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【発明の名称】 歯 車
【発明者】 【氏名】有賀幸則

【氏名】長田重慶

【要約】 【課題】回転時の騒音、振動の少ない曲率波状変動歯車を提供する。

【解決手段】接触の開始点からカミアイ率が1となる点までの間の歯形曲線の少なくとも一部を、ピッチサークル上に中心を有し、その両側の歯形曲線と滑らかに接続する円弧歯形により置換する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】相手歯車と噛み合う部分の歯形曲線が、歯形タケ方向に曲率が周期的に増減する連続かつ微分可能な曲線から成る歯車において、接触の開始点からカミアイ率が1となる点までの間の歯形曲線の少なくとも一部を、ピッチサークル上に中心を有し、その両側の歯形曲線と滑らかに接続する円弧歯形としたことを特徴とする上記の歯車。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、歯車、特に本発明者等が特許第 1,606,158号:特公平2−015743号に依って開示し、ロジックスギアなる商品名で知られた曲率波状変動歯車の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】この歯車は、その歯形曲線の曲率が歯タケ方向に周期的に増減する連続かつ微分可能な函数で、接触点における相対曲率が実質的に0であり、従って、滑り率も又、0となるよう構成されている。
【0003】更に具体的に言えば、この歯車の相手歯車と接触する部分の歯形曲線は、その曲率半径が増加、減少を繰り返しながら周期的に変化するよう構成されており、そして、曲率半径が極小となる点では、その歯車と相手歯車の曲率中心が何れもピッチ線上の同一点にある。
【0004】一方の歯車のアデンダム及びデデンダムは、それぞれ相手歯車のデデンダム及びアデンダムと接触し、かつ両歯車ともそのアデンダムは凸、デデンダムは凹であるから、接触は常に凹面と凸面との間で行われ、これにより上記の如く曲率半径が極小となる接触点では、両歯形曲線の相対曲率は0となり、そのため滑り率も0となるものである。而して、この曲率半径が極小となる点は歯形曲線上に多数稠密に設けることができ、又、その様な接触点の間の部分でもカミアイ率は極めて小さく、実質的に0と見て差し支えない値であり、従って、この歯車では噛み合いの全領域で実質的にカミアイ率は0となるものである。
【0005】而して、この歯車の歯先及び歯底の歯形曲線は、それぞれ接触部の歯形曲線に滑らかに接続し、かつ相手歯車との間に所望の頂隙が与えられるよう選ばれた円弧とされている。この歯車は、インボリュート歯車などに比して滑り率が低く、そのため強い歯面強度が得られると言う利点があるが、加工及び組立に高い精度を必要とし、精度が不充分であると、運転時に騒音等を発生するなどの問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、叙上の問題を解決するためなされたものであり、その目的とするところは、特別に高い精度を必要とせず、通常の歯車と同等程度の精度で加工及び組立を行っても、騒音が発生せず、強い歯面強度が得られるよう改良された上記の曲率波状変動歯車を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者等の研究によって、上記歯車の騒音等は、一方の歯車の歯面が相手歯車の歯面と接触を開始する部分の精度に依存しており、特に、接触開始点からカミアイ率が1となる迄の間の歯形曲線の精度が重要であることが判明した。更に本発明者等は、この接触開始点からカミアイ率が1となる迄の歯形曲線をピッチサークル上に中心を有する円弧で置換することにより、この騒音等が大幅に軽減されることを見出し、本発明を完成した。
