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【発明の名称】 歯付ベルト
【発明者】 【氏名】竹田 和浩

【氏名】上野 明宏

【氏名】中井 泰典

【氏名】大屋 俊之

【要約】 【課題】耐摩耗性、耐クラック性、静粛性に優れ、寿命を大幅に向上した歯付ベルトを提供する。

【解決手段】長手方向に沿って複数設けられた歯部1と、歯部1の背面側の心線2を埋設した背面部3と、歯部1の表面及び歯底部の表面を被覆する歯布4からなる歯付ベルトに関する。背面部3を構成するゴム層を2層構造に形成する。そして2層構造の外側の層3aを、100%伸長時のモジュラスが4.5MPa以上で且つ内側の層3bのゴムよりも1.0MPa以上大きく、切断時の伸度が400%以上であると共に、内側の層3bのゴムより硬度が3度以上高い物性を有するゴムで形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 長手方向に沿って複数設けられた歯部と、歯部の背面側の心線を埋設した背面部と、歯部の表面及び歯底部の表面を被覆する歯布からなる歯付ベルトにおいて、背面部を構成するゴム層を2層構造に形成し、2層構造の外側の層を、100%伸長時のモジュラスが4.5MPa以上で且つ内側の層のゴムよりも1.0MPa以上大きく、切断時の伸度が400%以上であると共に、内側の層のゴムより硬度が3度以上高い物性を有するゴムで形成して成ることを特徴とする歯付ベルト。
【請求項2】 背面部を構成する2層構造のゴム層の外側の層が、水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩とを98:2〜55:45の重量比で混合したポリマー成分100重量部に対して、有機過酸化物0.2〜10重量部を配合して架橋したゴムで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の歯付ベルト。
【請求項3】 有機過酸化物の他に、カーボンブラック5〜50重量部、可塑剤2〜15重量部を配合することを特徴とする請求項2に記載の歯付ベルト。
【請求項4】 背面部を構成する2層構造のゴム層の内側の層が、水素添加率90〜98%の水素化ニトリルゴム100重量部に対して、カーボンブラック10〜80重量部、可塑剤2〜15重量部、有機過酸化物0.2〜10重量部を配合して架橋したゴムで形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の歯付ベルト。
【請求項5】 歯布として、芳香族ポリアミド繊維を少なくとも一部に含む布で形成されたものを用いることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の歯付ベルト。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車エンジン用などに使用される歯付ベルトに関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車エンジンの高出力化、高回転化に伴って、回転駆動の伝達に使用される歯付ベルトの使用環境温度が上昇しており、また歯付ベルトに掛かる負荷も増大してきている。そしてこのような自動車エンジンに使用される歯付ベルトに対する要求品質は、歯部の歯元の耐クラック性、背面部の耐摩耗性、耐亀裂性がそれぞれ高く、ベルト長手方向の屈曲性に優れることが挙げられる。
【0003】一方、歯付ベルトを構成するゴムとして、使用環境の苛酷化に応じて、クロロプレンゴムからクロロスルフォン化ポリエチレンへと変化し、さらに現在では水素化ニトリルゴムへと、より耐熱性に優れた素材が使用されるようになってきており、さらに心線や歯布にも種々の改良が加えられ、耐久性の向上が図られている(特開平7−151189号公報、特開平2−208556号公報等参照)。
【0004】また、自動車エンジン用の歯付ベルトのゴムとして現在最も広く使用されている水素化ニトリルゴムにおいても、その水素添加率、架橋剤の種類、あるいは各種の添加剤を検討することにより、耐久性を向上することがなされている。例えば特開平8−3374号公報には、固形ゴムに多官能性共架橋剤を含有する繊維化可能なフッ素樹脂を添加して調製したゴム組成物を用いたベルトが提供されている。
