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【発明の名称】 筒型防振装置
【発明者】 【氏名】日比 悟

【要約】 【課題】筒型防振装置のゴム弾性体支持部の両側延出先端面に塗布した圧入液が、ゴム弾性体支持部をブラケット等の円形装着孔に圧入するときに先端面から流れ落ちないようする。

【解決手段】内筒金具11の外周面に、軸直角方向の両側に延出したゴム弾性体支持部12を設けたブッシュ部10を取付金具20の筒状部材21に圧入する際に、圧入をスムーズに行うためにゴム弾性体支持部の延出先端面12c1 に圧入液が塗布される。延出先端面に圧入液を保持できる複数のスリット状の溝部12dが設けられているため、圧入中に圧入液が延出先端面から流れ落ちることがないので、圧入がスムーズに行われる。そのため、ゴム弾性体支持部を、容易に取付金具の筒状部材内にゴム層に歪のない均一な状態で圧入できると共に適正な位置に固定させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 円筒形の装着部を有し、車両の支持部側及び被支持部側のいずれか一方に連結される取付金具と、該取付金具の円筒形の装着部に同軸的に挿入配置されると共に前記支持部側及び被支持部側のいずれか他方に連結される内筒金具と、該内筒金具の外周面に固着されて該内筒金具の軸直角方向両側に向けて延出し、両側の延出先端面が凸曲面形状に形成され、該両側の延出先端面に圧入液が塗布された状態で前記取付金具の装着部内に圧入されるゴム弾性体支持部と、該ゴム弾性体支持部の延出方向に直交する両側面上にそれぞれ一体的に突出形成されて、突出先端面が前記装着部の内周面に対して隙間を設けて配設される弾性体ストッパ部とを備えてなる筒型防振装置において、前記ゴム弾性体支持部の延出先端面に前記圧入液を保持できる複数のスリット状の溝部または複数の孔状の凹部を設けたことを特徴とする筒型防振装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両の支持部と被支持部の間例えば車体とエンジンの間に介装されて、被支持部のローリングを弾性的に抑える筒型防振装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の筒型防振装置としては、例えば特開平7−243463号公報に示すエンジン用ロールマウントが知られている(図8参照)。このロールマウントは、車体側及びエンジン側のいずれか一方に連結される内筒金具1と、内筒金具1の外周面に固着されてその軸直角方向両側に向けて延出し、両側延出先端面が凸曲面形状にされたゴム弾性体支持部2と、ゴム弾性体支持部の延出方向に直交する両側面上にそれぞれ一体的に突出形成された弾性体ストッパ部3とを備えており、ゴム弾性体支持部2が車体側及びエンジン側のいずれか他方に設けられたブラケット等の装着部である円形装着孔(図示しない)に圧入装着され、弾性体ストッパ部3が円形装着孔の内周面に対しロール荷重入力方向に対向位置せしめられている。
【0003】ところで、上記筒型防振装置は、円形装着孔に圧入されるゴム支持弾性体支持部2が、内筒金具1の外周面に固着されてその軸直角方向両側に向けて延出した形状であり、圧入される円形装着孔の内周面に2箇所で圧接されるようになっている。そのため、ゴム弾性体支持部2を円形装着孔に圧入挿着する際に、ゴム弾性体支持部2が倒れ易くまた曲がり易いため、均一な圧入は容易ではなく、かつ圧入位置の適正な位置決めも容易ではない。そのため、ゴム弾性体支持部2の両側延出先端面に圧入液を塗布して、圧入を容易にし、圧入に伴うゴム層の歪を除去するために円形装着孔内に多めに圧入した後、元に戻す操作を行うことにより、均一な圧入を可能にすると共に適正な圧入位置を確保するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、ゴム弾性体支持部2の両側延出先端面は凸曲面形状に形成されているため、上記圧入操作中に、両側延出先端面に塗布された圧入液が流れ落ちてしまい、圧入液塗布による円滑な圧入の効果が損なわれるという問題がある。