【0008】即ち、本発明の上記の目的は、上記の曲率波状変動歯車において、接触の開始点からカミアイ率が1となる点までの間の歯形の少なくとも一部を、ピッチサークル上に中心を有し、その両側の歯形曲線と滑らかに接続する円弧歯形とした上記の曲率波状変動歯車によって達成される。
【0009】尚、歯車の回転方向は任意であるから、上記と同様な円弧歯形部分は、歯車の正転時の接触開始点側のみでなく、逆転方向の接触開始点(即ち、正転方向の接触終了点)側にも設けておくことが推奨される。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しつゝ本発明を具体的に説明する。図1は本発明に係る曲率波状変動歯車の基準ラック歯形の説明図、図2は互いにかみ合っている歯車の歯形曲線を基準ラック歯形の4分の1基本歯形で示した説明図、図3はホブによる創成加工状態を示す包絡線図、図4は創成された歯数20の歯車の歯形曲線の一部を示す拡大図、図5は歯数12の歯車の歯形曲線の一部を示す拡大図である。
【0011】而して図1には、歯車1と、それをを創成しているホブ2の基準ラック歯形が示されている。図中、Cはピッチ線、曲線LMNOPQRSは歯車1とホブ2に共通の歯形曲線であり、Oはピッチ線Cと歯形曲線LMNOPQRSとの交点である。歯車1とホブ2の歯形曲線は重なっており同形であるので、ここでは歯車1のものとして説明する。点Lは歯先中心点、点Sは歯底中心点であり、又、点Mは接触開始点、点Qは接触終了点である。
【0012】歯形曲線NOPの部分は、上記の曲率波状変動歯車の歯形曲線であり、、点N及び点Pは、歯車として用いられるとき相手歯車とのカミアイ率が1となる点のうち、ピッチ線Cから最も遠い点である。この部分の歯形曲線に就いては上記の特許により開示されているので、ここではその詳細な説明を省略する。尚、歯形曲線NOPの両端の点N及び点Pに於ける曲率中心は点Oであり、従って、これらの点で立てた歯形曲線NOPの法線は点Oを通るものである。又、歯形曲線NOと同OPとは、点Oに就いて対称である。
【0013】而して、本発明に於いては、歯形曲線MN及びPQRの部分が、ピッチ線C上の点Oを中心とする円弧で構成されている。ここで点Qは点Mに対応する点、即ち、点Oに関し互いに対称な位置にある点であり、同形の相手歯車とかみ合うとき、点M及びQは、相手歯車の対応する点Q及びMに接触するようになっているものである。従って円弧PQRは円弧MNより長く、歯先円弧RSは歯底円弧LMより短い。このように構成することにより、かみ合い時に適切な頂隙が得られる。即ち、図1において、αM =αQ <αRαN =αPA >rDである。
【0014】而して、歯形曲線NOPの両端で立てた法線ON及びOPは又、円弧MN及びPQRの法線でもあるから、歯形曲線NOPと、円弧MN及びPQRとは滑らかに接続する。又、歯先の歯形曲線LM及び歯底の歯形曲線RSは、それぞれ円弧MN及びPQRと滑らかに接続する円弧である。而して、本発明歯車では、接触の開始点に引き続く部分、即ち、歯形曲線MN及びPQの部分が、同一の曲率半径を有する円弧歯形として構成されている。
【0015】図2には、互いにかみ合い運動をしている一対の歯車10及び20の4/1ラック歯形曲線が示されている。これらの歯車10及び20は、いずれも無限大径歯車として示されているものである。この図から、点M及びNがそれぞれ点Q及びPに対応する接触点であること、円弧PQRが同MNより長く、このため、歯先の円弧LMの半径rA が、歯底の半径rD より大きくなること、及び、歯末のタケHが、歯元のタケ(H+ΔH)より低くなり、これにより頂隙ΔHが得られること、などが判明する。
【0016】これはウイルドハーバー・ノビコフギヤとして知られている円弧歯車の一部分である。この歯車は、アデンダム及びデデンダムが、いずれもピッチ線上に曲率中心を有し、かつ同一の曲率半径を有する凸円弧及び凹円弧から成る円弧歯形を有するものであり、強い歯面強度を有することが知られている。然しながら、この円弧歯車は、回転中接触点が歯形曲線に沿って連続的に移動するということがなく、接触は、駆動歯車と被動歯車の歯形曲線が一致する特定の回転角に於いてのみ発生し、そのときは歯形曲線の全面で接触が行われるが、その前後の回転角度では全く接触がおこなわれないので、平歯車としては利用することができず、ハスバ歯車としなければならないものである。
