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【発明の名称】 絶対制震構造物
【発明者】 【氏名】丹羽 直幹

【要約】 【課題】免震装置で支持された構造体、あるいは最下層の水平剛性が低く設定された構造体の固有周期や地盤の卓越周期に関係なく、構造体の内容物を保全できる免震構造の効果を発揮させる。

【解決手段】構造体2に入力される振動エネルギを駆動装置3からの制御力のためのエネルギに変換し、そのエネルギを用いて駆動装置3から構造体2に制御力を与える制震構造において、構造体2を免震装置1に支持させ、あるいは構造体2の最下層の水平剛性を低く設定し、駆動装置3から与える制御力の発生に必要なエネルギを振動エネルギから供給する一方、駆動装置3から構造体2や最下層以上の層に与えるべき制御力を構造体2や最下層以上の層の応答から演算装置7により計算して出力する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 免震装置に支持された構造体に駆動装置から制御力を与え、構造体の応答を低減する免震構造の制震構造物であり、構造体に入力される振動エネルギを駆動装置からの制御力のためのエネルギに変換する変換装置と、変換されたエネルギを蓄積する蓄積装置と、振動エネルギの入力時に構造体の応答を検出する応答検出装置と、この応答から、構造体に与えるべき制御力を計算する演算装置を持ち、駆動装置が蓄積装置に蓄積されたエネルギを演算装置で計算された大きさの制御力として構造体に出力する絶対制震構造物。
【請求項2】 最下層の水平剛性が低く設定された構造体の、最下層以上の層に駆動装置から制御力を与え、構造体の最下層以上の層の応答を低減する制震構造物であり、前記最下層以上の層に入力される振動エネルギを駆動装置からの制御力のためのエネルギに変換する変換装置と、変換されたエネルギを蓄積する蓄積装置と、振動エネルギの入力時に最下層以上の層の応答を検出する応答検出装置と、この応答から、最下層以上の層に与えるべき制御力を計算する演算装置を持ち、駆動装置が蓄積装置に蓄積されたエネルギを演算装置で計算された大きさの制御力として構造体の最下層以上の層に出力する絶対制震構造物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は地震等の外乱による構造体の応答時の振動エネルギを駆動装置からの制御力に変換して構造体の応答を低減する絶対制震構造物に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】構造体の基部に積層ゴム等の免震装置を設置し、構造体を長周期化する免震構造は、構造体内にダンパ等のエネルギ吸収装置を設置する制震構造との比較では、免震層上の構造体の応答加速度を大きく低減でき、構造体内容物の保全を図ることができる利点を有するが、地盤の振動に対する応答が受動的であるため、免震層上の構造体の固有周期や地盤の卓越周期によっては十分な応答低減効果を発揮できない場合がある。
【0003】この発明は制震構造にない免震構造特有の効果をいかなる条件下でも発揮させる制震構造物を提案するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明では請求項1に記載のように構造体が免震装置に支持され、駆動装置から構造体にその振動を低減するための制御力を与える免震構造、あるいは請求項2に記載のように最下層の水平剛性が低く設定された、免震構造と同等の構造において、特開平8-218679号のように駆動装置から与える制御力の発生に必要なエネルギを構造体に入力される振動エネルギから供給する一方、駆動装置から構造体に与える制御力を構造体の応答から計算して出力することにより、構造体の固有周期や地盤の卓越周期に関係なく、免震構造の効果を発揮させる。
【0005】請求項1における構造体や、請求項2における構造体の最下層以上の層に入力される振動エネルギは変換装置によって駆動装置からの制御力のためのエネルギに変換され、変換されたエネルギは蓄積装置に蓄積される。
【0006】振動エネルギ入力時の請求項1における構造体の応答や、請求項2における最下層以上の層の応答は応答検出装置によって検出され、その応答から、構造体や最下層以上の層に与えるべき制御力が演算装置によって計算される。その制御力の指令に基づいて駆動装置が蓄積装置に蓄積されたエネルギを実際の制御力として構造体や最下層以上の層に出力する。
【0007】蓄積装置に蓄積されたエネルギが、構造体や最下層以上の層の応答から計算された大きさに制御された制御力として駆動装置から構造体や最下層以上の層に与えられることにより、制御力が構造体や最下層以上の層を地盤の振動から絶縁するのに最適な値に制御されるため、地盤の振動に関係なく、構造体や最下層以上の層に絶対的な応答を与えず、免震構造の構造体やそれと同等の構造の最下層以上の層を絶対空間に静止させることが可能になる。
【0008】
【発明の実施の形態】この発明は図1に示すように免震装置1に支持された構造体2、もしくは図5に示すように最下層の水平剛性が低く設定された構造体2の最下層以上の層に駆動装置3から制御力を与えることで構造体2の応答を低減する免震構造の制震構造物である。
