】尚、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよい。 (1)エンジン1のシリンダ内に設けられた点火プラグ(図示略)による点火の時期によって、エンジン1の外部出力トルクTeは変化する。そこで、上記各実施形態において、エンジン用電子制御装置51によって制御される点火プラグの基準点火時期からの進角量および遅角量に基づいて、外部出力トルクTeを補正する。このようにすれば、より高精度なタービントルクTtbを得ることができる。 【0131】(2)上記各実施形態において、トルクコンバータ41の動作の遅延時間を補正するために、外部出力トルクTeにローパスフィルタをかける。このようにすれば、より高精度なタービントルクTtbを得ることができる。 (3)近年、エキゾーストパイプ7から取り出した排気ガスの一部を、適当な温度,時期,流量などの制御を行った後に、吸気側へ戻して再循環させる排気ガス再循環装置(EGR)が利用されている。燃焼済みの排気ガスはその大部分が不活性ガスであるため、それを混合気中に入れると、不活性ガスのもつ熱容量により最高燃焼温度が低下することから、排気ガス中の窒素酸化物(NOX)が低減される。 【0132】EGRにおいては、吸入空気に混入された排気ガスの分だけインテークマニホールド圧力Pmが増加する。そこで、上記各実施形態においてEGRを適用した場合には、圧力センサ14を用いて検出したインテークマニホールド圧力PmからEGRによる圧力の増加分を差し引いて補正する。このようにすれば、EGRを適用した場合でも、エンジン1の運転状態の判定を確実に行うことができる上に、高精度なタービントルクTtbを得ることができる。 【0133】(4)第7実施形態において、エンジン1の内部損失トルクを算出するにあたり、タービントルクTtaをトルク増幅比tr(e)で除算した除算値C(e)・Ne2(=Tta/tr(e))を、エンジン1の慣性トルクが差し引かれて補正された内部発生トルクTenetから差し引くようにする。 【0134】この場合には、エンジン1の内部損失トルクを算出する際に、内部発生トルクTenetに対してエンジン補機の駆動に要するトルクのトルク補正を行わないため、エンジン補機の駆動に要するトルクのバラツキや経時変化に対応して内部損失トルクを求めることができない。しかし、タービントルクTtaに基づいて内部損失トルクを算出するため、第1実施形態に比べればより高精度なタービントルクTtbを得ることができる。 【0135】(5)第3実施形態において、空燃比センサ20を省き、エンジン用電子制御装置51によって制御される空燃比(エンジン用電子制御装置51によって指令される空燃比)に基づいて、当該空燃比がリッチかリーンかを判定する。この場合は、空燃比センサ20を用いて実際の空燃比を検出する場合に比べれば精度が劣るものの、空燃比がリッチかリーンかの判定を実用上問題ないレベルで行うことが可能であるため、第3実施形態と同様の効果を得ることができる。 【0136】(6)第4実施形態と第2,第3実施形態とをそれぞれ組み合わせて実施する。また、第5実施形態と第2,第3,第4実施形態とをそれぞれ組み合わせて実施する。また、第6実施形態と第2,第3,第4,第5実施形態とをそれぞれ組み合わせて実施する。また、第7実施形態と第2,第3,第4,第5,第6実施形態とをそれぞれ組み合わせて実施する。これらの場合には、組み合わせた実施形態の相乗効果により、タービントルクをさらに正確に推定することが可能になり、補助変速機42内の変速歯車機構の変速段を切り替えるためのライン油圧の制御をより正確に行うことができる。 【0137】(7)上記各実施形態の補助変速機42における変速歯車機構の変速段は、油圧制御装置43の生成したライン油圧に従って切り替えられるようになっている。しかし、本発明はこれに限らず、油圧制御装置43によって補助変速機42内に備えられた電磁弁を制御することで変速歯車機構の変速段を切り替えるようになっている自動変速機31に適用してもよい。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000004260 【氏名又は名称】株式会社デンソー
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| 【出願日】 |
平成9年(1997)9月24日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】足立 勉
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| 【公開番号】 |
特開平11−94057 |
| 【公開日】 |
平成11年(1999)4月9日 |
| 【出願番号】 |
特願平9−258882 |
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