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【発明の名称】 流体封入式筒型マウント
【発明者】 【氏名】星野 雅幸

【氏名】舟橋 芳樹

【要約】 【課題】流体封入式筒型マウントにおいて、リバウンド方向のストッパ機構を、簡単な構造をもって実現する。

【解決手段】肉抜空所40内において、平衡室58を画成する可撓性膜48を実質的に周方向両側に分割せしめると共に、かかる分割部分46に向かって軸部材12側から外筒部材14側に突出するストッパ凸部54を形成する一方、肉抜空所40に対して軸方向一方の側から嵌め込まれてストッパ凸部54の突出先端面上に配設される補強金具68に対して、軸部材12の軸方向一端部に支持固定される取付部を一体形成すると共に、ストッパ凸部54の両側面に係止される側部形成片78と、可撓性膜48の分割部分46に向かって突出する緩衝ゴム層76とを、一体的に設けることにより、ストッパ凸部54の突出先端部に装着固定されて外筒部材14側に当接せしめられるストッパ冠体66を構成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 互いに同心的に若しくは偏心して配された軸部材と外筒部材が本体ゴム弾性体で連結されていると共に、それら軸部材と外筒部材の間を軸方向に貫通して延びる肉抜空所が周方向略半周に亘って形成されている一方、該軸部材と該外筒部材の間において前記本体ゴム弾性体により壁部の一部が構成されて振動入力時に圧力変化が生ぜしめられる受圧室が形成されていると共に、前記肉抜空所内に可撓性膜が配されて該可撓性膜と前記外筒部材の間において容積変化が容易に許容される平衡室が形成されており、それら受圧室と平衡室に非圧縮性流体が封入されていると共に、それら受圧室と平衡室を相互に連通するオリフィス通路が形成されている流体封入式筒型マウントにおいて、前記可撓性膜が前記肉抜空所内において周方向両側に実質的に分割されており、前記軸部材側から前記外筒部材側における該可撓性膜の分割部分に向かって軸直角方向に突出するストッパ凸部が、前記肉抜空所内において軸方向に連続して形成されている一方、該ストッパ凸部と該外筒部材側における該可撓性膜の分割部分との対向面間に軸方向一方の側から挿入されて、前記軸部材の軸方向一端側に固定的に支持されることにより、前記ストッパ凸部の突出先端面に重ね合わされる補強金具に対して、該補強金具の外面を被覆する緩衝ゴム層と、該補強金具の幅方向両側から突設されて該ストッパ凸部の幅方向両側面に係止される側部係止片が一体的に形成されることによって、前記ストッパ凸部の先端部分に被せられて該ストッパ凸部の突出先端面を覆うように装着固定されたストッパ冠体が構成されており、該ストッパ冠体の外面が、前記外筒部材側における前記可撓性膜の分割部分に対して当接されるようになっていることを特徴とする流体封入式筒型マウント。
【請求項2】 前記補強金具の軸方向一端部において、前記軸部材の軸方向端部に対して外嵌固定される環状の取付部が形成されていると共に、該取付部の該軸部材に対する周方向の相対変位を規制する位置決め手段が設けられている請求項1に記載の流体封入式筒型マウント。
【請求項3】 前記ストッパ凸部が、少なくとも前記本体ゴム弾性体よりも剛性の高い硬質材によって実質的に形成されている請求項1又は2に記載の流体封入式筒型マウント。
【請求項4】 前記補強金具の外面を被覆する緩衝ゴム層の厚さ寸法が、軸方向中央部分よりも両側部分において大きくされている請求項1乃至3の何れかに記載の流体封入式筒型マウント。
【発明の詳細な説明】【0001】
【技術分野】本発明は、内部に封入された非圧縮性流体の流動作用に基づいて防振効果を得るようにした流体封入式筒型マウントに係り、特に、軸直角方向の過大な振動荷重入力時における被連結体の相対的変位量を制限するストッパ機構を備えた流体封入式筒型マウントに関するものである。
【0002】
【背景技術】従来から、振動伝達系を構成する部材間に介装されて、それら両部材を連結する防振連結体の一種として、実公平7−16127号公報等に記載されているように、径方向に離隔配置された内筒金具と外筒金具を本体ゴム弾性体で連結すると共に、内外筒金具間を軸方向に貫通して延びる肉抜空所を周方向略半周に亘って形成することにより、装着状態下で被支持体重量やトルク伝達力のような初期荷重が入力される場合等にも、本体ゴム弾性体における引張応力の発生が軽減乃至は防止されるようにする一方、壁部の一部が本体ゴム弾性体で構成されて振動入力時に圧力変化が生ぜしめられる受圧室と、肉抜空所内に位置して壁部の一部が可撓性膜で構成されることにより容積変化が許容される平衡室とを形成し、それら受圧室と平衡室に水等の非圧縮性流体を封入すると共に、それら受圧室と平衡室を相互に連通するオリフィス通路を設けることによって、オリフィス通路を通じて流動せしめられる流体の共振作用等の流動作用に基づいて防振効果を得るようにした流体封入式の筒型マウントが、知られている。
