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【発明の名称】 ドラムブレーキ装置
【発明者】 【氏名】藤原 洋一

【要約】 【課題】ブレーキシューのアンカーへの衝突による打音の発生を効果的に抑止すること。

【解決手段】アンカー9と、該アンカー9と対向するブレーキシュー2,3の他方端2b,3bとの間に緩衝部材13を介在させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 バックプレート上に一対のブレーキシューを対向配設し、このブレーキシューの一方隣接端間にサービスブレーキにより作動する第1アクチュエーターを配設すると共に、他方隣接端間にアンカーを配設し、前記第1アクチュエーターに隣接して、両ブレーキシューの間にシュー間隙調整装置を懸け渡し、前記アンカーに隣接して、パーキングブレーキにより作動する第2アクチュエーターを配設し、一方のブレーキシューの中間部にピボットレバーを回動可能に枢支し、このピボットレバーの一方と他方を夫々前記シュー間隙調整装置と第2アクチュエーターに作動的に係合させたドラムブレーキ装置において、前記アンカーと、該アンカーに対向するブレーキシューの他方端との間に緩衝部材を介在したことを特徴とする、ドラムブレーキ装置。
【請求項2】 請求項1に記載のドラムブレーキ装置において、一対のブレーキシューの他方隣接端を支承するアンカーが矩形の板材であることを特徴とする、ドラムブレーキ装置。
【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載のドラムブレーキ装置において、緩衝部材がアンカーに着脱自在に取着されていることを特徴とする、ドラムブレーキ装置。
【請求項4】 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のドラムブレーキ装置において、緩衝部材がコ字状を呈し、その一対の対向片をアンカーに挟持させて取着されていることを特徴とする、ドラムブレーキ装置。
【請求項5】 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のドラムブレーキ装置において、緩衝部材がアンカーと重合して配置され、バックプレートにリベットで共加締めされていることを特徴とする、ドラムブレーキ装置。
【請求項6】 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のドラムブレーキ装置において、緩衝部材が板ばねであることを特徴とする、ドラムブレーキ装置。
【請求項7】 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のドラムブレーキ装置において、アンカーと緩衝部材との衝当面にグリースが塗布してあることを特徴とする、ドラムブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はサービスブレーキ時にはリーディング・トレーリング形(LT形)ブレーキとして作動し、パーキングブレーキ時にはデュオサーボ形(DS形)ブレーキとして作動するドラムブレーキ装置に関し、より詳細にはパーキングブレーキ解除時の異音を解消するドラムブレーキ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来この種のドラムブレーキ装置として、例えば米国特許5,275,260号公報や特公昭62−8652号公報に開示されている。
【0003】図10及び図11を基にこの装置について説明すると、バックプレートaの上下部にホイールシリンダbとアンカーブロックcとが夫々配設され、左右一対のブレーキシューd、eの上下端が前記ホイールシリンダbとアンカーブロックcとに夫々係合している。
【0004】ブレーキシューd、eの上下部の相互間にはリターンスプリングf,gが夫々張設されている。左方のブレーキシューdの下部にはパーキングレバーhが枢着され、又、右方のブレーキシューeの中間部にはピボットレバーiの中間部が揺動可能に枢着されている。アンカーブロックc側のブレーキシューd、e間にはロッドjが横架され、このロッドjの左端がパーキングレバーhに係合し、ロッドjの右端がピボットレバーiの下部に夫々係合している。
【0005】又、ホイールシリンダb側のブレーキシューd、e間にはねじ式のシュー間隙調整装置kが横架されている。シュー間隙調整装置kの左端は前記ブレーキシューdと係合し、その右端はブレーキシューe及びピボットレバーiの上部と係合している。