本発明は、上記した問題を解決しようとするもので、ゴム弾性体支持部の両側延出先端面に塗布した圧入液が、ゴム弾性体支持部をブラケット等の円形装着孔に圧入するときに先端面から流れ落ちないようにできる筒型防振装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】上記目的を達成するために、上記請求項1に係る発明の構成上の特徴は、円筒形の装着部を有し、車両の支持部側及び被支持部側のいずれか一方に連結される取付金具と、取付金具の装着部に同軸的に挿入配置されると共に支持部側及び被支持部側のいずれか他方に連結される内筒金具と、内筒金具の外周面に固着されて内筒金具の軸直角方向両側に向けて延出し、両側の延出先端面が凸曲面形状にされて、両側の延出先端面に圧入液が塗布された状態で取付金具の装着部内に圧入されるゴム弾性体支持部と、ゴム弾性体支持部の延出方向に直交する両側面上にそれぞれ一体的に突出形成されて、突出先端面が装着部の内周面に対して隙間を設けて配設される弾性体ストッパ部とを備えてなる筒型防振装置において、ゴム弾性体支持部の延出先端面に圧入液を保持できる複数のスリット状の溝部または複数の孔状の凹部を設けたことにある。
【0006】上記のように構成した請求項1に係る発明においては、ゴム弾性体支持部の延出先端面に圧入液を保持できる複数のスリット状の溝部または複数の孔状の凹部を設けたことにより、ゴム弾性体支持部を取付金具の装着部内に圧入するときに、延出先端面に塗布した圧入液が溝部または凹部にその表面張力により保持される。そのため、延出先端面からの圧入液の流れ落ちが抑制されるので、ゴム弾性体支持部の装着部内への圧入がスムーズに行われる。その結果、請求項1の発明によれば、ゴム弾性体支持部を、容易に取付金具の装着部内にゴム層に歪のない均一な状態で圧入できると共に適正な位置に固定させることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明すると、図1〜図3は、同実施形態である自動車のエンジンと車体間に介装される筒型防振装置(ロールマウント)を正面図、側面図及び平面図により示したものである。筒型防振装置は、ブッシュ部材10と、ブッシュ部材10が圧入される取付金具20とにより構成されている。
【0008】ブッシュ部材10は、図4〜図6に示すように、エンジン側(または車体側)に取り付けられる円筒形の内筒金具11を有し、内筒金具11の外周面には軸直角方向(図示横方向)の両側に延出したゴム弾性体支持部12が設けられている。ゴム弾性体支持部12は、内筒金具11の軸方向両端近傍部分を除く中間部分の外周面に固着され、内筒金具11の周囲の略円筒形の内側部12aと、その外側に略平行に延出した中間部12bと、その外側に延出した外側部12cとからなっている。外側部12cは、外端部分が内筒金具11に対して同軸的に円弧形状を呈すると共に内筒金具11の軸方向に対しては両側が傾斜した台形状になった延出先端面12c1 になっており、かつ周方向両側が周方向に突出した凸部12c2 になっている。凸部12c2 は、中間部12bから延出先端面12c1 にかけて周方向に徐々に広げられて周方向側縁が円弧形状に形成されている。さらに、ゴム弾性体支持部12は、図5及び図6に示すように、軸方向両端間の幅が内側部12aから外側部12cにかけて徐々にわずかに狭められている。
【0009】そして、延出先端面12c1 には、図4〜図6に示すように、軸方向に互いに平行な複数本のスリット状の溝部12dが設けられている。この溝部12dは、ゴム弾性体支持部12を取付金具20の円筒形の装着部内に圧入する前に、延出先端面12c1 に塗布される圧入液を表面張力によって保持し、圧入時に圧入液が延出先端面12c1 から流れ落ちないようにするものである。従って、溝部12dは、圧入液を効率よく保持するために、幅が狭くされかつ延出先端面12c1 の全面に配置される必要がある。また、溝部12dの形成方向は、必ずしも軸方向に平行である必要はないが、ただし軸方向に直角にすると圧入液の落下を促すことになるため好ましいことではない。