【0005】さらに、この水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を含有させることによって耐摩耗性や耐クラック性を向上させ、この改良したゴムにて歯付ベルトの歯部及び背面部を構成するようにしたものも提供されている(特公平5−64252号公報、特公平6−37576号公報、特公平5−262914号公報等参照。)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、自動車エンジン用の歯付ベルトのように、高負荷の伝動を強いられる歯付ベルトの場合、前記の特開平8−3374号公報で提供されたゴム組成物を用いると、歯部の歯元の耐クラック性を向上することはできるものの、ゴムの硬度が高くなるために歯部がプーリに噛み合ったとき、その衝撃のために歯部が大きく反発し、これがベルトの振動の一因となって、騒音やベルト寿命に悪影響を与えるおそれがあるという問題がある。また特開平8−3374号公報で提供されたゴム組成物を歯付ベルトの背面部に使用すると、伸びや引張弾性率が不足するために、歯付ベルトを正逆方向に曲げる使用条件下では耐クラック性において期待される程の効果を得ることができないという問題があり、さらにテンションプーリーやアイドラプーリー等と接触することにより磨耗や亀裂を起こし易いという問題もある。
【0007】また、上記のように水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を含有させたゴムで歯付ベルトの歯部及び背面部を形成すると、確かに、背面部の摩耗が少なくなると共に歯部の歯元の耐クラック性は向上するが、ベルトの振動が発生して音が生じるという問題がある。本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、耐摩耗性、耐クラック性、静粛性に優れ、寿命を大幅に向上した歯付ベルトを提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明に係る歯付ベルトは、長手方向に沿って複数設けられた歯部1と、歯部1の背面側の心線2を埋設した背面部3と、歯部1の表面及び歯底部の表面を被覆する歯布4からなる歯付ベルトにおいて、背面部3を構成するゴム層を2層構造に形成し、2層構造の外側の層3aを、100%伸長時のモジュラスが4.5MPa以上で且つ内側の層3bのゴムよりも1.0MPa以上大きく、切断時の伸度が400%以上であると共に、内側の層3bのゴムより硬度が3度以上高い物性を有するゴムで形成して成ることを特徴とするものである。
【0009】また請求項2の発明は、背面部3を構成する2層構造のゴム層の外側の層3aが、水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩とを98:2〜55:45の重量比で混合したポリマー成分100重量部に対して、有機過酸化物0.2〜10重量部を配合して架橋したゴムで形成されていることを特徴とするものである。
【0010】また請求項3の発明は、請求項2において有機過酸化物の他に、カーボンブラック5〜50重量部、可塑剤2〜15重量部を配合することを特徴とするものである。また請求項4の発明は、背面部3を構成する2層構造のゴム層の内側の層3aが、水素添加率90〜98%の水素化ニトリルゴム100重量部に対して、カーボンブラック10〜80重量部、可塑剤2〜15重量部、有機過酸化物0.2〜10重量部を配合して架橋したゴムで形成されていることを特徴とするものである。
【0011】また請求項5の発明は、歯布4として、芳香族ポリアミド繊維を少なくとも一部に含む布で形成されたものを用いることを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明する。歯付ベルトは、図1に示すように、長手方向に沿って所定の一定間隔で複数設けられる歯部1と、歯部1の背面側のベルト本体を構成する背面部3と、長手方向に沿って背面部3に埋設した複数本の心線2と、歯部1の表面及び歯部1間の歯底部の表面を被覆する歯布4から形成されるものである。そして背面部3及び歯部1はゴム層によって形成されるが、背面部3を構成するゴム層を外側(歯部1と反対側)の層3aと、内側(歯部1側)の層3bの2層構造に形成するようにしてある。
【0013】ここで本発明において、背面部3の外側の層3aを構成するゴムとしては、水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩とを98:2〜55:45の重量比で混合したポリマー成分100重量部に対して、有機過酸化物0.2〜10重量部を配合して架橋したゴムであり、且つ100%伸長時のモジュラス(引張弾性率M100)が4.5MPa以上であると共に切断時の伸度が400%以上の物性を有するゴムが用いられるものである。
【0014】背面部3の外側の層3aのゴムが、100%伸長時のモジュラスが4.5MPa未満であると、歯付ベルトがテンションプーリーやアイドラプーリー等と接触した際の応力によるゴム変形が大きくなる場合に、ゴムがこれに耐えることができなくなるために、耐摩耗性や耐クラック性が小さくなってベルト寿命が短くなるものである。また、切断時の伸度が400%未満であると、屈曲による亀裂が発生し易く、ベルト寿命が短くなるものである。このために本発明では背面部3の外側の層3aのゴムとして上記のように、100%伸長時のモジュラスが4.5MPa以上であり且つ切断時の伸度が400%以上のものを用いるものであるが、100%伸長時のモジュラスが10MPaを超えると、切断時の伸度を400%以上に調整でき難くなるので、100%伸長時のモジュラスの上限値は10MPaに設定するのが好ましい。切断時の伸度は大きいほど望ましいので上限値は特に設定されないが、100%伸長時のモジュラスが4.5〜10MPaの範囲から外れないように伸度を調整するのが好ましい。