【0006】前記ドラムブレーキ装置は、サービスブレーキによるホイールシリンダbの作動時において、両ブレーキシューd、eはアンカーブロックcとの当接点を支点に拡開して、ブレーキドラムnに摩擦係合しLT形ブレーキとして機能する。
【0007】又、パーキングブレーキ作動時においては、パーキングレバーhの回動力がロッドj、ピボットレバーi及びシュー間隙調整装置kの順に伝達され、左方のブレーキシューdはアンカーブロックcとの当接点を支点に拡開し、ブレーキドラムnに摩擦係合する。次いで、ピボットレバーiがシュー間隙調整装置kとの当接点を支点に拡開し、これに伴い、該レバーiを枢支する右方のブレーキシューeが一緒に拡開してブレーキドラムnと摩擦係合する。(図11参照)又、左方のブレーキシューdの下端にもパーキングレバーhの反作用力が働いている。
【0008】今、車両が登板路又は降板路に停車していて、図11に示す如くブレーキドラムnに矢印R方向の回転力が加わると、右方のブレーキシューeの摩擦力がシュー間隙調整装置kを介して左方のブレーキシューdの拡開力として伝えられる。又、ブレーキドラムnに矢印Rと反対方向の回転力が加わると、左方のブレーキシューdの摩擦力がシュー間隙調整装置kを介して右方のブレーキシューeに伝達される。このように、パーキングブレーキ作動時においてはDS形ブレーキとして機能する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】平坦路におけるパーキングブレーキ時、ピボットレバーiを具備する右方のブレーキシューeがアンカーブロックcから離れ、この状態でパーキングブレーキを解除すると、右方のブレーキシューeがアンカーブロックcに衝当して打音を発し、ドライバー等に不快感と不安感を与える。又、この現象は坂路においてサービスブレーキを作動して停止した後、パーキングブレーキを作動し、その後にサービスブレーキを解除して停車した場合も、図11においてドラムブレーキnが矢印Rと反対方向に回転すると、右方のブレーキシューeがアンカーブロックcに衝当するまでブレーキドラムnと共回りするために打音を発する。さらに、坂路においてパーキングブレーキのみを作動して停止している場合には、いずれか一方のブレーキシューd又はeがアンカーブロックcから離れている。この状態から発進のためパーキングブレーキを解除すると、同様に打音を発する。
【0010】本発明は上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、ブレーキシューとアンカーとの衝突による打音の発生を効果的に抑止できるドラムブレーキ装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】すなわち、請求項1に係る発明は、バックプレート上に一対のブレーキシューを対向配設し、このブレーキシューの一方隣接端間にサービスブレーキにより作動する第1アクチュエーターを配設すると共に、他方隣接端間にアンカーを配設し、前記第1アクチュエーターに隣接して、両ブレーキシューの間にシュー間隙調整装置を懸け渡し、前記アンカーに隣接して、パーキングブレーキにより作動する第2アクチュエーターを配設し、一方のブレーキシューの中間部にピボットレバーを回動可能に枢支し、このピボットレバーの一方と他方を夫々前記シュー間隙調整装置と第2アクチュエーターに作動的に係合させたドラムブレーキ装置において、前記アンカーと、該アンカーに対向するブレーキシューの他方端との間に緩衝部材を介在したことを特徴とする、ドラムブレーキ装置である。請求項2に係る発明は、請求項1に記載のドラムブレーキ装置において、一対のブレーキシューの他方隣接端を支承するアンカーが矩形の板材であることを特徴とする、ドラムブレーキ装置である。請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載のドラムブレーキ装置において、緩衝部材がアンカーに着脱自在に取着されていることを特徴とする、ドラムブレーキ装置である。請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のドラムブレーキ装置において、緩衝部材がコ字状を呈し、その一対の対向片をアンカーに挟持させて取着されていることを特徴とする、ドラムブレーキ装置である。請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のドラムブレーキ装置において、緩衝部材がアンカーと重合して配置され、バックプレートにリベットで共加締めされていることを特徴とする、ドラムブレーキ装置である。請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のドラムブレーキ装置において、緩衝部材が板ばねであることを特徴とする、ドラムブレーキ装置である。請求項7に係る発明は、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のドラムブレーキ装置において、アンカーと緩衝部材との衝当面にグリースが塗布してあることを特徴とする、ドラムブレーキ装置である。
