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【発明の名称】 構造物の制震方法および可変減衰装置
【発明者】 【氏名】丹羽 直幹

【要約】 【課題】地震時等にブレース等の付加耐震要素の振動を利用、増加させるよう可変減衰装置の減衰係数を切り換えることにより減衰力を高め、より効果的に構造物の応答を低減する。

【解決手段】可変減衰装置1の左右の油圧室5a,5bの油圧P1 ,P2 とシリンダ2とピストン3の相対変位δ1 の情報を、コントローラ8に送り、それらの情報に基づいてコントローラ8より流量制御弁7に制御指令を送る。この可変減衰装置1を柱梁架構とブレース等の付加耐震要素との間に設置し、付加耐震要素の柱梁架構に対する相対的な振動を利用し、付加耐震要素の振動を増加させつつ可変減衰装置の減衰力を増すように可変減衰装置1の減衰係数Cを制御する。また、可変減衰装置1の流量制御弁7と並列にリリーフ弁10を設け、減衰係数が最小値Cmin から最大値Cmax に切り換わる際に、付加耐震要素に過大な力が生じないようにする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 構造物の柱梁架構内に付加耐震要素を設け、柱梁架構と付加耐震要素間に可変減衰装置を設置し、構造物に地震等の振動外力が入力した際の柱梁架構の応答等をもとに可変減衰装置の減衰係数を制御することにより、柱梁架構に減衰力を付与して構造物の応答を低減する構造物の制震方法において、前記付加耐震要素の前記柱梁架構に対する相対的な振動を利用し、前記付加耐震要素の振動を増加させつつ可変減衰装置の減衰力を増すように前記可変減衰装置の減衰係数を制御することを特徴とする構造物の制震方法。
【請求項2】 前記可変減衰装置は、前記柱梁架構と付加耐震要素の一方に連結されるシリンダと、前記シリンダ内で往復動し、前記柱梁架構と付加耐震要素の他方に連結されるロッドを備えたピストンと、前記ピストンの両側に形成された油圧室と、前記両油圧室を連結する流路と、前記流路に設けられた流量制御弁と、前記流量制御弁の開度を制御する制御手段とを有するものである請求項1記載の構造物の制震方法。
【請求項3】 前記可変減衰装置は、前記流量制御弁の開度の制御により減衰係数Cを最小値Cmin と最大値Cmax との間で切換え可能としたものであり、可変減衰装置の初期状態の減衰係数Cを最大値Cmax とし、下記■式または■式、 (dδ(t) /dt)・δ2 (t) <0 …■ (dδ(t) /dt)・(dδ(t−Δt) /dt) …を満足すれば、最小値Cmin に切り換え、次に下記式、 |dδ1 (t) /dt|<V0 が満足される状態で最大値Cmax に切り換え、次に■式または■式が満足されるまで最大値Cmax を維持することを特徴とする請求項2記載の構造物の制震方法。ただし、C=Cmax の状態で、 dδ(t) /dt= d(δ1 (t) +δ2 (t) )/dt …■ δ2 (t) =F(t) /K2 ここで、δ1 は可変減衰装置のシリンダとロッドの相対変位、δ2 は可変減衰装置設置位置での付加耐震要素の変位、Fは可変減衰装置の発生する減衰力(F(t) =A・(P1 (t) −P2 (t) )、Aはピストン面積、P1 (t) 、P2 (t) はピストン両側の油圧室の油圧、K2 は付加耐震要素の剛性。
【請求項4】 柱梁架構と付加耐震要素の一方に連結されるシリンダと、前記シリンダ内で往復動し、前記柱梁架構と付加耐震要素の他方に連結されるロッドを備えたピストンと、前記ピストンの両側に形成された油圧室と、前記両油圧室を連結する流路と、前記流路に設けられた流量制御弁と、前記流量制御弁の開度を制御する制御手段とを有する可変減衰装置において、前記制御手段による流量制御弁の開度の制御により減衰係数Cを最小値Cminと最大値Cmax との間で切換え可能であり、前記両油圧室にはそれぞれの油圧P1 (t) 、P2 (t) を測定するための油圧計が取り付けられ、さらに前記シリンダとロッドの相対変位δ1 を求める変位計が設けられており、前記制御手段により、初期状態の減衰係数Cを最大値Cmax とし、下記■式または■式、 (dδ(t) /dt)・δ2 (t) <0 …■ (dδ(t) /dt)・(dδ(t−Δt) /dt) …を満足すれば、最小値Cmin に切り換え、次に下記式、 |dδ1 (t) /dt|<V0 が満足される状態で最大値Cmax に切り換え、次に■式または■式が満足されるまで最大値Cmax を維持するように設定したことを特徴とする可変減衰装置。ただし、C=Cmax の状態で、 dδ(t) /dt= d(δ1 (t) +δ2 (t) )/dt …■ δ2 (t) =F(t) /K2 ここで、δ1 は可変減衰装置のシリンダとロッドの相対変位、δ2 は可変減衰装置設置位置での付加耐震要素の変位、Fは可変減衰装置の発生する減衰力(F(t) =A・(P1 (t) −P2 (t) )、Aはピストン面積、P1 (t) 、P2 (t) はピストン両側の油圧室の油圧、K2 は付加耐震要素の剛性。
