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【発明の名称】 排気管支持装置
【発明者】 【氏名】河本 洋一

【氏名】草下 真一

【要約】 【課題】サージングが発生する周波数域を2以上に分散して全体として低動ばね化を図る。

【解決手段】ゴム弾性体により同一厚みを有するハンガーラバー1を一体に形成し、上端部を第1取付部11、下端部を第2取付部とする。第1取付部に車体側の支持部材が装入される第1取付孔2aを、第2取付部に排気管の支持部材が装入される第2取付孔2bをそれぞれ貫通形成する。第1及び第2取付孔間に、種々の形状の透孔51〜57と、凹溝61,62を形成することにより、第1及び第2取付孔を互いに連結する8つの経路を有する連結ばね部71〜78を形成し、各経路の連結ばね部の長さ及び断面積を互いに異ならせてそれぞれの固有周波数が互いに異なるようにする。各連結ばね部の複数種類の固有周波数に対応してサージングの生じる共振周波数域を複数に分散させ、各共振エネルギーの低減化により各共振による動ばねのジャンプ度合いを低減させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 排気管を被支持体に対し吊り下げ支持する排気管支持装置において、上端側に配設されて上記被支持体側に取り付けられる第1取付部と、下端側に配設されて上記排気管側に取り付けられる第2取付部と、上記第1取付部と第2取付部とを互いに連結するものであって互いに異なる固有周波数を有するように形成された2以上の連結ばね部とを備えていることを特徴とする排気管支持装置。
【請求項2】 請求項1において、各連結ばね部は、ゴム弾性体により長さ及び断面積の一方もしくは双方が互いに異なるように形成されていることを特徴とする排気管支持装置。
【請求項3】 請求項2において、互いに隣接する両連結ばね部は、第1取付部と第2取付部とを結ぶ経路の一部部分が共通にされていることを特徴とする排気管支持装置。
【請求項4】 請求項2において、第1取付部と、第2取付部と、各連結ばね部とがゴム弾性体により一体に形成され、互いに隣接する両連結ばね部は、その両連結ばね部間に配設されて内周面が滑らかに湾曲した形状の透孔により隔てられていることを特徴とする排気管支持装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、原動機等の振動発生源に接続された排気管を車体等の被支持体に対し吊り下げ支持するために用いられる排気管支持装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、この種の排気管支持装置として、例えば図6に示すようなものが知られている(例えば実開平2−24028号公報、実開平4−84711号公報参照)。このものは、被支持体としての車体側の支持部材が嵌入される第1取付孔2aを有する第1取付部と、排気管の支持部材が嵌入される第2取付孔2bを有する第2取付部と、この第1取付部と第2取付部とをその両側位置で互いに連結する一対の連結ばね部700,700とが同一の肉厚(図6の紙面に直交する方向の厚み)を有するゴム弾性体により一体にかつ少なくとも左右対称形状に形成されたものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記従来の排気管支持装置においては、上記一対の連結ばね部700,700が左右対称形状に形成されてその質量及びばね定数が共に同じになるため、その一対の連結ばね部700,700が固有振動を生じる固有周波数は互いに同一になる。このため、図8もしくは図9に例示するように上記質量及びばね定数により定まる一箇所の特定高周波領域(図例では500Hz前後の各周波数域)で位相の反転が生じるとともに、上記一対の連結ばね部700,700は上下の車体及び排気管の動きとは関係なく共振(サージング)が生じることになる。この共振の結果、動ばね定数のジャンプ(急増)が生じてその値が高くなり振動の伝達率の悪化を招くことになる一方、その共振が排気管自体の固有周波数域または車体側の固有周波数域(例えばいわゆるワンボックスカーであると300〜400Hz)と重なると、こもり音の増大等を招くことになる。