【0012】
【発明の実施の形態1】以下、図1〜図6に基づいて本発明の一実施の形態について説明する。
【0013】〈イ〉バックプレート図1に示す如くバックプレート1は中央穴1aを車軸に遊嵌し、複数箇所のボルト穴1bにボルトを挿通して車体側の静止部材に固定される。
【0014】〈ロ〉ブレーキシュー一対のブレーキシュー2,3は湾曲するシューリム4,4の内側にシューウェブ5,5を断面T字状に接合すると共に、シューリム4,4の外周面に図示しないブレーキドラムと摩擦係合してこれを制動するライニング6,6が固着されている。そして、公知の板ばねとピンから成るシューホールド機構7,7で以てバックプレート1上に装架されている。
【0015】〈ハ〉第1アクチュエーター第1アクチュエーター8はサービスブレーキにより作動する公知の液圧式又は空圧式のシリンダで、対向するブレーキシュー2と3の一方隣接端2aと3a間に配設され、前記バックプレート1上にボルト等で以て固着されている。
【0016】〈ニ〉アンカー図1,2に示す如くアンカー9はバックプレート1の隆起部1cに積層させた矩形の受板10と、ブレーキシュー2,3のバックプレート1からの浮き上がりを制限する案内板11に複数のリベット12,12を貫挿し、これを鍛着して構成され、ブレーキシュー2と3の下部(他方)隣接端2bと3bを受板10で夫々支承する。アンカー9を構成する案内板11やリベット12は必須の要件ではなく、ブレーキシュー2,3の下部隣接端2b,3bを夫々支承できる矩形の受板10を備えていれば良く、また受板10は溶接によりバックプレート1に固着してもよい。尚、アンカー9は矩形の受板10に代えてバックプレート1にアンカーピンを植設したピン形でもよいが、受板10が板材であれば、プレス打抜き加工で簡単に製作できるから量産性に適する。
【0017】〈ホ〉緩衝部材緩衝部材13はアンカー9を構成する受板10と各ブレーキシュー2と3の下部(他方)隣接端2bと3bの間に介装される緩衝材で、図2に示す如く板ばねを前記受板10に抱持可能な略C字形又は略コ字形に屈曲して形成される。緩衝部材13は左右一対の緩衝部13a,13aと、弾性変形し易いように波形に形成し、前記緩衝部13a,13a間を連絡する接続部13bとを有し、緩衝部13a,13aの先端の屈曲部13c,13cとこれに対向する接続部13bの対向片で受板10の長辺側を弾性的に挟持し得るようになっている。特に、図3の右側に示すように外力が作用しない状態で、受板10の短辺側の側面と緩衝部13aの間に僅かな隙間を形成するように湾曲させて設計することが望ましい。
【0018】尚、受板10の短辺側の側面と緩衝部13a,13a間の隙間は上記の例に限らず、図4に示す如く緩衝部材13の各屈曲部13c,13cを受板10の長辺に向かい湾曲させて凸状部13d,13dを形成すると共に、受板10の長辺にこれを受容して係合する凹溝10a,10aを形成し、緩衝部材13を受板10に組み立てた状態の下で、受板10の短辺側の側面と緩衝部13a,13aの間に僅かな隙間を形成するように緩衝部材13の凸状部13dを受板10の凹溝10aに位置決めしてやれば、緩衝部13a,13aを平坦にすることも可能である。
【0019】緩衝部材13は組立てを終えたアンカー9の長辺側から屈曲部13c,13c及び緩衝部13a,13aを拡げて取り付けできる。本例では緩衝部材13をブレーキ装置の外方側から装着する構造を示したが、ブレーキ装置の内方側から装着する構造であってもよい。又、緩衝部材13に防錆力の高いステンレス鋼を用い、この鋼板を受板10の各長短辺に沿わせ屈曲部13c,13cを後から折り曲げて装着しても良い。
【0020】平坦路又は坂路においてパーキングブレーキを解除した場合、又は坂路においてサービスブレーキを作動して停止した後、パーキングブレーキを作動し、その後にサービスブレーキを解除して停車した場合、例えば図3に示す如くアンカー9から離れた一方のブレーキシュー2が、シューリターンスプリング力、又は図示しないブレーキドラムとの共回りにより復帰して、その下部端2bがアンカー9に衝突する。
【0021】緩衝部材13を装着しない従来装置にあっては、この際に衝突音を発することは既述した通りである。