【0003】また、このような流体封入式の筒型マウントにおいては、装着時に入力される初期荷重により、内筒金具が外筒金具に対して受圧室側に変位せしめられて、肉抜空所側の内外筒金具間の径方向間隔が広がった状態下でも、内筒金具の外筒金具に対する肉抜空所側(リバウンド方向)への相対的変位量を有効に制限し得るストッパ機構を実現するために、例えば、前記公報に記載されているように、本体ゴム弾性体の外周面に加硫接着されて外筒金具の内周面に嵌着固定される金属スリーブを設けると共に、この金属スリーブを肉抜空所内に凹陥させて、該凹陥部と外筒金具の間に平衡室を形成する一方、内筒金具と凹陥部の間に弾性ストッパを軸方向に嵌め込んで内筒金具によって固定的に支持せしめ、該弾性ストッパを金属スリーブの凹陥部内周面に圧接させて装着することにより、それら弾性ストッパと凹陥部との間に、初期荷重が入力された際にも大きくなり過ぎない適当なストッパクリアランスを有するリバウンドストッパ機構が、構成される。
【0004】ところが、このようなリバウンドストッパ機構を実現するためには、金属スリーブに凹陥部を形成するためにプレス加工等の特別な工程が必要となることから、製作性や製作コスト性が悪化するという問題があった。しかも、リバウンド方向での内外筒金具の相対的変位量を制限する際の荷重(ストッパ荷重)が、中空形状とされた金属スリーブの凹陥部を介して外筒金具側に及ぼされるために、金属スリーブの材質や肉厚等を十分に検討して、金属スリーブにおいて大きな強度や剛性,耐久性を確保する必要があり、金属スリーブの高コスト化や重量化が避け難いという問題もあった。
【0005】
【解決課題】ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、初期荷重が入力されて肉抜空所が大きくなった場合にも、リバウンド方向において有効な変位量制限機能を発揮し得るストッパ機構が、金属スリーブに凹陥部等を設けることなく、簡単な構造をもって有利に実現される、流体封入式筒型マウントを提供することにある。
【0006】
【解決手段】そして、このような課題を解決するために、本発明の特徴とするところは、互いに同心的に若しくは偏心して配された軸部材と外筒部材が本体ゴム弾性体で連結されていると共に、それら軸部材と外筒部材の間を軸方向に貫通して延びる肉抜空所が周方向略半周に亘って形成されている一方、該軸部材と該外筒部材の間において前記本体ゴム弾性体により壁部の一部が構成されて振動入力時に圧力変化が生ぜしめられる受圧室が形成されていると共に、前記肉抜空所内に可撓性膜が配されて該可撓性膜と前記外筒部材の間において容積変化が容易に許容される平衡室が形成されており、それら受圧室と平衡室に非圧縮性流体が封入されていると共に、それら受圧室と平衡室を相互に連通するオリフィス通路が形成されている流体封入式筒型マウントにおいて、前記可撓性膜が前記肉抜空所内において周方向両側に実質的に分割されており、前記軸部材側から前記外筒部材側における該可撓性膜の分割部分に向かって軸直角方向に突出するストッパ凸部が、前記肉抜空所内において軸方向に連続して形成されている一方、該ストッパ凸部と該外筒部材側における該可撓性膜の分割部分との対向面間に軸方向一方の側から挿入されて、前記軸部材の軸方向一端側に固定的に支持されることにより、前記ストッパ凸部の突出先端面に重ね合わされる補強金具に対して、該補強金具の外面を被覆する緩衝ゴム層と、該補強金具の幅方向両側から突設されて該ストッパ凸部の幅方向両側面に係止される側部係止片が一体的に形成されることによって、前記ストッパ凸部の先端部分に被せられて該ストッパ凸部の突出先端面を覆うように装着固定されたストッパ冠体が構成されており、該ストッパ冠体の外面が、前記外筒部材側における前記可撓性膜の分割部分に対して当接されるようになっていることにある。