【0017】本発明に於いては、このような円弧歯形を取り入れるが、ハスバ歯車とする必要はなく、平歯車として利用できるものである。その理由は、それらが採り入れられる部分が、接触開始点からカミアイ率が大約1となる点までの間であることによる。即ち、本発明においては、歯車10及び20がかみ合いを開始し、点MとQが接触すると、直ちに円弧MNとQPが接触し、その接触は曲率波状変動歯車の歯形曲線部分POと、NOの接触にリレーされるためである。歯形曲線PONと、同NOPの接触は、曲率波状変動歯車の波面の接触であり、そのため、接触点はこれらの歯形曲線に沿って連続的に移動し、かつ、そのときの接触は、相対曲率が等しく、滑り率0の接触となるものである。
【0018】従って、本発明に係る歯車においては、互いにかみ合い、接触する歯面の一部に円弧歯形を取り入れているが、本発明歯車は平歯車として構成できるものである。尚、歯形の一部に円弧を有する歯車は多数提案されているが、その多くは、その円弧の包絡線であるところの相手歯車の歯形部分と接触するものであり、円弧歯形部分同士が接触するものは提案されていない。
【0019】図3には、本発明に係る曲率波状変動歯車をホブにより創成加工する際の包絡線が示されている。ここではワークを固定し、ホブにより歯車を創成する状況が示されているが、逆にこの図面に示されたワークと同形のホブを用いれは、この歯車を創成するため必要なホブを得ることができる。ホブにより創成されたモジュール3、歯数20の歯車の歯形曲線の一部が図4に、又、同じくモジュール3、歯数12の歯車の歯形曲線の一部が図5に示されている。
【0020】尚、叙上の説明では、円弧歯形を接触の開始点付近からカミアイ率が1となる点までの範囲の全域に渡って設けるように説明したが、円弧部分は必ずしも上記範囲の一部、例えば上記範囲の接触の開始点側の70〜80%程度として良く、50%であっても尚相当の効果が認められるものである。又、両歯車の噛み合いの開始を円滑にし、かつ適度な頂隙を得るために、歯元では、この円弧歯形部分を接触開始点より歯底側にやゝ延長して設けるものである。又、前にも述べた如く、接触の開始点はまた接触の終了点でもあり、歯車の回転方向は必ずしも一定方向には限定されないから、歯車がいずれの方向に回転しても良いように、接触の開始点近傍のみでなく、終了点の近傍にも円弧歯形部分を設けておくことが推奨される。
【0021】
【発明の効果】而して、この円弧歯形は加工が容易であり、さほどコストを掛けなくとも高精度で加工ができるので、歯車の機能にとって特に重要な接触開始点部分をこの歯形とすることは、騒音問題、振動問題を解決し、耐久性を向上させるため、極めて有意義である。この円弧歯車は強い制振作用があるが、平歯車に対して、円弧歯車としてかみ合う形で、これを歯形曲線の一部に取り入れることは不可能であった。
【0022】本発明においては、曲率波状変動歯車の歯形曲線と合理的に組み合わせ、平歯車として利用できるよう構成することにより、円弧歯車の利点を採り入れ、曲率波状変動歯車の欠点を解消することを得るものである。即ち、本発明によれば、特別に高精度の加工に依らなくとも、騒音、振動等の少ない曲率波状変動歯車を提供し得るものである。
【出願人】 【識別番号】591018899
【氏名又は名称】長田 重慶
【出願日】 平成9年(1997)9月25日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】最上 正太郎
【公開番号】 特開平11−94052
【公開日】 平成11年(1999)4月9日
【出願番号】 特願平9−260568