【請求項5】 減衰係数が最小値Cmin から最大値Cmax に切り換わる際に、可変減衰装置の発生する減衰力Fが設定値以上に増加しないように、前記流路に前記流量制御弁とともに、リリーフ弁を設けてある請求項4記載の可変減衰装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、地震時等における構造物の応答を低減するための構造物の制震方法およびその制震方法に用いられる可変減衰装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】構造物の柱梁架構内に減衰装置を可変とする可変減衰装置(例えば、特公平7−45781号公報参照)をブレース等の付加耐震要素を介して設置する制震システムがある。
【0003】そのような制震システムを用いた制震方法は各種考えられている。例えば、特公平7−47896号公報や特許第2513297号公報に記載されたもの等がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】これらは、図7の架構例(柱梁架構を構成する柱11、梁12と付加耐震要素としてのブレース13との間に可変減衰装置1を設置している)および振動モデル(Mは柱梁架構等の質量、K1 は柱梁架構等の剛性、mは付加耐震要素の質量、K2 は付加耐震要素の剛性、Cは可変減衰装置の減衰係数、δ1 は可変減衰装置のシリンダとロッド間の変位、δ2 は付加耐震要素の変位、δは柱梁架構の層変位)に示すように、構造物に地震等の振動外力が入力した際に可変減衰装置1の減衰係数Cを制御することにより、柱梁架構に減衰力を付与して柱梁架構、ひいては構造物全体の応答を低減するものであるが、主として柱梁架構の応答をもとに制御しているため、図8の荷重−変形関係で示す構造上の制約範囲を越えることができない。
【0005】本願発明は、地震時等にブレース等の付加耐震要素の振動を利用、増加させるよう可変減衰装置の減衰係数を切り換えることにより減衰力を高め、より効果的に構造物の応答を低減することができる制震方法およびその制震方法に使用する可変減衰装置を提供することを目的としたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本願の請求項1に係る発明は、構造物の柱梁架構内に付加耐震要素を設け、柱梁架構と付加耐震要素間に可変減衰装置を設置し、構造物に地震等の振動外力が入力した際の柱梁架構の応答等をもとに可変減衰装置の減衰係数を制御することにより、柱梁架構に減衰力を付与して構造物の応答を低減する構造物の制震方法において、前記付加耐震要素の前記柱梁架構に対する相対的な振動を利用し、前記付加耐震要素の振動を増加させつつ可変減衰装置の減衰力を増すように前記可変減衰装置の減衰係数を制御することを特徴とするものである。
【0007】すわなち、ブレースあるいは剛性の小さいものとしては間柱等の付加耐震要素と柱梁架構の間に可変減衰装置を設置し、その制御において付加耐震要素の振動を利用することで、地震等による振動外力のエネルギーを付加耐震要素により多く蓄えさせ、消費させることで、構造物の応答を低減させようとするものである。
【0008】請求項2は、請求項1の制震方法において、油封式の可変減衰装置の構造を限定したものであり、柱梁架構と付加耐震要素の一方に連結されるシリンダと、前記シリンダ内で往復動し、前記柱梁架構と付加耐震要素の他方に連結されるロッドを備えたピストンと、前記ピストンの両側に形成された油圧室と、前記両油圧室を連結する流路と、前記流路に設けられた流量制御弁と、前記流量制御弁の開度を制御する制御手段とを有する可変減衰装置を用いる場合である。
【0009】請求項3は、さらに可変減衰装置の構成を限定したものであり、後述する請求項4に係る可変減衰装置を請求項2記載の制震方法に適用する場合である。
【0010】本願の請求項4に係る可変減衰装置は、柱梁架構と付加耐震要素の一方に連結されるシリンダと、前記シリンダ内で往復動し、前記柱梁架構と付加耐震要素の他方に連結されるロッドを備えたピストンと、前記ピストンの両側に形成された油圧室と、前記両油圧室を連結する流路と、前記流路に設けられた流量制御弁と、前記流量制御弁の開度を制御する制御手段とを有する可変減衰装置において、前記制御手段による流量制御弁の開度の制御により減衰係数Cを最小値Cminと最大値Cmax との間で切換え可能であり、前記両油圧室にはそれぞれの油圧P1 (t) 、P2 (t) を測定するための油圧計が取り付けられ、さらに前記シリンダとロッドの相対変位δ1 を求める変位計が設けられており、前記制御手段により、初期状態の減衰係数Cを最大値Cmax とし、下記■式または■式、 (dδ(t) /dt)・δ2 (t) <0 …■ (dδ(t) /dt)・(dδ(t−Δt) /dt) …を満足すれば、最小値Cmin に切り換え、次に下記式、 |dδ1 (t) /dt|<V0 が満足される状態で最大値Cmax に切り換え、次に■式または■式が満足されるまで最大値Cmax を維持するように設定したことを特徴とするものである。