【0007】このような本発明に従う構造とされた流体封入式筒型マウントにおいては、その装着状態下に被支持体重量等の初期荷重が及ぼされて本体ゴム弾性体が弾性変形することにより軸部材が外筒部材に対して受圧室側(肉抜空所とは反対側)に相対変位せしめられると、ストッパ凸部に固定されたストッパ冠体が、外筒部材側から離隔し、該外筒部材側に対してリバウンド方向(軸直角方向)に所定距離を隔てて対向位置せしめられる。そして、かかる状態下、軸部材と外筒部材の間に過大なリバウンド荷重が入力されると、軸部材側に設けられたストッパ凸部が、ストッパ冠体を介して、外筒部材側に当接することとなり、それによって、軸部材と外筒部材のリバウンド方向での相対的変位量が制限されることとなる。
【0008】そこにおいて、肉抜空所内に配された可撓性膜が実質的に分割されており、かかる分割部分において、ストッパ冠体が、外筒部材側に対して当接されるようになっていることから、前記公報に記載されているような凹陥部を備えた金属スリーブを肉抜空所に配する必要がないのであり、構造の簡略化と製作性の向上が有利に図られ得ると共に、金属スリーブの特別な補強等を必要とすることなく、ストッパ荷重に対する大きな耐強度性能が容易に確保され得るのである。
【0009】しかも、可撓性膜は、周方向に実質的に分割されることにより、ストッパ冠体の当接部分を避けて配設されていることから、可撓性膜の耐久性も十分に確保され得るのである。
【0010】さらに、ストッパ冠体は、補強金具を備えており、この補強金具の軸方向一端側が軸部材に対して強固に支持固定されていることに加えて、側部係止片によってストッパ凸部の幅方向両側にそれぞれ係止されていることから、特別な接着処理等を行わなくても、かかるストッパ冠体が、ストッパ凸部の先端部分に対して、容易な組付作業性をもって、十分に強固に優れた位置決め性をもって取り付けられ得るのであり、それによって、安定したストッパ機能が発揮されるのである。また、このようにストッパ冠体がストッパ凸部に対して強固に固定されていることから、ストッパ冠体のストッパ凸部からの位置ずれ等によって、ストッパ冠体が可撓性膜に摺接することも有利に防止されるのであり、より優れた耐久性と信頼性が達成される。
【0011】なお、ストッパ冠体が圧接される可撓性膜の分割部分は、実質的に、ゴム膜等からなる変形容易な可撓性膜が存在しない構造とされていれば良く、外筒部材が直接に露呈されている必要はない。具体的には、かかる可撓性膜の分割部分は、例えば、可撓性膜を厚肉化して容易には変形しない厚肉ゴム層と為すことにより、或いは可撓性膜の分割部分に対して外筒部材に固定された剛性材を固着せしめること等によって、有利に構成され得る。
【0012】また、ストッパ冠体における補強金具は、例えば金属板等によって有利に形成され得、好適には、例えば、平板形状の金属板を屈曲させて、ストッパ凸部の突出先端面に重ね合わされる平板状部に対して、軸部材に対する支持固定部を、その長手方向一端側から軸部材側に略直角に屈曲形成せしめてなる構造等が、採用される。なお、補強金具の幅方向両側に突設される側部係止片は、補強金具によって屈曲形成しても良いが、例えば緩衝ゴム層と一体的に、ゴム弾性材によって有利に形成され得る。
【0013】さらに、補強金具の軸部材に対する固定支持構造は、特に限定されるものでないが、好適には、例えば、該補強金具の軸方向一端部において、軸部材の軸方向端部に対して外嵌固定される環状の取付部が形成されると共に、該取付部の軸部材に対する周方向の相対変位を規制する位置決め手段が設けられてなる構造が、採用される。このような構造の補強金具を採用すれば、ストッパ冠体を軸部材に対して容易に且つ強固に支持せしめることが出来るのであり、加えて、位置決め手段により、ストッパ冠体のストッパ凸部からの位置ずれ防止効果も発揮されることから、ストッパ機構における耐久性と信頼性の更なる向上も達成されるのである。なお、軸部材による補強金具の支持強度を、良好なる組付作業性を確保しつつ、より有利に得るためには、例えば、補強金具における環状の取付部の内径寸法を、軸部材の外径寸法よりも僅かに大きく設定すると共に、かかる取付部の内周面を覆う嵌着ゴム層を、軸部材の外径寸法よりも僅かに小さな内径寸法となるように形成して、軸部材に圧入固定することが、有効である。また、位置決め手段は、例えば、互いに嵌め合わされる軸部材の外周面と取付部の内周面において、それらの何れか一方に突起を設ける一方、何れか他方に対して、該突起に係止される凹部を形成すること等によって、有利に構成され得る。