【0004】本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、サージングが発生する周波数域を2以上に分散して全体として低動ばね化を図ることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、請求項1に記載の如く、排気管40(図1参照)を被支持体30に対し吊り下げ支持する排気管支持装置を前提とし、上端側に配設されて上記被支持体30側に取り付けられる第1取付部110と、下端側に配設されて上記排気管40側に取り付けられる第2取付部120と、上記第1取付部110と第2取付部120とを互いに連結するものであって互いに異なる固有周波数を有するように形成された2以上の連結ばね部70a,70b,70cとを備えることを基本事項として特定するものである。
【0006】ここで、排気管40としては振動源である原動機に接続されて原動機からの振動が伝達されるものであり、排気管本体の他にこの排気管本体に連通されるマフラー等も含むものである。また、被支持体30としてはその原動機が搭載された車体の他に固定設置物であってもよい。第1取付部110もしくは第2取付部120としては被支持体30もしくは排気管40からの支持部材が装入される取付孔を備えたものであっても、逆に上記被支持体30もしくは排気管40の取付孔に対し取り付けられる支持部を備えたものであってもよい。上記第1取付部110と第2取付部120と各連結ばね部70a,70b,70c,とを例えばゴムにより互いに一体に形成しても、あるいは、互いに別体により形成して接続するようにしてもよい。上記連結ばね部の本数としては、互いに異なる固有周波数のものが最低2本あればよく、好ましくは3本以上、あるいは、4本以上あればよい。なお、上記の「2本」もしくは「3本」は異なる固有周波数が「2種類」もしくは「3種類」と等価である。また、上記各連結ばね部70a,70b,70cとして、個別のマス部材とばね部材とにより形成してもよく、この場合には、ばね部材としてのゴム弾性体中にマス部材としての重錘を埋め込むことにより連結ばね部を構成してもよい。そして、上記マス部材の質量と、ばね部材のばね定数とを各連結ばね部で変化するように設定することにより、それぞれの固有周波数を変化させるようにすればよい。一方、各連結ばね部70a,70b,70cをゴム弾性体により形成する場合には、請求項2記載の如くその長さ及び断面積の一方もしくは双方を互いに異なるように設定することにより、それぞれの連結ばね部の固有周波数を互いに異なるようにすることができる。
【0007】上記の本発明の構成の場合、第1取付部と第2取付部とを互いに連結する2以上の連結ばね部が互いに異なる固有周波数を有しているため、サージングが生じる周波数域も2以上に分散されることになる。この分散された各サージング域での位相反転のエネルギーは1つの周波数域でのみサージングが生じる場合と比べ小さくなるため、各サージング域における絶対ばね定数のジャンプの度合いも上記1つの周波数域でのみサージングが生じる従来の場合よりも小さくなり、全体として低動ばね化(絶対ばね定数の低減化)が図られることになる。
【0008】また、この発明において、各連結ばね部をゴム弾性体により形成する場合に、請求項3記載の如く互いに隣接する両連結ばね部の第1取付部と第2取付部とを結ぶ経路の一部を共通にすることにより、互いに一部が共通の部分を有する2本の連結ばね部を形成すれば、見掛け上は2本の連結ばね部であっても、第1取付部と第2取付部とを接続する経路を4本にすることが可能になり、それに伴い4種類の固有周波数を備えるようにすることが可能になる。
【0009】さらに、上記発明において、請求項4記載の如く第1取付部と、第2取付部と、各連結ばね部とをゴム弾性体によって一体に形成し、互いに隣接する両連結ばね部を、その両連結ばね部間に配設されて内周面が滑らかに湾曲した形状の透孔によって隔てるようにすることにより、局部的な応力集中を回避する上で有利となる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に基いて説明する。
【0011】図2は、本発明の実施形態に係る排気管支持装置としてのハンガーラバー1を示している。このハンガーラバー1は、均一なゴム弾性体により一定厚みを有し上下方向に長い略楕円もしくは略長円形状に形成されている。このハンガーラバー1は、その上端部に第1取付孔2aが形成された第1取付部11と、下端部に第2取付孔2bが形成された第2取付部12とを有している。そして、上記第1取付孔2aに対し被支持体としての車体3側の支持部材3aが装入され、上記第2取付孔2bに対し排気管4側の支持部材4aが装入されており、これにより、排気管4が車体3に対しハンガーラバー1を介して吊り下げ支持されている。