【0022】これに対して本発明にあっては、アンカー9に装着した緩衝部材13の緩衝部13aが、そのばね力で以て一方のブレーキシュー2の下部端2bの衝突力を緩和し、衝突音を大幅に緩和することができる。尚、緩衝部材13が他方のブレーキシュー3の下部端3bとアンカー9との間の衝突音も緩和できることは勿論である。
【0023】又、受板10の短辺と緩衝部材13の緩衝部13a,13aとの間にグリースを塗布して油膜層を形成すれば、更に衝突音の緩和を図ることができる。
【0024】〈ヘ〉ピボットレバードラムブレーキ装置は、サービスブレーキとパーキングブレーキを同時に作動した際に、互いの作用を打ち消さないためのピボットレバー14を備えている。ピボットレバー14は、右方のブレーキシュー2のシューウェブ5に重合させて配設され、ピボットレバー14の中間部にプレスで一体成形した突起14aをシューウェブ5の穴に滑合して回転可能に枢支されている。又、前記の突起14aと穴の枢支構造に代えて、別途ピンを用いて枢支するようにしてもよい。
【0025】〈ト〉シュー間隙調整装置第1アクチュエーター8に隣接して、両ブレーキシュー2,3の間にシュー間隙調整装置15を懸け渡してある。
【0026】図5を基に説明すると、シュー間隙調整装置15はブレーキドラム(図示せず)とブレーキシュー2、3の隙間を調整する公知のねじ式で、調整歯16a付きのボルト16と、ボルト16の一方が螺合するチューブ部材17と、ボルト16の他方が回転可能に嵌合するソケット部材18とからなり、バックプレート1又はブレーキドラムに設けた図示しない穴からマイナスドライバー等の工具を差し込み、ボルト16と一体の調整歯16aを回転することで、ボルト16をチューブ部材17から螺出・入させてその全長を手動にても調整し得る構造になっている。
【0027】前記チューブ部材17とソケット部材18の各端部は圧潰されて板状を呈していて、チューブ部材17の左端の切欠き底が他方のブレーキシュー3のシューウェブ5に当接し、ソケット部材18の右端の切欠き底が一方のブレーキシュー2のシューウェブ5に当接している。又、ソケット部材18の切欠き底とピボットレバー14の一方との間には加工公差分の僅かな隙間が設けられ、ピボットレバー14が突起14aを支点に反時計回り方向に回転したときピボットレバー14がチューブ部材17の切欠き底と当接し得るようになっている。
【0028】図5を基にサービスブレーキ時に作動するインクリメンタル形のシュー間隙自動調整装置について説明すると、ピボットレバー14の一方側に固着されたピン24が一方のブレーキシュー2のシューウェブ5に穿設された長穴5cを遊嵌貫通して立設されおり、ピン24にアジャストレバー25の中間部が回転可能に軸支されている。アジャストレバー25の一方腕25aはソケット部材18の段差面に当接し、他方腕25bはボルト16の調整歯16aに係合している。アジャストレバー25と一方のブレーキシュー2のシューウェブ5との間には、アジャストレバー25にピン24を支点に反時計方向へ付勢するアジャストスプリング26が張設されている。
【0029】上述した構成において、サービスブレーキの作動により両ブレーキシュー2、3がアンカー9を支点に拡開すると、シュー間隙調整装置15がアジャストスプリング26の付勢力により他方のブレーキシュー3に追従する。一方、ピボットレバー14は一方のブレーキシュー2に追従するが、このとき、該レバー14はその突起14aを支点に図5における時計方向に回転させられる。従って、アジャストレバー25はピン24が回転した分と前記シュー間隙調整装置15の移動量を加えた分に相当するだけ、反時計方向に回転させられる。
【0030】今、ライニング6、6が摩耗して、アジャストレバー25の他方腕25bの回転量が調整歯16aの歯間ピッチを超えると、ボルト16を回転せしめてチューブ部材17から螺出し、図示しないブレーキドラムとライニング6、6との隙間を自動的に調整して常に一定に保つ。
【0031】又、パーキングブレーキ作動時には、他方のブレーキシュー3の拡開量だけシュー間隙調整装置15とピボットレバー14とアジャストレバー25等が一体となって追従し、自動調整作用には何ら影響を与えない。
【0032】〈チ〉第2アクチュエーター図1に示す如くアンカー9に隣接して、パーキングブレーキにより作動する第2アクチュエーター19が配設されている。第2アクチュエーター19は、フォワードプルタイプのブレーキレバー20とストラット21等から構成される。
【0033】ブレーキレバー20は他方のブレーキシュー3のシューウェブ5に重合するよう配設され、その基部がブレーキシュー3の他方3bにピン22で以て回転可能に枢支されている。ブレーキレバー20の自由端部は折り返してその折り返し部に溝が形成され、この溝に図示しないコントロールケーブルを掛止し得るようになっている。