【0014】さらに、ストッパ凸部は、可撓性膜への接触が可及的に回避されると共に、可撓性膜の分割部分における外筒部材側に対する対向面積が十分に確保され得るものであることが望ましいが、その材質の他、具体的構造も、特に限定されるものでない。より具体的には、例えば、かかるストッパ凸部は、軸部材に対して一体に又は固定されて一体的に形成されていれば良く、軸部材に一体形成したり、金属材や合成樹脂材で別途形成されたストッパ部材を軸部材に固定したり、或いは軸部材の表面上にゴム弾性体によって突出形成すること等によって、有利に形成され得る。また、その材質は、特に限定されるものでなく、ゴム弾性体や発泡ウレタン等の弾性材も採用可能であるが、特に好適には、かかるストッパ凸部が、金属や硬質合成樹脂等の硬質材、或いはそのような硬質材の表面をゴム等の弾性材で被覆した複合材等、少なくとも本体ゴム弾性体よりも剛性の高い硬質材によって実質的に形成される。このように硬質材でストッパ凸部を形成すると、ストッパ凸部自体の大きな変形が防止されることから、ストッパ凸部に対するストッパ冠体の位置ずれ等が一層有効に防止されて、ストッパ機能の更なる安定化が図られ得る。
【0015】また、補強金具の外面を被覆する緩衝ゴム層の厚さ寸法や材質,形状等は、マウントに要求されるストッパ機能等に応じて適宜に決定されるものであって限定されるものでなく、例えば、かかる緩衝ゴム層の厚さ寸法が、軸方向中央部分よりも両側部分において大きくされてなる形状が、採用され得る。このような形状の緩衝ゴム層を採用すれば、ストッパ冠体が外筒部材側に当接した際の当接力が、外筒部材の軸方向両端部よりも中央部分の方が小さくされることとなる。それ故、例えば、可撓性膜の分割部分を挟んで位置する周方向両側に分割された状態で平衡室領域が形成されている場合に、該分割部分の軸方向中央部分において、それら両方の平衡室領域を相互に連通する流体連通路を形成することにより、流体連通路の形成部位へのストッパ荷重の入力が軽減されて、流体連通路の連通状態が有利に維持されると共に良好なる耐久性が確保され得るのである。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0017】先ず、図1〜3には、本発明の一実施形態としてのFF型自動車用のエンジンマウント10が、示されている。このエンジンマウント10は、軸部材としての内筒金具12と外筒部材としての外筒金具14が、互いに径方向に所定距離を隔てて配設されて、それら両金具12,14間に介装された本体ゴム弾性体16によって弾性的に連結されており、内筒金具12と外筒金具14が、図示しないボデーとパワーユニットに対して固定的に取り付けられることにより、パワーユニットをボデーに対して防振支持せしめるようになっている。
【0018】より詳細には、内筒金具12は、厚肉の小径円筒形状を有している。また、内筒金具12の外周面上には、金属や合成樹脂等の硬質材によって形成されたストッパ部材18が、外挿状態で固着されている。このストッパ部材18は、内筒金具12に外挿状態で固着された円筒形状の取付部20を有していると共に、該取付部20の外周面上には、バウンドストッパ突出部22とリバウンドストッパ本体部24が、取付部20の一つの径方向で互いに反対側に向かって突設されている。バウンドストッパ突出部22は、取付部20から径方向に延び出す柱形状をもって形成されており、内筒金具12の軸方向中央に位置せしめられている。一方、ストッパ本体部24は、内筒金具12の軸方向に一定幅をもって連続して延びるブロック形状を有している。なお、このようなストッパ部材18は、例えば、内筒金具12をセットした成形キャビティに合成樹脂材料を充填することによって有利に形成され、それによって、形成と同時に内筒金具12に対して装着固定することが可能である。
【0019】また、内筒金具12の径方向外方には、金属スリーブ30が、所定距離を隔てて且つ所定量だけ偏心して配設されている。この金属スリーブ30は、薄肉の大径円筒形状を有しており、軸方向中央部分には、それぞれ周方向に半周以下の長さで広がる略矩形状の第一の窓部32と第二の窓部34が、偏心方向となる径方向一方向(図中、上下方向)に対向して形成されている。また、第一の窓部32と第二の窓部34の周方向両側の端部間には、それぞれ、周方向に延びてそれら両窓32,34を繋ぐ凹溝36が形成されている。