【0015】また背面部3の外側の層3aを構成するゴムに用いられる上記の水素化ニトリルゴムとしては、耐熱性の観点から水素添加率が少なくとも90%以上であることが必要であり、92〜98%が好適である。そしてこの水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を配合することによって、モジュラス(引張弾性率)を高めるようにしているものであり、上記に規定した数値のモジュラス(引張弾性率)や切断伸度、さらに高い引き裂き強度を確保するためには、上記のように水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩とを98:2〜55:45の重量比で混合することが必要である。不飽和カルボン酸金属塩としては特に制限されるものではないが、アクリル酸亜鉛やメタクリル酸亜鉛等を用いることができる。尚、不飽和カルボン酸金属塩を用いず、カーボンブラックによる補強でモジュラス(引張弾性率)を高めることは可能であるが、ゴムの切断伸度や引き裂き強度が低下してしまい、ゴムの変形や屈曲によるクラックの発生に対する十分な耐久性を付与することができないので、好ましくない。
【0016】この水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩からなるポリマー成分に配合される上記の有機過酸化物は架橋剤として用いられているものであり、上記に規定した数値のモジュラス(引張弾性率)や切断伸度を確保するためには、上記のようにポリマー成分100重量部に対して有機過酸化物を0.2〜10重量部配合して架橋することが必要である。有機過酸化物としては、特に制限されるものではないが例えば、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等を使用することができる。またこのような有機過酸化物の他に、硫黄化合物、オキシムニトロソ化合物や、モノマー類、ポリマー類で共架橋剤として一般に使用されるものを適量添加しても差し支えない。
【0017】さらに、これらの他に、上記に規定した数値にモジュラス(引張弾性率)や切断伸度を確保をし、適度な引き裂き強度を確保する範囲で、カーボンブラックや可塑剤等を適宜添加することもできる。水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩からなるポリマー成分100重量部に対して、カーボンブラックは5〜50重量部、可塑剤は2〜15重量部配合するのが好ましい。可塑剤としては耐熱性に優れたトリメリット酸系、ポリエステル系、ポリエーテル系、フタル酸系のものなどを用いることができる。
【0018】一方、本発明において、背面部3の内側の層3aを構成するゴムとしては、水素添加率90〜98%の水素化ニトリルゴム100重量部に対して、カーボンブラック10〜80重量部、可塑剤2〜15重量部、有機過酸化物0.2〜10重量部を配合して架橋したゴムが用いられるものであり、歯部1も背面部3のこの内側の層3aと同じゴムで一体に形成されるものである。可塑剤や有機過酸化物としては、上記したものを使用することができるものであり、またこれらの他に、硫黄化合物、オキシムニトロソ化合物や、モノマー類、ポリマー類で共架橋剤として一般に使用されるものを適量添加しても差し支えない。
【0019】背面部3の外側の層3aは上記のように高モジュラスで硬度の高いゴムで形成しているために、ベルトの振動による音の発生や寿命低下のおそれがある。このために背面部3の内側の層3bを構成するゴムとして、外側の層3aのゴムよりも低モジュラスで低硬度のものを用いることによって、ベルトの振動による音の発生や寿命低下を抑えるようにしているものであり、背面部3の内側の層3bを構成するゴムは硬度が60〜75度の範囲にある必要があり(100%伸長時のモジュラスは2.5〜6.5MPaになる)、硬度65〜70度がより好適である(100%伸長時のモジュラスは3.0〜5.0MPaになる)。背面部3の内側の層3aを構成するゴムの硬度が60度未満であると、歯付ベルトがプーリと噛み合う時の歯部1の変形が大きくなって却って寿命が低下するおそれがあり、硬度が75度を超えるとベルトの振動による音の発生が大きくなるおそれがある。尚、本発明においてゴムの硬度は、JIS K 6301に記載のスプリング式硬度計を用い、JIS K 6301に規定される方法に準じて測定した硬度である。