【0012】図3〜図5は上記ハンガーラバー1の具体的形状を示している。このハンガーラバー1の上記第1及び第2の両取付孔2a,2bの間の部分には、種々の形状の複数(図例では7つ)の透孔51〜57がハンガーラバー1の肉厚方向(図3及び図5の紙面に直交する方向)に貫通して形成されているとともに左右両側からそれぞれ内方に深く切れ込んで上記肉厚方向に延びる複数(図例では2つ)の凹溝61,62が形成されており、この各透孔51〜57及び各凹溝61,62によって区画された部分によって上記第1及び第2の両取付孔2a,2bを上下方向に互いに連結する複数(図例では8つ)の連結ばね部71〜78が形成されている。
【0013】上記各透孔51〜57や各凹溝61,62はその周面が円弧面とされて滑らかに湾曲した形状とされており、このような各透孔51〜57及び各凹溝61,62により区画された上記各連結ばね部71〜78も上記両取付孔2a,2b間において滑らかに屈曲して延びている。
【0014】上記第1〜第8の8つの連結ばね部71〜78は、上記両取付孔2a,2bを結ぶ経路(図3及び図5の二点鎖線参照)の長さ及び断面積が互いに異なるように形成され、かつ、その経路の途中においてその一部が互いに重複して共通部分を含んでいる。以下、上記第1〜第8の各連結ばね部71〜78の経路について詳細に説明する。説明の都合上、第2取付孔2bを始点として第1取付孔2aを終点とする経路について図5に基づいてそれぞれ説明する。
【0015】第1連結ばね部71は、第2取付孔2bから第1透孔51及び第2透孔52と右側面13とにより区画された部分81、第2透孔52と第1凹溝61とにより区画された部分82、第5透孔55と上記第1凹溝61とにより区画された部分83、並びに、第5透孔55と右側面13とにより区画された部分84を経て第1取付孔2aに至る。
【0016】第2連結ばね部72は、上記第1連結ばね部71と同じ始点から第1透孔51と第2透孔52とにより区画された部分85、第2透孔52と第3透孔53とにより区画された部分86と、第2透孔52と第4透孔54とにより区画された部分87、第2透孔と第5透孔55とにより区画された部分88、並びに、上記第5透孔55と第1凹溝61及び右側面13とにより区画された各部分83,84を経て第1取付孔2aに至る。
【0017】第3連結ばね部73は、第2取付孔2bから第1透孔51と第3透孔53とにより区画された部分89を経て上記第2透孔52と第3透孔53とにより区画された部分86で上記第2連結ばね部72と合流し、以後、上記第2連結ばね部72と同じ経路を経て第1取付孔2aに至る。
【0018】第4連結ばね部74は、第2取付孔2bから第3透孔53と左側面14とにより区画された部分90、第3透孔53と第2凹溝62とにより区画された部分91、第3透孔53と第5透孔55とにより区画された部分92、及び、第3透孔53と第4透孔54とにより区画された部分93を経て上記第2透孔52と第4透孔54とにより区画された部分87で上記第2もしくは第3連結ばね部72,73と合流し、以後、上記第2もしくは第3連結ばね部72,73と同じ経路を経て第1取付孔2aに至る。
【0019】第5連結ばね部75は、上記第4連結ばね部74の部分93のみが第4透孔54と第5透孔55とにより区画された部分94と置き換わり、この部分以外は上記第4連結ばね部74と同じ経路を経て第2取付孔2bから第1取付孔2aに至る。
【0020】第6連結ばね部76は、上記第4もしくは第5連結ばね部74,75と同じ始点及び部分90を経て、第2凹溝62と第5透孔55とにより区画された部分95に至り、この部分95から第5透孔55と第6透孔56とにより区画された部分96、及び、第5透孔55と第7透孔57とにより区画された部分97を経て第1取付孔2aに至る。
【0021】第7連結ばね部77は、第2取付孔2bから上記第6連結ばね部76と同じ経路を経て上記部分96に至り、この部分96から第6透孔56と第7透孔57とにより区画された部分98に分岐し第7透孔57と左側面14とにより区画された部分100を経て第1取付孔2aに至る。
【0022】第8連結ばね部78は、第2取付孔2bから上記第6もしくは第7連結ばね部76,77と同じ経路を経て第2凹溝62の底の部分95に至り、この部分95から第6透孔56と第2凹溝62とにより区画された部分99に分岐し第6透孔及び第7透孔57と左側面14とにより区画された部分100を経て第1取付孔2aに至る。