【0020】さらに、これら内筒金具12と金属スリーブ30の間には、本体ゴム弾性体16が介装されている。この本体ゴム弾性体16は、図4に示されているように、略大径の厚肉円筒形状を有しており、内周面に対して内筒金具12が、外周面に対して金属スリーブ30が、それぞれ加硫接着された一体加硫成形品とされている。なお、金属スリーブ30の外周面には、略全面に亘って薄肉のシールゴム層38が形成されている。また、内筒金具12と金属スリーブ30の偏心方向一方の側(偏心方向における離隔距離の大なる側である、図中の下側)には、内筒金具12と金属スリーブ30の間を軸方向に貫通して延びる肉抜空所40が、周方向略半周に亘って形成されている。即ち、この肉抜空所40が設けられた偏心方向一方の側には、内筒金具12と金属スリーブ30の間に実質的に本体ゴム弾性体16が介在されておらず、本体ゴム弾性体16は、専ら、内筒金具12と金属スリーブ30の偏心方向他方の側(偏心方向における離隔距離の小なる側である、図中の上側)にだけ、介在せしめられているのである。
【0021】また、本体ゴム弾性体16には、外周面に開口する第一のポケット部42が形成されており、金属スリーブ30の第一の窓部32を通じて外周面に開口せしめられている。また一方、金属スリーブ30の第二の窓部34は、本体ゴム弾性体16と一体形成されて外周縁部が金属スリーブ30に加硫接着されたゴム弾性膜44によって、内周側から覆蓋されている。このゴム弾性膜44は、周方向中央部分において第二の窓部34を軸方向に跨いで延びる厚肉板状の連結ゴム部46と、該連結ゴム部46を挟んだ周方向両側にそれぞれ位置せしめられた、それぞれ薄肉袋形状を有する一対の可撓性膜としての変形容易な袋状ゴム膜48,48とによって構成されている。要するに、一対の袋状ゴム膜48,48は、連結ゴム部46によって、実質的に周方向両側に分割位置せしめられており、連結ゴム部46によって分割部分が構成されていると共に、袋状ゴム膜48,48によって、第二の窓部34を通じて外周面に開口する第二のポケット部50,50が形成されている。また、連結ゴム部46には、外周面上に開口して両第二のポケット部50,50間に跨がって周方向に延びる連通溝51が、十分に大きな幅で形成されており、この連通溝51によって、分割構造とされた第二のポケット部50,50が相互に連通されている。
【0022】さらに、第一のポケット部42内には、底部中央からバウンドストッパ突出部22が突出されていると共に、該バウンドストッパ突出部22の表面が、全体に亘って、本体ゴム弾性体16と一体形成された緩衝ゴム層49によって覆われている。また一方、肉抜空所40内には、ストッパ本体部24が、軸方向全長に亘って突出せしめられている。このストッパ本体部24は、外周面の全体が薄肉の表部ゴム層52によって覆われている。要するに、本実施形態では、ストッパ本体部24と表部ゴム層52によって、協働して、リバウンド方向に突出するストッパ凸部54が構成されているのである。そして、このストッパ凸部54は、ゴム弾性膜44の連結ゴム部46に対して、径方向に所定距離を隔てて対向位置せしめられている。ここにおいて、ストッパ凸部54は、連結ゴム部46の周方向幅よりも小さな幅で形成されて、連結ゴム部46の略周方向中央部分に対向位置せしめられており、両側の袋状ゴム膜48,48に対して、それらとの接触が有効に回避され得るだけの間隔を隔てて袋状ゴム膜48,48間に位置せしめられている。
【0023】また、ストッパ凸部54を構成するストッパ本体部24は、連結ゴム部46よりも大きな軸方向長さで形成されていると共に、ストッパ本体部24に対して径方向に対向位置せしめられた連結ゴム部46の軸方向両側部分には、それぞれ、金属スリーブ30における第二の窓部34の周縁部が加硫接着されており、大きな強度が付与されている。
【0024】そして、このような一体加硫成形品に対して、外筒金具14が外挿され、金属スリーブ30の外周面に嵌着固定されることにより、第一及び第二のポケット部42,50,50と凹溝36,連通溝51が、それぞれ流体密に覆蓋されている。それによって、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて振動入力時に内圧変化が生ぜしめられる受圧室56と、壁部の一部が袋状ゴム膜48,48で構成されて、それら袋状ゴム膜48,48の変形に基づいて容積変化が容易に許容される平衡室58が形成されていると共に、それら受圧室56と平衡室58を相互に連通するオリフィス通路60が形成されている。また、これら受圧室56と平衡室58,オリフィス通路60には、それぞれ、水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油等の所定の非圧縮性流体が封入されており、振動入力時に、受圧室56と平衡室58の間に生ぜしめられる圧力差によって、それら両室56,58間で、オリフィス通路60を通じての流体流動が生ぜしめられるようになっている。なお、二つの第二のポケット部50,50は、連通溝51が外筒金具14で覆蓋されることによって形成された連通路61で連通されることにより、実質的に単一の平衡室58が構成されている。