【0034】図6に示す如くレバーストローク自動調整機能を具備するストラット21は、板状のアジャストストラット27とベルクランクレバー28及びスプリング29,30とから成る。アジャストストラット27の左方に形成された切欠き溝27a底がブレーキレバー20の内面に当接し、他方のブレーキシュー3のシューウェブ5とアジャストストラット27との間に張設したスプリング29が、アジャストストラット27とブレーキレバー20の当接状態を保持している。
【0035】アジャストストラット27の右方にはベルクランクレバー28の中間部がピン31で以て回転可能で、かつアジャストストラット27の長手方向に可動的に軸支されており、その一方の扇形をした腕28aの外周に刻設された小刻みな歯28bがアジャストストラット27の中間部に刻設した小刻みな歯27bに噛合い、アジャストストラット27とピン31との間に張設したスプリング30が前記小刻みな歯27b,28bの噛合状態を保持している。27cはアジャストストラット27に突設した突起で、ベルクランクレバー28の反時計方向の回転を規制している。
【0036】又、ベルクランクレバー28の他方のカム腕28cがピボットレバー14の他方に穿設した矩形穴14bに遊嵌されていて、ストラット21を通じてブレーキレバー20の作用力の伝達が可能になっている。
【0037】尚、ブレーキシュー2のライニング6の摩耗につれて増大するブレーキレバー20とピボットレバー14の間隔を自動的に補正するレバーストローク自動調整機構は、本発明の必須要件ではない。
【0038】〈リ〉リターンスプリング図1に示すように両ブレーキシュー2、3の上部間及び下部間には夫々リターンスプリング32,33が張設されており、ブレーキ解除時にブレーキシュー2、3等を元の状態に復帰させる。ブレーキレバー20を引き気味に調整してもブレーキ非作動時にブレーキシュー2の下部端2bがアンカー9から離れないようにするために、ロワーリターンスプリング33側のモーメントをアッパーリターンスプリング32側のモーメントより大きく設定することが望ましい。モーメントを上記のように設定することで、ブレーキシューの引摺りを防止できると共に、平坦路でパーキングブレーキを解除したときの打音を確実に解消できる。
【0039】
【作用】つぎにドラムブレーキ装置の作動について説明する。
【0040】〈イ〉サービスブレーキ時第1アクチュエーター8に圧力が加わると両ブレーキシュー2、3は、アンカー9との当接点を支点に拡開し、そのライニング6、6が回転しているブレーキドラム(図示せず)に摩擦係合してこれを制動する。このとき、一方のブレーキシュー2又は3が自己サーボ性を有し、他方のブレーキシュー3又は2が自己サーボ性を有しないからLT形ブレーキとして機能する。
【0041】〈ロ〉パーキングブレーキ時図1において、図示しないコントロールケーブルを介してブレーキレバー20が右方向に牽引されると、ブレーキレバー20はピン22を支点に時計方向に回転し、ブレーキレバー20の回動力がストラット21、ピボットレバー14及びシュー間隙調整装置15の順に伝達され、他方のブレーキシュー3はアンカー9との当接点を支点に拡開し、図示しないブレーキドラムに摩擦係合する。次いでピボットレバー14がシュー間隙調整装置15との当接点を支点に反時計方向に回転し、該レバー14の突起14aを介して一方のブレーキシュー2に作用力が伝達され、ブレーキシュー2もアンカー9との当接点を支点に拡開してブレーキドラムと摩擦係合する。又、他方のブレーキシュー3の下端にもピン22を介してブレーキレバー20の反作用力が働いている。
【0042】今、車両が登板路又は降板路に停車していて、ブレーキドラムに反時計回り方向の回転力が加わると、一方のブレーキシュー2の摩擦力がシュー間隙調整装置15を介して他方のブレーキシュー3の拡開力として伝えられる。
【0043】又、ブレーキドラムに時計回り方向の回転力が加わると、他方のブレーキシュー3の摩擦力がシュー間隙調整装置15を介して一方のブレーキシュー2に伝達される。このように、パーキングブレーキ作動時においては両ブレーキシュー2と3共、自己サーボ性を有するからDS形ブレーキとして機能する。
【0044】
【発明の実施の形態2】以降に他の実施の形態を説明するが、説明に当たり既述した実施の形態と同一の部位は同一の符号を付して説明を省略する。