【0023】以上の如く形成された各連結ばね部71〜78は、その経路長さが互いに異なるものとされ、加えて、肉厚は一定であるものの互いに隣接する両透孔間の間隔、各凹溝61,62とそれに隣接する透孔との間の間隔、左もしくは右側面13,14とそれに隣接する各透孔との間の間隔がそれぞれ種々に変化されて各部分81〜100の幅が異なるものとされ、各経路の断面積が互いに異なるものとされている。
【0024】このように構成されたハンガーラバー1の場合には、上記各連結ばね部71〜78の質量及びばね定数が互いに異なるため、上記各連結ばね部71〜78は互いに異なる固有周波数を有することになる。このため、排気管4側もしくは車体3側から高周波振動が入力した場合に、各連結ばね部71〜78が共振することになる周波数域が互いに異なり、発生するサージングが上記各連結ばね部71〜78の数だけ分散されることになる。つまり、サージングが固有周波数の異なる2以上の連結ばね部に対応してサージングが2以上に分散される上に、この場合における各連結ばね部71〜78の各1本ずつの質量は、第1及び第2取付孔2a,2bを互いに連結する連結ばね部として同一長さ及び断面積の2本のもので構成する従来の場合(図6参照)よりも小さくなるため、上記の2以上に分散された各サージングでの共振エネルギーは小さくなる。これにより、それぞれのサージングにおける動ばね定数の上昇を抑制することができ、全体として低動ばね化を図ることができるようになる。
【0025】
【実施例】上記の図3〜図5に示す実施形態と、図6に示す従来例とを用い、第1取付孔2aと第2取付孔2bとの間で上下方向の振動を入力させる加振試験を行い、上下方向振動に対する動ばね特性を比較した。
【0026】この結果について、周波数(Hz)を横軸に、絶対ばね定数(kgf/mm)及び位相(degree)を縦軸にして図7〜図9に示す。図7は上記実施形態についての動ばね特性を、図8は上記実施形態とほぼ同じサイズの従来例についての動ばね特性を、図9は図8のものよりも大きいサイズの従来例についての動ばね特性をそれぞれ示す。図7〜図9において、実線が絶対ばね定数の変化を、破線が位相の変化をそれぞれ示している。
【0027】図8もしくは図9の従来例の場合を見ると、図8では500Hzちょっとの周波数域で、図9では500Hz少し手前の周波数域でそれぞれ位相の反転が生じるとともに共振が生じ、この共振が生じる結果、動ばねのジャンプが生じている。すなわち、従来例では一対の連結ばね部700,700(図6参照)が互いに同じ長さ及び断面積を有して質量及びばね定数が互いに同じであるため、連結ばね部が2本あってもそれぞれが同一の固有周波数を有し、その結果、同一の周波数域で位相反転及び共振が生じ、その共振による動ばねのジャンプ度合いも大きなものになる。
【0028】これに対し、図7の実施形態の場合を見ると、連結ばね部として互いに異なる固有周波数を有する複数のものを有しているため、それに対応して位相反転及び共振を生じる周波数域が複数生じている。そして、上記従来例の2本の連結ばね部に基づき1つの位相反転を生じる場合よりも実施形態の8本の連結ばね部の方が各1本毎の質量は小さくなるため、上記の位相の反転を生じるそれぞれの共振周波数域での共振エネルギーは従来例の場合よりも小さくなる。このため、上記のそれぞれ共振周波数域での共振により絶対ばね定数がジャンプする度合いも上記従来例の場合よりも小さくなる。つまり、位相反転が生じる周波数域が2以上に分散されれば、それぞれの周波数域での共振に基づく絶対ばね定数のジャンプ度合いは、位相反転が1つの周波数域でのみ生じる従来の場合よりも小さくなる。これにより、全体として従来例の場合よりも低動ばね化が図られている。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1〜4のいずれかに記載の本発明における排気管支持装置によれば、サージングが生じる共振周波数域を2以上に分散させることができ、各共振周波数域における絶対ばね定数のジャンプの度合いも1つの周波数域でのみサージングが生じる従来の場合よりも小さくすることができる。この結果、全体として低動ばね化を図ることができるようになる。
【出願人】 【識別番号】000201869
【氏名又は名称】倉敷化工株式会社
【出願日】 平成10年(1998)2月19日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】前田 弘 (外2名)
【公開番号】 特開平11−230262
【公開日】 平成11年(1999)8月27日
【出願番号】 特願平10−36938