【0025】これにより、本実施形態のエンジンマウント10においては、内筒金具12と外筒金具14がボデーとパワーユニットの各一方に取り付けられた装着状態下、内外筒金具12,14間に対して、それらの略偏心方向である径方向の振動が入力されると、受圧室56と平衡室58の間でオリフィス通路60を通じての流体流動が生ぜしめられることにより、かかる流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果が発揮されるようになっている。なお、かかる流体の流動作用に基づく防振効果が有効に発揮され得る振動周波数は、オリフィス通路60の通路長さや断面積等を適当に調節することによってチューニングされ得る。また、かかるエンジンマウント10では、装着状態下、内外筒金具12,14間にパワーユニット重量が及ぼされて本体ゴム弾性体16が弾性変形せしめられることにより、図5に示されているように、内筒金具12と外筒金具14が略同心上に位置せしめられるようになっている。
【0026】また、そのようなエンジンマウント10の装着状態下、内外筒金具12,14間にバウンド方向(内筒金具12が外筒金具14に対して受圧室56側に変位せしめられる方向)に対して、衝撃的荷重等の過大な荷重が及ぼされると、バウンドストッパ突出部22の突出先端面が、緩衝ゴム層49を介して、外筒金具14に当接せしめられることにより、内外筒金具12,14の相対的変位量ひいては本体ゴム弾性体16の弾性変形量が制限されるようになっている。
【0027】また一方、内外筒金具12,14間にリバウンド方向(内筒金具12が外筒金具14に対して肉抜空所40側に変位せしめられる方向)に対して、衝撃的荷重等の過大な荷重が及ぼされると、ストッパ凸部54が外筒金具14側の連結ゴム部46に当接せしめられるようになっている。ここにおいて、ストッパ凸部54の先端部分には、その全体を覆うようにして、ストッパ冠体66が装着固定されており、ストッパ凸部54が、このストッパ冠体66を介して、連結ゴム部46に当接されるようになっている。
【0028】かかるストッパ冠体66は、図6〜7に示されているように、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品とは別体形成された、別部材で構成されている。詳細には、ストッパ冠体66は、ストッパ凸部54と略同一の幅寸法と長さ寸法を有する長手平板形状の補強金具68を備えている。また、この補強金具68の長手方向一方の端部には、略直角に屈曲して立ち上がり、その先端部分に円形の取付孔70が設けられた取付部72が一体形成されている。かかる取付部72の取付孔70は、内筒金具12の外径寸法よりも大きな内径寸法を有しており、取付部72に加硫接着された円環板形状の嵌着ゴム73が取付孔70の内周面にまで延び出されていることによって、取付孔70の内径寸法が、実質的に内筒金具12の外径よりも小さくされている。
【0029】また、補強金具68の外面(取付部72の屈曲側と反対の面)74には、その略全面に亘って、緩衝ゴム層76が設けられて加硫接着されている。この緩衝ゴム層76は、補強金具68の長手方向において、両側部分の肉厚寸法が、中央部分の肉厚寸法よりも大きく設定されていることにより、先端面が長手方向において段差面形状とされている。
【0030】更にまた、補強金具68の幅方向両縁部には、それぞれ、内面(取付部72の屈曲側の面)側に向かって突出して、長手方向の略全長に亘って連続して延びる側部係止片としての一対の薄肉の係止片78,78が、緩衝ゴム層76と一体的に形成されている。これにより、ストッパ冠体66は、補強金具68と緩衝ゴム層76を底壁部とし、一対の係止片78,78を側壁部として、全体として長手方向に延びる樋形状をもって形成されている。
【0031】そして、このような構造とされたストッパ冠体66は、図1〜3に示されているように、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品における肉抜空所40に対して、軸方向一方の側から嵌め込まれ、肉抜空所40を貫通して配されている。また、補強金具68の取付孔70が、嵌着ゴム73を介して、内筒金具12の軸方向端部に対して圧入されて嵌着固定されることにより、補強金具68ひいてはストッパ冠体66が、内筒金具12に対して固定的に取り付けられている。これにより、全体としてストッパ凸部54の突出先端部分に被せられて、ストッパ凸部54の突出先端面を全体に亘って覆う長手状のストッパ冠体66が形成されている。