【0045】図7にアンカー9を構成する受板10の短辺両側に2つの緩衝部材13A,13Aを夫々弾性的に挟持させた他の実施の形態を示す。各緩衝部材13Aは緩衝部13aの両端部をほぼ直角に屈曲して屈曲部13c,13cを形成した断面略コ字形を呈し、対向する一対の屈曲部13c,13cの弾力で以て受板10の長辺側に挟持させる。
【0046】緩衝部材13Aの緩衝部13aは、外力が作用しない状態において受板10の短辺側の側面との間に僅かな隙間を形成するように設計することが望ましいが、設計上において隙間を設けない場合もある。
【0047】本例にあっては、緩衝部材13A,13Aをアンカー9の受板10に押し込み操作で簡単に装着できると共に、緩衝部材13A,13Aの押し込み操作時に屈曲部13c,13cの拡開量が少ないからヘタリの心配が少ない。さらに、緩衝部材13A,13Aの一方に摩耗等の不具合が生じた場合に、最小単位で交換できるので経済的である。
【0048】また、図4に示した緩衝部材と受板10の係合構造を本例に適用することも勿論可能である。
【0049】
【発明の実施の形態3】図8は緩衝部材13Bをアンカー9を構成する受板10のバックプレート1側の面ではない反対面に重合して配置し、バックプレート1にリベット12,12で共加締めした他の実施の形態を示す。本例の緩衝部材13Bは板ばねの両端部をシューウェブ5,5上で折り返し、さらに折り返し片の端部を更に直角に折曲して緩衝部13a,13aを形成している。本例にあっては、緩衝部材13Bのシューウェブ5,5上で折り返した折返部がブレーキシュー2,3の浮き上りを規制するため、単体の案内板を省略することができる。
【0050】
【発明の実施の形態4】図9は緩衝部材13Dをアンカー9を構成する受板10とバックプレート1の間に配置し、バックプレート1にリベット12,12で共加締めした他の実施の形態を示す。本例の緩衝部材13Dは板ばねの両端部を直角に折曲して緩衝部13a,13aを形成している。本例にあっては、バックプレート1の隆起部1cの高さを低くできるから、プレスによる絞り加工が容易となる。
【0051】尚、既述した実施の形態2乃至実施の形態4において、先の実施の形態1と同様に受板10と緩衝部材13A,13B,13Dとの間にグリースを塗布してもよいことは勿論である。
【0052】
【発明の実施の形態5】既述した実施の形態1ではシュー間隙調整装置15がブレーキシューのライニングとブレーキドラムの間隙を自動的に調整するインクリメンタル形の自動調整機構を具備するタイプのドラムブレーキ装置に適用した場合について説明したが、自動調整機構はこれに限定されるものではない。又、自動調整機構を省略した手動調整タイプであってもよい。
【0053】
【発明の実施の形態6】パーキンクブレーキ形式についても、クロスプル形のパーキンクブレーキを具備するドラムブレーキ装置に適用してもよい。
【0054】
【発明の実施の形態7】既述した実施の形態1はブレーキシュー2に作用するリターンスプリング32と33のモーメントを所定の関係が成り立つように設定したドラムブレーキ装置について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、サービスブレーキ時にはリーディング・トレーリング形(LT形)ブレーキとして作動し、パーキングブレーキ時にはデュオサーボ形(DS形)ブレーキとして作動する形式であれば適用が可能である。
【0055】
【発明の効果】本発明は以上説明したようになるから次の特有の効果を奏する。
〈イ〉 アンカーと、アンカーに対向するブレーキシューの他方端との間に緩衝部材を介在したことで、ブレーキシューがアンカーに間接的に衝突するから、ドライバー等に不快感や不安感を与える打音の発生を効果的に抑止できる。
〈ロ〉 アンカーと緩衝部材の間にグリースを介在させると、防音効果がさらに高くなる。
〈ハ〉 緩衝部材がアンカーに着脱可能なものは、緩衝部材の組み付け操作や分解時の取り外し操作が簡単に行えるだけでなく、既存のドラムブレーキに何等加工を施さずに装着することができる。
〈ニ〉 ブレーキシューが緩衝部材を介してアンカーに間接的に当たるので、アンカーの摩耗やヘタリを防止できる。
〈ホ〉 緩衝部材に硬度の高い材料を用いることにより、ブレーキシューを支承する部分の摩耗やヘタリを防止できると共に、ブレーキシューの滑り抵抗を長期に亘って小さく抑制できる。
【出願人】 【識別番号】000004374
【氏名又は名称】日清紡績株式会社
【出願日】 平成9年(1997)10月13日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生 (外1名)
【公開番号】 特開平11−117965
【公開日】 平成11年(1999)4月27日
【出願番号】 特願平9−294879