【0020】そして背面部3の内側の層3bを構成するゴムとして上記のようなゴム組成を採用することによって、硬度やモジュラス(引張弾性率)が上記の範囲の物性のゴムで背面部3の内側の層3bを形成することができるものである。また背面部3の内側の層3bを構成するゴムの硬度やモジュラス(引張弾性率)は上記の範囲に設定されるが、ベルトの振動による音の発生や寿命低下を抑えながら高い耐摩耗性や耐クラック性を得るためには、背面部3の外側の層3aを構成するゴムは、この内側の層3bのゴムよりも、モジュラス(引張弾性率)が1.0MPa以上大きく、硬度が3度以上高くなるように設定したものを用いるのがよい。背面部3の外側の層3aと内側の層3bのゴムのモジュラス(引張弾性率)の差や硬度の差の上限値は特に設定されるものではないが、モジュラス(引張弾性率)の差の上限は7MPa程度、硬度の差の上限は15程度が好ましい。
【0021】歯付ベルトの歯部1を被覆する歯布4としては、ナイロン6、ナイロン6,6などの脂肪族ポリアミド繊維を素材とする織布に接着処理をしたものが一般に用いられるが、本発明では強度や分解温度がナイロンよりも高く耐摩耗性に優れている芳香族系のポリアミド繊維(アラミド繊維)を素材とする織布を用いるのが好ましい。芳香族ポリアミド繊維を素材とする織布を歯布4として使用することによって、歯部1の耐摩耗性や耐歯欠け性の向上を図ることができるものである。芳香族ポリアミド繊維が100%の織布である必要はなく、織布の一部が芳香族ポリアミド繊維で形成されていればよいが、表面に露出する方の経糸あるいは緯糸として芳香族ポリアミド繊維を用いるのが好ましく、また芳香族ポリアミド繊維を50%以上使用すると効果は飛躍的に高まる。芳香族ポリアミド繊維としては、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、ポリメタフェニレンイソフタルアミド、ポリパラフェニレン−3,4−ジフェニルエーテルテレフタルアミドなどを用いることができる。
【0022】また歯付ベルトを補強する心線2としては、ガラス繊維を撚り合わせて接着処理をしたものを用いるのが一般的であるが、芳香族ポリアミド繊維から形成したものを用いることもできる。歯付ベルトを製造するにあたっては、まず歯布4をエンドレスの筒状体に仕上げてこれを金型にセットし、その外周に心線2を一定で螺旋状に巻き上げ、次にこの上に内側の層3b用のゴム組成物を巻き付けると共に、さらにその上に外側の層3a用のゴム組成物のシートを巻き付ける。そして、これを加熱加圧して加硫することによって筒状の加硫成形品を成形した後、この筒状成形品を輪切りに切断することによって歯付ベルトを得ることができるものである。このようにして背面部3のゴムが外側の層3aと内側の層3bの2層構造になった歯付ベルトを得ることができるものであり、歯部1は内側の層3bのゴムによって形成されるが、成形の際に、図1に示すように外側の層3aのゴムも歯部1に一部が食い込むことになる。
【0023】尚、図2の歯付ベルトは、背面部3を外側の層3aと内側の層3bが平面で分割される2層構造になるように形成したものである。このような構造の歯付ベルトは、背面部3の内側の層3aと歯部1を先に成形した後に、これに背面部3の外側の層3bを積層して成形加硫することによって、得ることができる。
【0024】
【実施例】次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(背面部3の外側の層3aを構成するゴムの配合)表1に示す配合物をバンバリーミキサーを用いて約4分間混練りを行なうことによって、ゴム組成物3a−1,3a−2,3a−3,3a−4を得た。
【0025】得られたこのゴム組成物3a−1,3a−2,3a−3,3a−4をオープンロールで圧延し、165℃で30分間、プレス加硫して加硫ゴムシートを得た。この加硫ゴムシートについてJIS K 6301に準じて引張試験及び引き裂き試験等を行ない、物性を測定した。結果を表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】(背面部3の内側の層3b及び歯部1を構成するゴムの配合)表2に示す配合物をバンバリーミキサーを用いて約4分間混練りを行なうことによって、ゴム組成物3b−1,3b−2,3b−3,3b−4を得た。得られたこのゴム組成物3b−1,3b−2,3b−3,3b−4をオープンロールで圧延し、165℃で30分間、プレス加硫して加硫ゴムシートを得た。この加硫ゴムシートについてJIS K 6301に準じて引張試験及び引き裂き試験等を行ない、物性を測定した。結果を表2に示す。
【0028】
【表2】

【0029】(歯布4)経糸や緯糸に表3に示す繊維を使用して作製した織布を、歯布4−1,4−2として用いた。
【0030】
【表3】