【0032】ここにおいて、かかるストッパ冠体66は、補強金具68がストッパ凸部54の突出先端面に重ね合わされていると共に、係止片78,78がストッパ凸部54の幅方向両側面に重ね合わされて係止されていることにより、全長に亘って、ストッパ凸部54の先端面から両側面に亘って密接されており、以て、ストッパ凸部54に対して優れた位置決め性と位置固定力が発揮されるようになっている。しかも、ストッパ冠体66は、長手方向一端部において、ストッパ凸部54の突出先端面に密接して重ね合わされた補強金具68が、内筒金具12に対して固定的に取り付けられていることから、ストッパ凸部54に対する位置決め力が一層有効に発揮され得る。特に、本実施形態では、内筒金具12の軸方向両端部において、それぞれ、周上の一か所で径方向外方に突出する位置決め突起82が、本体ゴム弾性体16によって形成されていると共に、ストッパ冠体66の取付部72における取付孔70の周上に、この位置決め突起82に係合する切欠溝84が形成されており、位置決め突起82の切欠溝84への係合にて、内筒金具12に対する取付部72の周方向の変位が規制されて、ストッパ冠体66のストッパ凸部54に対するより有効な位置決め性が発揮されるようになっている。なお、このことから、本実施形態では、位置決め突起82と切欠溝84によって、取付部72の内筒金具12に対する周方向の相対変位を規制する位置決め手段が構成されている。
【0033】また、ストッパ冠体66は、その底壁部の肉厚寸法(補強金具68と緩衝ゴム層76との合計厚さ寸法)が、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品における肉抜空所40の間隙寸法(ストッパ凸部54と連結ゴム部46との径方向対向面間距離)と略同一か、それより大きく設定されており、マウント装着時にパワーユニット荷重により内外筒金具12,14が略同心的に位置せしめられた状態下において、適当なリバウンド方向のストッパクリアランスが形成されるようになっている。特に、本実施形態では、ストッパ冠体66の底壁部の肉厚寸法が、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品における肉抜空所40の間隙寸法(図4参照)より大きく設定されており、肉抜空所40に対してストッパ冠体66が嵌め込まれることにより、ストッパ冠体66の外面が連結ゴム部46に圧接せしめられ、内筒金具12が外筒金具14に対して、所定量だけ受圧室56側に変位した位置に保持されるようになっている。更に、好ましくは、本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品に対するストッパ冠体66の組み付けが、外筒金具14の組み付け前に行われるようにされる。即ち、ストッパ冠体66を組み付けた一体加硫成形品を、非圧縮性流体中に浸漬せしめ、非圧縮性流体中で外筒金具14を組み付けて非圧縮性流体を封入することにより、マウント装着時における流体圧力の発生が軽減されると共に、平衡室58の容積可変量が有利に確保されて、防振特性の安定化が図られ得るのである。
【0034】従って、上述の如き構造とされたエンジンマウント10においては、ストッパ凸部54の先端部に装着固定されてリバウンド側で適当な大きさのストッパクリアランスを形成するストッパ冠体66に対して、全体に亘って補強金具68が配設されて局部的な変形や全体の撓み変形等が防止されるようになっていると共に、かかるストッパ冠体66が、補強金具68に一体形成された取付部72により内筒金具12に対して強固に支持固定されていることに加えて、補強金具68に一体形成された係止片78,78によりストッパ凸部54の両側面に係止されて組み付けられていることから、特別な接着処理等を必要とすることなく、ストッパ冠体66がストッパ凸部54に対して強固に取り付けられるのであり、それによって、安定したリバウンドストッパ機能が、簡単な構造と優れた製作性のもとに実現され得るのである。特に、ストッパ冠体66自体の剛性も補強金具68によって有利に確保されることから、ストッパ凸部54からの部分的な位置ずれや外れ等も、極めて有効に防止されるのである。
【0035】しかも、ストッパ凸部54およびストッパ冠体66の幅寸法は、一対の袋状ゴム膜48,48の周方向分割部分を構成する連結ゴム部46の周方向寸法よりも小さく設定されており、ストッパ凸部54およびストッパ冠体66の袋状ゴム膜48,48への当接が有利に回避されるようになっていることから、袋状ゴム膜48,48が肉抜空所40内に直接に露呈されている構造であっても、リバウンドストッパ機構によって袋状ゴム膜48,48の耐久性が低下するようなことがない。
