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【発明の名称】 制振装置
【発明者】 【氏名】牟田口 勝生

【氏名】前田 恂

【要約】 【課題】騒音の発生を防止し、且つ部品点数を削減して安価に製作する。

【解決手段】曲率中心が上方に位置するように所要の曲率で湾曲させた細長いケーシング1を作る。ケーシング1内に、錘り16を長手方向へ摺動自在に収納させる。錘り16の摺動面に固体潤滑材からなるライナ17を取り付け、錘り16をライナ17により摺動させることによって騒音の発生を抑える。ライナ17の材質及び面積を選定して、錘り16に最適減衰比を与え、独立した減衰器を不要とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 曲率中心が上方に位置するように湾曲形成した細長いケーシング内に、錘りを長手方向へ摺動自在に収納させ、且つ上記ケーシングに対する錘りの摺動面所要個所に、固体潤滑材からなるライナを取り付けて、錘りに最適減衰比を与えるようにした構成を有することを特徴とする制振装置。
【請求項2】 ケーシングを、底板と側板とを有する形状とし、且つ錘りへのライナの取付個所を、ケーシングの底板と側板とでなすコーナー部に対応する位置のみとした請求項1記載の制振装置。
【請求項3】 ライナの表面に潤滑油を塗布するようにした請求項1又は2記載の制振装置。
【請求項4】 ケーシングの内面部のライナ摺動位置に、潤滑油溜めを部分的に設けた請求項1、2又は3記載の制振装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はビル、橋、船、ゴンドラ等、陸用、舶用を問わず、あらゆる構造物に取り付けてこれら構造物の揺れを抑えるために用いる制振装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の構造物の制振装置としては、図5(イ)(ロ)にその一例の概略を示す如く、曲率中心が上方に位置するように所要の曲率で湾曲形成した左右方向に長い円弧状の底板2上に、前後の側板3と左右の端面板4とを設けると共に、これら前後の側板3と左右の端面板4とで囲まれる空間の上面を上面板5で塞ぐようにして矩形断面形状とした中空の細長いケーシング1を形成し、該ケーシング1内に、制振体としての錘り6を、底板2上のガイドレール2a上に車輪7を介して長手方向に沿い移動(揺動)自在に載置することにより収納させ、且つ上記錘り6の移動時の蛇行を防止すべく、錘り6の側面部に、側板3の内面に設けたサイドレール3aに接して転動するようにしたサイドローラ8を設け、又、上記錘り6の移動方向両端面にバッファ9を取り付け、更に、上記底板2上のガイドレール2a間の位置に、底板2の曲率に合わせて湾曲形成した吸引板10を固定し、一方、錘り6の底面部に、移動方向に貫通する溝11を設けると共に、該溝11内に、上記吸引板10を前後より所要の隙間を保持して挾むようにマグネット12を固定して、減衰器13を形成したパッシブ型としてあり、構造物14上に、上記ケーシング1を、構造物14が主として揺れる方向へ沿うよう支持台15を介して据え付け、構造物14に揺れが発生したときに上記錘り6が車輪7とサイドローラ8の転動を介してケーシング1内を長手方向に反復移動させられるようにしてある。
【0003】かかる制振装置の場合、錘り6の固有周期を底板2の曲げで与えるようにしてあるので、固有周期調整用の機械的部品が不要であり、構造物14の周期と錘りは共振するので錘り6は大ストロークが実現できて、大きな制振効果を得ることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記制振装置の場合には、ケーシング1内を錘り6が移動するときに、車輪7及びサイドローラ8が転動するので、大きな騒音が発生する問題があり、又、車輪7やサイドローラ8、更には、減衰器13を装備しているため、錘り6に大掛かりな機械加工が必要であるばかりでなく、車輪7やサイドローラ8に付随して軸やナット等も必要となることから、部品点数が多く、したがって、コスト高となる傾向がある。