【0011】ただし、C=Cmax の状態で、 dδ(t) /dt= d(δ1 (t) +δ2 (t) )/dt …■ δ2 (t) =F(t) /K2 ここで、δ1 は可変減衰装置のシリンダとロッドの相対変位、δ2 は可変減衰装置設置位置での付加耐震要素の変位、Fは可変減衰装置の発生する減衰力(F(t) =A・(P1 (t) −P2 (t) )、Aはピストン面積、P1 (t) 、P2 (t) はピストン両側の油圧室の油圧、K2 は付加耐震要素の剛性。
【0012】なお、この可変減衰装置を設置した構造物において、■式に示されるように減衰力の制限機構を設けてCmax への切換え時の衝撃力を回避した状態で、システム(装置、制御、通信)の時間遅れを補償するためには、V0 をそれに応じて大きく設定することで対処することができる。
【0013】請求項5は請求項4に係る可変減衰装置において、減衰係数が最小値Cmin から最大値Cmax に切り換わる際に、可変減衰装置の発生する減衰力Fが設定値以上に増加しないように、前記流路に前記流量制御弁とともに、リリーフ弁を設けてある場合を限定したものである。
【0014】
【発明の実施の形態】図1は、本願発明の一実施形態における油封式の可変減衰装置1の概要を示したもので、主な構成としては、シリンダ2、ピストン3、ピストンロッド4、シリンダ2内のピストン3の左右に形成された油圧室5a,5b、両油圧室5a,5b間をつなぐ流路6に設けられた流量制御弁7、流量制御弁7の開度を制御する制御手段としてのコントローラ8を有する。
【0015】また、両油圧室5a,5bには、油圧計9a,9bが設けられており、これらの油圧計9a,9bによって測定される油圧P1 ,P2 と、変位計(図示せず)によって測定されるシリンダ2とピストン3の相対変位δ1 の情報が、コントローラ8に送られ、その情報に基づいてコントローラ8が流量制御弁7に制御指令を送る。
【0016】流量制御弁7は開度指令が全閉のとき減衰係数の最大値Cmax 、全開のとき減衰係数の最小値Cmin を装置に与える。
【0017】なお、この例では流量制御弁7と並列にリリーフ弁10を設け、減衰係数がCmin からCmax に切り換わる際に生じる衝撃力による損傷を防ぎ、付加耐震要素に過大な力が生じないように、減衰力Fが一定以上に増加しない機構としている。
【0018】図2は、このような減衰力Fの制限機構を用いた場合の制震方法の定常状態における層間の荷重−変形関係を示したものである。この例では、減衰力Fの制限値Fmax を、構造上の制約を受ける図8のFと合わせてあるが、構造上の制約を超えるエキルギー吸収が果たせる層間の荷重−変形関係となっている。
【0019】図7(b) の1ユニットの振動モデルを設定して、シミュレーション解析例を以下に示す。ここで用いた諸元は、M=9800t、m=9.8t、K1 =4t/cm、K2 =1t/cm、Cmax =1000t/kine、Cmin =0t/kine、Fmax =10tであり、そのため剛性比はN=K2 /K1 =0.25、K1 のみによる固有周期は約10秒となる。
【0020】この振動系に固有周期10秒、最大加速度1cm/sec2 の正弦波を50秒間入力する。
【0021】本制震方法での変位δ、速度dδ/dt、減衰力Fの時刻歴波形により、制御の様子を図3(a) に示す。
【0022】最大変位は約4cmであり、制御をしない場合の図3(b) の変位28cmと比較すると1/7程度に低減されている。
【0023】層の荷重−変形関係を図4に示す。これは、ほぼ図2に示したような荷重−変形関係となっていることが確認できる。
【0024】また、本願発明の場合、通常の制御方法ではあまり大きな応答低減効果が得られない剛性比Nが小さな場合にも有効である。
【0025】例えば、図5(a) に剛性比N=0.05で、本制震方法を適用した場合の変位、速度、減衰力の時刻歴波形を示す。これと、図5(b) に示した最適なパッシブダンパの場合の変位24cmと比較すると、本制御により変位12cmと、1/2程度にさらに低減できていることがわかる。
【0026】剛性比の小さな場合の可変減衰装置1の設置例の1つとして、間柱14に設置した場合を図6に示す。この例のように本発明では、これまで剛性比が小さくなるため効果が期待できなかった設置方法でも十分な効果を発揮するため、制震装置設置の自由度が増大する。
【0027】
【発明の効果】■柱梁架構内に可変減衰装置を設置して、ブレース等の付加耐震要素にエネルギーをより多く蓄え、消費することで主体架構である柱梁架構の応答低減を果たすことができる。
【0028】■可変減衰装置はバルブの開度をコントロールするため、わずかなエネルギーにより駆動でき、省エネルギーの制震構造物となる。
【0029】■特に、付加耐震要素の剛性が柱梁架構の剛性と比較して小さい場合において有効である。
【0030】■さらに、減衰力の制限値を設けることで、可変減衰切換え時の衝撃を発生させないようにすることができる。
【出願人】 【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
【出願日】 平成10年(1998)2月19日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】久門 知 (外1名)
【公開番号】 特開平11−230252
【公開日】 平成11年(1999)8月27日
【出願番号】 特願平10−37157