【0009】図1,図2に示すように構造物には構造体2に入力される振動エネルギを駆動装置3であるアクチュエータからの制御力のためのエネルギに変換する油圧シリンダ等の変換装置4と、変換されたエネルギを蓄積する蓄積装置5と、振動エネルギの入力時に構造体2の応答を検出する応答検出装置6であるセンサと、応答から、構造体2に与えるべき制御力を計算する演算装置(コンピュータ)7が設置される。
【0010】駆動装置3と変換装置4は構造体2と、その下の下部構造との間、あるいは構造体2から絶縁される周辺の構造との間に配置され、応答検出装置6は構造体2と下部構造や周辺構造に設置される。
【0011】駆動装置3から出力されるエネルギには変換装置4により振動エネルギから油圧エネルギ等に変換されたエネルギが使用されるが、変換されたエネルギが蓄積装置5に蓄積されるまでの僅かな時間のエネルギの不足を補い、システムの初期の立ち上げを補償するために、蓄積装置5としてはアキュムレータ等のエネルギ源ともなる装置を使用することが有効である。
【0012】免震装置1としては積層ゴム支承も考えられるが、後述のように本発明では免震装置1が設置された層である免震層8の変位を増幅させる制御を行うため、免震層8の変形制限が少ない滑り支承を使用することが有効である。
【0013】制御力の制御方法としては、免震層8と地盤との絶縁効果を増大させるために、例えば駆動装置3から発生させる制御力U(n) をU(n) =−α・k・D(n) とする等、免震層8の変位を増加させるように制御力を発生する手法が考えられる。ここで、kは免震層8の水平剛性、D(n) はn時間における免震層8の地盤に対する相対水平変位、αはフィードバックゲインである。
【0014】制御フローを図3に示すが、ここでは応答検出装置6により構造体2の変位Dを計測し、その値から演算装置7内で制御力Uを計算し、駆動装置3に指令を出すことが行われる。
【0015】この方法によれば、図3に示すように制御力Uを発生するタイミングと、エネルギを蓄積するタイミングが時刻的にずれるため、制御力Uを発生するときにその制御力Uに必要なエネルギが不足する事態が発生することはなく、エネルギ供給位置(蓄積装置5)と制御力作用位置(駆動装置3)が同一位置の1箇所であってもエネルギの変換効率が落ちることが避けられる。
【0016】図4は鉄骨造8階建ての構造体に本発明を適用した場合の地震応答解析結果(応答最大加速度)を示す。比較のため、非免震の通常構造の場合と2タイプの免震構造1,2の場合の結果も併せて示す。
【0017】各構造の構造体の1次固有周期は約1.2 秒であり、入力地震波はエルセントロ25kineとした。免震構造1は十分な絶縁効果がある場合であり、通常構造に比べ、加速度を大きく低減できている。これに対して免震構造2は絶縁効果の少ない、例えば構造体と免震層の剛性が近い、または免震層の剛性が十分に小さくない場合であり、加速度は通常構造に比べれば低減されているが、免震構造1より大きく、構造体の内容物を保全できる状況とは言えない。
【0018】図4にはこの免震構造2に本発明を適用した場合を示しており、上記式のフィードバックゲインαを0.75に設定した場合の結果である。この結果によれば、絶縁効果の少ない免震構造2に対しても本発明の適用により構造体2の絶縁効果が表れ、構造体2を実質的に絶対空間に静止させることが可能になっており、構造体2の内容物を保全するに十分な加速度の低減効果が発揮されることが確認される。
【0019】図1では上部構造である構造体2の下に免震層8を設置した場合を示すが、本発明は構造体2自身の最下層に免震装置1を設置し、構造体2の最下層を免震層8にした構造物にも適用される。
【0020】図5は構造体2の下に免震層8を設置すること代え、構造体2自身の最下層の水平剛性を低下させることで、構造体2の最下層以上の層を免震構造と同様に機能させる場合を示す。
【0021】この場合、構造体2は例えば柱10と梁11の架構から構成され、最下層の柱10の水平剛性がそれ以上の層の水平剛性より相対的に低く設定される。最下層の直上の層と下部構造との間には上層の架構から絶縁され、下部構造に接続したブレース9や耐震壁等の耐震要素が設置され、耐震要素と上層の架構間に駆動装置3と変換装置4が配置される。
【0022】
【発明の効果】請求項1では駆動装置から与える制御力の発生に必要なエネルギを振動エネルギから供給する一方、免震装置に支持された構造体に駆動装置から与えるべき制御力を構造体の応答から計算して出力するため、構造体を地盤の振動から絶縁するのに最適な値に制御力を制御でき、免震層上の構造体の固有周期や地盤の卓越周期に関係なく、構造体の内容物を確実に保全できる免震構造の効果を発揮させることができる。
【0023】請求項2では最下層の水平剛性が低く設定された構造体の、最下層以上の層に駆動装置から与えるべき制御力を最下層以上の層の応答から計算して出力するため、最下層以上の層を地盤の振動から絶縁するのに最適な値に制御力を制御でき、最下層以上の層の固有周期や地盤の卓越周期に関係なく、最下層以上の層の内容物を確実に保全できる効果を発揮させることができる。
【出願人】 【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
【出願日】 平成9年(1997)9月25日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】久門 知 (外1名)
【公開番号】 特開平11−94013
【公開日】 平成11年(1999)4月9日
【出願番号】 特願平9−260195