【0036】特に、本実施形態では、ストッパ冠体66(緩衝ゴム層76)の突出先端面が段差形状とされることにより、ストッパ凸部54の外筒部材14側への当接圧が、軸方向両側部分よりも軸方向中央部分において軽減されるようになっていることから、リバウンドストッパが作用した状況下でも、連通路61の流路断面積が有利に確保され得て、マウント防振特性の安定化が図られ得るのである。
【0037】また、本実施形態のエンジンマウント10においては、図1及び図3,図5中に仮想線で示されているように、エンジンマウント10を車両に装着するに際して、図示しないブラケットの内面に重ね合わされて配される扇形プレート形状の緩衝ゴムプレート86,86が、内筒金具12の軸方向両端部に対して外嵌固定されて装着される。このような緩衝ゴムプレート86,86を装着することにより、マウント軸方向に過大な荷重が入力された際に、外筒金具14の軸方向端面が、緩衝ゴムプレート86を介して、図示しないブラケットに当接されることとなり、それによって、内外筒金具12,14の軸方向での相対的変位量が制限されるのである。そして、このようなエンジンマウント10の車両への装着状態下では、ストッパ冠体66の内筒金具12からの抜け出しが、緩衝ゴムプレート86およびブラケットによって防止されるのであり、特別な処理や構造を必要とすることなく、ストッパ冠体66の内筒金具12に対する取付強度を、一層有利に確保することが出来るといった利点がある。
【0038】以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、これは文字通りの例示であって、本発明は、かかる実施形態に関する具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものでない。
【0039】例えば、連結ゴム部46を挟んで周方向両側に分割形成された二つの袋状ゴム膜48,48によって、二つの独立した平衡室を形成せしめて、それら各平衡室を、それぞれ、独立したオリフィス通路によって受圧室56に連通せしめるようにすることも可能である。その場合には、連結ゴム部46に連通路61を形成する必要もなく、また、各オリフィス通路に対して異なるチューニングを施すこともできる。
【0040】また、オリフィス通路60の形態は、要求される防振性能等に応じて適宜に調節されるものであって、その形成部位や長さ,断面積等は、前記実施例によって限定されるものでない。
【0041】さらに、前記実施形態におけるバウンドストッパ凸部22からなるバウンド方向のストッパ機構は、本発明において、必ずしも設ける必要がない。
【0042】加えて、前記実施形態では、本発明を自動車用エンジンマウントに適用したものの具体例を示したが、本発明は、その他、自動車用ボデーマウントやデフマウント、或いは自動車以外の各種の筒型マウントに対して、何れも、同様に適用可能であることは、勿論である。
【0043】その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【0044】
【発明の効果】上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされた流体封入式筒型マウントにおいては、平衡室を画成する可撓性膜が肉抜空所に直接に露呈された構造であっても、軸部材が外筒部材に対して肉抜空所側に変位せしめられるリバウンド方向のストッパ機構が、可撓性膜の耐久性を十分に確保しつつ、有利に構成され得る。
【0045】しかも、ストッパ凸部に被せられて装着されることにより、リバウンド方向で適当なストッパクリアランスを実現するストッパ冠体が、軸部材に対して直接的に支持せしめられる補強金具を含んで構成されていることにより、優れた取付強度をもってストッパ凸部に装着固定されることから、安定したストッパ機能を発揮し得るリバウンドストッパ機構が、簡単な構造をもって有利に実現され得るのである。
【出願人】 【識別番号】000219602
【氏名又は名称】東海ゴム工業株式会社
【出願日】 平成9年(1997)9月19日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】中島 三千雄 (外2名)
【公開番号】 特開平11−94009
【公開日】 平成11年(1999)4月9日
【出願番号】 特願平9−255340