【0005】そこで、本発明は、車輪やサイドローラの転動による騒音の問題をなくすことができるようにすると共に、部品点数を削減して安価に製作することができるようにしようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解決するために、曲率中心が上方に位置するように湾曲形成した細長いケーシング内に、錘りを長手方向へ摺動自在に収納させ、且つ上記ケーシングに対する錘りの摺動面所要個所に、固体潤滑材からなるライナを取り付けて、錘りに最適減衰比を与えるようにした構成とする。
【0007】構造物に据え付けた状態において、構造的に揺れが発生すると、構造物の揺れがケーシングに伝えられて、ケーシングの揺動エネルギーが錘りに与えられるため、錘りは、ライナを介した摺動により構造物に同調した固有周期で単弦振動させられる。この際、錘りに最適減衰比を与えるようにライナの材質等が選定してあることにより、独立した減衰器を装備しなくても、構造物の揺れが速やかに抑えられる。上記錘りには、車輪やサイドローラがないため大きな騒音を発生することはない。
【0008】又、ケーシングを、底板と側板とを有する形状とし、且つ錘りへのライナの取付個所を、ケーシングの底板と側板とでなすコーナー部に対応する位置のみとした構成とすることによって、部品点数を更に少なくすることができ、より安価に製作することができるようになる。
【0009】更に、ライナの表面に潤滑油を塗布するようにした構成とすることにより、ケーシング内面に対するライナの摩擦力を変えることができるので、最適減衰比を得るための調整が容易となる。
【0010】更に又、ケーシングの内面部のライナ摺動位置に、潤滑油溜めを部分的に設けた構成とすることにより、長期間メンテナンスフリーを実現できるようになる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1(イ)(ロ)は本発明の実施の一形態を示すもので、図5(イ)(ロ)に示したと同様な構成としてあるケーシング1内に、該ケーシング1の断面形状と対応する単純形状とした錘り16を長手方向へ摺動自在に収納させると共に、上記ケーシング1の内面部のガイドレール2a及びサイドレール3aに対する錘り16の摺動面に、固体潤滑材からなる底部及び側部のライナ17を取り付け、且つ該ライナ17の材質及び面積を選定することにより錘り16に最適減衰比を与えるようにする。
【0012】上記ライナ17の取り付けは、錘り16にビス止め、あるいは、接着、又は溝を切って埋め込むことにより行うようにする。又、ライナ17を形成する固体潤滑材としては、プラスチック、含油プラスチック、硬質ゴム、含油メタル等の中から、ケーシング1の材質(たとえば、鋳物、ダイキャスト、アルミニウム合金の押出成形材等)、曲率、錘り16のマス等に鑑みて最適減衰比が得られるものを選定する。
【0013】上記構成とした本発明の制振装置は、動吸振器理論によるパッシブ型動吸振器であり、かかる動吸振器理論に基づき求められた最適減衰比を獲得する場合、主として底部のライナ17で獲得する方法と、底部及び側部の両ライナ17で獲得する方法があるが、装置の設置状況により任意に選定することができる。なお、ライナ17の材質や面積を変更しただけでは最適減衰比が得られにくいときは、ライナ17の表面に、機械油の如き潤滑油を塗布するようにする。この場合、潤滑油を塗布すると、ケーシング1内面に対するライナ17の摩擦力(摺動抵抗)を変えることができるので、調整が容易となる。
【0014】上記の如くして、最適減衰比を確保した錘り16を収納するケーシング1を、構造物14上に据え付けた状態において、構造物14に揺れが発生すると、その揺れがケーシング1を介して錘り16に伝えられるため、錘り16は、ライナ17を介して構造物に同調した固有周期で単弦振動するように摺動させられる。この際、錘り16は最適減衰比が確保されているため、図5に示す如き減衰器13を装備していなくても、構造物14の揺れが速やかに抑えられる。
【0015】上記において、錘り16は、ライナ17による摺動方式を採用したことから、図5に示す如き車輪7やサイドローラ8を用いた転動方式の如き大きな騒音が発生することはなく、又、車輪7やサイドローラ8及びこれらに付随する軸やナット、更には、独立した減衰器13等の多数の部品も不要であるから、錘り16に大掛かりな機械加工を施す必要がなく、したがって、頗る安価に製作することができる。