【0010】そして、内筒金具11位置には、図4〜図7に示すように、ゴム弾性体支持部12の延出方向に対して直角方向の内側部12a両面から突出した上下一対のストッパ部13,14が設けられている。ストッパ部13,14は、略四角錐台形の形状の各面間は曲面状に面取りされている。ストッパ部13,14は、軸直角方向の幅は同一であるが、軸方向の幅は、上側のストッパ部13の方が下側のストッパ部14より狭くされており、ストッパ特性に差異が設けられている。ただし、ストッパ部13,14の形状としては、図8に示すように、ゴム弾性体支持部12の延出方向に直交する両側面上の内側部12aを中心として両側の外側部12cにまで延びた外周が円弧形のストッパ部であってもよい。上記ブッシュ部材10は、図示しない成形金型に内筒金具11をセットした状態でゴム加硫成形を行うことにより一体的に形成されるものである。
【0011】上記ブッシュ部10は、図1〜図3に示すように、取付金具20の円筒形の筒状部材21に圧入することにより取り付けられる。ここで、図示する矢印Rは、ブッシュ部10にエンジン側からのロール荷重が加わる方向を示している。取付金具20は、筒状部材21と、その外周に溶接により固着され、車体側(またはエンジン側)に取り付けられる異形形状の取付部材22を備えている。取付部材22は、金属板を略U字状に折り曲げて形成された筒状部取付部23を有している。筒状部取付部23は、連結板部23aに対して直角に折り曲げられた一対の折曲部23b,23cを設けている。折曲部23b,23cの連結板部23aに対する反対端には、円弧形に切り欠かれた取付凹部23b1 ,23c1 が形成されており、その両側は、一方側が他方側より延出して形成されている。取付凹部23b1 ,23c1 には、筒状部材21が図示斜線に示す位置に溶接することにより固着されている。連結板部23aの両端近傍位置には、各1個の固定部23a1 ,23a2 が設けられている。
【0012】そして、一方の折曲部23bの上記他方側寄り位置には補強部材24が図示斜線に示す位置に溶接により固着されている。補強部材24は、図1〜図3に示すように、直角三角形の鋭角端が切り欠かれた形状の底板24aと、その斜辺及び斜辺に対向する一辺に底板24aに対して直角に絞り加工により折り曲げ形成された折曲板24b,24cを設けている。底板24aの切り欠き位置近傍には固定部24a1 が設けられている。取付金具20は、固定部23a1 ,23a2 ,24a1 により車体側(またはエンジン側)に固定されるようになっている。
【0013】以上のように構成した筒型防振装置において、ブッシュ部10を取付金具20の筒状部材21に圧入する際に、圧入をスムーズに行うためにゴム弾性体支持部12の延出先端面12c1 に圧入液が塗布されるが、延出先端面12c1 に圧入液を保持できる複数のスリット状の溝部12dが設けられているため、圧入中に延出先端面12c1 から塗布した圧入液が流れ落ちることがないので、圧入液塗布の効果が維持され、圧入がスムーズに行われる。そのため、本実施形態においては、ゴム弾性体支持部12を、容易に取付金具20の筒状部材21内にゴム層に歪のない均一な状態で圧入できると共に適正な位置に固定させることができる。
【0014】なお、上記実施形態においては、延出先端面12c1 に、スリット状の溝部12dを形成して塗布された圧入液の流れ落ちを防止しているが、これに代えて、複数の孔状の凹部を設けてもよい。凹部の形状は丸の他に任意の形状でよい。また、本発明の筒型防振装置の具体的外形等については、上記実施形態に示したものに限られるものではなく、適宜変更可能である。
【出願人】 【識別番号】000219602
【氏名又は名称】東海ゴム工業株式会社
【出願日】 平成9年(1997)10月14日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 功二
【公開番号】 特開平11−117973
【公開日】 平成11年(1999)4月27日
【出願番号】 特願平9−280316