【0031】(歯付ベルトの製造)表4の歯布4−1,4−2をエンドレス状の筒状体に仕上げ、これを金型にセットしその外周からS撚りのガラス繊維とZ撚りのガラス繊維からなる2本の心線2をピッチ1.45mmで交互に配置するように巻き上げ、次にこの上に表2のゴム組成物3b−1,3b−2,3b−3,3b−4のシートを、さらにその上に表1のゴム組成物3a−1,3a−2,3a−3,3a−4のシートを巻き付けた。この後、これを通常の圧入による加圧方法(160℃で30分間加圧加硫して成形)によって、筒状の加硫成形品を得た。そしてこの筒状成形品を輪切りに切断することによって、図1に示すような、実施例1〜4及び比較例1〜5の105S8M19(歯形S8M、歯数105、幅19.1mm、歯ピッチ8.000mm)の歯付ベルトを得た。尚、表1と表2の2種類のゴムシートは事前に張り合わせておいて使用することもできる。
【0032】表4に実施例1〜4及び比較例1〜5の各材料の組み合わせを示す。また、実施例1〜4及び比較例1〜5で得た歯付ベルトについて、物性及び走行性能を測定し、結果を表4に示した。歯剪断力の測定は、図3の治具10を用い、歯付ベルトAに垂直方向にベルト幅1mm当たり9.8N・cmで締め付けた後に50mm/minの引張スピードで上向き矢印方向へ引っ張り、歯部1の剪断力を測定することによって行なった。図3において11は締め付けボルト、12は歯付ベルトAの歯部1に噛み合う爪である。
【0033】また、走行性能のうち走行時間の試験は、図4の試験機を用いて、雰囲気温度100℃で行ない、背面部3のゴムクラック、歯部1の歯元のクラックなど歯付ベルトとしての機能が果たせなくなった時点をもって寿命とし、そのときまでの走行時間を表4に示した。図4において13は歯数24の駆動プーリ(6000rpm)、14は歯数48の従動プーリ、15は歯数48の従動プーリ、16は50mmφの従動プーリ、17は50mmφのオートテンショナーである。
【0034】また発音の試験は、図5の試験機を用いて歯付ベルトAを走行させた際の発音をマイク18で集音することによって行ない、発音レベルは聴覚を数値化して5段階で評価判定したものであり、数値が大きいほど音が静かで、4.0以上が合格レベルである。図5において19は歯数24の駆動プーリ(3000rpm)、20は歯数48の従動プーリ、21は50mmφのテンションプーリである。
【0035】
【表4】

【0036】
【発明の効果】上記のように本発明は、長手方向に沿って複数設けられた歯部と、歯部の背面側の心線を埋設した背面部と、歯部の表面及び歯底部の表面を被覆する歯布からなる歯付ベルトにおいて、背面部を構成するゴム層を2層構造に形成し、2層構造の外側の層を、100%伸長時のモジュラスが4.5MPa以上で且つ内側の層のゴムよりも1.0MPa以上大きく、切断時の伸度が400%以上であると共に、内側の層のゴムより硬度が3度以上高い物性を有するゴムで形成するようにしたので、背面部の外側の層は高モジュラスで高硬度のゴムで形成されていると共に背面部の内側の層は低モジュラスで低硬度のゴムで形成されており、背面部の外側の層で耐摩耗性や耐クラック性高めることができると共に、背面部の内側の層で静粛性や寿命を向上することができるものである。
【0037】また請求項2の発明は、背面部を構成する2層構造のゴム層の外側の層を、水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩とを98:2〜55:45の重量比で混合したポリマー成分100重量部に対して、有機過酸化物0.2〜10重量部を配合して架橋したゴムで形成するようにしたので、請求項1の物性を有するもので背面部の外側の層のゴムを形成することができるものである。
【0038】また請求項3の発明は、請求項2において有機過酸化物の他に、カーボンブラック5〜50重量部、可塑剤2〜15重量部を配合するようにしたので、背面部の外側の層のゴムの物性として高いモジュラスや引き裂き強度を確保することができるものである。また請求項4の発明は、背面部を構成する2層構造のゴム層の内側の層を、水素添加率90〜98%の水素化ニトリルゴム100重量部に対して、カーボンブラック10〜80重量部、可塑剤2〜15重量部、有機過酸化物0.2〜10重量部を配合して架橋したゴムで形成するようにしたので、静粛性や寿命向上に必要な硬度やモジュラスの物性を有するもので背面部の内側の層のゴムを形成することができるものである。
【0039】また請求項5の発明は、歯布として、芳香族ポリアミド繊維を少なくとも一部に含む布で形成されたものを用いるようにしたので、芳香族ポリアミド繊維は強度や分解温度が高く耐摩耗性に優れているものであり、歯部の耐摩耗性や耐歯欠け性を向上することができるものである。
【出願人】 【識別番号】000006068
【氏名又は名称】三ツ星ベルト株式会社
【出願日】 平成9年(1997)9月24日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清 (外1名)
【公開番号】 特開平11−94027
【公開日】 平成11年(1999)4月9日
【出願番号】 特願平9−258670