【0016】次に、図2は本発明の他の実施の形態を示すもので、図1(イ)(ロ)に示したものと同様な構成において、錘り16の底部と側部との両方にライナ17を取り付けることに代えて、ケーシング1の底板2と側板3とでなす底部側コーナー部のみに対応させて、錘り16にライナ17を取り付けたものである。
【0017】図2に示すように構成すると、錘り16の底部コーナー部に取り付けたライナ17が、図1(イ)(ロ)における底部のライナと側部のライナの機能を兼用できるので、部品点数を更に少なくすることができて、より安価に製作することができると共に、潤滑油の供給も、ライナ17の数が少ない分だけ容易となる。なお、図2の場合、錘り16の幅と高さとの比を適切に決めておくことで、錘り16が前後(図2において左右)に大きく揺動しても、ケーシング1に接触する心配はない。
【0018】次いで、図3は本発明の更に他の実施の形態として、図1(イ)(ロ)に示したと同様な構成において、選定したライナ17の表面に潤滑油を塗布するようにした場合についての適用例を示すもので、ケーシング1の底板2上に位置するガイドレール2aの途中に、潤滑油溜め18を部分的に凹設して、該潤滑油溜め18内に、潤滑油を滲み込ませたフェルト19を充填したものである。なお、図2の実施の形態についても同様に適用することができる。又、ケーシング1にレール2a,3aを設けない場合は、底板2の途中に、潤滑油溜め18を直接設けるようにすることができる。
【0019】図3に示すようにすると、錘り16が摺動してライナ17が潤滑油溜め18の位置を通過する度に、ライナ17の表面に潤滑油が付着するので、潤滑油切れを起すことがなく、ライナ17の表面に単に潤滑油を塗布しておく場合に比して、長期にわたりメンテナンスフリーで安定した作動が得られる。
【0020】なお、本発明は上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、たとえば、図4(イ)(ロ)(ハ)等に示す如く、ケーシング1と錘り16の形状は任意の組み合わせ形状を採用し得ると共に、ライナ17の取付個所もこれらの形状に合わせて適宜選定し得ること、又、ケーシング1は閉鎖型のみならず、上部等の一部開放型であってもよいこと、更に、図3の実施の形態では、潤滑油溜め18内にフェルト19を充填した場合を示したが、フェルト19はなくてもよいこと、更に又、ライナ17の形状は任意に選定し得ること、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0021】
【発明の効果】以上述べた如く、本発明の制振装置によれば、曲率中心が上方に位置するように湾曲形成した細長いケーシング内に、錘りを長手方向へ摺動自在に収納させ、且つ上記ケーシングに対する錘りの摺動面所要個所に、固体潤滑材からなるライナを取り付けて、錘りに最適減衰比を与えるようにした構成としてあるので、次の如き優れた効果を発揮する。
(1) 錘りの移動にライナによる摺動方式を採用したことから、車輪及びサイドローラによる転動方式に比して大きな騒音を発することがない。
(2) 車輪及びサイドローラ、更には、独立した減衰器を錘りに装備させる必要がないことから、錘りに大掛かりな機械加工を施す必要がなく、安価に製作することができる。
(3) 部品点数が少ないので、故障の原因が少なく、メンテナンスが容易である。
(4) 錘りへのライナの取付個所を、ケーシングの底板と側板とでなすコーナー部に対応する位置のみとすることによって、部品点数を更に少なくすることができて、より安価に製作することができる。
(5) ライナの表面に潤滑油を塗布するようにした構成とすることにより、ケーシング内面に対するライナの摩擦力を変えることができるので、最適減衰比を得るための調整が容易となる。
(6) ケーシングの内面部のライナ摺動位置に、潤滑油溜めを部分的に設けた構成とすることにより、長期メンテナンスフリーで安定した作動を得ることができ、信頼性をより向上させることができる。
【出願人】 【識別番号】000000099
【氏名又は名称】石川島播磨重工業株式会社
【識別番号】000004743
【氏名又は名称】日本軽金属株式会社
【出願日】 平成9年(1997)9月22日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 光雄
【公開番号】 特開平11−94017
【公開日】 平成11年(1999)4月9日
【出願番号】 特願平9−273285